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CMSから次世代コミュニケーション技術のプラットフォームへ——Drupalの父Dries Buytaert氏にインタビュー(ビデオ)

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先週 Acquia Labs の設立が発表されたばかりだが、その話題の渦中にある Dries Buytaert 氏が東京を訪れていた。世界経済フォーラム(ダボス会議)の、40歳以下のリーダーが集まる分科コミュニティ「Young Global Leaders」が東京・六本木ヒルズで開催されたこと、そして、「Drupal Summit Tokyo」に招かれたからだ。Drupal Summit Toky…

先週 Acquia Labs の設立が発表されたばかりだが、その話題の渦中にある Dries Buytaert 氏が東京を訪れていた。世界経済フォーラム(ダボス会議)の、40歳以下のリーダーが集まる分科コミュニティ「Young Global Leaders」が東京・六本木ヒルズで開催されたこと、そして、「Drupal Summit Tokyo」に招かれたからだ。Drupal Summit Tokyo は、Drupal の活用で知られるデジタルビジネスのコンサルティングファーム「CI&T」が開催した。

サンフランシスコに戻る前、Dries Buytart 氏は、Acquia のアジア太平洋地域を担当する David Peterson 氏と共に THE BRIDGE のインタビューに応じてくれた。彼は、Drupal や新たに設立した Acquia Labs を通じて何をしようとしているのか、その将来展望について熱く語ってくれた。

Acquia ではこれまでのウェブの技術を超えて、次なるステージを目指す姿勢を「moving beyond the page」というフレーズで表している。ニューヨークの地下鉄では、列車運行に関わるすべての情報を集めるバックエンドに Drupal を採用、オープン API を使って提供することで80種類以上のネイティブアプリが生まれている。駅に設置されたビーコンや列車に設置されたセンサーからの情報をもとにした、駅設置のスクリーンの表示にも Drupal が使われている。Tesla は自社Eコマースサイトのほか、ダッシュボードやモバイルアプリにも Drupal を採用。また、プロトタイプではあるが、Nike ではスマートシューズでは靴底センサーと連携させ、一定距離を走って靴が消耗したユーザに、スワイプするだけで新しい靴の購入を促せるエクスペリエンスの実現を考えている。これもバックエンドは Drupal だ。

確かに、Drupal 元来のコンテンツマネジメントシステム(CMS)の領域を超えた取り組みには思えるのだが、ここで上げた事例は、既存技術によるスクラッチ開発でも実現できることだ。Drupal がどのような違いをもたらすのかを Buytart 氏に尋ねると、Acquia Labs が考えているのはもっと複雑なことで、その極みの一つは contextual experiences(文脈に応じて最適化された体験を提供する)なのだという。

例えば、航空会社のウェブサイトを訪れたとしましょう。一般的に、航空会社は訪問者にチケットを販売しようとする。しかし、私がロストバゲージしたのだとしたら、あるいは、接続便を逃してしまったのだとしたら、私はウェブサイトを訪れた時に、新しい便を予約しようとはしない。航空会社に助けを求めたいのです。今日のウェブサイトはまだ、uncontextual です。

出版業界向けには、Acquia Lift という製品を出しています。ウェブサイトの訪問者について学習し、彼らのビヘイビアを学習し、どれを読んだか読んでないか、他のウェブサイトから来たかメーリングリストか来たかプッシュ通知から来たかなど、クロスチャネルからの流入に基づいたユーザ毎のプロファイルを作成します。そして、例えば貴方がスタートアップに興味はあるけど政治には興味がないとか、そのような好みを理解し、次にウェブサイトを訪問したときに、よりよいエクスペリエンスを提供するのです。

最近、巷で話題の Amazon Echo との連携事例もある。Gourmet Market という食料雑貨チェーンのウェブサイトでは、ユーザ側は対話型の買い物体験を楽しむことができる。このチェーン店舗は実在しないデモ用のものだが、コード数行のみでウェブサイトと Amazon Echo との対話を実現している技術はすでに確立されている。

我々の日常生活の中にも、今までウェブで提供されてきた情報を違った形で提供するヒントは、そこらじゅうにあふれているようだ。とあるアメリカの食料雑貨のチェーンでは、ウェブサイト上に2,000件におよぶ料理のレシピを掲載しておいたところ、そのウェブサイトへのアクセスは、家庭からではなく店舗を訪問している客からのものだったというのだ。これはそのチェーンにとっても想定外だったようだが、客の多くはレシピを見てから店舗に来て食材を買い求めるのではなく、店舗内で食材を見ながらレシピを探しているのである。このことに気づいた店舗は、商品売場にビーコンを取り付けてウェブと連携することにより、訪問客により便利な体験を届けることができるようになった。

35,000人ものユーザが、アクティブに Drupal のコミュニティに貢献してくれています。非常に大きなコミュニティです。私は、彼らが、新しいものを素早くアダプトすると確信しています。彼らに新しいことでエキサイトしてもらいたいのです。(Buytaert 氏)

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10月21日、渋谷 dots. で開催された Drupal Summit Tokyo 2016 から
Image credit: CI&T

今回東京で開催されたような Drupal のローカルイベントは、毎週末のように、世界中のどこかで100人から最大で2,000人規模を集め数件ずつ開催されているそうで、これは年間を通すと合数百件程度のイベントが開催されていることになる。Buytart 氏や Peterson 氏を東京に呼んだ CI&T のようなデベロッパと協業することで、世界各所のローカルコミュニティのつながりを深め、新たに動き始めた Acquia Labs のスキームで大企業やスタートアップとの提携関係を模索していきたいと語った。

コアプラットフォームの進化により、これまで CMS のコミュニティに参加していたデベロッパたちが、人工知能・対話型 UI・IoT など先端的な技術に、あたかも自動的にアダプトできてしまうのは興味深いコンセプトだ。数年後には、求人サイトにあるエンジニアの募集職種から「ウェブデベロッパ」という表現は消えてなくなってしまう日が来るのかもしれない。

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Acquia/Drupal と CI&T のチーム
左から:川渕洋明氏(CI&T Marketing & Communications)、アレンカル古賀氏(CI&T オペレーションディレクター)、Dries Buytaert氏(Drupal 創業者/Acquia Labs 共同創業者)、上田善行氏(CI&T ゼネラルマネージャー)、David Peterson 氏(Acquia アジア太平洋担当・ソリューションアーキテクト)
Image credit: 池田 将

Drupal創業者のDries Buytaert氏ら、ウェブの未来を研究するAcquia Labsを設立

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Drupal は、ウェブサイトの40サイトに1サイトの割合で、バックエンドのインフラストラクチャーを提供するオープンソース・フレームワークだ。今日(原文掲載日:10月19日)、Drupal 創業者の Dries Buytaert 氏と、彼のラボ責任者を務める Preston So 氏は、ウェブにおけるユーザ・エンゲージメントの未来について研究・開発することに特化した Acquia Labs を公表…

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右から:Dries Buytart 氏(Acquia の CTO 兼創業者で Drupal の発明者)、Preston So 氏(Acquia Labs の責任者)
Image credit: Acquia Labs

Drupal は、ウェブサイトの40サイトに1サイトの割合で、バックエンドのインフラストラクチャーを提供するオープンソース・フレームワークだ。今日(原文掲載日:10月19日)、Drupal 創業者の Dries Buytaert 氏と、彼のラボ責任者を務める Preston So 氏は、ウェブにおけるユーザ・エンゲージメントの未来について研究・開発することに特化した Acquia Labs を公表した。彼らの視点から見ると、次なるウェブには「ブラウザを必要としない時代」がやってくるようだ。

VentureBeat とのインタビューで、Buytaert 氏と So 氏は、彼らの会社がウェブを、リアルな世界やデジタルな世界と融合できるものにしたいと語った。

ウェブページのさらに向こうへと動き始めている。Drupal にとっては、我々自身が再発見することについて考える必要があった。(Buytaert 氏)

Red Hat が Linux ユーザをサポートしてきたように、Acquia は Drupal ウェブサイトのユーザに商用サポートを提供してきた。Drupal が世に出た16年前から、Acquia の影響力は広がり続け、現在ではイノベータが次世代ウェブの礎を築くのを魅了したいと考えるようになった。分野としては、会話型コンピューティング、位置ベースコンピューティング、contextual experiences(文脈に応じて最適化された体験を提供する)、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などだ。

非常に野心的な話に聞こえるかもしれない。しかし、Drupal のコミュニティは、35,000人以上のアクティブな開発支援者によって支えられている。この研究を支援してくれるであろう人が、非常に多くいることになる。

あまり目立たないようにはしているが、Acquia はすでにアメリカで最も成長の速い民間技術会社の一つだ。我々はウェブの歴史上、非常に面白い時代にいる。非常に多くの主要技術が、一つになろうとしている。(Buytaert 氏)

ボストンに拠点を置く Acquia は、8年間で750名の従業員を抱えるまでに成長した。世界がウェブページの向こうへと動く中、So 氏と Buytaert 氏は次のステップに進む準備が整ったと語った。彼らは、機械学習、IoT、センサー、対話型ロボット、音声アシスタントのような技術を使った、デジタル体験のための新しいプラットフォームを構築するときが来たと考えている。

例として、Buytaert 氏は食料品店に行って、サーモンの料理レシピを手に入れるケースを紹介した。店舗に設置されたビーコンが客の意向を検知し、その料理に必要な食材がどこにあるのかを教えてくれる。スマートフォンにあなたがピーナッツアレルギーであることが登録さえていれば、ピーナッツを含むレシピはお勧めしない、といった具合だ。帰宅すると、Amazon Echo が料理の進め方を読み上げてくれるだろう。

これが、我々が Acquia Labs を設立した理由だ。ウェブサイトは、だんだん必要の無い存在になってきている。コンテンツの消費から、コンテンツとの対話へと変化したいのだ。(Buytaert 氏)

So 氏は Acquia Labs では、Acquia の顧客に対して、インターネットが抱える最大かつ最も興味深いユーザエンゲージメントの問題を解決するため、イノベータ、複数言語をコーディングできる人たち、新しいことを試してみる人たちで、緊密に連携のとれたチームが構成されている述べた。

将来その向こうにあるものを、我々は見ている。(So 氏)

過去二十年間にわたり、ウェブは、日常生活のどこにでもあり、重要な位置を占める存在へと進化してきた。政府は、市民の日常を便利にするスマートシティを作るべくデジタル技術を使い、ブランドは質問に迅速に回答して顧客満足度を上げるべく人工知能ボットを駆使し、製品メーカーは洗濯機などの家電に技術を埋め込み、洗剤が切れる前に警報を出したり自動補充したりできるようにした。Acquia Labs はあらゆるチャンネルを模索し、よりよいインタラクティブなウェブ・デジタルプラットフォームのための、新しいツールやソリューションを作り出す R&D センターとして運営される。

我々はウェブの次の波へと向かっている。それは根本的に、オンラインであることの定義を再発明することになるだろう。ウェブサイトは時代遅れのものなるのか? 我々は、コンピュータと対話するだけになるのか? 多くの新しいデバイスから、我々はどのように情報を得ることになるのか? このような問題から目をそらすなら、今がウェブデベロッパになるのに最高の時間と考えられるだろう。

Acquia Labs の目標は、ブラウザ時代のさらに向こう、ウェブのユーザ体験やユースケースを再定義する、R&D 施設の機能を提供することだ。(Buytaert 氏)

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Acquia Labs は、ウェブをデジタル&リアル世界とシームレスにつなげようとしている。
Image Credit: Acquia Labs

はじめに、二人は、消費者が企業とデジタルに対話する方法が変化していく問題を捉えるべく、イノベーションの3つの分野にフォーカスする計画だ。その分野には、Amazon Echo から Apple Siri まで、あらゆる対話型インタフェースが含まれる。これらの対話型インターフェースは、我々が情報をオンラインで得る上で新しい標準になりつつある。Acquia Labs は最初のプロジェクトとして、Drupal を使って、Amazon Echo によるテキスト音声化テクノロジーを構築している。

音声が扱えるコネクターによって、ユーザは Alexa と話をすることで、ブランドやコンテンツと新しい方法で対話できるようになるだろう。将来的には、このしくみを Drupal で構築されたすべてのウェブサイトに導入する計画だ。

Acquia Labs は、AR や VR の開発にも注力している。モバイルのみならず、Oculus などの新種の要素は、実生活の世界の上に重ね合わせたデジタルのレイヤーを作り出している。デバイスを問わず、VR や AR ディスプレイに情報を表示することは、Drupal が自ら取り組むことができる、コンテンツマネジメント領域への挑戦である。

頭に HoloLens を被って店内を歩き回ると、店内で見た商品の情報が得られるようになるだろう。このデバイスでユーザの意向や周囲の状況を把握する体験を手に入れれば、現実があらゆる物事を変化させるだろう。芸術作品にスマートフォンをかざせば、その作品についてさまざまなことがわかるようになる。まるで、音声ガイドツアーのように。(So 氏)

同社は例として、外科医が手術の最中であっても、VR デバイスを通じて Drupal の接続されたマシーンから、ガイダンスやバイタルデータを得ることができるようになるだとうと述べた。Acquia Labs のチームは、このようなコンテンツマネジメントの問題に挑戦し、新種のデジタル体験を日常生活にもたらそうとしている。

最後に、Acquia Labs は、contextual experiences についても展望を持っている。同社によれば、我々が何を欲しているかを自分で思っている以上に正確に、コンピュータはが理解できるようになりつつあるという。Google Now や新しい iOS 10 待受画面のカスタマイズプッシュ通知のような技術は、ユーザが置かれている環境を理解し、ユーザが必要とする情報を届けるものだ。Acquia Labs は、同社の顧客が機械学習を使って、より的確かつスマートなカスタムユーザ体験を構築できるよう、技術を開発する計画だ。

Acquia Labs は2016年11月1日〜3日、ボストンの Park Plaza Hotel で開催される年次カンファレンス「Acquia Engage」に出展する。Dries Buytaert 氏と Preston So 氏は、テック業界におけるトレンドやこの数十年間の変化に対する洞察を語る予定だ。より具体的に言えば、二人は、企業がデジタルを使って消費者にリーチする方法が変化していく分野や、ブラウザを使わないデジタル体験のような新しいデジタルトレンドにおける専門家である。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】