中東最大のスタートアップカンファレンス「Startup Istanbul」の運営で知られる、トルコ・イスタンブールに本拠を置くインキュベータ eTohum は、プレシードステージのスタートアップ向けのマイクロファンド「Startup Istanbul Fund」を組成したことを明らかにした。
ファンド規模は1,000万米ドルで、投資対象1社あたりのチケットサイズは5万米ドル。主に Startup Istanbul に登壇したスタートアップを対象に、今後3年間で100社に投資を実行する計画だ。また、投資先各社には25%の追加投資枠(follow-on reserves)を設定し、将来性が確認された約25社には後日追加投資を実行する。
eTohum の創業者で代表の Burak Buyukdemir 氏が、新ファンドのマネージングパートナー務める。新ファンドには、欧米をはじめ世界各地の投資家や成功を遂げた起業家が出資参加する予定で、LP の一人には、2017年の Startup Istanbul にも基調講演者として登壇した著名投資家の Tim Draper 氏が名を連ねた。
iGrow はインターネット越しに農作物を育てることができるプラットフォームだ。都会では農業を営むことができないユーザが、iGrow を介して資金をスポンサードし、遠く離れた農園で農作物の栽培を依頼することができる。投資した資金によって、農作物からは収穫売上が得られる。ユーザはその収穫売上の40%を手にすることができ、残りの60%はその後の農作物の育成のために使われる。Startup Asia Jakarta 2014 では優勝している。
SecurityWall は、Startup Istanbul 史上最年少となるパキスタンの17歳の少年によるスタートアップ。サーバ、ソフトウェア、ウェブアプリなどの脆弱性診断やマルウェアの防御や除去を定期的に実施してくれるサービスを提供。近年、サイバーアタックやマルウェアなどによる被害が増加する一方、企業の中にはセキュリティに関する専門家が置けないのが実情。これらの企業に、SecurityWall はクラウド的にセキュリティ・サービスを提供する。2015年4月に開催された Cyber Secure Pakistan で優勝している。
Transterra Media(レバノン)
Transterra Media は、ニュース、ジャーナリズム、広告用のテキスト、写真、ビデオなどを販売できるマーケットプレイス。4,000人のコンテンツ供給者がいて、コンテンツを購入するニュース・パブリッシャーには、Al Jazeera や NBC など中東や欧米の放送局など。販売できたコンテンツについては、売上の70%をコンテンツ供給者、30%を Transterra Media で分配する。コンテンツ供給者は、ソーシャルメディアを使って集めている。来年には、年間200万ドル程度の売上を見込んでいるとのこと。
本稿は Startup Istanbul 2015 の取材の一部である。 5日(現地時間)、トルコ・イスタンブールで年次のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」が開催され、中東・西アジア、東ヨーロッパ・北アフリカの国々の起業家、欧米の投資家らが一堂に会した。このイベントには世界68カ国から100社のスタートアップが集められ、トップの座を争うピッチ・コンペティシ…
5日(現地時間)、トルコ・イスタンブールで年次のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」が開催され、中東・西アジア、東ヨーロッパ・北アフリカの国々の起業家、欧米の投資家らが一堂に会した。このイベントには世界68カ国から100社のスタートアップが集められ、トップの座を争うピッチ・コンペティションが実施された。ピッチの模様については改めて書くことにするが、Startup Istanbul の中で興味深かったセッションについて取り上げてみたい。
Startup Istanbul 2015 の冒頭には、自身も起業家であり起業家教育に力を注ぐ Steve Blank 氏が登場し会場を沸かせた。
その上で、Blank 氏はスタートアップを「再現可能(or ピボット可能)かつスケールする可能性のあるビジネスモデルを探求し続ける上での一時的な組織体系(temporary organization in search of repeatable (or pivotable) and scalable business model)」と定義づけた。
起業家とは仕事ではない。それは、衝動に駆られるもの(calling)だ。スタートアップの世界では皆、ローカル vs. グローバルみたいな話をする。しかし、どんな国にだって地域市場は存在する。トルコには6,500万人もの人口がいるでしょ。トルコのスタートアップの人たちには、ぜひ、自分たちの地域の情報やアドバイスを、ブログや Wiki を作ってシェアしてほしい。(Blank 氏)
Startup Istanbul のクロージングの折、司会者にステージ上に呼び出された Startup Istanbul のプロデューサーで、トルコのインキュベータ eToham の創業者 Burak Buyukdemir は「来年は、Startup Istanbul ではなく Startup MENA になるかもね」と語っていた。
Startup Turkey ではトルコの起業家が地元やヨーロッパの投資家から資金調達の機会を獲得することにフォーカスしているが、中東や西アジアの起業家が互いに知り合うために、eTohum がよりカジュアルな場を提供しようとして始めたのが Startup Istanbul だ。第一回が今年9月に開催され、日本のスタートアップ・シーンについての知見を披露してほしいとの依頼で、筆者も招かれることになった。
パネルやピッチセッションには、500 Startups の Dave McClure、Justin.tv 創業者で Y Combinator のパートナーである Michael Seibel も招かれ、中東のスタートアップ・シーンにシリコンバレーの流儀を広く知ってもらおう、という意図も隠されていたようだ。
その地域のスタートアップ・イベントのピッチに登壇したスタートアップを知れば、その地域のスタートアップ・シーンやトレンドが見えて来るというのが筆者の信念なので、例によって、Startup Istanbul のピッチ・コンペティション「Startup Challenge」に登壇したスタートアップの中から、入賞表彰された4チームをビデオ付きでご紹介したい。
〈第1位〉 Connected2.me(トルコ)
500 Startups の Dave McClure らから1位の表彰を受ける、Connected2.me のチームメンバー。
CEO の Riham Mahafzah に聞いたところ、資金調達の関係などもあり、現在はヨルダンやトルコよりもサンフランシスコで活動していることが多いとのことだ。世界的な写真販売サイト Shutterstock などを見ていても、写真は欧米中心で中東やアラブ社会のものは少ないことから、このニッチに対するニーズは中東に限らず世界中に潜在していると考えられる。
〈特別賞〉 ZarinPal(イラン)
ZarinPal は、イラン国内向けのオンライン決済プラットフォームだ。欧米をはじめ西側諸国であれば、日常的に Visa や MasterCard が使える。送金においても Swift などの銀行間決済システムが使える。しかし、イランではそうはいかない。イランの人口は7,700万人、その約半数がインターネットにアクセスできるので、インターネット人口で言えば、東南アジア最大の市場とも言えるインドネシアをも凌ぐ。このようなポテンシャルの高い市場で栄えるのはEコマース。したがって、ZarinPal は、Eコマースとは切っても切れない関係にある決済ビジネスが大きく伸びるだろう、というシナリオに基づいたビジネスだ。
Visa や MasterCard、あるいは、海外のオンライン決済システム会社が本格的にイランに進出するときには、おそらく、ZarinPal は買収/統合されるという運命をたどるのだろう。近年、決済系事業を営むスタートアップはバリュエーションが高くなる傾向があるが、イランのようにインターネット人口が多い割に決済システムや物流サービスが未発達の国においては、この種のスタートアップの動向に要注目である。