空中に映像を浮かび上がらせ、非接触インターフェースを実現する「パリティミラー」/KDDI ∞ Labo5月全体会レポ

前川聡さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

パリティ・イノベーションズは、空中に映像を浮かび上がらせる鏡「パリティミラー」を開発しています。パリティミラーは情報通信研究機構(NICT)の特許技術をもとに開発されました。前川氏自身もNICTの研究者であり、その職務発明をもとに起業したそうです。

パリティミラーは、凸レンズと平面鏡の性質を併せ持つ独自の光学素子です。これにより、鏡映像を空中に実像として結像させることができます。浮かび上がった映像を見るのに眼鏡等は不要で、鏡のように映すだけで高いリアリティの映像を体験できます。樹脂成形による低コストな量産が可能で、価格競争力があります。

パリティミラーの活用範囲は広く、近未来感の演出や実在感の付与に効果的です。例えば、キャラクターを空中に浮かび上がらせ、そこにいるかのような臨場感を創出できます。また、センサーと組み合わせることで、非接触のユーザーインターフェースを構築できます。これにより指の位置を検知し、触れることなくタッチパネルやスイッチの操作が可能になります。

パリティミラーは感染対策や汚れた手でも操作可能なシステムを実現します。さらに、ガラス越しでも映像を投影できるため、ドライブスルーでの注文などにも応用可能です。前川氏は、パリティミラーがARやMRの分野で革新をもたらす可能性についても言及しました。

現在のARやMRは、デバイスの上で現実を拡張しているに過ぎませんが、パリティミラーを使えば、現実空間に直接仮想の映像を重ねることができます。つまり、現実そのものを拡張できるのです。見えないものを可視化したり、実物とCGを組み合わせたりと、さまざまな表現が可能になります。(前川さん)

例えば、実物の人形からライトセーバーを出現させたり、コップから存在しない湯気を立ち上らせたり、人の周りに漫画的な効果線を表示したりできます。また、実物のスピーカーから発する音を可視化するなど、見えないものの可視化も可能です。

パリティミラーをベースに、ユーザーインターフェースや対話システム、立体化などの開発に取り組んでいます。また、現実拡張システムの受託開発にも取り組んでおり、実物と空中映像を組み合わせて現実そのものを拡張していくようなシステムも手掛けています。(前川さん)

さらに社内の工場や3DCADとの連携など、具体的な問い合わせも増えているとのことです。パリティ・イノベーションズは現在、量産に向けた連携や非接触UI、現実拡張システムを使いたいIP事業者や広告、イベント事業者との協業ニーズがあるそうです。事業拡大に向けてシリーズAでの資金調達も進めています。

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