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画像認識技術のBrand Pitがedison.aiに進化、アクセラレータプログラム「Techstars Music」への参加を通じてチームが得たものとは…

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ソーシャルメディアに投稿された写真を画像分析し、そこに映り込んだ商品のブランドロゴなどから自社製品の普及度、地域分布、ユースケースなどをブランド各社にマーケティングデータとして提供する Brand Pit。THE BRIDGE から彼らを追いかけ始めてから5年ほどが経つが、この動きの激しいスタートアップの世界においては、息の長い会社と言えるだろう。 その Brand Pit は昨年、社名を変えたよ…

Techstars Music に参加した edison.ai のチーム(2018年5月、ロサンゼルスで)
Image credit: edison.ai

ソーシャルメディアに投稿された写真を画像分析し、そこに映り込んだ商品のブランドロゴなどから自社製品の普及度、地域分布、ユースケースなどをブランド各社にマーケティングデータとして提供する Brand Pit。THE BRIDGE から彼らを追いかけ始めてから5年ほどが経つが、この動きの激しいスタートアップの世界においては、息の長い会社と言えるだろう。

その Brand Pit は昨年、社名を変えたようだ。新しい名前は edison.ai。もはや、「あの有名俳優の名前みたいなスタートアップ、なんだっけか?」という冗談は通用しなくなってしまった。久しぶりに話を聞こうと連絡をとったら、彼らはTechstars が昨年から開始したアクセラレータプログラム「Techstars Music」に参加中で、音楽ビジネスの本場ロサンゼルスに滞在していた。以前の Brand Pit からは、音楽業界向けのビジネスは想像できなかったのに、さてはどんなピボットを行なったのか。

Techstars は、世界のアクセラレータネットワーク「Global Accelerator Network(GAN)」などを運営する、アメリカ・コロラド州のボルダーに本拠地を置く老舗アクセラレータで、世界各地でコーポレートアクセラレータの受託運営などを行なっている。

ただ、Techstars Music は、その種のコーポレートアクセラレータと異なり、特定のバーティカルやセクターに特化して、Techstars が自主的に複数のスポンサー企業を集めて運営されるプログラムの一つだ。Techstars Music には、Warner Music や Sony Music のほか、日本からはレコチョクがスポンサーとして参加している。

今年の2月から13週間(=約3ヶ月間)にわたってロサンゼルスで行われた最初のバッチに参加した、Brand Pit 改め、edison.ai の創業者で CEO の Chu Tsz Tat(TT Chu)氏は Techstars Music への参加が社名変更に大きく関わっていると説明してくれた。このアクセラレータには10チームが選抜され(11チームが選ばれ、10チームが卒業した模様だ)、各チームには Techstars から12万ドルずつの出資がなされるが、ユーザグロースや資金を支援してくれる種類のものではない。

特定の音楽企業に利益をもたらすというのではなく、(スタートアップを巻き込むことで)音楽産業全体をさらに進化させたいという意図があるようです。(Chu 氏)

日本でもエイベックスなどがアクセラレータを開始しているが(Avex Ventures のウェブサイトは閉じられたようだ)、音楽業界全体を変革するまでに勢いが及んでいるとはまだ言い難い。何かと利権がついて回るビジネスだけに、保守的な音楽産業をスタートアップの力でディスラプトしていくのには時間と労力を要するのだろう。Techstars Music には、そんな業界に風穴を開けていこうという狙いがあるようだ。

edison.ai

FMCG(日用消費財)のブランドとの親和性が高いと思われた旧 Brand Pit のビジネスは、音楽業界と出会うことでどんな変革を遂げるのだろう? そこには、オーディエンスが何に関心を持っているかを知りたいという、音楽業界の思惑が見え隠れする。

ストリーミングやダウンロード型の音楽コンテンツ販売のデータは、オンラインストアなどから入手できるだろうし、オフライン販売はレコードショップの POS から一定量のデータは取れるのかもしれない。ライブや音楽イベントといったアーティストとファンが直接触れ合う機会のデータは、チケットのデジタル化で集積管理できる部分もあるだろう。

しかし、それでも、音楽シーンを把握するには十分ではない。どの場所や環境で、どのようなアーティストのどんな楽曲に関心が高まっているか、それを俯瞰的に把握する上で edison.ai の技術が役に立つのではないか、というのが Techstars Music に同社が参加した上での仮説だ。

Techstars Music のマネージングディレクターを務める Bob Moczydlowsky 氏が Twitterの音楽部門を立ち上げた経験を持ち、データ収集や分析に対する理解が深かったことも、プログラムに参加した上で大いにラッキーだったと Chu 氏は話している。イグジット経験のある人々をメンターとして迎え、参加スタートアップをひっきりなしに業界有力者に繋いでくれることも Techstars の特徴だ。

edison.ai(旧 Brand Pit)は、IBM BlueHub、KIRIN アクセラレータ、パリの NUMA による La FrenchTech、香港の Swire Group、オーストラリアの Global Incubator Network といった各アクセラレータプログラムに参加している。当面は資金調達よりも、以前より対象分野を広げたアプリケーションの技術開発やユーザバリデーションに注力するという。

一方、Techstars については最近、アジア地域での存在感を増しつつあるようだ。前出の Techstars Music は次期バッチに向けて参加チーム募集への準備が進められているほか、今年初めからは楽天と組んで Rakuten Accelerator を始めた。今週、バンコクで催される Techsauce Summit 周辺でも、Techstars co-CEO の David Brown 氏を招いて Techstars Global Summit が開かれる予定で、同社のアジア 進出への並々ならぬ関心を伺い知ることができる。

<参考文献>