望むかどうかを問わず、近年対面でのコミュニケーションは希薄となり、テキストメッセージでのやり取りが急速に増えている。人々が指を用いて話すこの新しい時代には、biaoqing(表情)がわかりやすいものから暗喩的なものまで様々な気持ちや感情を伝える役割を担い、日々のコミュニケーションにおいて重要な要素になっている。
この新しいコミュニケーション手段は非常に一般的になっており、チャットグループでは純粋にテキストだけで会話が行われることは極めて稀だ。アメリカで2015年に発信された450億件のメッセージのうち、全体で60億件がデジタルのメッセージであった。拡大するこの市場では Giphy のようなスタープロジェクトが成長を遂げ、最新の資金調達ラウンドでの同社の評価額は6億米ドルにのぼった。
BiaoqingYun(表情雲)は、中国版 Giphy だ。同社は自身のサービスを、パーソナライズされた表現とオンラインコミュニケーションのためのプラットフォームと位置付けている。何億人ものモバイルユーザがアニメーション GIF、スタンプ、絵文字などの楽しく魅力的なツールを使ってコミュニケーションをとることができるという。同社は今年1月、シリーズ A+ ラウンドで金額非公表の資金調達を行ったばかりだ。
上海を拠点とするこのスタートアップは、アバターデザインをキュレーションするサービス Siyanhui(似顔絵)から生まれた。その後、オリジナルのコンテンツの作成、コンテンツのライセンス供与、SNS やメッセージアプリ上のコンテンツシェアのためのAPI提供など、デジタルコミュニケーションのあらゆる側面を強化する本格的なプラットフォームに成長した。
同社の主力製品 BiaoqingSoSo API(表情捜捜 API)を利用したサービスでは、エンドユーザが会話やソーシャルフィードで GIF を共有できる。このAPIは、Alipay(支付宝)、WeChat(微信)、QQ、ライブストリーミングプラットフォームの musical.ly、Tinder のようなデートアプリの Tantan(探探)、エンタープライズ・ソフトウェアの Fxiaoke(紛享銷客)など、中国トップクラスのサービスに採用されている。このAPIでは、これまでに500万件を超えるGIFが保存されている。同社によると1日に1億件以上の検索リクエストがあり、エンドユーザは5億人に達するという。
さらに同社は、スタンプ検索エンジン BiaoqingSoso(表情捜捜)、さまざまな機能を備えたスタンプショップ SDK やクラウドサービスなど、GIF やスタンプなどエクスプレッションに関する製品ラインを網羅している。
BiaoqingYun はこれまで中国市場に集中し、国境を越えて拡大する試みは極めて限定的だった。現在では多くの中国スタートアップと同様に、本拠地を越えてビジネスの拡大を狙っている。
スタンプ販売のスタートアップ Swyft Media の前役員Grant Long氏は、今年初めに Biaoqing Yun に最高戦略責任者(CSO)として加わった。ニューヨークに拠点を構えていた Swyft Media は2015年、Monotype Imaging によって買収された。同氏は Swyft Media を去り、マーケット、競争原理、チームについて学んだ後、最終的に Biaoqing Yun に加わることとなった。
中国に豊富にある成長および経済的機会を無視するのは愚かな話です。中国には収入が増加し購買欲の高いモバイルインターネットユーザが非常に多くいます。世界のあらゆる場所で拡大している絵文字社会現象ですが、中国ではまだ商業化されていません。(Grant 氏)
Grant 氏は次のように付け加えた。
しかし、このビジネスを簡単に決断できた理由は、リスクを負ってもよいと思えるフレンドリーで信頼できる人からなる、非常に有能で経験豊富なチームと出会えたことです。新しいベンチャーにはリスクが伴います。逆境に勝ち、大成功を収める最良の方法は、素晴らしいチームと仕事をすることなのです。
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