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今年開催の「InnovFest unBound」ピッチバトルから、100チームの頂点に立ったトップ5の顔ぶれを紹介

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本稿は、InnovFest unBound Singapore 2019 の取材の一部だ。 6月29日、シンガポールで開催された InnovFest unBound で、イベントの終盤に行われたユニリーバ協賛による Unilever Start-up Battle Final で、ファイナリスト5社がピッチした。アジアをはじめとする世界各国100チームからのエントリがあり、事前予選を通じてファイナ…

本稿は、InnovFest unBound Singapore 2019 の取材の一部だ。

6月29日、シンガポールで開催された InnovFest unBound で、イベントの終盤に行われたユニリーバ協賛による Unilever Start-up Battle Final で、ファイナリスト5社がピッチした。アジアをはじめとする世界各国100チームからのエントリがあり、事前予選を通じてファイナリストが絞り込まれた5チームが彼らだ。

ユニリーバは昨年、マーケティングテクノロジー分野のスタートアップ支援を目的として、Unilever Foundry を設立しており、2015年の Cannes Lions では、スタートアップのトップ50を選ぶコンペティション「Unilever Foundry 50」を新設し注目を浴びた。InnovFest unBound では毎年、ピッチバトルのスポンサーを続けている。

ピッチバトルのセッションの審査員を務めたのは次の方々。

  • Annie Luu 氏(General Manager, Investible)
  • Michael Lints 氏(Partner, Golden Gate Ventures)
  • Deepak Subramanian 氏(Home Care Category, Vice-President, APAC, Unilever)
  • Karen Gilchrist 氏(Reporter, CNBC)

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【優勝】Kora(インドネシア)

Kora は、インドネシアのスタートアップで、個人のネットワークにより小売流通を支援するスタートアップだ。現在、Poskora と呼ばれる販売を担当する個人がインドネシア国内に2,800人いて、500種類以上の消費者向け製品を取り扱っている。近所に住む Poskorra が、オンラインを通じて発注された商品を代金引換で持ってきてくれるイメージだ。

Kora は、E コマースでもなければ、店舗販売でもない、その間の需要をついたサービスモデルで、インドネシアで人気を集めているようだ。2022年には、インドネシアのスマートフォンユーザは32%に達するとみられているが、それでもスマートフォンを通じたモバイルコマースのシェアは2%程度にしかならない。

インドネシアでは、インターネットやモバイルを使った E コマースは、依然としてマネタイズが定着しづらい課題があり、一方で、交通などの理由からオフラインの小売サービスが極めて便利だというわけでもない。この点をうまく突いた形だ。2023年には600万世帯にサービスを提供し、インドネシア最大の仮想的な小売チェーンを築き上げたいとしている。

【優勝】Rytle(ドイツ)

 

Rytle は、荷物の都市間およびラストマイルまでの配送を IoT 荷台を使ってスムーズかつスマートに届けようというスタートアップ。ハブ・アンド・スポーク型の物流ネットワークにおいては、都市間つまりハブ間は大型のトラックなどで運送し、そこから最終目的地まではバイクや小型の交通手段で届けることになる。

非効率なのは、このトラックなどから小型交通手段への載せ替えの手間だ。Rytle ではトラックから独自に開発した三輪自転車にスワップできる IoT 対応の荷台を開発。届け先も荷台毎にオンラインで管理されているため、簡単に載せ替えができる。荷物の積み下ろしが省略できるため、対応する人の負荷が減り10倍以上効率化されるとしている。

 

ラストマイル配送が簡略化されることで、この部分のクラウドワーキングも可能になり、ギグワーカーなどの労力できるのも特徴。荷台は IoT で管理されているため、届けられる荷物が行方不明になるなどのリスクも最小化される。

そのほか、入賞はしなかったもののファイナリストとしてピッチ登壇したスタートアップは次の通り。

Fairbanc(バングラデッシュ、但し会社登記としてはアメリカ)

Fairbanc は、新興国市場の中小企業向けに作られたマイクロファイナンス(小口金融)プラットフォームだ。新興国市場に適応するためフィーチャーフォンでも対応でき、銀行化されていない人々(unbanked)を対象とするため、担保やクレジットヒストリーも必要としない。

AI プラットフォームにより、大規模サプライヤーとの取引内容や、ケータイ電話を通じてやり取りされた入出金状況から信用状況を査定、Fairbanc が提携するサプライヤーから商品を〝つけ買い〟することが可能になる。小売業主にとっては資金不足からの仕入抑制が不要となり、サプライヤーにとっては販路開拓や在庫の回転改善に繋がる。

Perx(シンガポール)

Perx は、AI を活用した顧客エンゲージメントおよびロイヤリティプラットフォームを提供する企業だ。SaaS ロイヤリティマネジメントシステムと、オフラインおよびオンラインのエンゲージメントに対するオムニチャネルのマーケティング技術とを組み合わせた統合型ソリューションによって企業をサポートする。

顧客データや好みを収集し、最終的には顧客毎にパーソナライズされた消費者体験を提供したいという。消費者体験については、ゲーミフィケーションを取り入れることで、企業に対し新たな売上の還元を目指す。シリーズ A や B ラウンドを通じて、これまでに Golden Gate Ventures や LINE Ventures、Facebook 共同創業者の Eduardo Saverin 氏らから1,100万米ドルを調達済。(関連記事

Fabulyst(インド)

オンラインで商品を購入するユーザの6割は、E コマースサイトに備えられた検索エンジンを使って、欲しい商品にたどり着けないことだという。このような不満は、特にファッションアイテムの分野で顕著だ。インド工科大学ハイデラバード校出身の創業者らが設立した Fabulyst は、画像解析と独自アルゴリズムにより、商品に対して、人がつけるタグ付けよりもより詳細なタグ付けを行う。

検索にうまくヒットするタグ付けを1ヶ月おきに見直し、適切なタグ付けを行うことで消費者が欲しい商品にたどり着きやすくする。E コマース事業者数十社以上に導入。各社の E コマースプラットフォームとは、API 連携や XML によるデータ出力が可能だ。

アジアの配車サービス大手Grab、東南アジアのスタートアップ支援と投資に向け「Grab Ventures」をローンチ

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東南アジアの配車サービス大手 Grab は、今やオンライン決済、金融、ショッピング、物流、フードデリバリーなど多数の分野に進出してきた。そして今日(5日)、同社は東南アジアの次世代テクノロジーリーダーを見つけ成長させ、この地域のイノベーションとデジタイゼーションを振興すべく「Grab Ventures」のローンチを発表した。 Grab Ventures は、シンガポールや東南アジアの政府機関や民間…

シンガポールで開催中のスタートアップカンファレンス「InnovFest unbound」に登壇した Grab の創業者兼 CEO Anthony Tan 氏
Image credit: Masaru Ikeda

東南アジアの配車サービス大手 Grab は、今やオンライン決済、金融、ショッピング、物流、フードデリバリーなど多数の分野に進出してきた。そして今日(5日)、同社は東南アジアの次世代テクノロジーリーダーを見つけ成長させ、この地域のイノベーションとデジタイゼーションを振興すべく「Grab Ventures」のローンチを発表した。

Grab Ventures は、シンガポールや東南アジアの政府機関や民間企業と協業し、東南アジアにおいて交通、物流、食料品、決済の問題を解決する技術を開発・成長させするグロースステージのテクノロジー企業を支援する。

Grab は6年目に入り、より確実な成長の時期を迎えつつある。Grab は、東南アジアの主要 O2O モバイルプラットフォームとして、より速やかにスケールすべく社内イノベーションに取り組んでいる。我々のビジネスにとって意味をなす分野において、他社との提携には常にオープンだ。Grab のビジネスを速やかに拡大し、新しい技術を探究し、新しいビジネスを可能にしてくれる適切な会社との提携や出資を模索することになるだろう。(Grab の CEO 兼共同創業者の Anthony Tan 氏)

シンガポールで開催中のスタートアップカンファレンス「InnovFest unbound」に登壇した Grab の創業者兼 CEO Anthony Tan 氏
Image credit: Masaru Ikeda

Grab が新サービスを従来の O2O モバイルプラットフォームに追加していく上で、Grab Ventures の存在により、速やかに新技術を開発し、急成長するビジネスを社内構築することが可能になるだろう。Grab はこれまでに、複数の移動サービス会社向けマーケットプレイス「GrabCycle」、インドネシアの大手 O2O プラットフォーム「Kudo」、自動運転向け AI ソリューション「Drive.ai」、新興市場向けモバイル決済プラットフォーム「iKaaz」に出資している。

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Grab Ventures はまた、東南アジアでの拡大を目指すグロースステージ・スタートアップ向けのアクセラレータプログラム「Velocity」をローンチすると明らかにした。今後24ヶ月にわたり、グロースステージ・スタートアップ8〜10社と提携することを目指し、Grab との強いシナジー効果が考えられるスタートアップには出資も行う。このプログラムでは、交通、食料品、物流、金融サービス分野からプログラム参加スタートアップを募集中だ。

シンガポールで開催中のスタートアップカンファレンス「InnovFest unbound」に登壇した Grab の創業者兼 CEO Anthony Tan 氏
Image credit: Masaru Ikeda

アクセラレータプログラム Velocity への申込に関心のある企業は、ventures.grab.com でより詳しい情報を入手することができる。

我々は、先人らの努力に基づいてビジネスを築きあげ、今度は他の東南アジアのテック企業に向けて、彼らが成功する道を開きたいと思う。Grab は東南アジアのスタートアップエコシステムを成長させる上で、積極的な役割を果たしていきたい。我々は、東南アジアに世界クラスのエンジニアリングを集め、多くのドライバー、配送パートナー、パートナーをより早く成長させる製品をはじめ、価値ある資産を伴ったテクノロジープラットフォームを開発した。それは、新たに何かを可能にするものだ。我々は、東南アジアでの展開を目指すグロースステージ・スタートアップを、Grab Ventures との提携に招きたい(Tan 氏)

シンガポールでは、能力開発、市場アクセス、スタートアップ支援、規制緩和支援、助成金に関して、Grab は IMDA(情報通信メディア開発庁)や Enterprise SG といった政府機関と提携している。

また、ゲームチェンジングな技術により、デジタル、物流、交通、フィンテック業界の問題解決や革新を起こす可能性のあるテック企業の成長を支援するという共通の目標を持って、EDB(経済開発庁)や EDBI(EDB の投資部門)も Velocity プログラムに初期パートナーとして参加している。

Grab は、同社モバイルアプリダウンロードの成長が、この1年間で4,500万件(2017年6月)から1億件(現在)に倍増したとしている。Grab は現在、シンガポール、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの217都市でサービスを展開している。

【via e27】 @E27co

【原文】

先週開催の「InnovFest unBound」ピッチバトルから、100チームの頂点に立ったトップ7の顔ぶれを紹介

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本稿は、InnovFest unBound Singapore 2016 の取材の一部だ。 先週、シンガポールで開催された InnovFest unBound で、イベントの終盤に行われたユニリーバ協賛による Unilever Start-up Battle Final で、ファイナリスト7社がピッチした。アジアをはじめとする世界各国100チームからのエントリがあり、事前予選を通じてファイナリスト…

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本稿は、InnovFest unBound Singapore 2016 の取材の一部だ。

先週、シンガポールで開催された InnovFest unBound で、イベントの終盤に行われたユニリーバ協賛による Unilever Start-up Battle Final で、ファイナリスト7社がピッチした。アジアをはじめとする世界各国100チームからのエントリがあり、事前予選を通じてファイナリストが絞り込まれた7チームが彼らだ。

ユニリーバは昨年、マーケティングテクノロジー分野のスタートアップ支援を目的として、Unilever Foundry を設立しており、2015年の Cannes Lions では、スタートアップのトップ50を選ぶコンペティション「Unilever Foundry 50」を新設し注目を浴びた(今年は6月21日〜22日に開催)。一連のスタートアップ関連の活動で、同社のこれまでの支出は1,500万ドルに達している。

シンガポールの Unilever Start-up Battle Final でも、マーケティングテクノロジーを持つスタートアップが上位に選ばれた。決勝の審査員を務めたのは、次の方々だ。

  • Marc Worth, Chairman & CEO, Style Media Group(ファッションやライフスタイルのトレンド予想を専門とするアドバイザリー会社)
  • Rahul Welde, Vice President of Media, Unilever
  • Lily Chan, Co-chairman, InnovFest unBound / CEO, NUS Enterprise

【優勝】NextUser(フランス/アメリカ)

賞金:5,000シンガポールドル(約40万円)

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NextUser は、マーケッターが一般的な CRM では得られない顧客分析について、複数のマーケティングツールを API 経由でインテグレートすることで情報を集約し、顧客特性の把握と分析を助けるソリューションだ。オンライン、オフラインなど、あらゆる顧客とのタッチポイントを捕捉し、ユーザの声を分析し、人工知能によりユーザ個々人のパーソナリティを予測することができる。

2013年3月にローンチし、商用展開は2014年10月から。ネスレやグーグルなどと提携しているほか、IBM Watson を使ったプロジェクトにも選抜。これまでに、Kima Ventures などシードインベスター7社から185万ドルを調達している。

NeoReach(アメリカ)

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NeoReach は、ブランド向けのインフルエンサー・マーケティング・プラットフォームを提供。300万人を超えるインフルエンサーが登録されており、デモグラフィックスやマーケティング成績別にカテゴライズされている。ダッシュボードが用意されており、インフルエンサーへの依頼ができるほか、ROI 計測も一見管理できる。

特徴としては、発注主のマーケティング担当者とインフルエンサーが直接やりとりでき、より深い分析ができること、300万人のインフルエンサーが登録されていること、発注履歴に基づいて、インフルエンサーのデータベースが構築できること。これまでに320万ドルを調達している。

今年に入って、Hip Stores がアジア数カ国でローンチさせた withfluence とも似ているが、 withfluence がコーセー化粧品「雪肌精」のインフルエンサーマーケティングに利用されていることからも、この種のサービスは、ユニリーバのような FMCG(Fast Moving Consumer Goods)分野の企業とは相性がよいのかもしれない。

See Chat(シンガポール)

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See Chat は、中小企業向けにユーザからの問い合わせをチャットで受け付ける環境を提供するプラットフォーム。オンラインサービスを提供しない企業に問い合わせをする場合、ユーザは電話をするかウェブサイトを検索してメールを送信することが多いが、電話番号を探したり、問い合わせメールアドレスを検索したりするのは手間である。

See Chat では企業名を入力し、メッセージボックスを開いて、宛先企業の担当者とチャットでやりとりができる。一つのアプリだけで、複数の企業への問い合わせを管理することができ、受付をする企業側からはバックエンドの CRM により顧客管理の効率化が図れ、顧客のエンゲージメントに役立てることができる。

LiveRoom(スリランカ)

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LiveRoom は、家具・バスグッズ・宝石類など、購入を検討している商品を選び、ユーザが拡張現実を使って自分の部屋に投影できるモバイルアプリ。実店舗、オンライン店舗の両方で利用でき、ユーザはサービスに加入する店舗でバーコードをスキャンすることにより、投影したい商品を選ぶことができる。加入店舗からの月額料金でマネタイズする。

AllSpark by Near(シンガポール)

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Near(旧称 AdNear)は、位置情報によるユーザ属性を推測する技術を展開するスタートアップだ。同社のサービス「AllSpark」では、近隣に何があるかの情報とユーザの位置情報を組み合わせることにより、広告主がユーザのターゲット層をとらえ、より的確なプロモーションを実現できるようにするソリューションを提供している。これにより、ハンバーガーショップの近隣にいるモバイルユーザに対し、ピザのファーストフードレストランへの誘導を図る、オンラインクーポンを配布する、というようなキャンペーンをユーザの現在位置に即してリアルタイムで実現できる。

同社は Sequoia Capital や Canaan Partners から出資を受けているほか、2014年10月にはグローバル・ブレインやオーストラリアの通信大手 Telstra から1,900万ドルを調達しており、これまでの調達総額は2,550万ドルに上る。昨年11月から、日本の DAC とは、同社の DMP「AudienceOne」とデータ連携を開始している

PrecisionBit(シンガポール)

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世界では、ソーシャルメディア上に1日18億枚の写真が投稿されている。一方、インフルエンサー・マーケティングなどで、マーケターが活用できているのは、基本的には、その写真に付されたテキストが頼りだ。テキストに何が書かれているかを集計することで、ユーザの動向やターゲティングを実施しているのが現状。

PrecisionBit では、写り込んでいる背景、人物、装いなどか投稿されている写真のコンテキストを分析し、さまざまなタグ付けによる分類分けを支援する。その結果として、例えば、ユーザが外出好きか、フィットネス好きか、ビーチ好きか、などを数値としてレーティングすることが可能になり、マーケターはより効果的なユーザターゲティングが可能になる。

K Wizdom(シンガポール)

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アジアの異なる市場に対して、それぞれの国のカレンダーやユーザ動向にあわせ、異なるキャンペーン/異なるチャンネルで、広告マーケティングを展開し、その運用を自動最適化できるプラットフォーム。機械学習により、運用を重ねるごとに運用アルゴリズムが改善されていく。

Facebook、MailChimp、Instagram、アドネットワークなどとは API により接続が可能。手動で実施する場合に比べ、作業は10倍のスピードにまで効率化可能で、ROI(投資対効果)も30%以上改善できるとしている。2014年5月に設立された同社は、AdPlusPlatform として、アジア各国の Eコマースサービスで採用されたり、大手広告代理店などと提携したりしている。

スタートアップのレジェンドYossi Vardi氏を招き、シンガポールで「InnovFest unBound」が開幕

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本稿は、InnovFest unBound Singapore 2016 の取材の一部だ。 例年この時期になると、シンガポールでは Smart Nation Innovations Week が開催される。Smart Nation とは、シンガポール政府が小さな国家であることを武器に、積極的に ICT を取り入れ、さまざまな規制緩和を実施することで、シンガポール人にとっても国際企業にとっても、便利…

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本稿は、InnovFest unBound Singapore 2016 の取材の一部だ。

例年この時期になると、シンガポールでは Smart Nation Innovations Week が開催される。Smart Nation とは、シンガポール政府が小さな国家であることを武器に、積極的に ICT を取り入れ、さまざまな規制緩和を実施することで、シンガポール人にとっても国際企業にとっても、便利な社会環境を実現しようとするイニシアティブだ。期間中は、さまざまなテクノロジーイベントが開催され、多くの場合、欧米に端を発するの有名テクノロジーイベントのアジア・バージョンで構成されている。

昨年は、ロンドン発の Founders Forum のアジア版が Raffles Hotel で開催され、ブロガーの Robert Scoble(UploadVR)や Mike Butcher(TechCrunch UK)など有名人も招かれていた。今年は、InnovFest unBoundForbes Under 30 Summit AsiaTech SaturdayBig Bang Data という4つのイベントで構成され、一週間を通しての参加者のべ人数は1万5,000人に上る見込みだ。その幕開けとも言える InnovFest unBound が17日、3,000人以上の参加者、350以上のブース出展者を集め、シンガポールを象徴する Marina Bay Sands で始まった。

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InnovFest unBound はロンドンを拠点に開かれているスタートアップ・カンファレンスで、オーガナイザーである unBound Media(または、AcreWhite という名前でも呼ばれる)の CEO Daniel Seal 氏は、イスラエル出身の伝説的起業家・投資家の Yossi Vardi 氏とともに、さまざまなスタートアップ活動を行っている。ICQ の発明者としても有名な Vardi 氏は、母国イスラエルでのカンファレンス DLD のチェアマンに加え、スペイン・バルセロナの Mobile World Congress で併催される 4YFN(4 years from now)の創設者でもある。InnovFest unBound がシンガポールで開催されるのは2回目ということだが、今回は NUS Enterprise(シンガポール国立大学の起業支援組織)が共催者となっており、Vardi 氏を牽引役に、世界中のスタートアップ・ハブのエッセンスをシンガポールに持ってきました、というのが、今回のイベントに隠された文脈のようだ。イスラエルが世界中から Startup Nation と呼ばれていることになぞらえ、シンガポールを Smart Nation と呼んでほしい——そんな意図も感じられる。

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InnovFest unBound Singapore 2016 オーガナイザーの Yossi Vardi 氏(右)と Lily Chan 氏(左)

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イベントの冒頭、シンガポールの Daniel Seal 氏、Yossi Vardi 氏らとともに登壇した、シンガポールの Smart Nation 担当大臣 Vivian Balakrishnan 氏は、

シリコンバレーやイスラエルのモデルを、そのままシンガポールにコピーしたとしても成功しない。若い世代は、それぞれが新しいライフスタイルを探求していて、それにあわせてアプリを作り、世界を変革させようとしている。我々は、彼らを支援するためにここにいるのだ。(中略)

(シンガポールの研究学園地域の)One North で無人車の実験が始まっていることに象徴されるように、シンガポールは(規制を緩和して実験活動を促進する)regulatory sandbox としての存在でありたい。

…と語った。

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Yossi Vardi 氏(右)に質問を受ける、シンガポール Smart Nation 担当大臣 Vivian Balakrishnan 氏(左)

あわせてこの日、Blakrishnan 氏は、シンガポール首相府傘下の NRF(National Research Foundation、シンガポール国立研究財団)が、不動産大手の Capitaland Limited、IT大手の DeClout、農業ビジネスの Wilmar International、サプライチェーン大手の YCH Group の4社それぞれの CVC に対し、1,000万シンガポールずつ(約7.9億円ずつ)を拠出し、スタートアップの育成を助成することを表明した。

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スタートアップ350社のカオスなブース空間

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出展者350社に上るスタートアップ・ブースにも圧倒され、その様子は、まさにカオスという表現が的確かもしれない。ロシアの Skolkvo、イタリアの Italia StartupOrange Fab Asia などなど、世界中のスタートアップが結集し、所狭しと来訪者にピッチを行っていた。典型的なスタートアップ・カンファレンスと異なり、Smart Nation の期間中は、NUS(シンガポール国立大学)や各種 Polytechnic(技術専門大学)などの研究成果も披露されているのが特徴的だ。ビジネスモデルなどはまだ無く、基礎的な技術研究に終始しているものが多いが、これらの中から世界の明日を変える発明が出てくるのかもしれない。

アジアのスタートアップ市場では、VC やアクセラレータ/インキュベータが飽和状態え、互いの競争や差別化は激しいものになりつつある。特に、アクセラレータ/インキュベータについては、いわゆる Y Combinator モデル追随型の一辺倒から、WeWork に代表されるコワーキング・スペースのチェーンモデルと、アメリカの Expa や日本の Mistletoe に代表される Startup Studio のモデルに二極化しつつあるようだ。

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会場では、起業家とともにプロジェクトを立ち上げる Startup Studio に何社か会うことができた。VC(および投資資金)とスタートアップの需給バランスから見て、現在は VC にとって投資条件にはまる有望スタートアップが不足する中、VC においても、ハンズオン・サポートを強調するところが増えてきているので、これは時代の流れかもしれない。

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Santora Nakama(日本語の「三虎仲間」に由来)はバンコクのシーロムに拠点を置く Startup Studio で、アイデアを持った起業家を迎え入れ、ともにプロジェクトを立ち上げることを目的としている。シンガポールにも拠点を持っており、フォローオンの資金調達やパートナー探しにも協力しているそうだ。

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シンガポールの AppLabx も同様に Startup Studio を運営している。物理的な拠点は持っていないので、仕事場が欲しいスタートアップは別途コワーキング・スペースなどと契約する必要があるが、むしろ、それ以外のビジネス開発やシステム開発の側面から起業家を支援するとのこと。Managing Director の Gilbert Neo 氏によれば、オープンイノベーションのような大企業が顧客なわけではないが、新しいものを開発したい課題を持つ中小企業を顧客に抱えており、彼らに予算を拠出してもらって、スタートアップを支援するモデルのようだ。

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シンガポールのテレビ局 Channel News Asia や Media Corp、新聞の Straits Times などを運営するコングロマリット Singapore Press Holding(略称 SPH)と、シリコンバレー・サニーベイルのアクセラレータ Plug & Play Tech Center がシンガポールで共同で運営する SPH Plug & Play は、メディアビジネスに特化したスタートアップを育成するアクセラレータだ。現在進行中のバッチからは Hyperlinked.io というスタートアップが出展していた。

ブログやニュースサイトの「関連記事(ネイティブ広告を含む)」よりも、文中のハイパーリンクの方がクリックされる可能性が高いことに着目。一般的なニュースサイト(英語の場合)では、一つの記事に平均7つの固有名詞が含まれることがわかっており、これらを独自開発のエンジンにより、同じサイト内の関連記事やネイティブ広告にハイパーリンクで関連づけることで、ビジターの回遊率アップに貢献する(サンプル記事)。StraitsTimes が導入している Outbrain や、Los Angeles Times が導入している Taboola といったレコメンドエンジンがコンペティター。現在、エンジェルラウンドで35万ドル(米ドル)を調達中だ。

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タイから出展している Matrix DSLRs Control Suite は、12台の DSLR(一眼レフ)が組み合わせられたパッケージで、映画製作者などが一つの被写体を同時に違うアングルから撮影するのを可能にする。撮影しておいて後からポストプロダクションでアングルを決めたり、複数アングルの映像が必要になる 3D 映画の撮影に使ったり用途は数知れない。DSLR を12台も使っていることから、高価であり、重量も相当なものになるので移動撮影には適さないが、聴衆には今までに見たことのない映像体験を届けることができるソリューションだ。

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ベトナム発の emoTalks は、例えば、オフィスの受付嬢や営業系社員の表情をモニタし、画像認識によりスマイルの度合いを測定。スマイルが足りなければ、上司を通じて、または、直接本人に改善を促すプラットフォームだ。日本などの先進国で導入すれば、社員の精神衛生上よくないとの批判を浴びる可能性はあるが、スマイルが少ないと言われる旧共産圏のサービス業などでは高価を発揮するかもしれない。

Urban Experience

最後に、1日目のイベント終了後に、チャイナタウン近くのナイトスポット Ann Siang Hill(安祥山)のバーやパブなど8店舗を貸し切って行われた「Urban Experience」と名付けられたミートアップ/パブクロール・パーティーの模様で本稿を締めたい。各店舗ごとに、NUS Enterprise、SingTel Innov8 らがスポンサードする形で、夜遅くまでイベント参加者にビールやワインが振る舞われた。

なお、InnovFest unBound の2日目には、ユニリーバがスポンサードするスタートアップ・ピッチコンペティションの模様を中心にお伝えする予定だ。乞うご期待。

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