世界初の定常核融合炉稼働を目指すHelical Fusion/KDDI ∞ Labo10月全体会レポ

後藤拓也さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

Helical Fusionは、2034年を最速目標に、世界初の定常核融合炉を稼働させることに取り組むスタートアップです。なぜ核融合に注目しているかというと、今後ますます人口が増加していくにつれて必要となるエネルギー量が増えていく一方で、環境保護の観点から二酸化炭素の削減も急ピッチで進めなければならない課題があるためです。

現在、火力発電や原子力発電のほかにも再生可能エネルギーの活用などが注目を集めていますが、持続可能なエネルギーという観点で確立された技術はありません。Helical Fusionは、これらに次ぐ新しい選択肢として、核融合によるエネルギー生産を加えることを目指しています。

Image credit: Helical Fusion

核融合とは、水素の原子核どうしの衝突・合体により莫大なエネルギーを生む反応です。太陽をはじめとする宇宙で輝いている恒星は、全て核融合でエネルギーを発生させています。核融合は、反応時に二酸化炭素を排出しないことや、燃料を海水から取れるため事実上無尽蔵であること、高レベル放射性廃棄物の排出や暴走の心配がないことなどのメリットから、安全性の高い持続可能なエネルギーとして注目されているそうです。

地上で核融合を起こすには強力な電磁石を用いた2つの方式があります。1つめは「トカマク方式」で、構造は簡単だが連続運転の見通しが立っていないという問題点があります。一方の「ヘリカル方式」は、構造は複雑だが連続運転に適しており、メンテナンスも容易なため、発電インフラに適しており、同社は「ヘリカル方式」を採用しているそうです。

今後の展望としては、個別技術の実証を進めた後に、小型の実験装置を作り核融合炉の全ての機能を統合実証するそうです。その後、本格的な核融合炉を建設して最短で2034年に発電を開始する想定をしています。

人類は核融合で進化すると信じている。ヘリカル核融合炉で安全かつ持続可能なエネルギーを創造し、地球と人類の共存を可能にする。(後藤氏)

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