本稿は、InnovFest unBound Singapore 2016 の取材の一部だ。
先週、シンガポールで開催された InnovFest unBound で、イベントの終盤に行われたユニリーバ協賛による Unilever Start-up Battle Final で、ファイナリスト7社がピッチした。アジアをはじめとする世界各国100チームからのエントリがあり、事前予選を通じてファイナリストが絞り込まれた7チームが彼らだ。
ユニリーバは昨年、マーケティングテクノロジー分野のスタートアップ支援を目的として、Unilever Foundry を設立しており、2015年の Cannes Lions では、スタートアップのトップ50を選ぶコンペティション「Unilever Foundry 50」を新設し注目を浴びた(今年は6月21日〜22日に開催)。一連のスタートアップ関連の活動で、同社のこれまでの支出は1,500万ドルに達している。
シンガポールの Unilever Start-up Battle Final でも、マーケティングテクノロジーを持つスタートアップが上位に選ばれた。決勝の審査員を務めたのは、次の方々だ。
- Marc Worth, Chairman & CEO, Style Media Group(ファッションやライフスタイルのトレンド予想を専門とするアドバイザリー会社)
- Rahul Welde, Vice President of Media, Unilever
- Lily Chan, Co-chairman, InnovFest unBound / CEO, NUS Enterprise
【優勝】NextUser(フランス/アメリカ)
賞金:5,000シンガポールドル(約40万円)
NextUser は、マーケッターが一般的な CRM では得られない顧客分析について、複数のマーケティングツールを API 経由でインテグレートすることで情報を集約し、顧客特性の把握と分析を助けるソリューションだ。オンライン、オフラインなど、あらゆる顧客とのタッチポイントを捕捉し、ユーザの声を分析し、人工知能によりユーザ個々人のパーソナリティを予測することができる。
2013年3月にローンチし、商用展開は2014年10月から。ネスレやグーグルなどと提携しているほか、IBM Watson を使ったプロジェクトにも選抜。これまでに、Kima Ventures などシードインベスター7社から185万ドルを調達している。
NeoReach(アメリカ)
NeoReach は、ブランド向けのインフルエンサー・マーケティング・プラットフォームを提供。300万人を超えるインフルエンサーが登録されており、デモグラフィックスやマーケティング成績別にカテゴライズされている。ダッシュボードが用意されており、インフルエンサーへの依頼ができるほか、ROI 計測も一見管理できる。
特徴としては、発注主のマーケティング担当者とインフルエンサーが直接やりとりでき、より深い分析ができること、300万人のインフルエンサーが登録されていること、発注履歴に基づいて、インフルエンサーのデータベースが構築できること。これまでに320万ドルを調達している。
今年に入って、Hip Stores がアジア数カ国でローンチさせた withfluence とも似ているが、 withfluence がコーセー化粧品「雪肌精」のインフルエンサーマーケティングに利用されていることからも、この種のサービスは、ユニリーバのような FMCG(Fast Moving Consumer Goods)分野の企業とは相性がよいのかもしれない。
See Chat(シンガポール)
See Chat は、中小企業向けにユーザからの問い合わせをチャットで受け付ける環境を提供するプラットフォーム。オンラインサービスを提供しない企業に問い合わせをする場合、ユーザは電話をするかウェブサイトを検索してメールを送信することが多いが、電話番号を探したり、問い合わせメールアドレスを検索したりするのは手間である。
See Chat では企業名を入力し、メッセージボックスを開いて、宛先企業の担当者とチャットでやりとりができる。一つのアプリだけで、複数の企業への問い合わせを管理することができ、受付をする企業側からはバックエンドの CRM により顧客管理の効率化が図れ、顧客のエンゲージメントに役立てることができる。
LiveRoom(スリランカ)
LiveRoom は、家具・バスグッズ・宝石類など、購入を検討している商品を選び、ユーザが拡張現実を使って自分の部屋に投影できるモバイルアプリ。実店舗、オンライン店舗の両方で利用でき、ユーザはサービスに加入する店舗でバーコードをスキャンすることにより、投影したい商品を選ぶことができる。加入店舗からの月額料金でマネタイズする。
AllSpark by Near(シンガポール)
Near(旧称 AdNear)は、位置情報によるユーザ属性を推測する技術を展開するスタートアップだ。同社のサービス「AllSpark」では、近隣に何があるかの情報とユーザの位置情報を組み合わせることにより、広告主がユーザのターゲット層をとらえ、より的確なプロモーションを実現できるようにするソリューションを提供している。これにより、ハンバーガーショップの近隣にいるモバイルユーザに対し、ピザのファーストフードレストランへの誘導を図る、オンラインクーポンを配布する、というようなキャンペーンをユーザの現在位置に即してリアルタイムで実現できる。
同社は Sequoia Capital や Canaan Partners から出資を受けているほか、2014年10月にはグローバル・ブレインやオーストラリアの通信大手 Telstra から1,900万ドルを調達しており、これまでの調達総額は2,550万ドルに上る。昨年11月から、日本の DAC とは、同社の DMP「AudienceOne」とデータ連携を開始している。
PrecisionBit(シンガポール)
世界では、ソーシャルメディア上に1日18億枚の写真が投稿されている。一方、インフルエンサー・マーケティングなどで、マーケターが活用できているのは、基本的には、その写真に付されたテキストが頼りだ。テキストに何が書かれているかを集計することで、ユーザの動向やターゲティングを実施しているのが現状。
PrecisionBit では、写り込んでいる背景、人物、装いなどか投稿されている写真のコンテキストを分析し、さまざまなタグ付けによる分類分けを支援する。その結果として、例えば、ユーザが外出好きか、フィットネス好きか、ビーチ好きか、などを数値としてレーティングすることが可能になり、マーケターはより効果的なユーザターゲティングが可能になる。
K Wizdom(シンガポール)
アジアの異なる市場に対して、それぞれの国のカレンダーやユーザ動向にあわせ、異なるキャンペーン/異なるチャンネルで、広告マーケティングを展開し、その運用を自動最適化できるプラットフォーム。機械学習により、運用を重ねるごとに運用アルゴリズムが改善されていく。
Facebook、MailChimp、Instagram、アドネットワークなどとは API により接続が可能。手動で実施する場合に比べ、作業は10倍のスピードにまで効率化可能で、ROI(投資対効果)も30%以上改善できるとしている。2014年5月に設立された同社は、AdPlusPlatform として、アジア各国の Eコマースサービスで採用されたり、大手広告代理店などと提携したりしている。
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