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AR時代の「体験メディア型店舗」とは?ーー ARエンタメ「ENDROLL」が池袋PARCOと期間限定コラボ

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8月31日、ARを用いたエンターテイメントを企画/開発する「ENDROLL」が今年で50周年を迎える池袋PARCOとコラボして新作コンテンツ「あなたが動かすアート展 〜 おくびょうキュリオと孤独な絵描き〜」の提供を開始した。同サービスは8月31日から9月29日までの約1カ月間楽しめる。 来場者は専用アプリをダウンロードして館内を巡る。ARの立体パズルが登場し、いくつかの課題をクリアしながら物語を知…

8月31日、ARを用いたエンターテイメントを企画/開発する「ENDROLL」が今年で50周年を迎える池袋PARCOとコラボして新作コンテンツ「あなたが動かすアート展 〜 おくびょうキュリオと孤独な絵描き〜」の提供を開始した。同サービスは8月31日から9月29日までの約1カ月間楽しめる。

来場者は専用アプリをダウンロードして館内を巡る。ARの立体パズルが登場し、いくつかの課題をクリアしながら物語を知っていく流れとなっている。チケット料金は980円、目安時間は小一時間ほど。ゲームが終了してSNS投稿をすると商品券をもらえる。

「リアルの商業空間」と「バーチャル」の垣根を越えた新たなエンターテイメントを発信することで、既存の商業施設(モノ消費)に留まらない多様な消費体験を提供することを目指すとのこと。

運営会社のENDROLLは2017年12月に創業されたARスタートアップ。2018年は「ノンフィクション・レポート」、2019年5月には「渋谷パラレルパラドックス」、7月には「アソビルパーティ ~とびだせ!アソビルモンスター~」を展開しており、ARゲームを次々とリリースしている。

店舗の体験メディア化

ENDROLLの今回狙ったキーワードが「コト消費」。消費者は商品自体を求めているのではなく、商品を通じて得られる体験やサービスを求めていることを的確に指した用語である。

たとえばブランド商品を買う際、購買を決定づける最も大切な要素は、どんな生活を顧客が手にできるかという点。商品自体ではなく顧客の生活がいかに華やぐか、メリットを受けられるかを伝える必要がある。

一例としてCHANELに代表される高級価格帯商品が挙げられる。このような商品を購入する顧客は、ブランド品を持っていることで周りから高いステータスの人生を送っていると見られたい、周囲の人から羨望の眼差しでみられたいといった願望や環境を手にしたいからこそ買っているのではなかろうか。

「生活スタイルをステップアップできる」というブランド価値を消費者が理解しているからこそ購買が発生していると言えるはずだ。

こうしたブランド価値を伝える必要性が一般消費財にまで拡大しているのが昨今の動きだと感じる。同じ仕様や機能を持った商品が2つあるとして、値段が多少張るものを売るためには「ストーリー」を伝える必要がある。

消費者はDAISO、3COINSなどの低価格で品質が一定の商品を売る小売店の選択肢を持つ。そんな中でも彼らを大型商業施設に足を運ばせて商品を買わせるにはストーリーが重要になってくるのだ。

先述したように、ブランド価値を伝える最適なチャネルの1つとして、ストーリー仕立てで理解してもらう手法が挙げられる。そこでENDROLLはARを使ったストーリー・テリング式のARゲームを提供し始めたわけだ。

今回、ENDROLLが提供する「あなたが動かすアート展」の開発背景に、消費者から共感を得るために商品メリットや製作話をARゲームを通じて伝え、購買コンバージョンを向上させる考えが伺える。ENDROLL代表取締役の前元健志氏は次のように語る。

「お買い物券」という形からのテストになりますが、今回PARCO様の協力を得てサービス提供をする運びになりました。このサービス提供する機会の中で、プレイ中の行動経路や商品購買のCVRなどを計測していき、施設側にとっても価値提案も一層強化していく予定です。

周遊型コンテンツを体験する際、多くの参加者が立ち寄った店舗に関心を持つことはすでに数値として裏付けされてきています。そこで私たちは立ち寄った一つ一つの場所に参加者の感情と共に「意味」を与えたいと考えています。たとえば「このお店は、キュリオ(本作登場のキャラクター)と初めて出会った場所」といったような印象をユーザーに持たせる具合です。

現状のバージョンでは特定商品の購買へと直接繋げる仕組みは導入されていないが、コンテンツへの共感と商業施設での買い物を同時に満足させるための特典(お買い物券)を用意している。

今回はARゲームを楽しむというシンプルな目的がユーザーインセンティブになっている。しかし将来的には先述したような商品ストーリー体験を通じた購買コンバージョン率を上げる体験型メディアにしたい意向だ。

さて、市場ではここまで説明してきたような「商品体験」や「ブランドストーリー」の重要性が頻繁に語られるようになってきた印象。しかし店舗側はどのように対応していいのかわからない、具体的にどのようにサービス化させるのかわからないのが現状のように思われる。

具体的な課題として「コンテンツ制作」と「施工/店舗内装コスト」の2点が挙げられるだろう。

1点目のコンテンツ面に関してはENDROLLがまさに着手しているポイントだ。ARゲーム制作を通じたコンテンツプロバイダーとして小売市場へ参入しようとしている。

これまでに開発したARゲーム全てが商業施設向けのコンテンツである点から、相当な制作ノウハウが溜まっているはずだ。店舗側はENDROLLのようなプレイヤーと組むことで1つ目の課題は解決できるだろう。

2点目のコストに関して説明するために欧米の事例に簡単に触れたい。たとえば筆者が訪れた寝具マットレスD2C「Casper」の店舗(上図写真)。同社は2013年にニューヨークで創業し、累計3.3億ドルの資金調達に成功しているD2Cスタートアップの先駆けとも言える企業だ。

Casperの店舗はテーマパークのような内装がされている。店舗では寝具体験をするための木造の小さな小屋が3棟ほど建てられている。そこで各商品ラインナップを10分ほど試す時間が与えられる。専属ガイドが案内をしながら商品の良さなどを伝えられる流れだ。

筆者が来店時に最も共感を持てたのが「睡眠は第三の人生です」というガイドからの言葉であった。寝具が欲しいわけではない、最高の睡眠体験と朝起きてから調子の良い毎日が欲しい。そんな新たな人生を買うための説明を独特の世界観の中でされて購買意欲を非常に掻き立てられた。

話を戻そう。Casperのような巨大資本のある企業であれば店舗を丸ごと改装して自社製品に特化した世界観を表現できる。しかし百貨店などの商業施設では大規模な改修はできない。ガイドの育成にも時間と教育コストがかかる。

そこでARが登場する。ARコンテンツであれば商品体験を高い没入感を維持したまま顧客へ伝えられる。加えて、Casperのような豪勢な店舗内装をすることなくコンテンツ展開ができる算段だ。

ENDROLLが提供しているARエンタメサービスを活用することによって、順を追って商品ストーリーを理解させる導線を引くことが可能。店舗側にとってはAdd-onとして手軽に導入できる大きなメリットがある。

弊社のソリューションは「デッドスペースの活用」と「簡易な施工作業」で完結するという点で大変ご好評いただいております。

これまでもリテール市場では「体験」「コト消費」などの言葉が注目されておりましたが、スペースと設備投資が必要になる体験型コンテンツは非常にハードルの高いものでした。弊社のコンテンツは、池袋であっても、北海道や沖縄の商業施設であっても、極めて短い時間と少ないコストでセットアップができます。

ARを通じて「スタンプラリーのように手軽」、しかし「圧倒的にリッチな体験」をなくすことなく商業施設の課題解決に取り組むことができます。手軽さと体験を両立させることで、体験型コンテンツ市場の飛躍的な拡大に繋がると確信しています。

購買体験にストーリーや世界観を伝える流れはD2Cブランドを中心にトレンドになっている。この流れは日本でも徐々に一般的なものとなるだろう。

しかし最もブランドや店舗側の懸念は「結果」。どの程度売り上げに反映されるかだ。この点、ENDROLLの当分の目標は購買コンバージョン率向上となりそうだ。

先述したようにARは店舗側のコスト削減に繋がる可能性を持つ。導入する説得材料はあるが購買に繋がらないと意味がない。今後もARエンタメの軸でサービス展開をしていくENDROLLが試される点がここだ。先日プレシリーズAを経た同社が次の1-2年でどこまで実績を残せるかに注目したい。

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「AR時代のエンタメUXデザイン企業へ」 ーープレシリーズA調達を終えたARエンタメ企業「ENDROLL」の企業戦略を紐解く

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7月17日、ARエンターテイメントコンテンツの企画/開発を行う「ENDROLL」がプレシリーズAラウンドにて総額数千万円規模の資金調達を実施したことを発表した。 引き受け先となったのはスマートニュースの堅田航平氏、メドレー 執行役員の加藤恭輔氏、ペルソナイズ CSOの山本幸央氏。加えて鈴木陽貴氏、清木昌氏、他数名の個人投資家が名を連ねる。 ENDROLLは2017年12月に創業されたARスタートア…

7月17日、ARエンターテイメントコンテンツの企画/開発を行う「ENDROLL」がプレシリーズAラウンドにて総額数千万円規模の資金調達を実施したことを発表した。

引き受け先となったのはスマートニュースの堅田航平氏、メドレー 執行役員の加藤恭輔氏、ペルソナイズ CSOの山本幸央氏。加えて鈴木陽貴氏、清木昌氏、他数名の個人投資家が名を連ねる。

ENDROLLは2017年12月に創業されたARスタートアップ。2018年はスマホ向けAR謎解き脱出ゲーム「ノンフィクション・レポート」をリリース。現在は体験型ARコンテンツ開発に積極的に動いている。

2019年5月には東京急行電鉄と提携して渋谷の街を舞台にしたARリアル謎解きゲーム「渋谷パラレルパラドックス」を発表。7月にはアカツキライブエンターテインメントと協力して横浜駅直通の複合型体験エンターテインメントビル「アソビル」を舞台にしたARゲーム「アソビルパーティ ~とびだせ!アソビルモンスター~」を展開している。

ENDROLLのコンセプトに関してCEOの前元氏は次のように述べる。

私たちはARというテクノロジーを『妄想を具現化するもの』と捉えています。そしてその力で今までシュミレーションという形で人々に感動を与えて来た『ゲームの力』を解放し、誰しもが物語の主人公になれる世界を実現するという想いを持ってENDROLLを創業しました。

まずは日本各地の商業施設と提携してAR時代の新たな収益源や集客ソリューションを提供しています。街のあらゆる箇所にエンタメ要素を追加することで、ARクラウド時代のエンターテイメントのあり方を世に投げかけています。

さて、ENDROLLはプレシリーズAの調達資金をARクラウド時代のエンタメUX研究に投下すると語る。

ARクラウドとはクラウド上に置かれている現実世界を投影した3Dマップデータ。X・Y・Z軸によって判定される位置や付随情報を含む点群データがクラウド上に保管され、いつでも引き出させるシステムを指す。

ARクラウドが実現すれば、ユーザーの周辺環境データとクラウド上の3Dマップデータが瞬時に照合され、特定箇所に紐づいたデータが引き出される。たとえば「セカイカメラ」が実現させたような、特定店舗の情報をARグラスを通じて即座に参照可能となる。

最も重要な点は、その場にいる複数ユーザーが同時にその場の情報をクラウドから引き出せる機能を通じて新たなコラボレーション体験が生まれることだ。日本のAR企業でのユースケースとして、MESONが取り組んだ「AR City in Kobe」が挙げられるだろう。

ではENDROLLが目指すARクラウド時代のエンタメUX研究とはいったい何を指すのか。前元氏は次のように考える。

AR分野はまだ世界的にも成功事例が少なく、実利が見えにくい側面が否めません。そのため高いビジネスメリットのあるロケーションベースのARサービス開発へ資本を使っていきます。

従来、商業施設は不動産資産の内観を大幅に変えるプロモーションを打ちづらいという課題を抱えていました。多額の資金を獲得するために意思決定に非常に長い時間がかかっていました。

そこでARエンタメを通じて低コストかつ施設内観を変更することなくサービス導入可能な事例を増やす考えです。施設運営者、ユーザーの両方がWin-WinとなるAR時代のUXを課題解決のアプローチで提案していく戦略です。

2019年時点でARクラウドの考えは一般的ではない。その上、技術確立に未だ至っていない。巷ではARクラウド・プラットフォームになれば確実にユニコーン入りは確実と言われるほど商機と技術課題が横たわる領域。

市場理解がまだ進んでいないなかでENDROLLは大手企業の課題感をしっかりと理解しながら提携へと漕ぎ着けている。

たしかに記事冒頭で紹介した2019年のENDROLLのプロダクトラインナップをみると、ARクラウド時代に一般化するであろう屋外コラボレーション体験のUsed Case作りに動いている印象だ。

商業施設や街開発に積極的な大手企業と組んで体験型コンテンツ開発にリソースを割いているのがその証左であろう。

ENDROLLはこうしたARクラウド時代のエンタメUXを作っていく会社として舵を取っていく戦略だ。具体的には複数人でコミュニケーションを取りながら商業施設で楽しめる体験コンテンツを作っていく意向とのこと。

米国ではNianticを代表とする世界的なARエンタメ企業が登場。ポケモンGoでは店舗と組んで集客ツールとしてゲームを提供する。これも立派な屋外体験型コンテンツと呼べるだろう。

日本人起業家の深澤氏が創業したTyffonは体験型のVRテーマパークを次々とオープンさせている。AR・VR・MRの総称を指すXR時代のディズニーを目指す。

有名レーベルを携えて展開したり、テーマパーク型コンテンツの世界展開を目指すスタートアップが活躍するXRエンタメ業界でENDROLLはどのように生き残り、成長戦略を描こうとしているのだろうか。

前元氏によると日本のXR市場は創成期であるという。未だビジネススキームの構築に挑戦する企業が登場し始めたばかり。Nianticなどの大手スタートアップも同様だ。

そこで現在は「競争」より「共創」を意識しながらスタートアップ同士で市場を成長させている最中であり、XR時代のコンテンツビジネスの形にいち早く到達し、世界を牽引することが日本発のXRエンタメ企業の宿命だと感じていると語る。

2023年までに、LBE(Location Based Entertainment)市場は2019年現在の10倍近く、1.2~1.3兆円程度の規模にまで成長するという。

Nianticのようなコンテンツ重視の巨大企業にはすぐには追いつけない。また、コンテンツだけでは飽きがきてしまう。Tyffonのようにテーマパークを建てることは多額のコストを費やす必要があり、かつ集客数が予想より下回る可能性があるなど施設側にとってのリスクが伴う。

そこで商業施設が導入しやすいAdd-onツールの文脈から「GaaS(Game as a Service)」という言葉を用いてARサービスを提案していくのがENDROLLのアプローチだ。加えて、先述した課題解決に基づいたデザイン戦略を用いて差別化を図るとのこと。

単なるARゲーム開発企業に終始するわけでも、受託やコンサルに終始するわけでもない。ARクラウド時代のUXを提案するデザイン企業として市場ポジションを確立する考えだ。

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