レアメタルの資源循環でカーボンニュートラルを実現するエマルションフローテクノロジーズ/KDDI ∞ Labo10月全体会レポ

鈴木裕士さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

エマルションフローテクノロジーズは「限りあるレアメタル資源を未来につなぐ」をビジョンに掲げる、日本原子力研究開発機構発のベンチャー企業です。同機構における約30年間にわたる原子力研究から生まれた新規溶媒技術「エマルションフロー」をコア技術に、レアメタルの資源循環に取り組んでいます。

レアメタルは電子・磁石材料や機能性材料の性能確保に不可欠で、あらゆるものが電化される未来の社会を支える重要な元素です。一方現在、電気自動車のリチウムイオン電池に多くのレアメタルが使用されており、電気自動車の普及に伴い2025年頃から供給不足が顕在化すると予測されています。また、レアメタルの需要拡大による、さまざまな地政学的リスクの増大や供給不安も懸念されており、レアメタルのリサイクルによるサプライチェーンの強化が必須の状況です。

Image credit: Emulsion Flow Technologies

エマルションフローテクノロジーズは、新規溶媒技術「エマルションフロー」をコア技術として主に2つの事業を展開しています。1つめは資源循環事業です。回収したレアメタルを再度、リチウムイオン電池を中心としたハイテク産業で利用する水平リサイクルに取り組んでいます。2つめがトータルサポート事業です。顧客の課題を解決するため、エマルションフローを利用した抽出プロセスの提案からプラントの導入・運転までをトータルサポートしています。

従来の溶媒抽出技術の課題としては、大規模なプラント設備を必要とすることや環境負荷が高いこと、さらに処理コストも高いことが挙げられ、水平リサイクルの事業化は難しいとされています。この問題を解決するのが新規溶媒技術「エマルションフロー」です。「エマルションフロー」は使用済み核燃料に対する高度な金属元素分離のために開発された技術で、従来の技術よりも高効率な特徴があります。

「エマルションフロー」は、従来技術と比較して、生産性の4から10倍の向上や、それに伴うコンパクト化及びコスト削減を実現しています。また、分離性能の点でも抽出率90%と非常に優れた性能を示しており、設計の自由度や拡張性も高い優れた技術です。

レアメタルを未来永劫使い続けられる完全循環社会を達成することで、2050年のカーボンニュートラルを実現することが我々のミッションです。(鈴木氏)

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