累計メッセージ数10億件超、平均5秒でチャットを開始できる匿名の暇人専用トークアプリ「ひまチャット」

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なんだか暇でつまらないなという時、皆さんは何をしますか?暇つぶしのために友達とチャットを送ったり、スマホでゲームをしたり、本を読んだり、人によってさまざまでしょう。18歳から24歳の「暇」な男女が集う匿名チャットアプリが、「ひまチャット」(iOSAndroid)です。暇な時にアプリを立ち上げると、話し相手がすぐに見つかります。

2014年4月にサービスを開始したひまチャットの累計アカウント数は、100万を突破しました。同年12月時点で1,500万件だったメッセージ総数は、1年間後には10億メッセージに到達。直近で見るメッセージ総数は月間6,000万件ほどで、毎月伸び続けています。ひまチャットを運営するALTR THINKの代表 森口拓也さんにお話を伺いました。

環境に変化がある18〜24歳に人気

暇な時に匿名でチャットすると聞くと、何となく中高生など若い世代をユーザーに思い浮かべます。ところが、Google Analyticsで見るコアな年齢層は、18歳〜24歳と大学生や社会人になって間もない人たちが中心です。中高生には学校のクラスや部活など固定したコミュニティがあるのに対して、18〜24歳は大学や職場など所属するコミュニティに変化がある時期。人間関係に広がりが見られるこの時期に、日常の外にも繋がりを求めているのかもしれません。

App StoreやGoogle Playのひまチャットの紹介文を見てみると、まず一番に「暇人専用」トークアプリという言葉が目に飛び込んできます。暇人専用と言い切ってしまうのはなかなか勇気がいる判断のような気がします。「見てみて、これ暇人専用のアプリなの」と声を大にして周囲に紹介しにくいだろうから。この点の捉え方は、地域によって異なるのだとか。

「地域別に見ると、東京ではApp Storeの検索など自然流入するユーザーが目立ちます。一方、ひまチャットのユーザーは、その30%が大阪府に集中しています。大阪では、どうもこの「暇人専用」という表現をユーモアとして捉えて、「面白いよ!」と盛り上がってくれるようです。県民性が現れていて興味深いです」

「最速で暇つぶし」の成功体験を生むための工夫

ひまチャットの使用時間帯は22時〜23時がピークですが、平日午前10時に始まった取材の最中、森口さんがひまチャットで「ども」を送ってみたところ、5〜件送って3件にすぐに返事がありました。「ども」とは、ひまチャット独自の挨拶で、チャットしたい相手に送るもの。ユーザー1人あたりの1日のども送信数は平均8件、送信メッセージ数の平均は1日約60件に及びます。

ただチャットをするだけなら、実名と匿名共にユーザーには山ほど選択肢があります。競争が激しい中、ユーザーがひまチャットを選ぶ理由は、チャット相手が見つかる即時性にあります。暇だなと思ってアプリを立ち上げたら、平均5秒で話し相手が見つかる。ユーザーの同時接続数が50人を超えた辺りからこの成功体験が生まれるようになり、暇つぶしの解消という目的が達成されています。

もう一点、チャット相手がすぐに見つかるための工夫が、プロフィール的機能を取り除くこと。ユーザーが登録するのは、ニックネーム、アイコン、そして10文字の紹介だけ。自己紹介や性別など情報量が多ければ多いほど、吟味してチャット相手を選ぶようになります。プロフィール機能をできる限り簡易化することで、ユーザーはサービスのコア体験である「すぐにチャット」に到達することができるのです。

チャットを始める前に離脱するユーザーへの対策

「ども」をランダムに送信する画面
「ども」をランダムに送信する画面

ひまチャットは、その前身の「暇スイッチ」というアプリがリニューアルして誕生しました。暇スイッチは、暇をしている友達とリアルタイムに繋がれるというコンセプトでした。ところが、サービスの使われ方を観察してみると、むしろ知らない人とのコミュニケーションを求めている人が多いことが判明。これにヒントを得て、現在の「暇な相手と匿名で繋がれる」アプリにピボットしました。

多少の変動はあるものの、サービス開始から現在に至るまでApp StoreとGoogle Playで「チャット」や「暇」といったキーワードで検索すると、上位に表示されてきました。大々的なプロモーションを実施することなく、暇つぶしの手段を求めるユーザーによるオーガニックな流入が増え続けています。

アプリを見つけてダウンロードはしてくれるものの、以前はダウンロード後に一度もチャットすることなく離脱するユーザーが目立ちました。そこで、アプリ立ち上げ後、まず最初に5人に対して「ども」を送るよう流れをABテストで試してみることに。Aは、チュートリアルの最中に5人にどもを送らないと、チュートリアルが突破できないもの。

一方のBは、まだ誰ともチャットしていない履歴ゼロのチャット一覧ページに「ランダムで5人にども送る」ボタンを設置。その結果、Bでは多くのユーザーがボタンを押下し、暇つぶしにチャットという体験を味わってもらうことに成功しました。

スマホのチャットUIが持つ可能性

ひまチャットを運営するALTR THINKの代表 森口拓也さん
ひまチャットを運営するALTR THINKの代表 森口拓也さん

ひまチャットの主な収益源は、アプリ内に表示する広告ですが、2015年12月には「ひまポイント」を導入しました。他のユーザーから「ども」を受け取ったり、動画広告を視聴したり、またアプリ内課金したりすることでポイントを入手できます。ポイントを貯めることで、送信できる写真の枚数や使える顔文字スタンプの種類を増やしたりできます。

ミニマルなサービス体験を提供するため、ひまチャットでは過去メッセージの表示件数を20件までに制限しています。ひまポイントを使って制限を解除すれば、全てのメッセージを閲覧できるようになります。また直近では、今は10文字にとどまる紹介文を最大30文字まで入力できるように。サービス内で生まれる欲求をポイントとして消費してもらうさまざまな形を検討しています。

スマホ上のチャットUIに大きな可能性を感じていると話す森口さん。物心がついた頃からスマホを持ち歩いている若者はもちろんのこと、広い世代にとってチャットは慣れ親しんだUIになりつつあります。今後、消費者の可処分時間がチャットUIに蓄積されていく。上手くスケールすれば、例えばAIを用いたレコメンデーションなど、さまざまな技術や事業をその上に乗せて展開できるはずです。

「消費者の空き時間がチャットUIに集まるようになると、くだらない会話をしていたところから、自然と購買行動や何か別のアクションを起こさせるようなことが可能になっていくはずです。ひまチャットを含むチャットサービスの運営を通じて、チャットに関する知見が溜まってきているので、今後のサービス展開にも活かしていきたいです」

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