大津での実験にアクアビットスパイラルズが持ち込むコンセプトは、この PayChoiice を決済から MaaS(Mobility as a Service)へとエンハンスしたものと言えるだろう。都市部の交通機関であれば、鉄道の改札やバスの乗降口に FeliCa 決済のリーダ・ライターが備わっており、キャッシュレスでの乗降車が実用化しているが、少し郊外や地方へ足を伸ばすと切符や整理券+現金決済を余儀なくされるケースが多い。地方でキャッシュレス対応が進まない理由の一つは、リーダ・ライターをはじめとする設備の導入や運用コストだ。
Image credit: Aquabit Spirals
今回アクアビットスパイラルズが実験で導入している仕組み「スマプレチケット」では、ユーザはスマートフォンを運賃箱や車内各所に貼られたステッカー(NFC チップと QR コードが貼ってある)にかざすだけで良い。スマートフォン画面上で人数を入力すれば、ApplePay や GooglePay やクレジットカードで決済が完了する。降車時には、運賃箱や車内各所でスマートフォンを再びかざすと画面上に券面が表示されるので、それを運転士に提示することで一連の操作は終了となる。
【12日8時更新】赤字部を追記。 各社が参入した QR コード決済の開始から約1年半、Origami Pay が事実上メルペイに買収され、LINE Pay と PayPay も経営統合で同じ陣営になるなど、勢力の整理がひとたび落ち着いたように見える。一方で、その UX から言って、QR コード決済は NFC 決済に勝てないという見方もある。アプリを立ち上げて QR コードを店員かセルフレジのスキャ…
Creative Commons Zero – CC0 / Pxfuel
【12日8時更新】赤字部を追記。
各社が参入した QR コード決済の開始から約1年半、Origami Pay が事実上メルペイに買収され、LINE Pay と PayPay も経営統合で同じ陣営になるなど、勢力の整理がひとたび落ち着いたように見える。一方で、その UX から言って、QR コード決済は NFC 決済に勝てないという見方もある。アプリを立ち上げて QR コードを店員かセルフレジのスキャナに向けなければならない QR コード決済と、何も考えずにスマートフォンをタッチセンサーにかざすだけで済む NFC 決済の利便性の差は明らかだ。
コンビニなどで、ポイントを貯めたり、クーポンを使ったりして、QR コード決済でモノを買うときはカオスである。クーポン利用のために、コンビニのマルチメディアキオスクで専用バーコードを吐き出させ、それと商品も持ってレジに向かう。レジでは、ポイントを貯めるためと QR コード決済のため、モバイルアプリを切り替えて、QR コードを2回店員に提示しなければならない(または、セルフレジでスキャンしなければならない)。高齢者のみならず、デジタルネイティブでさえ躊躇してしまいそうなひどい UX だ。
QR コード決済事業者らはおそらく、NFC 決済が本命になることを知っている。しかし、自社のプロトコルに準拠させた NFC 決済に必須となる端末を全国津々浦々の小売店に普及させるのは、コスト的にもタイミング的にも後発事業者にとって分が悪い。それがわかっているからこそ、メルペイは iD と提携したり、楽天 Pay も Suica と提携したりしているわけだ。NFC 決済ネットワークとのタイアップにより、いずれは QR コードを提示しなくても決済できるようになるのだろう。
とはいえ、一台数万円以上になる決済端末が配置されるのは、商品単価や顧客単価が一定以上の小売店舗に限られる。青空市場でも段ボールに QR コードさえ貼り付ければ決済対応できる QR コード決済とは対照的に、導入のためのハードルの高さはトレードオフの関係になる。NFC 決済の手軽さと、QR コード決済を同居させることはできないか。アクアビットスパイラルズが昨年発表した、スマートフォン向けのマルチペイメント機能「PayChoiice(ペイチョイス)」にその可能性の一端を見出すことができる。
Square やコイニーの誕生により、決済端末が専用機器からスマートデバイスにも広がったことで、フードトラックや零細店舗をはじめ、カード決済を受け付ける環境の裾野は広がった。次なる期待は、決済端末そのものが店頭に要らなくなるかもしれないパラダイムシフトだ。OMO(Online merges with Offline)が普及していく中では、クレジットカード業界にとって避けて通れない、対面決済(オフライン購買前提)と非対面決済(オンライン購買前提)の垣根を払うことも今後の課題だ。
PayChoiice は昨年末から、製造業者・職人と店舗を繋ぐプラットフォーム「カタルスペース」、アート専門のマーケットプレイス「TriCERA」、東南アジアのレストランや病院などで使える並ばずに番号札を取得できるアプリ「QueQ」、AI レストランメニュー「Satisfood」といった OMO サービスプロバイダに導入されており、UX 向上にどの程度寄与できているか、今後、エンドユーザの声や業績動向などを交え確かめてみたい。
QR コードや NFC 技術を使って、ユーザのスマートフォンを特定の URL と紐づけるサービス「スマートプレート」を開発するアクアビットスパイラルズは14日、プレシリーズ A ラウンドの2次募集で東急エージェンシー、K&P パートナーズ、個人投資家から7,000万円を調達したことを明らかにした(東急エージェンシーによるプレスリリース)。 これは同社にとって、2015年12月に実施したシー…
Image credit: Aquabit Sprials
QR コードや NFC 技術を使って、ユーザのスマートフォンを特定の URL と紐づけるサービス「スマートプレート」を開発するアクアビットスパイラルズは14日、プレシリーズ A ラウンドの2次募集で東急エージェンシー、K&P パートナーズ、個人投資家から7,000万円を調達したことを明らかにした(東急エージェンシーによるプレスリリース)。
これは同社にとって、2015年12月に実施したシードラウンドでの K&P パートナーズからの4,000万円の調達、2016年11月に実施したプレシリーズ A ラウンドの1次募集でのグローブアドバイザーズ、フリービットインベストメント、K&P パートナーズからの7,000万円の調達に続くものだ。今回の調達を受けて、アクアビットスパイラルズは開示されているものだけで、これまでに1億8,000万円を調達したことになる。同社は今後、プレシリーズ A ラウンドの3次募集を続ける予定。
東京を拠点とし、NFC(近距離無線通信)用のICチップなどを利用して、モノとインターネットをつなぐプラットフォーム「スマートプレート」を提供するアクアビットスパイラルズは16日、東急電鉄(東証:9005)および NHK エデュケーショナルと提携し、東急ストア中目黒本店の店頭で、スマートプレートを使った料理レシピ配信サービスの試験運用を開始すると発表した。試験サービスが提供されるのは12月19日から…
Image credit: Google StreetView / Aquabit Spirals
東京を拠点とし、NFC(近距離無線通信)用のICチップなどを利用して、モノとインターネットをつなぐプラットフォーム「スマートプレート」を提供するアクアビットスパイラルズは16日、東急電鉄(東証:9005)および NHK エデュケーショナルと提携し、東急ストア中目黒本店の店頭で、スマートプレートを使った料理レシピ配信サービスの試験運用を開始すると発表した。試験サービスが提供されるのは12月19日からで、終了は来年3月末日を予定。提供されるレシピのコンテンツは、NHK の人気料理番組「きょうの料理」をもとにした、NHK エデュケーショナルの「きょうのみんなの料理」のものが利用される。
アクアビットスパイラルズは2009年の設立。NFC を利用した O2O ソリューションなどを開発しており、東京を拠点とするアクセラレータ Orange Fab Asia の「Spring 2015 Season」バッチには、リアルな物体にインターネット上の URL をブックマークできる「スマートプレート」で採択された。スマートプレートには、ユニークな QR コードが貼付されており、ICチップも内蔵しているので、NFC 対応スマートフォンか、カメラを内蔵しているスマートフォンを使って、スマートブレートに紐付けられたユニーク情報にユーザを誘導することができる。