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SORACOMはどうやって共創環境を立ち上げたのか – ソラコム 玉川憲氏 Vol.2

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 グループ入りを果たしたIoTプラットフォームのソラコムは、KDDIとの共創によって買収時に8万回線だった契約数を200万回線にまで押し上げることに成功します。前回のインタビューではグループ入りという選択肢を選んだスタートアップの成長に必要な「余白」の考え方と、そこからさらに視座を上げる「スウィングバイ…

ソラコム 代表取締役社長 兼 共同創業者 玉川 憲氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

グループ入りを果たしたIoTプラットフォームのソラコムは、KDDIとの共創によって買収時に8万回線だった契約数を200万回線にまで押し上げることに成功します。前回のインタビューではグループ入りという選択肢を選んだスタートアップの成長に必要な「余白」の考え方と、そこからさらに視座を上げる「スウィングバイ・IPO」の考え方がどのようにして生まれたかについてお伺いしました。

2回目となる今回は、ソラコムの立ち上がりについてです。SORACOMは独自のエコシステムをパートナー企業や開発者たちと構築しています。ゼロからプラットフォームを作るというのはどういうことか、引き続き玉川さんにお話を伺います。

ソラコムはどうやって共創環境を作ったのか

玉川さんたちがAWSの立役者であったことはその後のソラコムの信用に大きく寄与したのでは

玉川:この件についてのアンフェア・アドバンテージはあったと思います。そういう実績のあるチームだったので、なんかやってくれるだろう、という期待感や信頼関係というか、変なことはしない人たちだよね、というのは凄くあったと思いますね。

ただ、会社始めた時って100%の確信のようなものはありませんでした。10人ぐらいの頃ですか、初期のメンバーで話していたのは「正直できると思ってるんだけどできなかったらごめんなさい、でも僕ら食っていけるよね」と。AWSとかもやっていたし、むしろ自分たちで食べていける人だけだったので、リスクを取りに行きました。

2015年9月にイベントで一気にお披露目をしたわけなんですが、そのタイミングで既にパートナーが10社、お客さんもその時点で30社ぐらい利用いただいてたんですね。この辺りはアンフェア・アドバンテージの力だったと思います。

少し巻き戻して、そもそもソラコムというプラットフォーム自体を作る工程はどこから始まったのですか

玉川:一番最初はやっぱりプレスリリースですね。(前職のAmazonでは)伝統的に仮想のプレスリリースを書くんですが、僕は夜中に酔っ払って書いたんです(笑。で、これがなんだかもっともらしく凄そうに見える。やった方がいいんじゃないか、みたいな始まりですね。そこがやっぱり駆動力になってて、じゃあとりあえずとプロトタイプにして一番最初に投資家の方に見せたら絶賛されたんです。

ただ、その投資家に言われたのが「玉川さん、デザインは見直した方がいいよ」、と(笑。

ここから話が広がった

玉川:ソラコムを起ち上げ、お客さんや事業パートナーさん、通信キャリアのパートナーさんにプライベートベータとして持っていったんです。そしたら同じようになんか凄そうだぞと感じていただけたようで、ソラコムさん、まあちょっと一緒にやりましょうか、そんな雰囲気になっていきました。

順風満帆に見えて、でも実際は苦戦していたんですよね

玉川:やはり、ちょっと検討しますみたいなのは多かったですね。プライベートベータの時期は、やっても返事もくれないこともありましたし。ただ、やはりアーリーアダプター層、特に前職でコミュニケーションしていたAWSのコミュニティの方々は心強かったです。彼らは新しくても良いものであればサポートする精神に溢れてるんですよね。

例えばAWSを最初に使う人ってやっぱりセールスフォースも最初に使った人なんですよ。こういう方々の目利き能力はすごいものがあって、いいものはいい、むしろリスクを取って使うことの価値を知ってるんですよね。一般的に普及した後にフォロワーとして使っても別に競争力にはならないじゃないですか。リスクのある状態で使い始めるからこそ競争力になるっていうことを直感的に分かってるんですよね。

となると初期のコミュニティをどう作るか、これすごく重要なポイントになりますね

玉川:実際、ソラコムも最初からコミュニティーを立ち上げさせて貰ってました。大半のユーザーさんもパートナーさんもこういったコミュニティーから出てきてるんですよ。

また、本当に最初から単独ではやってないと言うか、僕らって通信のコアの部分をクラウドで作る会社じゃないですか。その時点でまずAWSに凄い依存しているんです。さらに事業をやろうと思った時に通信の基地局などをお借りしなきゃいけないので、通信キャリアさんにも最初からすごく依存してる。

お客さんでありパートナーである、でも一部では競合するかもしれない。難しい舵取りですね。しかも様々な局面でメンバーがその交通整理をしなければいけないわけですよね

玉川:ソラコムを立ち上げた時に、チームが尊ぶべき行動様式をまとめたリーダーシップステートメントっていうのを作ったんです。その中にライカビリティ(好きになってもらえる能力)というのがあって、我々はプラットフォームビジネスを指向しており、あらゆる企業や個人がお客様でありパートナー様でありえる、だから誰からも好かれるようなやり方を模索しようと。

Likability

一緒に働いて楽しい人に – どんなときもユーモアを忘れず、周囲を力づける。フェアでオープンなプラットフォーム事業を支える一員として、常にふさわしい行動をとる。引用元:ソラコムのリーダーシップ・ステートメントより

仮想のプレスリリースを現実のものとし、コミュニティを中心に垂直立ち上げに成功しました。問題はそこからですよね。どうやってこのエコシステムを回していくのか。そもそも玉川さんのプラットフォームに対する見方から少しお話いただけますか

玉川:プラットフォームの特徴ってネットワーク効果ですよね。多くのお客様やパートナーさんが集まってくると、このエコシステムがどんどん強くなる。僕らが最初にやろうとしていたことっていうのは、誰もが必要なIoTにおける通信のインフラストラクチャ部分を凄く使いやすい形にして提供することだったんです。これをみなさん自身がやろうと思ったらすごく大変なわけで、英語で言うところの「ヘビーリフティング・ワーク(泥臭い仕事)」を代行すればみんなハッピーなので、その泥臭いところをできるだけ巻き取ろうと。

大変というか、圧倒的な技術力やチームに対するアンフェア・アドバンテージのような要素もなければ、なかなか任せてもらえない部分です

玉川:さらに僕らはそこを民主化してみんなに使ってもらおう、と先に進んだんです。「SORACOM」というのはそういったインフラ自体のプラットフォーム事業なんです。

最近は「つなぐを簡単にする」っていう言い方をしているんですが、やっぱり時代が凄く移り変わってきていて、例えば2000年ぐらいからインターネットが面白くなってきたじゃないですか。それをさらに押し上げた契機ってやっぱりAWSのようなコンピューティングのインフラ自体のプラットフォームが出てきたあたりだと思うんですよね。

面白いことをできる人がより身軽に、能動的に行動できるようになった

玉川:パッションを持っていて、こんなサービスを作ってみたいな、という人がすぐそのサービスを試しに作れるようになったんです。それで世の中がどんどん良くなっていった。ただ、2012年とか13年頃でしょうか。ひと通りのサービス化されてきたみたいな感じで新しいウェブサービスの出現にも若干こう陰りが出てきて。

アプリ経済圏が出てきたり、スマートフォンシフトが発生して多様性が出てきた頃ですよね

玉川:そうすると、各業界のアーリーアダプターと言われる方々がWebサービスだけでは物足りず動き出した感があって、さらに当時は「IoT」っていう言葉が使われ始めた頃でした。例えば色んなものから取れるデータを集めて機械学習できれば、モノとモノが繋がるんじゃないか、でもそれってどうやるんだろうといった課題が出てきていたんです。IoTにおける皆にとって大変なヘビーリフティング・ワークのポイントが見えてきて、じゃあそれを僕らが肩代わりするようなサービスが作れるんじゃないかと。(次回につづく)

関連リンク:共創が生み出した「スウィングバイIPO」とはなにか – ソラコム 玉川憲氏 Vol.1

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ネコの見守りデバイス&サービス開発のRABO、プロダクト第2弾「Catlog Board」を発表

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ネコの首に装着できるウェアラブルデバイスとアプリからなるソリューション「Catlog(キャトログ)」を開発する RABO は5日、ネコのトイレの下に挿入することで、猫の体重と尿量・回数を自動で記録するデバイス「Catlog Board(キャトログボード)」を発表した。本日からクラウドファンディングを開始し、商品発送は2021年7月となる予定。一般販売予定価格は1台8,800円(税抜)。 ニュースレ…

ネコの首に装着できるウェアラブルデバイスとアプリからなるソリューション「Catlog(キャトログ)」を開発する RABO は5日、ネコのトイレの下に挿入することで、猫の体重と尿量・回数を自動で記録するデバイス「Catlog Board(キャトログボード)」を発表した。本日からクラウドファンディングを開始し、商品発送は2021年7月となる予定。一般販売予定価格は1台8,800円(税抜)。

Catlog Board はネコの体重と尿量など排泄物の量やトイレの回数を自動記録し、体重変化や泌尿器系のトラブルのサインを検知するボード型デバイス。発売済の首輪型ウエアラブルデバイス「Catlog ペンダント」でも行動変容から健康上の懸念を検知することは可能だが、Catlog Board と合わせ排尿の様子をダブルで検出することで、多飲多尿の兆候をより高い精度で観測できる。

具体的には、ネコの水飲み回数を首輪型デバイスで、体重・尿量・尿回数を今回発表のボード型デバイスで検出することで、ネコの健康管理に加え、腎臓病などの早期発見に役立てられる可能性があるとしている。多頭飼いにも対応し、複数ネコが1つのトイレを共有した場合でも AI がどのネコかを自動識別し、Catlog ペンダント と Catlog Board が通信することで識別精度を上げる。

ネコは神経質な動物であるため、トイレの形状や大きさが変わるだけでも排泄をしなくなる(実際には、別の場所で粗相するようになってしまう)。このため、RABO では、従来のトイレを維持したままデータが取得できるよう、Catlog Board をトイレ下に挿入する形を採用した。水分を扱うトイレに近い場所であることから、電源コードはつけず、バッテリで3ヶ月程度稼働するようにした。

Catlog ペンダントや Catlog Board から収集されたデータは、一元的に Catlog のモバイルアプリで見られるようになる予定。現在は「食事」「運動」「睡眠」など6種類に行動を分類しており、今月中には新たに「水飲み」もリリースも行動検知できるようにする予定。RABO では現在、「嘔吐」など異常行動の検知もできるように現在開発を進めているという。

Catlog ペンダント、Catlog Board と続き、今後、さらなるハードウェア展開を加速する可能性も想像できるが、RABO では蓄積された膨大なビッグデータによる診療や予防医療領域、あらゆるネコに必要なモノの選択に連携していく計画としている。Catlog を利用するユニーク猫数は2020年1月現在1,000匹超で、記録された行動データの累積は3億件を突破。

RABO は、愛猫家であり、東京海洋大学大学院の博士前期課程でバイオロギング(行動生態計測)を研究していた伊豫愉芸子(いよ・ゆきこ)氏らにより2018年に設立されたスタートアップ。2019年4月にシードラウンド、2020年1月に直近ラウンドを実施し、これまでに累積で1億数千万円を調達している。

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NvidiaはなぜArmを買った:取引の詳細と「ある保険」(2/2)

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(前回からのつづき)この取引が承認されれば、かつての大手ライバル企業がNvidiaの顧客になる。NvidiaがArmを独立した子会社として扱い、プロセッサ事業のライバルとオープンな顧客関係を継続することは極めて合理的だ。一方のArmには、Armのライセンス料に飽き飽きしていた企業が支持をし始めているロイヤリティフリーのRISC-Vアーキテクチャなどのライバルが存在している。 この買収劇は、Nvid…

Arm TechCon 2019でステージに立つArm CEOのSimon Segars氏/Image Credit: Dean Takahashi

(前回からのつづき)この取引が承認されれば、かつての大手ライバル企業がNvidiaの顧客になる。NvidiaがArmを独立した子会社として扱い、プロセッサ事業のライバルとオープンな顧客関係を継続することは極めて合理的だ。一方のArmには、Armのライセンス料に飽き飽きしていた企業が支持をし始めているロイヤリティフリーのRISC-Vアーキテクチャなどのライバルが存在している。

この買収劇は、Nvidiaの将来的なプロセッサ技術へのアクセスを保証するものだ。

逆にもし、Armがライバルの手に落ちれば、Nvidiaはここから締め出される可能性がある。そして、Nvidiaは、Qualcomm、Intel、AMDなどのライバルたちと激しく競争している。特に、AIやモバイルプロセッサへの取り組みのために重要なキーとなるような知的財産を管理している企業と信頼関係が結べないようなケースにおいて、Armという会社を保有するということは一種、保険のような役割を果たすことになるのだ。

Moor Insights & Strategyでアナリストを務めるPatrick Moorhead氏は今回の買収劇をこう評価する。

「NvidiaとArmの取引は400億ドルという金額ベースで最大の半導体企業の買収という点だけでなく、今後、大きな影響力を持つ取引になると予想しています。Armが活躍していて、かつNvidiaがまだ参入していない、もしくは逆にNvidiaが成功していてArmがそうでない分野を相互活用するという点で、相性はピッタリです。

Nvidiaは、Armに信じられないほどの資本をもたらすことになるでしょう。ソフトバンクの買収以来、Armは市場での存在感と競争力を高めてきました。ソフトバンクの投資により、Armはデータセンター、自動車、IoT、ネットワーク処理の各市場への進出が可能になったのです。そして私はNvidiaはArmが最も得意とすること、つまり世界的に中立性の高い方法でIPを作成し、ライセンシングすることをArmに任せるという約束をNvidia側が堅持する限り、Armをさらに強くすることができると信じています」。

この取引はNvidiaのボトムラインに利益をもたらすと予想されている。Armは利益を上げており、すぐにNvidia自身の純利益に貢献し始めるはずだ。ソフトバンクは引き続きArmの株式を保有するが、その保有比率は10%未満となる見込みとなっている。

Huang氏は声明の中で、AIを実行する数兆台のコンピュータがこれまでの「人」が操作してきたインターネットの数千倍の規模の「モノ」のインターネットを生み出すことになるだろうと述べている。彼はまた、今回の買収劇はその時代に向けてNvidiaの立ち位置を明確にすることになるだろうとも付け加えた。

Arm TechCon 2019でステージに立つArm CEOのSimon Segars氏/Image Credit: Dean Takahashi

「これは、何十億ものチップを出荷している数千人の開発者、そして最終的には何兆ものチップを出荷することになる数千人の開発者にリーチするための素晴らしい方法になるだろう」。

Segars氏によると両社は、エネルギー効率の高いコンピューティングが気候変動からヘルスケアに至るまでの問題にいかに対処するかというビジョンを共有しているという。このビジョンを実現するためには、ハードウェアとソフトウェアの新しいアプローチが必要になるそうだ。Nvidiaは、Armのブランドと名前を維持し、英国には法人として残ることになるとしている。

Nvidia、ソフトバンク、Armの取締役会の承認を得た本取引の条件に基づき、Nvidiaはソフトバンクに対し、Nvidiaの普通株式215億ドルと現金120億ドルの合計額を支払うことになる。決算時に発行されるNvidiaの株式数は4,430万株で、過去30日に渡る取引日のNvidiaの普通株式の終値の平均値を参考して決定される。さらにソフトバンクは、Armの特定の業績目標を満たすことを条件に、最大50億ドルの現金または普通株式を受け取る条件も付けている。

またNvidiaはArmの従業員に15億ドル分の株式を発行する。Nvidiaはこの取引の現金部分をバランスシート上の現金で調達する意向だ。この取引にはArmのIoTサービスグループは含まれない。というのもHuang氏によると、IoT事業は約1億ドルの収益があるもののデータ重視の投資事業であり、Arm事業のコアコンピューティング部分には大きな影響はないとその立ち位置を説明した。加えてSegars氏は、同事業のその部分を分社化する計画を進めていくと述べた。

ソフトバンクの傘下ではArmは何千人ものエンジニアを雇っていたが、Segars氏はそれは継続されると述べている。またSegars氏は、中国はArmのビジネスにとって重要な要素であり、今後もそうなると予想している。かつ、Huang氏はNvidiaによるMellanoxの買収を審査したように、中国の規制当局が今回の取引を審査することになるだろうとも述べている。

Huang氏はこの一連の作業が終わる見通しについて、「諸課題に取り組むため、この取引を完了するまでに数カ月を要するだろう」と語った。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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NvidiaはなぜArmを買った:ソフトバンクが400億ドルで売った「ARM」とは(1/2)

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Nvidiaは、ソフトバンクからプロセッサアーキテクチャ会社のArmを400億ドルで買収することを認めた。この買収は、昨日(編集部注:原文の掲載日は9月13日)のWall Street Journalの報道を含めて数週間にも及ぶ憶測の後にようやく現実のものとなった。 カリフォルニア州サンタクララに本社を置くグラフィックスおよびAIチップ・メーカーであるNvidiaは、今回の買収でArmの膨大なコン…

NvidiaのCEO、Jensen Huang氏。RTX 3080を披露/Image Credit: Nvidia

Nvidiaは、ソフトバンクからプロセッサアーキテクチャ会社のArmを400億ドルで買収することを認めた。この買収は、昨日(編集部注:原文の掲載日は9月13日)のWall Street Journalの報道を含めて数週間にも及ぶ憶測の後にようやく現実のものとなった。

カリフォルニア州サンタクララに本社を置くグラフィックスおよびAIチップ・メーカーであるNvidiaは、今回の買収でArmの膨大なコンピューティングエコシステムにより、人工知能に関する専門知識が集約されると述べている。英国ケンブリッジに拠点を置くArm社は6,000人以上の従業員を抱えているが、Nvidia社はその倍以上、1万3000人以上の従業員を擁する。

ソフトバンク、100億ドルの大打撃

ソフトバンクは2016年にArmを320億ドルで買収し、株式を非公開化した。当時、ソフトバンクの孫正義CEOは、AIが集団的に人間を超える知能を持つと予測される「シンギュラリティ」に向けて準備を進めていると語っていた。しかし、ソフトバンクはパンデミックの影響や、UberやWeWorkへの悪あがきの結果、数十億ドルの損失を被り資金難を招いてしまった。

Nvidiaは、英国に世界レベルのAI研究教育センターを設立してArmの影響力を拡大し、Arm・Nvidiaを搭載した研究用のAIスーパーコンピュータを構築すると公表している。またNvidiaはArmの顧客との間でArmのオープンライセンスポリシーを継続すると述べている。Armはスマートフォンからタブレットコンピュータ、モノのインターネットセンサー(Internet of Things)まで、あらゆるものに対応したチップを昨年220億個以上出荷した一方、対するNvidiaは約1億個の出荷に留まっている。

NvidiaのCEOであるJensen Huang氏は従業員への手紙の中でこのようにメッセージを伝えている。

「Armのビジネスモデルは素晴らしい。我々は、そのオープンなライセンスモデルと顧客の中立性を維持し、世界中のあらゆる業界の顧客にサービスを提供し、NVIDIAの世界をリードするGPUとAI技術でArmのIPライセンスポートフォリオをさらに拡大していく」。

同氏は今回の契約により、Nvidiaのプログラマーへのリーチが現在の200万人から1,500万人以上に拡大すると語っている。

カンファレンス・コールでHuang氏は、オープンライセンシングポリシーを維持するとの約束を繰り返した。NvidiaとArmは補完関係にあるとし、その結果、規制上の制約にぶつかることは想定していないと力説する。また、Nvidiaがスマートフォン市場に参加していないのに対し、Armはスマートフォン市場に非常に力を入れていることも付け加えている。

NvidiaのSeleneはトップ10のスパコン。NvidiaはArmを使った新しいスパコンを作る予定/Image Credit: Nvidia

AppleはMacコンピュータの次期モデルでIntelプロセッサの代わりに、ARMベースのプロセッサを使用する計画だ。Huang氏は、NvidiaがArmの事業計画を加速させることができるとも語っている。カンファレンス・コールの中でArmのCEOであるSimon Segars氏は、Armの価値はチップ・デザインを誰にでも提供するオープンさにこそあり、そうでなければ「大きな破滅」が待ち受けることになると指摘している。

Segars氏はさらに「時間をかけて証明するしかない。今日は私たちの意思を明確にする日だ」とも付け加えている。

改めて説明するが、このArm社はチップ自体を作っているわけではない。

ARMプロセッサアーキテクチャのお世話役であり、企業がこのライセンスを取得して自社のチップに使用する設計を作成し、あらゆる電子機器に使用しているのだ。今年の初めArm社は、そのライセンシーを伴ったARMデザインのチップ出荷が1,800億個以上に拡大したことを伝えている。

一方、買収したNvidiaはライバルとなるIntelやAMDなどと熾烈な競争を繰り広げてきた。AppleはiOSデバイスのグラフィック処理コンポーネントを作るためにImagination Technologiesの技術を使っており、一方のMac側ではNvidiaの大口顧客にはなっていない。NvidiaはPC業界の巨大企業になるため競合との激しい戦いを続け、売上高130億ドル(12カ月ベース)で、市場価値は3,300億ドルと成長してきた、時価総額についてはIntelの1,440億ドルよりも高い評価を受けている。(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

※記事初出時、タイトルを4000億ドルとしましたが400億ドルの誤りです。訂正させていただきます

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シンガポールのIoTスタートアップuHoo、コロナ禍の室内空気監視需要増で新たな資金を調達

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シンガポールを拠点とする室内空気品質センサー開発企業 uHoo は15日、Wavemaker Partners がリードしたラウンドで資金調達を実施したと発表した。調達金額は開示されていないが、当初調達想定金額の50%を上回る募集があったという。 また、シンガポール企業庁 Enterprise Singapore の他に、東南アジアのオンライン不動産大手 PropertyGuru Group の共…

uHoo
Image credit: uHoo

シンガポールを拠点とする室内空気品質センサー開発企業 uHoo は15日、Wavemaker Partners がリードしたラウンドで資金調達を実施したと発表した。調達金額は開示されていないが、当初調達想定金額の50%を上回る募集があったという。

また、シンガポール企業庁 Enterprise Singapore の他に、東南アジアのオンライン不動産大手 PropertyGuru Group の共同創業者である Steve Melhuish 氏をはじめとする、テクノロジーや不動産業界の既存投資家や新規投資家もこのラウンドに参加した。Steve Melhuish 氏 は、Wavemaker のベンチャーパートナーでもある。

今回の資金は、uHoo が〝健康的な建物〟のソリューションに対する需要の大幅増に対応し、雇用の増加による成長の加速、革新的な新製品やサービスの開発に充てられる予定。

「ウイルスインデックス」
Image credit: uHoo

2014年に Dustin Jefferson S. Onghanseng 氏と Brian Lin 氏によって設立された uHoo は、空気品質センサーデバイスをデザインした。9つの空気品質パラメータをモニターすることができ、モバイルアプリを介してデータ、アラート、洞察、推奨事項を提供する。

同社はプレスリリースで、北米、ヨーロッパ、アジアの政府、学校、病院、ホテル、モール、キッチン、オフィス、家族などの「強い健康的な建物の需要」が後押しする形で、過去12ヶ月間に導入された台数は以前に比べ約5倍の増加があったとしている。

また、同社は新型コロナウイルスや、健康とウェルビーイングへの注目度の高まりにより、売上が当初の2020年の計画を上回ったと述べている。2020年6月、uHoo は新型コロナウイルスの生存率と空気感染リスクをリアルタイムで確認できる「ウイルスインデックス」を発表した。

Uhoo の取締役に就任する Melhuish 氏は、次のように述べている。

空気の質、健康、ウェルビーイングは多くの人にとって重要な関心事となっており、人々は特に室内で過ごす時間が増え、徐々に職場や学校に戻ってくるようになってきている。これは、uHoo が2020年に世界的に多くの優良ブランドや政府機関のクライアントを獲得したことからも明らかだ。

<関連記事>

同社は、世界的に健康と安全への関心が高まっていることから、急速な成長が期待されている1,800億米ドルの大規模な空気品質市場に取り組んでいる。

健康と安全は、雇用主、家主、建物所有者の大多数から、最も長い間無視されてきた。新型コロナウイルスの感染拡大は、この問題にスポットライトを当て、健康的な職場と健康的な建物に向けた動きを加速させた。健康的な職場と健康的な建物は、もはや空虚なバズワードではなく、雇用者や家主に求められる最低限のこととなった。(Onghanseng 氏)

uHoo は直近の数ヶ月間で 、データインサイト、ダッシュボード、アプリ、アラート、ビル管理システムとの連携などのソリューションを提供するため、世界中のさまざまな業種に顧客基盤を拡大してきた。

顧客には、シンガポールの不動産デベロッパ大手である Capitaland や CDL、シンガポールの政府系投資会社 GIC、香港の建設大手 Gammon Construction、アムステルダムのスキポール空港、HK Baptist University(香港浸会大学)、オランダ、アメリカ、オーストラリアの各政府などがいる。

2018年、uHoo は Wavemaker Partners がリードし Seeds Capital が参加したブリッジラウンドで、数百万米ドルを調達した。

【via e27】 @e27co

【原文】

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イーロン・マスク氏のNeuralink、チップを脳に埋め込んだ豚を使い技術開発の進捗状況を披露

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カリフォルニア州フリーモントにある Neuralink 本社からオンラインでストリーミングされたカンファレンスの中で、Elon Musk 氏が出資する同社の科学者たちが進捗状況のアップデートを行った。今から1年以上前、ブレイン・マシン・インターフェースを作ることを目標に2016年に設立された Neuralink はそのビジョン、ソフトウェア、移植可能なハードウェア・プラットフォームを最初に明らかに…

Neuralink の外科手術ロボットのコンセプトイメージ
Image Credit: Woke Studios

カリフォルニア州フリーモントにある Neuralink 本社からオンラインでストリーミングされたカンファレンスの中で、Elon Musk 氏が出資する同社の科学者たちが進捗状況のアップデートを行った。今から1年以上前、ブレイン・マシン・インターフェースを作ることを目標に2016年に設立された Neuralink はそのビジョン、ソフトウェア、移植可能なハードウェア・プラットフォームを最初に明らかにした。この日議論されたことのほとんどは驚くべきものではなかったが、新型コロナウイルスの感染拡大が Neuralink の目標に向かって歩みを進めることを妨げていないことを明らかにしてくれた。

Neuralink のプロトタイプは、一度に多くのニューロンからリアルタイムの情報を抽出することができる、と Musk 氏はストリーミングで繰り返し述べた。ライブデモでは、豚の脳からの読み取った値が画面に表示された。豚が鼻で物体に触れると、Neuralink の技術(2ヶ月前に豚の脳に埋め込まれた)によって捕捉されたニューロンがテレビモニター上に視覚化された。それ自体は斬新ではないものの(KernelParadromics など多くの企業も、頭蓋骨の中にある脳読み取りチップを開発している)、Neuralink はミシン式の手術ロボットを使って、組織に挿入された曲げ折り可能なセロハンのような導電性ワイヤーを活用してい点でユニークだ。Musk 氏によると、7月に「Breakthrough Device」の指定を受け、FDA(米国食品医薬品局)と協力して麻痺者を対象とした将来の臨床試験に取り組んでいるという。

Neuralink の共同創立者である Tim Hanson 氏と Philip Sabes 氏は、ともにカリフォルニア大学サンフランシスコ校出身で、カリフォルニア大学バークレー校教授の Michel Maharbiz 氏と共同でこの技術を開発した。Musk 氏はこの日デモしたバージョンを「V2」と呼んでおり、昨年発表されたものよりも改善されている。Musk 氏は、全身麻酔を使わずに1時間以内に人間の脳内に埋め込むことがいつか可能になると確信している。彼はまた、患者が Neuralink のアップグレードや使用中止を希望する場合は、簡単に除去することができ、永続的な損傷を残すこともない、とも語った。

V2

Neuralink はミシンのデザインに関し、サンフランシスコに拠点を置くクリエイティブデザインコンサルタント会社 Woke Studios と協業した。Woke は1年以上前に、Neuralinkが2019年に発表した耳の後ろに配置するコンセプトモデルで Neuralink と協業を始め、2社はその後まもなく手術用ロボットのために再提携した。

Woke のヘッドデザイナーである Afshin Mehin 氏は、このマシンで脳の全体を見ることができると VentureBeat に電子メールで語った。

デザインのプロセスは、Woke Studios のデザインチーム、Neuralink の技術者、手術そのものについてアドバイスを与えてくれる一流の外科コンサルタントとの緊密なコラボレーションだった、

我々の役割は、特に、手術を行うことができる既存の技術を活用し、医療アドバイザーからのアドバイスや、この種の機器の医療基準に照らし合わせて、脳移植を行うことができる、威圧感のないロボットを作成することだった。(Mehin 氏)

マシンは3つのパーツで構成されていル。自動化された手術器具と脳スキャンカメラとセンサーを収容する「マシン頭部」に患者の頭蓋骨を固定する。最初に装置が頭蓋骨の一部を取り除き、術後に元の位置に戻す。その後、コンピュータビジョンのアルゴリズムは、血管を避けながら、5ミクロンのワイヤーと絶縁体の束を含む針を脳内に6ミリ誘導する。(Neuralink によると、このマシンは技術的には任意の長さに穴を開けることができるそうだ)。これらのワイヤー(人間の髪の毛(4〜6μm)の直径の4分の1)は、異なる場所と深さで一連の電極にリンクする。最大容量では、マシンは毎分192個の電極を含む6つのスレッドを挿入することができる。

マシンの頭部の周りに磁石で取り付けられバッグは一回使い切りによって無菌性を維持し洗浄が可能、また内側のファサード取り付けられたウイングにより、挿入中に患者の頭蓋骨が所定の位置に保つ。マシンの「本体」は全体構造の重量を支えるべくベースに取り付けられているが、本体にはシステム動作を可能にする他の技術を内包している。

Mehin氏 は、プロトタイプが診療所や病院で使用されるかどうかについての質問には答えなかったが、このデザインが広範囲 での使用を意図したものであると指摘した。

エンジニアとして、我々は何が可能かを知っているし、設計の必要性をわかりやすく伝える方法を知っている。また、Neuralink のチームは、我々が実行可能で非常に複雑な回路図を送ることができる。我々は、これが研究室の外でも、あらゆる数の臨床環境でも通用する設計であると考えている。

Link

昨年 Neuralink が詳述したように、試験用に設計された最初の脳内インターフェース「N1(別名「Link 0.9」)には、ASIC(特定用途向け集積回路)、薄膜、密閉基板が含まれており、最大1,024個の電極と繋ぐことができる。最大10個の N1/Link インターフェースを脳半球に配置でき、最適の状態では、少なくとも4つの脳の運動野と1つの体性感覚野に配置することができる。

Musk 氏は、2019年に示されたコンセプトと比較して、インターフェースが劇的に簡素化されたと語った。もはや耳の後ろに置く必要はなく、大きなコインサイズ(幅23ミリ、厚さ8ミリ)になり、電極が必要とするすべての配線はデバイス本体の1センチ以内に収まった。

ニューラルチップのプロトタイプを手にする Elon Musk 氏
Image credit: Neuralink

デモの間、チップをインプラントされた豚(名前は Gertrude)は、檻の中でハンドラーと戯れていた。その隣の檻には、別の豚が2頭いて、そのうちの1頭にはチップがインプラントされ後に除去された。3頭目の豚は比較対象のためのもので、チップはインプラントされ他ことがない。豚は硬膜と頭蓋骨の構造が人間に似ており、ランニングマシンの上を歩くように訓練することができ、その他の実験に役立つ活動を行うことができる、と Musk 氏は説明した。Neuralink がマウス、サルに続いて、3番目にインプラントを受ける動物として豚を選んだのはそういう理由からだ。

電極は、検出された神経パルスを、人間に埋め込まれた現在のシステムよりも約15倍優れた、最大1,536チャンネルの情報を読み取ることができるプロセッサに中継する。これは科学研究や医療用途の基準を満たしており、ベルギーの競合 Imec の技術「Neuropixels」よりも潜在的に優れており、何千もの別々の脳細胞から一度にデータを収集することができる。Musk 氏によると、Neuralink の商用システムは、96本のスレッドを介して1アレイあたり最大3,072個の電極を搭載する可能性があるという。

インプラントからのデータを使い、AI が豚の四肢の動きを予測
Image credit: Neuralink

インターフェイスには、慣性計測センサー、圧力センサー、温度センサー、電磁誘導で充電可能な1日間持続可能なバッテリー、デジタルビットに変換される前に神経信号を増幅してフィルタリングするアナログピクセルが含まれている(Neuralink は、アナログピクセルは、既知の技術状態の少なくとも5倍の大きさであるという)。1つのアナログピクセルは、10ビットの分解能で毎秒2万サンプルの神経信号を捕捉することができ、その結果、記録された1,024チャンネルごとに200Mbpsの神経データを得られる。

信号が増幅されると、それらは、神経パルスの形状を直接的に特徴づけるオンチップのアナログ/デジタル変換器によって変換され、デジタル化される。Neuralink によると、N1/Linkが入力された神経データを計算するのにかかる時間はわずか900ナノ秒だという。

2019年のカンファレンスで披露された、Neuralink のセンサー「N1/Link」
Image credit: Neuralink

N1/Link は、皮膚越しに Bluetooth で最大10メートル離れたスマートフォンにペアリングされる。Neuralink によれば、インプラントは最終的にアプリで設定可能になるそうで、患者はボタンを制御し、コンピュータのキーボードやマウスにスマートフォンからの出力をリダイレクトすることができるようになるかもしれない。この日のカンファレンスで再生されたビデオの中で、N1/Link は 高精度 で豚の四肢の位置を予測するアルゴリズムに信号を供給する様子が映し出された。

Neuralink の高尚な目標の一つは、四肢麻痺者が毎分40語でタイピングできるようにすることだ。最終的には、Neuralink のシステムが、人間が人工知能ソフトウェアと連携することを可能にする、Musk 氏の言う「デジタル超知能(認知)層(digital super-intelligent [cognitive] layer)」を作るために使われることを彼は期待している。彼によれば、1つの N1/Link センサーで何百万ものニューロンに影響を与えたり、書き込んだりすることができるという。

潜在的な障害

高解像度のブレイン・マシン・インターフェース(BCI)は、予想通り複雑で、神経活動を読み取って、どのニューロン群がどのタスクを実行しているかを特定できなければならない。埋込型の電極はこれに適しているが、昔からハードウェア上の制約から、電極が脳の複数の領域に接触したり、干渉する瘢痕組織(治癒過程の組織)を生成したりする原因となっていた。

しかし、小さな生体適合性電極の出現により、傷跡を最小化し、細胞群を正確にターゲットできるようになった(耐久性については疑問が残るが)。そして以前と変わらないのは、それぞれの神経プロセスについての理解が不足していることである。

Neuralink の機能
Image credit: Neuralink

前頭前野や海馬などの脳領域で脳活動が分離されることは稀だ。その代わり、脳活動は脳のさまざまな領域にまたがって起こるので、部位特定が難しい。さらに、神経の電気的インパルスを機械で読める情報に変換するという問題があるが、研究者たちはまだ脳のエンコーディングを解明できていない。視覚中枢からのパルスは、音声を形成するときに発生するものとは異なり、信号の発生源を特定することが困難な場合もある。

また、Neuralink は、臨床試験のためのデバイスを承認すべく規制当局を説得する必要がある。ブレイン・コンピューター・インターフェースは医療機器とみなされ、FDA からのさらなる同意が必要で、これを得るには非常に手間がかかる可能性がある。

おそらくこれを見越してか、Neuralink はサンフランシスコに独自の動物実験施設を開設することに関心を示しており、同社は先月、電話やウェアラブルの経験を持つ候補者の求人情報を公開した。Neuralinkは2019年、動物の手術を19回行い、約87%の時間でワイヤーの配置に成功したと主張している。

これからの道のり

これらのハードルは、90人以上の従業員を擁し、Musk 氏からの少なくとも1億米ドルを含め、1億5,800万米ドルの資金援助を受けている Neuralink を落胆させてはいない。しかし、STAT News が「混沌とした社風」と題した記事が、この課題を悪化させている可能性がある。Neuralink のスポークスパーソンは、New York Post の問い合わせに対してこの記事に回答し、STAT の調査結果の多くは「部分的または完全に虚偽のもの」であると述べた。

Neuralink は、電極を挿入するには、最初は頭蓋骨に穴を開ける必要があると考えているが、近いうちにはレーザーを使用し、一連の小さな穴で骨に穴を開けることを期待している。

これは、一見するとそれほど遠い話ではないように思えるかもしれない。コロンビア大学の神経科学者は、脳波を認識可能な音声に変換することに成功した。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のチームは、脳を利用して人間の発声をシミュレートできる仮想の声道を構築した。2016年には、脳インプラントによって、切断手術を受けた人が義手の指を自分の考えで動かせるようになった。また、実験的なインターフェースにより、サルが車いすを操作したり、頭の中だけで1分間に12文字を入力したりすることが可能になった。

私は、発売時には、この技術はおそらく……かなり高価なものになるだろうと思う。しかし、価格は急速に下がるだろう。

手術を含めて……価格を数千ドル程度に抑えたい。レーシック(目の手術)と同じようなことが可能になるはずだ(Musk 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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アクアビットスパイラルズら、旧軽井沢のホテルでコロナ対策の非接触・混雑回避サービスを提供

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アビットスパイラルズは31日、東急リゾーツ&ステイが運営する「旧軽井沢 KIKYO キュリオ・コレクション by ヒルトン」で、新型コロナウイルスへの対策として、宿泊客の非接触・混雑回避を支援するサービスを開始したことを明らかにした。 アクアビットスパイラルズの NFC タグ「スマートプレート」を各客室に配置することで、宿泊客は部屋の装置、機械、操作パネルと言ったインターフェイスに触れることなく、…

Image credit: Aquabit Spirals

アビットスパイラルズは31日、東急リゾーツ&ステイが運営する「旧軽井沢 KIKYO キュリオ・コレクション by ヒルトン」で、新型コロナウイルスへの対策として、宿泊客の非接触・混雑回避を支援するサービスを開始したことを明らかにした。

アクアビットスパイラルズの NFC タグ「スマートプレート」を各客室に配置することで、宿泊客は部屋の装置、機械、操作パネルと言ったインターフェイスに触れることなく、自分のスマートフォンだけで情報やサービスにアクセスすることが可能になる。

サービス開始時点で提供される機能は、「密レーダー」や「ルームサービス注文機能(9月以降提供予定)」など。

Image credit: Aquabit Spirals

密レーダーは、北大発のコンピュータビジョン(映像解析)スタートアップ AWL の新型コロナウイルス対策ソリューション「AWL Lite」が AI カメラを通じて予測した混雑状況と、アクアビットスパイラルズが提供するステイタス通知アプリ・スマプレコントロールから通知される混雑状況を、施設ごとにそれぞれ3段階のアイコンで可視化し、客室内のスマートプレート経由で宿泊客のスマートフォンに表記できる機能。

ルームサービス注文機能は、部屋番号を入力せず、宿泊客がスマートフォンをかざすだけでルームサービスの注文が可能になる機能。宿泊客はルームサービスのために内線電話をかけたり、受話器に触れたりする必要がない。アクアビットスパイラルズでは今後、レストランでのメニュー確認も宿泊客や来訪客がスマートフォンで確認できるようにするとしている。

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拡大するスマートメーター活用ビジネス

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ピックアップ:Kamstrup unveils first-of-its-kind smart meter solution ニュースサマリ―:デンマークのKamstrup社は、北米市場に向けてノイズパターンから漏水を検知する、最新の水道用スマートメーターソリューション「flowIQ 2200」の提供を開始した。同社は2020年初頭にスイスで開催されたイノベーションアワードで「Aqua Pro G…

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Kamstrupウェブサイト

ピックアップ:Kamstrup unveils first-of-its-kind smart meter solution

ニュースサマリ―:デンマークのKamstrup社は、北米市場に向けてノイズパターンから漏水を検知する、最新の水道用スマートメーターソリューション「flowIQ 2200」の提供を開始した。同社は2020年初頭にスイスで開催されたイノベーションアワードで「Aqua Pro Gaz」を受賞するなど、同ソリューションが世界中の水道事業者に与える価値が評価されている。

重要なポイント:このソリューションはこれまで困難だった漏水のノイズパターンを分析して正確にスポットを特定し、ユーザーや水道事業者に早期に通知することを可能とするもの。ビジネス上の損失に繋がる非収益水を防ぐだけでなく、節水に繋がり環境にもメリットをもたらすことが期待されている。

詳細情報:最新の水道用スマートメーターflowIQ 2200に音響漏水検知ソフトウェアを搭載することで、ノイズパターンから配水管内の漏水を検知することが可能となった。同ソリューションはわずかな水の使用量であっても正確に測定し、漏水の生じているスポットをリアルタイムで特定。ユーザーや水道事業者に通知することが可能であり、最大で22%生じている漏水を減らすことに繋がるとしている。

  • 今回の「flowIQ 2200」のようなスマートメーターは、家庭内のガス、電気、水道の使用量のデータを無線ネットワーク経由でサプライヤーに送ることのできるメーターを指し、この導入により各サービスの提供者は現地に行かずに自動検針が可能となるメリットがある。
  • 世界で見ると、スマートメーター(電気、ガス、水道含む)の導入率は2019年時点で14%に達しており、特に北米と欧州が成長をけん引している。
  • 中でも電力用のスマートメーターは普及が進んでおり、全世帯に設置を完了したスウェーデンを筆頭に先進的に取り組みを進める欧州では、2020年に全体で普及率80%を目標。米国では、2020年までに9,000万世帯(全世帯の71%)の導入が想定されている。
  • 国内に目を向けると東京電力パワーグリッドは、2020年度までにサービスエリアにおける全ユーザーへ約2,900万台のスマートメーターを設置するプロジェクトを推進中。
  • 日本全体では、2024年度末までに全家庭へのスマートメーター導入を完了する計画がある。なお、工場などの特高・高圧部門では2016年度までに全数スマートメーター導入が完了しており、残すは低圧部門の家庭のみとなっている。
  • スマートメーターを活用したソリューションとして、高齢者の見守りサービスや不在配送問題の解消を目指す実証実験、電気やガスの見える化をしたり家電の自動制御をしたりするためのHEMSというエネルギーマネジメントのシステムなどが挙げられる。

背景:今回のような水道スマートメーターの利活用はまだまだこれからだが、電力用のスマートメーターは世界中で広く普及しつつあり、それにまつわる市場、例えばデマンドレスポンス市場が2017年から2024年にかけて年平均成長率19.1%(APACだと45.1%)で成長すると見込まれるなど、関連の市場が成長している段階にある。

執筆:國生啓佑/編集:岩切絹代

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35億円調達のフォトシンス、キーレス社会の新戦略「Akerun ID」発表ーー三井不動産とは実証実験も

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スマートロック「Akerun」を開発・展開するフォトシンスは8月4日、キーレス社会を実現するアクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence(アケルン・アクセス・インテリジェンス)」と新サービス「Akerun来訪管理システム」を公表した。三井不動産とは来訪管理システムにおいて実証実験も開始する。 また、同社はこれに合わせて増資の実施も公表している。第三者割当増資の引受先となっ…

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三井不動産の新オフィスで開始した「Akerun来訪管理システム」の実証実験

スマートロック「Akerun」を開発・展開するフォトシンスは8月4日、キーレス社会を実現するアクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence(アケルン・アクセス・インテリジェンス)」と新サービス「Akerun来訪管理システム」を公表した。三井不動産とは来訪管理システムにおいて実証実験も開始する。

また、同社はこれに合わせて増資の実施も公表している。第三者割当増資の引受先となったのは農林中央金庫、NTTドコモ・ベンチャーズ、31VENTURES、LINE Ventures、凸版印刷、BSPグループ、スクラムベンチャーズ、常陽産業研究所、グロービス・キャピタル・パートナーズなど。

これに新生銀行、日本政策金融公庫、みずほ銀行、常陽銀行などからの融資を加えて調達した資金は35億円。同社の累計調達額は50億円となった。さらに同ラウンドのリードインベスターを努めた農林中央金庫から大坪達也氏が社外取締役として就任する。調達した資金は「Akerun Access Intelligence」を推進するための研究開発費や、サポート、営業などの体制強化に投じられる。

スマートロック「Akerun」は鍵をクラウド化して利便性やセキュリティの向上を実現するIoTサービス。ユーザーの入退室を管理する法人向け「Akerun入退室管理システム」も合わせて提供しており、導入規模は4500社にのぼる。

公表された新戦略「Akerun Access Intelligence」は、ビジネスからプライベートまで全ての鍵をクラウド化する構想。ユーザーが普段利用している交通系ICカードやスマートフォン、社員証・入館証といった固有のIDをメールアドレスや電話番号といったデジタルのIDに組み合わせて「AkerunユーザーID」として登録する。これにより、オフィスやビル、自宅などでこのIDを鍵にさまざまな空間へのアクセスを可能にしようというもの。

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アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence(アケルン・アクセス・インテリジェンス)」

また、この構想を具体的に推進するための管理クラウドサービスとして「Akerun来訪管理システム」を新たに発表した。従来、大型のオフィスビルではセキュリティゲートや受付などによるアクセス制限が設けられることが多く、来訪者の受付時に社名の手書きやこれらをデジタル管理する際の手間が問題視されていた。また、身分証明書についても目視では信頼性に欠けるという課題があった。

これを受けてフォトシンスでは既設のセキュリティゲートにも後付けで設置できる「Akerun来訪管理システム」を開発し、来訪者であっても交通系ICカードを「AkerunユーザーID」として事前登録しておくことで、これらのセキュリティをスムーズに通過できるようにした。

これまでAkerunを利用していた企業であれば、「Akerun入退室管理システム」と組み合わせることも可能で、従業員は来訪者と同じく、AkerunユーザーIDと紐づいたキーで決められた場所へのアクセスが可能となる。

今回出資した三井不動産とは同社が運営する日本橋室町三井タワー新オフィスにてこれらの来訪管理システムの実証実験も実施する。三井不動産はこれまでにもAkerunの利用を進めており、今回の協業につながった。

via PR TIMES

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陸上養殖の普及と共に増す、IT活用の「スマート漁業」の可能性

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ピックアップ:AKVA group ASA: Potential new land based project ニュースサマリー:ノルウェー拠点のAquacon社は、米国における陸上養殖事業の展開にあたり養殖機器の総合サプライヤーAKVAグループとのパートナシップを発表した。養殖機器や開発リソースの提供面での協業が期待されており、メリーランド州にて1万5000トンのサーモン陸上養殖が計画されている…

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Photo by mali maeder on Pexels.com

ピックアップ:AKVA group ASA: Potential new land based project

ニュースサマリー:ノルウェー拠点のAquacon社は、米国における陸上養殖事業の展開にあたり養殖機器の総合サプライヤーAKVAグループとのパートナシップを発表した。養殖機器や開発リソースの提供面での協業が期待されており、メリーランド州にて1万5000トンのサーモン陸上養殖が計画されている。

重要なポイント:日本の養殖産業が1990年代を境に横ばいになりここ10年は落ち込む一方、ノルウェーでは1980年代から毎年2桁を超える高い成長率で成長し2011年には日本の生産量を上回っている。これを支えるのがスマート漁業テクノロジーだ。スマート漁業のリーディングカンパニーのひとつであるAKVAグループとAquaconが、陸上養殖の大型施設設置を共同で推進することにより、陸上養殖を始めとした次世代型の養殖技術の社会実装を推進する起爆剤となりうる。

詳細情報:急成長するノルウェーの養殖産業を支えるAKVAグループは、自社内にソフトウェア部門を抱えているのが特徴。給餌システムのようなハードウェアに加え、養殖魚の管理や養殖施設の管理を行うソフトウェアの開発と販売を行う養殖機器の総合サプライヤーとしての活躍も見受けられる。

  • 主なプロダクトには、データに基づいた最適な給餌量の提案や環境調査データの管理を行うFishtalk Control、養殖生産現場の機器を制御するためのAKVA connectなどが挙げられる。
  • 国内にも、IT技術を活用したスマート漁業のプレイヤーは年々登場している。KDDIやNTTドコモのような大手通信事業者を始め、ウミトロンFRDジャパンオプティムなどのスタートアップが挙げられ、流通面での企業としてはUUUOなどが挙げられる。
  • KDDIでは、IoTセンサーを活用し、水温・酸素濃度、塩分などの環境データを自動測定することで、無線通信回線を活用しクラウド上にデータを可視化&蓄積させ鯖の養殖事業効率化を目指す取り組みを行っている。また、ドローンを活用した早期の赤潮検知でマグロ養殖漁業者の負担と作業効率化を目指す取り組みなどが推進されている。
  • NTTドコモでは、ITスタートアップのアンデックスと協業し、カキ養殖における水温センサ付きブイを設置し、アプリ開発はアンデックス、通信モジュール部とクラウドサーバー管理はドコモが行うプロジェクトを実施。双日やISIDとのマグロ養殖事業におけるIoTやAI活用の実証実験を行うなど、他社との協業を積極的に進めている。
  • 一方、スタートアップのウミトロンでは、スマート給餌機や世界初のリアルタイム魚群食欲判定などの海中におけるスマート漁業ソリューションを提供する。また、小型衛星を2022年度に打ち上げ、養殖業における衛星データ活用を推進していくことも発表するなど、地上と宇宙の両方からのビジネスを推進している点で注目を集める。
  • 陸上養殖の国内企業としてはFRDジャパンが挙げられ、同社の閉鎖循環式陸上養殖システムでは、天然海水や地下水を使用せず、水道水を100%循環させながら水産養殖を行うことが可能。

背景:国内の養殖産業が停滞する一方で、スマート水産や陸上養殖を含めた次世代型養殖技術の市場規模は右肩上がりの成長の予測がなされており、今後より一層活況となっていくとみられる。

執筆:國生啓佑/編集:増渕大志

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