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小売業界に激震ーー女性ファッションサブスク「Le Tote」が創業200年の老舗百貨店を買収か

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ピックアップ記事: WWD: Apparel subscription service Le Tote ready to bag Lord & Taylor 8月8日、米国サンフランシスコ拠点の女性向けファッションレンタル「Le Tote」による老舗百貨店「Lord & Taylor」の買収話が報じられた。 Le Toteは2012年にサンフランシスコで創業したファッション・レンタ…

ピックアップ記事: WWD: Apparel subscription service Le Tote ready to bag Lord & Taylor

8月8日、米国サンフランシスコ拠点の女性向けファッションレンタル「Le Tote」による老舗百貨店「Lord & Taylor」の買収話が報じられた。

Le Toteは2012年にサンフランシスコで創業したファッション・レンタルサービス。月額79ドルから女性服やアクセサリーをレンタルできる月額サブスクリプションモデルを採用。

オンライン注文した後、自宅で試着。気に入ったものはそのままキープして購入でき、飽きたら郵便ポスト経由で手軽に返品できる。累計調達額は6,250万ドルで現在シリーズC。2年前の『TechCrunch』の記事によると米国での提携ブランド数は200を超える。

一方のLord & Taylorは1820年代に創業された米国の老舗百貨店。現在40余りの店舗を運営する。親会社はHudson’s Bay Company。5月にHudson’s Bay Companyが収益化の進まないLord & Taylorを倒産させるのではなく売却を検討していると報じられており、今回はこの報道に端を発してLe Toteの名前が挙がった形。

2月にはWeWorkがLord & Taylorの旗艦店を8.5億ドルで買収していることから、百貨店の市場利用価値が未だにあると踏んでいると思われる。

別の報道記事によると、Le Toteとの買収が進むとすれば同社からいくらかの買収金額とエクイティがHudson’s Bay Companyに支払われる形になるという。現在はまだ買収が確定しているわけではない。

今回報じられた買収が実現すれば、両社は2つの大きな展望を持ちます。具体的には「オムニチャネル戦略」と「不動産広告事業の展開」

まずはオムニチャネル戦略から考察していきます。本報道が実現した場合、EC事業者であったLe Toteはオフラインでの売り場を持ちます。オンラインとオフラインの両方を手中に収め、巨大な女性服レンタルプラットフォームを構築できるのです。

ここで最も重要な要素となるのが「個客データ管理」

たとえば百貨店入り口でLe Toteのユーザーアカウント認証を行う導線を用意した場合、オンラインと店舗内でレンタルした商品データとの連携に成功します。店舗内でどんな商品を買ったのかという情報が連携アカウントに溜まる仕組みが完成するのです。

データ連携の最大のメリットはLe Toteのオンライン店舗と百貨店内での購買データを統合させることで、オンラインとオフラインのどちらのチャネルから顧客が流入しても最適な商品提案が可能となる点です。

Amazonが成功している点もまさにここと言えます。

無人店舗「Amazon Go」の顧客は入り口でアカウント認証が必要です。これは店舗購買データをAmazon Marketplaceでも活かして最適な商品レコメンドをするための導線を確保するためのもの。つまり実店舗顧客はオンライン・マーケットプレイスに来てもAmazon側からターゲティングされ、高い精度のパーソナライズ提案される対象になるのです。

従来の百貨店はこうした個客単位でのデータ管理が一切できていませんでした。そのためオンライン店舗を開いたとしても的確な商品提案が出来ずじまい。

しかしLe ToteがLord & Taylorを買収すれば、両者が手を組んでAmazon同様にパーソナライズ商品提案ができるようになるでしょう。アパレル市場でAmazonの戦略に追いつくことができるはずです。

個客データに基づいた接客アイデアを挙げると、たとえば「スタッフ付きっきりの百貨店」が誕生するかもしれません。Le Toteオンライン店舗での購買情報を基に、専属スタッフが顧客毎に最適なスタイルコーディネートを提案することが百貨店で出来るようになる具合です。もちろん逆の流れも生まれるでしょう。

このようにどのようなシチェーションであっても、各顧客にパーソナライズしたサービス提供を可能とさせる個客データ戦略がLe ToteとLord & Taylorを成長させる起爆剤になり得るのです。

もう1つは不動産広告事業に関して。こちらは先日の「在庫のない本屋」でも提案した販売業から不動産業へ転換する考えと同じです。

これまで百貨店側は商品を売ることを前提に収益モデルを構築していました。しかし最近流行っている店舗のショールーム化の流れに乗り、ブース貸しの不動産ビジネスへの転向すればLe Toteとの相乗効果と収益拡大が望めるでしょう

たとえばスタートアップ家電店舗「b8ta」では、天井に取り付けられたカメラで各顧客がどの商品に対して興味を示したのかを分析。商品棚毎の滞在時間を計り、体験エンゲージメント率を数値化しています。

この数値データとスタートアップやECのみを販売拠点としていた家電業者に旗艦店を提供する代わりに月額サブスク料金2,000ドル〜からブース貸しをしているのです。

同様にLe Toteのレンタル・プラットフォームに参加する各種ブランドが一等地で旗艦店を持てる機会が得られるでしょう。ここでブランド側が獲得するのは商品体験データ分析を通じた製品フィードバック。

Le Toteがブランドに支持されている理由がこの製品フィードバックの質の高さ。

顧客の返品率や返品理由を細かく調査し、ブランド側に「袖が長いと答えている人が〇〇%いました」といったパーツ毎の改善点を共有しています。こうしたデータは新作商品の開発などに活かされます。

こうしたフィードバックを従来とは違った視点から得られるようになるでしょう。

これまで試着体験は顧客宅で行われていたため、行動やリアクションデータまでは採取できませんでした。しかし百貨店というオープンな場を設けることで獲得できなかった貴重なデータを収集できます。

たとえば最も顧客の感情がわかる試着した瞬間や、多数の商品からどのくらい自社ブランド商品のアテンションを得られたかとデータです。さながらアパレルデータ市場のLast Mileとでも言えるでしょう。

オフラインで商品体験をしてもらった上でのリアクションデータも加われば、さらに精度高く製品開発に活かせるかもしれません。また、購買体験に結びつかずともブランド認知をオフライン空間でしてもらっただけで、Google Adsに代表されるオンライン広告以上の訴求力を提供できます。

ブランド側が月額サブスクでブースを借りるモチベーションがこうしたR&D拠点及び広告場所として活用できる不動産メリットにあるのです。もしLord & Taylorがブース貸しモデルの不動産業へシフトした場合、老舗百貨店は巨大な広告メディアへと変貌を遂げるでしょう。

さて、Le ToteによるLord & Taylor買収案件が実現すれば新たな顧客体験のみならず収益源獲得まで見えてきました。

ECスタートアップとして成長してきたLe Toteが老舗百貨店を傘下するであろうニュースはまさに”Software is eating the worlds”に代表される姿。百貨店がサブスクに降る日が近いように思えるニュースでした。

Image Credit: Le ToteJJBersMike Mozart

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ミレニアル向け動画ニュース「Cheddar」が2億ドルで買収へーー2018年度の収益は1800万ドル、クラシルにも通じる「脱SNS」の戦略を考える

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ピックアップ: Altice USA buys digital news network  Cheddar for $200M ニュースサマリー : 20〜30代を中心にするミレニアル世代向け経済動画ニュースメディア「Cheddar」がAltice USAによって2億ドルで買収されたと報じられた。同社は「ポストケーブルTV」がコンセプトのライブ動画ニュースサービス。 経済・金融ニュースに特化した「…

ピックアップ: Altice USA buys digital news network  Cheddar for $200M

ニュースサマリー : 20〜30代を中心にするミレニアル世代向け経済動画ニュースメディア「Cheddar」がAltice USAによって2億ドルで買収されたと報じられた。同社は「ポストケーブルTV」がコンセプトのライブ動画ニュースサービス。

経済・金融ニュースに特化した「Cheddar Business」、世界中のトップニュースをハイライトで伝える「Cheddar News」、学生向けに特化した「CheddarU」の3つのチャネルを展開する。

FacebookやTwitter、Snapchatに代表されるSNSだけでなく、HuluやSiling TVのようなストリーミング配信サイトで視聴もできる。あらゆる視聴環境に対応する「オーバー・ザ・トップ(OTT)」を事業軸にしたライブ動画メディアである。月間合計視聴数は4億視聴を誇る。

Cheddarの直近のラウンドにおける企業評価価値は1.6億ドルであったため、今回の買収は25%のプレミア価値がついた。

話題のポイント : Cheddarが登場した2016年は動画元年でした。1〜2分ほどに編集した短尺動画を配信するメディア「NowThis」を筆頭に、SNSのタイムラインは動画で溢れかえっていました。

自社ウェブサイトを持たず、視聴者が望むプラットフォーム上(主にSNS)で動画視聴できるUXを重視したメディアを「分散型メディア」と呼び注目されていました。そんな中、ニューヨーク証券取引所から経済ニュースをライブ配信するCheddarを少し異質に見ていたのが筆者の率直な感想です。

確かにライブ動画の重要性は語られていましたが、短尺動画のように大量生産をして視聴数を稼げるほどの費用対効果は見込めないと踏んでいました。

短尺動画では食や美容分野を中心にノウハウ系コンテンツを出せば、1コンテンツだけで軽く100万視聴以上を稼げます。加えて、アーカイブ性を持つことから一回配信したとしても何度もリピートして活用することができます。

一方、ライブ動画は1日経ってしまえば情報価値は廃れてしまいます。また、後日見返したとしても1〜2時間の尺の動画を再生して観る人はあまりいないでしょう。そんなライブ動画にどうしてビジネス軸を振るのか不思議で仕方なかったことを覚えています。

しかしライブ動画の強みはコンテンツ性です。NetflixやHuluのようなストリーミング配信サービスはオリジナル番組を欲しており、長尺ライブコンテンツはリビングでくつろぎながらスマートTV経由で動画視聴する利用シーンにぴったりだったのです。特集ニュースをアプリだけで視聴できる脱SNSの魅力も持ちえていました。

この「脱SNS」の戦略が命運を分けます。

Cheddarは創業当初、月額サブスクモデルで収益化を目指しました。自社アプリの集客に力を入れて独自ユーザーコミュニティ形成へ動いたのです。最終的にこの収益戦略は失敗に終わってしまい、ネイティブ広告からの収益化に軸を振ります。

ここでポイントとなるのは広告費用対効果の戦略図式です。短尺動画メディアはSNSページに大量のフォロワー数を抱えていることから一定数以上の視聴数が見込めます。

しかし、ソーシャル広告運用の経験のある方はわかるかもしれませんが、非常に多くの視聴者データをプラットフォームに抜き取られていることがわかります。この結果、広告主へデータを返すことができないのです。結果として残せるのは数字だけですが、これだけでは中抜き状態と言っても過言ではありません。

また、SNSアルゴリズム変更によって、過去の数字から保証されていた最低予測視聴数が突然崩れるリスクも抱えています。たとえばミレニアル向け動画メディア「Mic」は2017年のFacebookアルゴリズム変更の影響で業績を低迷させ一度サービス閉鎖に追い込まれています。

広告主は大きく費用対効果が変動するSNS投稿が主体のメディアへの出稿にどうしても消極的にならざるをえません。

この点、Cheddarは広告動画データを共有してくれるメディアプラットフォームと提携しているため、広告主へ数字だけでなくターゲット視聴者データも返すことができます。SNSアルゴリズム変更の煽りも最小限に減らせるOTTを軸にする拡大戦略も取っているため、リスクヘッジに成功しながらコンテンツ展開できていると言えるでしょう。

The WallStreet Journalの記事によると、収益の95%を広告が占めており、2018年度の収益は1,800万ドルを計上。2017年の1,130万ドルから着実な成長を見せています。

確かに現在でもSNSへの動画投稿を続けていますが、あくまでもCheddarは自社プラットフォームを持つ提携企業が視聴者集客するための呼び水としてオリジナル番組を提供する市場ポジションを取ったのです。

根こそぎデータを囲い込んでしまうプラットフォーマーに嫌気が差している企業は少なくありません。こうした企業が視聴者をSNSから引き離して自社に流れ込ませるニーズを巧みに汲み取り、オリジナル性の高いコンテンツを売り込んだのがCheddarの戦略であったというわけです。

日本では料理動画メディア「クラシル」がCheddarと同様の戦略を採っている事例として挙げられるかもしれません。

自社アプリに動画コンテンツを集約させることで「料理辞書」としてのサービス切り口をうまく提案しています。当初はSNSでの動画視聴数の伸びに頼っていたように思えましたが、今ではアプリを通じた膨大なユーザーデータ獲得に成功。Facebookのようなプラットフォーマーに頼る必要性を徐々になくす戦略に打って出ています。

ちなみにクラシルは自社アプリとコンテンツの両方を持つことからCheddarとは違い、非常に大きなプラットフォームを独自で作り上げようとしているメディアと言えます。アプリコンテンツ検索性の高さから、Cheddarが失敗した月額サブスクモデルでも成功する兆しが見えていると感じます。

さて、ここまで述べてきた脱SNS・脱プラットフォーマーの戦略は他業界でも顕著になってくるでしょう。たとえば小売業界ではAmazonで同じような流れが生まれてくるかもしれません。データを獲得して出店企業の競合製品を作る強引なやり方はいつか崩壊するでしょう。

今回のCheddar買収の一件はプラットフォーマーに左右されないビジネス戦略で生き残った一つの象徴的な事例と考えています。

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Googleが家庭向けのスマートデバイスメーカーNestを32億ドルで買収

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Googleが、インターネットに接続されるスマートデバイスを開発するメーカーのNest Labsを買収したことを本日発表した。買収金額は32億米ドル。現金による買収となっており、規制当局の承認を経て今後数カ月で完了する見通しだという。 Nestは、2011年に創業したサーモスタット(温度調節装置)や煙感知器製造といった、家において重要な役割を担うデバイスを開発しているスマートデバイスメーカーだ。 …


Photo by Nest Blog

Googleが、インターネットに接続されるスマートデバイスを開発するメーカーのNest Labsを買収したことを本日発表した。買収金額は32億米ドル。現金による買収となっており、規制当局の承認を経て今後数カ月で完了する見通しだという。

Nestは、2011年に創業したサーモスタット(温度調節装置)や煙感知器製造といった、家において重要な役割を担うデバイスを開発しているスマートデバイスメーカーだ。
2011年に立ち上がった。

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Nestの共同創業者でCEOを務めるTony Fadell氏は、Appleで音楽プレーヤー「iPod」の開発を担当した1人。筆者は、2011年「Nest Thermostat」が登場した当時、iPodの美しいUIが家電の領域にも進出したことに驚いた。Googleによると、Nest Labsは引き続き、Google内で独立したブランドとしてTony Fadell氏が率いることになるという。

Tony Fadell氏は、

Googleのサポートを得ることによって、私達のデバイスはさらにシンプルに、素晴らしいものになることだろう。家での暮らしをよりよいものにし、世界にポジティブなインパクトをもたらしていきたい。

と語っており、Google CEOのラリー・ペイジ氏は、

Tony Fadellと、Matt Rogersは素晴らしいチームを作り上げた。彼らがGoogleファミリーに入ってくれることにとても興奮している。彼らのプロダクトはすでに購入できる。私たちはさらに多くの国の多くの家庭において、すばらしい体験を提供できることを楽しみにしている。

と語った。

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Googleによる今回の買収は、モトローラに続く大型の買収となる。Googleは車と家という、数多くの人々が長い時間を過ごすことになるスペースへと、さらに入ることが可能となった。

以下は、Nest Labsが開発している「Nest Thermostat」、「Nest Protect」という2つのプロダクトの映像だ。



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