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B2Bと教育にクラウドソーシングーー2014年を占う、注目のスタートアップ18社と6つのテーマ+α(3/3)

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2013年のまとめコラムもこれで最後。エンタープライズ方面と教育、それに私の注目する二つのカテゴリだ。(前々回と前回はこちら) ラウンド6:エンタープライズ 企業向けのビジネスでスタートアップする場合、ここ2,3年で最も注目が集まったのはやはり広告周りだろう。アトランティスやノボットといったスタートアップたちがスマートフォンシフトの波を掴み、イグジットを果たしてくれたおかげで、後続の投資活動に弾み…

2013年のまとめコラムもこれで最後。エンタープライズ方面と教育、それに私の注目する二つのカテゴリだ。(前々回前回はこちら)

ラウンド6:エンタープライズ

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企業向けのビジネスでスタートアップする場合、ここ2,3年で最も注目が集まったのはやはり広告周りだろう。アトランティスやノボットといったスタートアップたちがスマートフォンシフトの波を掴み、イグジットを果たしてくれたおかげで、後続の投資活動に弾みがついたことはよく知られている。ノボットを輩出したサムライインキュベートはこれをきっかけにSSIを立ち上げている。

一方で、アドテク以外のビジネス向けサービスも徐々にアピール度を増している。人材系ではWantedlyが順調に成長して、新しいオフィスへの移転、拡大を続けているようだし、社内コミュニケーションツールのTalknoteも、堅実に数字を積み重ね、公開3年目で1万社の獲得に成功した。

従来、セキュリティ的に安心だと思われてきたイントラネットの分野を、「クラウド」というワードとともにリプレイスして成長していく様子は時代のシフトチェンジを感じさせてくれる。会計などの分野もクラウドに移行していることを考えると、今後、企業内で提供されていたサービスはどんどん外部に流れていく可能性がある。

またそういった視点でPlanBCDをみると興味深い。カイゼンの提供するグロースサービスは、サービスの作り込みや使い勝手の素晴らしさもありながら、クラウドソーシングの概念を取り入れて、グロースハッカーの外部発注を可能にしていることに注目すべきだ。

クラウドを使う、というのは決してサーバーサイドサービスを活用するということだけではない。人的なリソースもクラウド化し、使いたい時に使いたい分だけ活用するというリソース活用の概念そのものを変えると捉える方が適当だろう。

ラウンド7:教育

今回、Japan Startup Awardのノミネートに際して「同一テーマで数社並ぶ」という視点があった。そういう意味で、教育分野の選出は難しかったように思う。

今年、この分野で頑張ったスタートアップはやはりSchooだ。私もCNET Japanの岩本記者と一緒にこのテーマで出演させて頂いた。

オンライン教育は国土の広い北米の地理的問題や各州での教育格差から発達した背景があり、年代別にK12(初等教育)、Higher Education(大学以上の高等教育)、その前後にプレスクール、社会人教育の分類がよく知られている。とくにCourseraやedeX、UdacityといったMOOCの代表格といわれる高等教育は社会的意義も手伝って世界的に注目されている。教育関連の対北米比較はこの記事にもまとめている

一方で日本は地理的には国土も狭く、遠隔地教育のニーズが薄い。さらに学習指導要領も完備されており、地域間の教育格差もほぼ存在していない。

結果的にKDDIとQuipperが始めたK-12の「GAKUMO」や、最近になってDeNAが開始したアプリゼミ、リクルートの提供する受験勉強特化の「受験サプリ」など大手(一部で+スタートアップ)の取組みは散見されるものの、国内のオンライン教育ビジネスは唯一といっていいほどの英語コンプレックスを突いたSkype英会話が主戦場になっている。

つまり、Schooが置かれる環境というのは、決して楽な状況じゃないということだ。教育格差の是正という「シンプルかつマスト」のニーズが薄い中、広大な社会人学習の海でどのようなニーズを掴むのか。ここしばらくはスタートアップ向けのコンテンツを用意していたが、ニッチすぎるのは間違いない。ではこのニッチを積み上げるとして、人間の学習範囲は当然広い。どこまでカバーするのか。

もちろんまだ答えは出ていないが、過去何度かスクー代表取締役の森健志郎氏に何度かインタビューしているので、そこに何かヒントがあるかもしれない。興味ある方はそれも合わせてご覧頂きたい。

番外編:クラウドソーシングと「クラウド化する」リアルビジネス

2013年のまとめもこれで最後、残念ながら今回ノミネートには至らなかったが、私個人が注目している分野を二つご紹介したい。クラウドソーシングと「クラウド化する」リアルビジネスだ。

ランサーズとクラウドワークスというタイプの違うプラットフォーム型の2社と、MUGENUPなどの特化型クラウドソーシング各社にとって、2013年は躍進の年だっただろう。彼らが取り組んでいるのは、決して外注の価格破壊でも内職の量産でもなく、この多様化する働き方、生き方に新しい選択肢を提供しようとする活動と捉えた方がいいかもしれない。

参考インタビュー:1万人がクラウドソーシングで”食える”世界に立ちはだかる「見えない壁」ーーランサーズ秋好氏に聞く #IVS
参考インタビュー:「新しい働き方」はバブルか未来かーー11億円を調達したクラウドワークス吉田氏に聞く(前半)

注目しているポイントはまず2大プラットフォームとなったランサーズとクラウドワークスの動向だ。微妙にスタンスが異なり、完全なオープン指向を目指すクラウドワークスと、ある程度のルール、秩序を提供しようとしているランサーズの違いは興味深い。例えば、ランサーズが最近提供を開始したチームワークの機能提供は、同社代表取締役の秋好陽介氏への取材時によく話題に挙っていた機能のひとつだった。

ランサーズ代表取締役の秋好氏

クラウドソーシングで最も困るのが「なんでもいいからお願い」といった漠然としたオーダーだ。ここにはディレクションという機能が必要で、その壁を積極的に取っていったのがMUGENUPの方法だった。大量かつ全国に存在する絵師達を集中的に管理する方法は分かりやすいが、その反面、プラットフォームの良さが失われてスケール感に限界がみえてしまう。

オープンかコントロールか。国内で受け入れられるのはどちらになるのだろうか。

なお、海外ではこちらも2大プラットフォームだったoDESKとElanceが合併するという大きな動きがあったばかりで、この分野は2014年も引き続き激しい成長が期待されている。

「クラウド化する」リアルビジネス

もうひとつ番外編で注目しているのがこのリアルビジネスのクラウド化だ。以前にもいくつかの記事まとめて考察してみたりしている。

私がこの分野に注目する理由はひとつ、読者の関心が高いからだ。残念ながらこの分野はどうしても地味で、技術的な革新要素というよりは、既存ビジネスの古い商習慣、腰が重く、問題を先送りしすぎた老人たちとの交渉に時間が費やされることが多い。彼らにとってネットは理解不能で面倒なもの、場合によっては食い扶持を減らす「敵」なのだ。

だからこそ、若い力が丁寧にその業界の中に入り、インターネットによって効率化を果たす姿というのは、見ていて気持ちがいいのかもしれない。

また、ビジネスモデルの分かりやすさというのもあると思う。工場や人材など、現実的な「リソース」をオンライン上で仮想的なひとつのリソースに仕立て、「集客と管理」を効率化する。お弁当も宅配ラーメンも印刷もクリーニングも教室も全て類似のコンセプトに基づいている。つまり、まだまだ他のテーマがあるかもしれないというビジネスチャンスの匂いに惹かれている人が多いのだと思う。

そういう意味で、この分野は2014年も多くアイデアが出てくるのではないだろうか。期待したい。

さて、いかがだっただろうか。ここ数年は投資状況もどんどん良くなり、ここ数カ月では数年前のイグジットのような金額規模で資金調達も実施されるようになってきた。また、イグジットした起業家がエンジェルとなり、そのエンジェルがまた起業する、そういった人材の循環も起こりつつある。業界にひとつの「流れ」が生まれているのは多くの人たちが感じていることだろう。

チャンスは多いのだ。

また新たな年に私たちを大いに驚かしてくれるスタートアップとの出会いを楽しみにしたいと思う。

お金関連、ガイド、ものづくり系ーー2014年を占う、注目のスタートアップ18社と6つのテーマ+α(2/3)

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ちょっと間が空いてしまったが、Japan Startup Awawrdにノミネートされた18社についてまとめたコラムの続きをお送りする。(前回はこちら)今回はお金関連、ガイド、そしてものづくりについて振り返りと注目点を整理した。 ラウンド3:お金周辺 お金に関するビジネスのネット化というのは、証券系、決済系、そして近年では保険関連と「正しく」既存業界のリプレイスを実行している印象がある。そしてここ…

ちょっと間が空いてしまったが、Japan Startup Awawrdにノミネートされた18社についてまとめたコラムの続きをお送りする。(前回はこちら)今回はお金関連、ガイド、そしてものづくりについて振り返りと注目点を整理した。

ラウンド3:お金周辺

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お金に関するビジネスのネット化というのは、証券系、決済系、そして近年では保険関連と「正しく」既存業界のリプレイスを実行している印象がある。そしてここ数年は「クラウド」や「スマートフォンシフト」というキーワードに乗ってまた新たなスタートアップが生まれている。ラウンド3のノミネート3社はその代表例だ。

商習慣との戦い

彼らを取材する時の共通の話題が、そこにある商習慣との戦いに関するものだ。システムやサービスの難しさだけではなく、既存業界のルール、例えばCoineyはあの端末に目を奪われがちだが、実際は国内の関連会社との交渉などに多くのリソースを費やしていると話してくれていた。

古い業界に鎮座するプレーヤーの多くは腰が重く、若いだけのスタートアップではこの分野を攻めることは困難かもしれない。実際、家計管理のマネーフォワード代表取締役社長の辻庸介氏は元マネックス証券だし、freeeの代表取締役、佐々木大輔氏もGoogleで中小企業を担当した実績やCFO経験からこの分野を選択している。Coineyの佐俣奈緒子氏は元Paypalだ。大切な情報の取り扱いになる以上、門外漢の出番は少ないとみた方がいい。

注目のスモールビジネス向け会計市場

freeeに引き続き、マネーフォワードが開始した会計管理のサービスには、弥生会計などに代表される個人事業者向けのパッケージソフトという「リプレイス相手」がいる。オンラインバンキングとの繋ぎ込みや、アカウントがすぐに開設できる手軽さなど、クラウド会計ならではのメリットを提示しながら、高額なクライアントアプリが基本だった分野のビジネスモデルを売り切りから課金に変化させようとしている。

問題は会計事務所がそれに対応できるかどうかだ。私が使っていた小さな会計事務所は残念ながらGoogleアカウントすら知らない。ましてやこちらの都合で使用するアプリを変更することはありえない。既存の会計ソフトとのデータ連携はできるものの、やはり双方が利用できた方がメリットは大きい。

ということでバックグラウンドがある事業者であればこの分野のニッチを探して今から攻めても面白いかもしれない。

ラウンド4:ガイド

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2013年はソーシャルの波に乗って出現してきたバーティカルメディアにとって勝負の年だったように思う。このラウンドにノミネートされたRettyとTrippieceは公開から数年、地道に資金調達やユーザー数を重ね、Rettyについてはここ数カ月で閲覧のユーザー数を伸ばしてきている。Trippieceも経営布陣を強化して足回りを固めていることがよくわかる。

あそびゅーは典型的なSEO型の予約ができるガイドサイトだが、注目したいのはその立ち上がりの速さだ。2013年4月に公開後、わずか半年でアクティビティが1500件、予約件数も5000件を達成している。運営しているカタリズム自体が3年目のスタートアップであり、テーマさえ見つければまだ空いている席があるのかもしれない。

「ニッチでスケールさせる」という矛盾

しかし、一方で上記以外のバーティカルメディアで苦戦を強いられているものも多くある。具体名は避けるが、ニッチすぎてユーザーが結局拡大しなかった、ということだ。また、トラフィックに関しても新しい流入元としてのソーシャルに期待が集まった時期もあったが、SEOを併用する場合も多く、この辺りの選択やリソース配分についても大切な検討要素と感じられた。

ちなみに、この分野で次に予想されているのがまとめ系だ。先日公開されたiemoなどがそれにあたる。

ラウンド5;ものづくり系

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2014年、つまり来年だが、最も注目しているのはハードウェアを中心とするものづくり系のスタートアップだ。すでにウェブサービスが飽和し、テーマがどんどんニッチに進む中、プラットフォームとなりうる急成長分野はなくなりつつある。二次元の画面でできることはもう限界に近づいているのだ。

ただし、ここでいうハードウェアは決してハード単体ではない。当然のことながらウェブサービスと紐づき、特にビジネスモデルを売り切りから課金へと変化させるかどうかに注目している。

プラットフォームを取るのは誰か

Rinkakが開始しているプラットフォームや、TokyoOtakuModeが展開しているコンテンツプラットフォームはそういう視点で眺めると可能性の宝庫にしかみえない。何かが動く時、大量にデータを持っているものが勝つという構図は昔も今も一緒だ。わかりやすい参入障壁になってくれる。

一方でハードウェアは生産に特殊なノウハウが必要であり、常に人材欠乏に悩んでいる。既存メーカーがさらに厳しい状況に追い込まれ、優秀な技術者が新しい市場に流れ込んだ時、おそらく時代は変わるだろう。

さて、このコラムの続きはラウンド6のエンタープライズと教育、そして今回、ノミネートには上がらなかったが注目しているクラウドソーシング関連について書いてみたいと思う。

メディア化するECが変える「発見」と「体験」

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「10万店舗を超えたときに面白いことが起こると思うんです」ーーある会食でBASE代表取締役の鶴岡裕太氏と家入一真氏にたまたま出会い、最近の状況を聞いたらこんなことを話してくれた。 リリースして約3カ月、勢いはそのままに2月20日現在の店舗数は1万5000店舗を超えたそうだ。毎月5,000店舗を積み重ねるとして、この「面白いこと」は17カ月後に起こることになる。 ここ数カ月だろうか、ECのような、ソ…

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「10万店舗を超えたときに面白いことが起こると思うんです」ーーある会食でBASE代表取締役の鶴岡裕太氏と家入一真氏にたまたま出会い、最近の状況を聞いたらこんなことを話してくれた。

リリースして約3カ月、勢いはそのままに2月20日現在の店舗数は1万5000店舗を超えたそうだ。毎月5,000店舗を積み重ねるとして、この「面白いこと」は17カ月後に起こることになる。

ここ数カ月だろうか、ECのような、ソーシャルネットワークのような、それでいてメディアのような形態をいくつか複合したサービスが好調だという話を耳にする機会が増えた。ビジネスモデルもマーケティングやシステム課金、ECの手数料やアフィエイトなど様々で、これも複合している場合が多い。

海外では、EtsyやFab、Fancyといったマーケットプレースぽいもの、ソーシャルネットワーク上で公開したコンテンツに課金ができるPheedも一時期少し話題になったし、ECではないけれど送客機関としてのPinterestやTumblrは華麗なコンテンツ製造装置として大きくユーザーを獲得した。

国内でも大型の調達をしたiQONや、スマートフォンとマーケットプレースの複合的なフリルは注目されているし、前述のBASEやStores.jpなども単純なショッピングカートとは少し雰囲気が違う。何よりこれだけサービスが溢れる中、彼らが支持を集めて成長している事実は注目すべきだろう。

一見すると多種多様なカテゴリのようだが、私はこれらのサービスにある共通点があるのではと考えるようになった。それが「発見」と「体験」に関するものだ。そのことについて具体的なサービスを挙げて考察してみた。

型番商品「以外」の発見方法ーーMONOCOの「コンシェルジュ」的発想

Fabが伸びている。総額で1億7,100万ドルを調達し、TechCrunchが昨年6月にCEOのJason Goldbergへインタビューした内容をみると、2012年の販売商品点数は180万点予想、売上は1億4000万ドルを目標にしているのだという。

そして日本国内で同様の手法を展開するのが、MONOCOを運営するフラッタースケープ代表取締役の柿山丈博氏だ。

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MONOCOはFab同様、刺激的な商品を毎日「イベント」という手法で販売する。柿山氏みずから足を運んで交渉し、見つけてきた数百人のデザイナーからもたらされる商品は、大量生産の既製品ではない。しかしながら一品物のような敷居の高さもない、丁度いいポイントを狙っている。Fabと手法は同じでも商品は国内デザイナーのテイストが生きたものになっている。

彼らはこの商品をコンテンツにまとめ、クローズド会員に向けてメールやサイトを通じて毎日「お勧め」する。

世の中は物にあふれている。「突き刺さる位にエッジが立ってなければ勝てない」ーーそう語る柿山氏が重要なポイントと考えるのがバイヤーの存在だ。ほぼ外国人で組織されたMONOCOのメンバーは毎日ヘッドホンで大音量をかけながら、自分がイケてると信じる商品をイベントに仕上げ、クローズドの会員に向けて販売する。現在は毎日6〜7イベントを開催し、常時500〜1000点の商品がサイトに並ぶようになった。

柿山氏は彼らのことを「コンシェルジュ」的な存在とみる。ただ物を探してきて整理してまとめる人ではなく、自信を持ってお勧めする人。結果、彼らの売上は順調に成長し、1日に100万円以上を売上げる日も出てきた。

ファッションは文字では探せないーーiQONのファッションディスカバリー

iQONを公開直後に見たとき、私は女性誌を思い浮かべてそれに関する質問ーー例えばiPadに対応させるのかとか、女性誌のマーケットを狙うのかとかーーそういう話をした覚えがある。そして今、彼らが提供するiPhoneアプリは雑誌の体験性を「再現」していると思っている。

パラパラと女性誌(私は男性なので男性誌だが)をめくった時に発見できる体験や感動。iQONにはPC版に小さなキーワード検索窓がついているが、スマートフォンアプリには見当たらない。あくまでイメージをタッチすることで自然と絞り込みができるようなフローになっている。

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雑誌の再開発が電子書籍を示す場合もあるが、本当の意味で「雑誌の体験性」を再現しているのは、このiQONのような「イメージによる発見」を実現しているサービスだと思う。そしてさらにスマートフォンというモバイル環境の制約も大いに考慮すべきだろう。文字よりもタッチするだけでイメージと出会える世界観の方が圧倒的に有利だからだ。

ここから導線を貼った店舗では月間で2000万円を売り上げた店も出てきているというから、おそらくここでの偶然の出会いはより雑誌のそれに近づいているのだろう。しかも雑誌をみて、店舗に足を運んで、というのではない。その場で買ってしまうのだ。文字で検索して価格を比較して、店舗で手にとってネットで買う。そんな導線設計もよく語られていたが、ここの流れはそうではない。きわめて直感的な動き方だ。

そういう視点で周りを見渡すと、文字で検索できない商品はごまんとある。ファッションだけでない、イメージからものを見つけて(イメージ検索ではない)自分の趣味にあった物との出会いを作り出す。ここには大きなビジネスチャンスがまだまだ潜んでいると思っていいだろう。

BASEが売っているものは商品ではなく「体験」

現在、楽天に出店している店舗数は約3万9000店舗(※1)、ショッピングカート大手のカラーミーショップを導入している店舗は3万6800店舗(※2)だという。前述の通り、昨年11月末に立上がったBASEは1万5000店舗にまで伸びている。しかしこの比較は正しいだろうか。

BASEというサービスをどうみるか、色んな意見があって面白い。安い(というかタダなんだけど)ショッピングカートという人もいるし、ホームページ作成サービスの亜流のような捉え方、Gumroadのようなコンテンツ指向もあるし、Etsyのようなマーケットプレースかもという話もある。

私はTumblrに近いと思っている。楽天やショッピングカートとの比較に違和感はあるけど、Tumblrのようなプラットフォームと比較すればあまりおかしく感じない。なぜか。彼らが作っているのがショッピングページというよりはコンテンツに近いからだ。彼らは同じくポータルを持たない。

以前私はこのような記事を書いた。彼らに近しい友人が「エビストラップ」や「自画像」を販売している。ひとつは手渡しで、ひとつは売ってるにも関わらず、ダウンロードが可能だった。真面目に文章で書くのもアレだが、このことに関連して家入氏が「モノというネタを通じてコミュニケーションを楽しんでいる」と話していたのが印象的だった。

彼らはポータルを持っていないので、BASEで売っている商品を探すことは出来ない。探す必要がないからだ。全く文脈を知らない人がいきなり似顔絵を出されても訳が分からないし、購入なんてしないだろう。あくまで購入という行為は販売者と近い関係にある人から広がった「輪」に存在する。

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そうやって小さい輪から口コミで広がり、例えばこの「自分の名前を入れた和歌を作ってくれる」ショップは数十件の注文が入って現在注文を止めているそうだし、「月間で数百万を売上げるショップも出てきている」(鶴岡氏)という結果につながっている。

友人のTumblrを眺めているとたまに感動的なモノに出会うことがある。コメントをしたりリブログしたりリアクションする。BASEはこの体験の上に「買える」というアクションが追加されたものではないだろうか。

ーーーこれらのサービスは文字で商品を検索させ、値段という数字で比較をさせない。イメージを駆使し、自分の価値観を人に勧める。モノによるコミュニケーション、買ったことへの話題づくりという体験を付加価値にビジネスしようとしている。このような「メディア化するEC」サービスはこれからも出てくるのではないだろうか。

※1:※2012年度実績 出店店舗数 約39,000店舗
※2:導入店舗数3万6,800店舗。国内主要ショッピングカートASPサービス中首位。(2012年3月末時点「主要ショッピングカート利用状況調査」)
出典:(株)日本流通産業新聞社「日本ネット経済新聞2012年5月24日号」/カラーミーショップサイトより