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PR視点のメルカリ・コーポレート戦略ーーブランドや採用への効果、ネガティブをどう伝えるか(後編)

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前半ではパブリックリレーションズ視点でのメルカリ「バリュー」について整理しました。後半も引き続き、小泉さんのお話をヒントに、PR視点がどこにあったのか紐解いてみたいと思います。 ブランドを作るオープンな情報共有 2015年3月、メルカリは物流大手ヤマト運輸と業務提携を結びます。創業2年のスタートアップとしては異例なのですが、この時の交渉の裏側を小泉さんはこう明かしています。 「日本で勝ち切るために…

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写真左から日本経済新聞社の奥平和行編集委員とメルカリ取締役社長の小泉文明さん

前半ではパブリックリレーションズ視点でのメルカリ「バリュー」について整理しました。後半も引き続き、小泉さんのお話をヒントに、PR視点がどこにあったのか紐解いてみたいと思います。

ブランドを作るオープンな情報共有

2015年3月、メルカリは物流大手ヤマト運輸と業務提携を結びます。創業2年のスタートアップとしては異例なのですが、この時の交渉の裏側を小泉さんはこう明かしています。

「日本で勝ち切るために優先順位を考えた。フリマアプリはバリューチェーンの中にロジスティクスが含まれるので、ここを損なうと体験がよくなくなる。だから1年以上かけてヤマト運輸に提案をしていた。

(売上ゼロにも関わらず提案を受け入れてくれた理由について)元々大企業にいたので、当時の上司に紹介してもらいました。ベンチャーは交渉して下から持って行ってもダメなんです。上から行けるルートをしっかり探すべき。また、会うだけじゃダメで、私は当時のヤマト運輸の決算説明会資料を読み込んで、彼らのストラテジーをまず理解した。その上で『B2Cを増やす』という文脈があったので、それに対してメルカリがどう役に立つのかを説明したんです」(小泉さん)。

なるほど、という納得感のあるエピソードです。実はこのカンファレンス全体もそうだったのですが、こういうディティールまで迫るような内容を各所で共有していたんですね。別にコーポレートのノウハウなんて普通に考えれば共有するものではありませんし、穿った見方をすれば競合に塩を送ることになりかねません。

でもそれぐらい専門的かつ内容のある情報を公開することで、正しいターゲットに正しい情報が伝わり、かつ、それを口にして他に伝えたくなるという効果が期待できるのです。カンファレンスの手法は一般的で、例えば金融分野ではマネーフォワード、IoT関連ではソラコムがそれぞれ大規模な定期イベントを持っていたりします。

またもう少し小さい取り組みとして、最近ではSmartHRのコーポレート資料がソーシャル上で話題になっていました。給与テーブルまで開示したもので、同社のオープンな社風、ロジカルな考え方、そしてサービスの急成長ぶりを表現することに成功しています。こういう情報は「マス層」に届くことはありませんが、彼らが期待する新しい社員だったり、ステークホルダーに届けるには十分な方法だと思います。

採用をエンジンにしたPR

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2016年末に実施した海外インターンシッププログラム

メルカリのパブリックリレーションズ活動で忘れてはいけないものに採用があります。特に社員の紹介によるリファラル採用はよく耳にする話題で、数百人規模がこの経路で入社しています。ただこれも結構な積み上げがあったそうです。

「(リファラル採用の取り組みを聞かれて)最初のフェーズは元部下や近場ですね。次のフェーズの前半はエージェントコミュニケーション。勉強会やって母集団を作ったりしました。名前が知れてくるとブランドを意識し始めるので、Wantedlyを使ってブログっぽいことをやったりとか。

リファラルの『フェーズ1』は経営者がやります。1年ぐらいやって社員経由はゼロです。そうこうしてるとリファラル経由の社員が入ってくるので『フェーズ2』に進みます。オウンドメディア作っても、バリューがあるから働き方もそれで説明ができます。これをやらないのに社員に『リファラルだ!』って言っても無理」(小泉さん)。

メルカリのリファラル採用にPR視点が強く影響している件については、以前のこちらの取材で書きました。情報により人が動き、また入ってきた人が人を繋ぐ。こういうエコシステムを経営陣が設計していた様子がよくわかります。

またこれも話題になりましたが、メルカリは2016年末に学生をインターンシップとして米国派遣するプログラムを発表しています。これについて小泉さんは優秀な学生獲得以外にもうひとつ目的があったと明かしています。

<参考記事>

「インターンシッププログラムは通常の会社ではコスト的に非効率です。でも、海外に本気というメッセージを含めたかったんです。実利で目に見える効果と波及の無形価値を考えて設計していました」。

なるほど。言われてみれば確かにあの頃から海外進出の話題が増えました。

ネガティブをどう伝えるか

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メルカリはサービスクローズの後、ソウゾウの新サービス開発を伝える

さて、メルカリのPR視点考察もそろそろ終盤です。最後は「ネガティブ」の扱いについて少し掘ってみます。ちょうど、カンファレンス前後にメルカリでは新サービスのシャットダウンを伝えていました。

「会社のリソースは大切なので、このアプローチ違うなと感じたら撤退は早く判断する。ただ、止めるっていうのはハレーションが起きるので怖いです。時に厳しいコミュニケーションをしないといけない。止める時にはメンバーのメンタルケアもするし、メルカンなどで透明性高く伝えることもやります。この社員が会社に紐付いているのか、それともプロダクトに紐付いているか。会社に貢献したいという思いがあれば次のチャレンジに向かってくれる」。

サービス停止というのは創業者やプロダクトオーナーであれば、なかなか決断できないものです。また、「失敗」という後ろ向きな話題になりがちですので、情報として表に出さず、ひっそりとクローズするという例も多いです。あれ、いつのまにかなくなってた、という。

もちろん影響範囲の大小ありますが、このタイミングでの正しい情報開示が社会や社員との関係をスムーズにしてくれる役割を果たすことがあります。

また別事例ですが、ライブコマースを仕掛けていた「PinQul」が開始9カ月でクローズするという話題がありました。ピボットなどの事案の場合、クローズはひっそりとやって、再オープンの時に取材依頼をするというパターンが多いです。

<参考記事>

しかし、いい時ばかりではなく、悪い時にしっかりとお話をするという姿勢はスタートアップにとって何より大切な「社会からの信頼」を得る上で非常に重要です。実際、私が目にしたソーシャル上での意見はポジティブが多い印象でした。

また、一緒に働いているメンバーとの関係も大切です。プロジェクトを離れて別の道を歩むことになっても、その時にナイスチャレンジをしたチームのメンバーなのか、うやむやに失敗したプロジェクトのワンオブゼムだったのかでは全く見え方が異なります。

ネガティブというのは社会が話を聞きたいタイミングでもあります。当事者にとっては辛い場面かもしれませんが、ここで逃げずにしっかりと社会との関係を作る機会と捉えられるかどうかで次の展開は変わるのではないでしょうか。

最後に

さて長い取材でしたが、メルカリをパブリックリレーションズの視点で紐解くという考察は一旦これで終了です。改めて整理してみると次のポイントが見えてきました。

  • PR視点におけるミッション、バリューの重要性
  • 多彩なツールによる情報網とタイミング構築
  • 発信者(自社、社員、第三者)が話したくなる話題づくり

前半にも書きましたが、パブリックリレーションズの視点はパブリシティやメディアリレーションのような一部機能というより、もうひとつ上の上位概念です。何かひとつの決め手があって実行できるものではなく、経営陣が考え抜いたコーポレート戦略と紐付き、それを社内外に浸透させる「潤滑油」みたいな存在になります。

一本の取材記事でその会社の認知が変化することはありません。もし、そう見える事案があったとしても、それは脈々と積み上げられたその企業の「澱」みたいなものが決壊して噴出した結果です。それがどの方向に向かうかは、経営陣や社員が「社会とどのような関係を構築したいか」という視点を持っているか否かにかかっています。

メルカリの事例が全てのスタートアップに適応できるわけではありませんし、そもそもコーポレートはそれぞれの企業オリジナルのものです。しかし、参考になる点は多々あったと思うので、この数本の記事が次に続く起業家の何かの役に立てば幸いです。

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PR視点のメルカリ・コーポレート戦略、社会との関係をなめらかにするその手法(前編)

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スタートアップ取材を続ける中で情報発信、本質的にパブリックリレーションズが上手だなと感じる企業にたまに出会います。こういう方々は社会(社内・外)との関係性がなめらかで、人々が自然とブランドを作ってくれます。 特にメルカリについてはストーリーのあるリリース、社内に組み込まれた編集部チームの存在、上場時に見せたパーセプションチェンジの手法など、折に触れて事例を整理してきました。こうやって眺めると、同社…

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スタートアップ取材を続ける中で情報発信、本質的にパブリックリレーションズが上手だなと感じる企業にたまに出会います。こういう方々は社会(社内・外)との関係性がなめらかで、人々が自然とブランドを作ってくれます。

特にメルカリについてはストーリーのあるリリース社内に組み込まれた編集部チームの存在上場時に見せたパーセプションチェンジの手法など、折に触れて事例を整理してきました。こうやって眺めると、同社の経営陣やPRを担当するチームがどのように人々の情報の流れを作り出しているのか、その様子が浮かび上がってきます。

中でも私が注目しているのが小泉文明さんの存在です。過去記事でも言及しましたが、2013年12月に彼が参加してから情報発信の内容は大きく変わります。以降のメルカリは1人の取材者として伝えたくなるエピソードが多く、また、メッセージがコーポレートとしっかり紐付いていたのが特徴でした。

本稿では、先月開催されたメルカリ主催のコーポレート系カンファレンスで小泉さんが語った内容を手掛かりに、その手法を考察してみたいと思います。

そもそもパブリックリレーションズとは

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本題の前にパブリックリレーションズについて軽く整理をしておきます。

ちょうど、前述のカンファレンスでも「成長期の企業PR」をテーマにしたセッションがあり、井之上パブリックリレーションズ執行役員の尾上玲円奈さん、NEWPEACE代表の高木新平さん、メルカリPRグループマネージャーの矢嶋聡さんがお話をされていました。

彼らの言葉を借りると、パブリックリレーションズは「ステークホルダーとの関係構築、リレーションシップマネジメント」(矢嶋さん)というのが簡潔な説明で、メディア対応などの一部機能というよりは、もうちょっと上位の概念に当たるものです。

例えば企業が社会との対話をする場合、別にニュースメディアにインタビューが載ることだけが手法ではありません。プロダクトは日々ユーザーと触れ合ってるわけですし、営業でプレゼンテーションする内容もパブリックリレーションズの一環と言えます。

こういった細かい部分に企業としての考え方、コミュニケーションを織り込んでおく。一方的に伝えるのではなく、相手が自然と口にしたくなる対話の環境を作る。

「新しいものが出るときは軋轢が生まれます。この『目指す世界』を社会との対話や合意形成を通じてファンになってもらう。知ってもらうのではなく中長期の関係性を作るのが本質」(矢嶋さん)。

気がつくのは、企業のパブリックリレーションズが本質的にコーポレート(特にミッションやビジョン、バリュー)と紐付いていることの重要性です。

私も取材先でこの考え方が抜けてる事案に出会うことがあります。そういう場合は表面的な話題(数字だけや機能紹介のみ)に終始することが多く、その企業が社会とどういう関係を構築したいかが理解できません。

逆にこれがしっかり連動していると、ひとつのメッセージが説明コストを押し下げる効果を発揮してくれるので、リソースの少ないスタートアップにとって大きな武器になります。

では小泉さんはどのようにしてコーポレートとパブリックリレーションズを紐付けていたのでしょうか?彼の言葉で印象に残ったものをいくつか挙げて考察を進めてみましょう。

PR視点のメルカリ・コーポレート戦略

セッションは公開インタビューの形式で、日本経済新聞社の奥平和行編集委員とメルカリ取締役社長の小泉文明さんが対談しました。まずは全ての基本となるバリューから考察してみます。

PR視点でみるメルカリの「バリュー」

「(メルカリに入った当時を振り返って)コーポレートは課題山積でした。感じたのはものづくりのプロジェクトチームに近い印象で、ミッションとバリューも定義されてなかった。ミクシィ時代の反省でプロダクトが強い会社は(サービスの)成長がそのまま組織の吸引力になります。しかし、ライフサイクルがあるので、いい時もあれば悪い時もある。みんなの理想像がブレ始める。何が答えか分からなくなって好き勝手言い始める」(小泉さん)。

小泉さんはミクシィ時代に経験した苦い経験から、ミッション・バリューの定義された「コーポレート」とプロダクトを分ける作業をまず最初に手がけます。プロダクトに波があってもコーポレートが明確であれば、そこで働く人たちは信じるものを失いません。

ここで重要なのがミッション・ビジョンなどのステートメントです。特にメルカリのバリュー(Go Bold、All for One、Be Professional)は有名ですが、これが同社のパブリックリレーションズに果たした役割は相当に大きいものがあると考えられます。

例えばメルカリのとあるプロダクトの取材をするとします。その担当者が回答するとして、その言葉がメルカリの全体戦略にあったものなのかどうなのかは、このバリューを基準に判断すればよい、ということになるのです。

社内コミュニケーションも同様です。小泉さんも「モノゴトはOKRとバリューの2軸で決めていて、これによって会社の生産性が得られた」と話していましたが、属人的な判断の排除は企業での人間関係をなめらかにする効果も期待できます。

バリューを浸透させるためにツールやオウンドメディアを駆使する

小泉さんは普段から目にする何気ないツール類にバリューを入れたり、オウンドメディア「mercan」などで度々このワードを使うなど社内外にリーチさせ、バリュー本来の機能である意思決定で正しくこのツールが活かされる環境を構築したそうです。

また、これの浸透のために、経営陣1人1つずつ担当を決めていた、というのも注目したい点です。企業と経営陣や社員を結ぶ大切なツールだからこそ、そのインストール手法は関係性を大切にしたものでなくてはなりません。結果的にバリューは社内だけでなく、社外の私たちにまで広く伝わるものとなりました。

「創業メンバーと私の4人で経営合宿したのですが、その時、ミッションを1つ、バリューを3つ決めて、それぞれ4人で担当を決めて社員に伝えたりする責任を負ったんです。そこまでやらないと言葉ってインストールできない」(小泉さん)。

後半では引き続き、小泉さんの言葉を参考に、パブリックリレーションズ視点でメルカリのコーポレート戦略を考察してみたいと思います。

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メルカリが狙う次のユニコーン、テーマは「旅」ーー原田氏に聞くソウゾウ流「スタートアップ創造の仕組み」

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開始数カ月で新事業の終了、整理を発表したメルカリが次に手がける事業は「旅行」をテーマにしたものになるそうだ。本誌取材にソウゾウ代表取締役の原田大作氏が答えてくれた。 グループで主に新規事業のスタートアップを担当する子会社、ソウゾウの代表に今年4月に就任した原田氏にその狙いと勝算について聞いた。(本文中の太字は全て筆者の質問。回答は原田氏) メルカリ級を狙うーーソウゾウが考える新規事業 さて、何をさ…

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ソウゾウ代表取締役の原田大作氏

開始数カ月で新事業の終了、整理を発表したメルカリが次に手がける事業は「旅行」をテーマにしたものになるそうだ。本誌取材にソウゾウ代表取締役の原田大作氏が答えてくれた。

グループで主に新規事業のスタートアップを担当する子会社、ソウゾウの代表に今年4月に就任した原田氏にその狙いと勝算について聞いた。(本文中の太字は全て筆者の質問。回答は原田氏)

メルカリ級を狙うーーソウゾウが考える新規事業

さて、何をさておき新しい領域の話題だ。旅行と言えば、MERY創業の有川鴻哉氏が手がけるズボラ旅、光本勇介氏のTravel NowにLINEの参戦など、2018年のテク・スタートアップ界隈で最も注目すべき市場になる。具体的に何をやるのだろうか?

新事業の領域について詳しく教えて欲しい

4月に旅行の領域に絞って事業をやるということが決まって現在開発中です。旅行ってプロセスが複雑じゃないですか。行きたいところを見つけて行程をアレンジして現地に行って、体験して、思い出残して。詳細はまだ言えないのですが、こういうプロセス全てを取るようなプラットフォーム的な考え方を持っています。

いつ頃公開になるのか

秋頃を予定しています。

原田氏は前述の通り4月に代表に就任し、ソウゾウとして新規事業のあり方を考えたという。そこで出た結論のひとつに「メルカリを超えるものを作る」という基準を決めたそうだ。

確かにこれまでソウゾウが手がけたサービスはクラシファイドのアッテ(2018年5月末終了)は別として、終了が発表されたNOWやteacha、メゾンズはどれもメルカリ本体の派生だ。ソウゾウが手がけなくても本体でやればいいし、実際、これらはソウゾウの手は離れるものの今後、メルカリの一部サービスとしてマージされる可能性があるという話だった。

旅行サービスの詳細はこれ以上説明できないという話だったのでここからは想像になるが、楽天が買収によってECセグメントのひとつの柱に育てた楽天トラベルのような存在感を目指しているのだろう。後発の話題についてはメルカリそのものが最後発であったことを考えれば取るに足らない指摘になる。

メルカリの前身「コウゾウ」では3つほど新規事業を仕込んでいたという話を聞いたことがある。たまたま最初の打席で放ったメルカリが大きくヒットしたのでそこに集中した。ソウゾウも旅以外には考えなかったのか。

ソウゾウで手がけたサービスにはメルカリIDを拡大させる、という思想がありました。またメルペイもメルカリに近く『モノとカネ』以外の領域であれば『コト』になると。それで取り組んだアイデアが、旅やコミュニケーション、VR・ARなどの体験の領域になったのです。当初は3ラインで考えていたのですが、試作品を使ったインタビューなどを重ねた結果、旅行に統一することになりました。ここでメルカリとは違う新しい柱を立てる

新規事業の領域については理解した。もうひとつ気になるのが撤退の基準だ。ユーザーや株主には期待している人もいるがどのように説明するのか

いくつかポイントがあって、KPIをもっと磨こうよというのがイエローカードで、数字が全くついてこないのがレッドカード。スタートアップと同じで最終的に予算が切れたらその段階で(判断がやってくる)

始まる前から終わる話をしても仕方ないのだが、責任の取り方みたいな話題については結構シビアだった。原田氏はソウゾウの代表であると同時に、経営責任を負った一人の「プロ契約社員」的な存在になる。事業がダメになったからすぐに契約終了、ということがあるかどうかはわからないが、プロスポーツ選手並みの意識を持っているのは他の役員からも聞いたことがある。この辺りはスタートアップと同じだ。

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少し話を変えよう。では、メルカリーソウゾウはどのようにして新規事業を成功に導こうとしているのか。原田氏は社内スタートアップの仕組みについて興味深い取り組みを教えてくれた。

メルカリには創業期(コウゾウ時代)の実績が全部残ってるんですが、それをベンチにしてます。メルカリが開始してからどれぐらいの予算で、広告費をどれぐらい使って、何人の人員を投入したのか。(山田)進太郎さんたちは開始して3カ月で『これキタ』と確信したポイントがあったそうなので、そこまでの予算を参考に事業計画を組んでます

スタートアップ初期に困るのは人員と資金だが、これについてはスター人材が集まりまくってるメルカリにおいて心配事にはあたらない。メルカリ創業期のコーポレートを小泉文明氏と手がけた掛川紗矢香さんや、同じくメルカリのサーバーを支えた鶴岡達也氏らがソウゾウの役員として参加している。資金についても同様だ。

さらに羨ましいのが豪華なメンタリングの制度にある。「Souzoh Brain Trust」という仕組みがあるそうで、月に一回、グループの経営陣を前に1時間ほど起業家としてピッチする機会を設けているという。

例えば松本(龍祐)さんはユーザー視点、濱田(優貴)さんは技術視点、小泉さんは『それビジネスになるの?』といったフィードバックをくれるんですが、良い意味でマウンティングしてくるんですよね。ただ、意思決定は必ず本人にさせる。当事者に判断させるんです

具体的にはプレゼンターは5分で概要をピッチして5分でデモを披露する。オーナーはミーティングの最後に1カ月後に何をするのか全員を前にチェックアウト宣言して終了する、という具合だそうだ。プログラムのモットーも教えてもらったので共有しておこう。

  • 顧客目線でより面白くなるためには?を考える
  • All for one:全ては成功のために。リスペクトの元に発言する
  • 誰もがアイデアを自由に発言し上下関係なし
  • 会社都合、前提条件は無視、破壊的なアイデアを歓迎
  • Give & Give & Give!

メルカリにはR4Dという研究開発機関やフィンテック領域のメルペイ、スタートアップ投資のメルカリファンドもあって、それぞれでスタートアップを生み出す仕組みを用意している。

しかしソウゾウはこのどれでもなく、純粋にコウゾウの再現をしようという印象を持った。一方で退路を絶ったようなバンジージャンプのスタートアップ手法ではなく、メルカリなりのエコシステムの中で、より多く打席に立てる仕組みを作ろうとする意図を感じる。

旅領域のサービスが当たるかどうかは全くわからないが、このエコシステムが本当に成立するのなら、「メルカリの次」という言葉が真実味を帯びてくるのではないだろうか。

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メルカリ上場前夜、イケイケベンチャーから「信頼される企業」へーーPRチームが施した「Go Boldなコミュニケーション戦略」舞台裏

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スタートアップはいかにして社会に信頼される企業に変容するのかーーこの興味深いテーマをメルカリが語るというのであれば聞かない理由はないだろう。 7月10日にPR TIMESが主催したイベント「PR TIMESカレッジ」のステージに登壇した矢嶋聡氏は、LINEでマーケティングコミュニケーション室の室長を務めたのち、昨年10月からメルカリに参加した人物。上場前夜に同社のPR・コミュニケーション戦略を一任…

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会場となったTRUNKには300名のブランド関係者が集まった

スタートアップはいかにして社会に信頼される企業に変容するのかーーこの興味深いテーマをメルカリが語るというのであれば聞かない理由はないだろう。

7月10日にPR TIMESが主催したイベント「PR TIMESカレッジ」のステージに登壇した矢嶋聡氏は、LINEでマーケティングコミュニケーション室の室長を務めたのち、昨年10月からメルカリに参加した人物。上場前夜に同社のPR・コミュニケーション戦略を一任され、上場承認日に「創業者からの手紙」と題したメッセージを公開するなど”イケイケベンチャー”から脱皮した「新たなメルカリ」を社会に披露した立役者の一人だ。

本稿では矢嶋が壇上で語ったメルカリの「Go Boldなコミュニケーション」戦略についてまとめた。バギーな側面も多いスタートアップ創業諸氏にとって、メルカリの足跡は多いに参考になるだろう。整理して共有したい。

実は2名しかいなかった「イケイケベンチャー」のPR体制

2018年3月時点でのメルカリは月間ユニークユーザー数(MAU)1054万人、流通総額は月次で324億円を超え、創業からわずか5年足らずで株式公開を果たした。順風満帆の成長で一気に上場へ、という印象の強いメルカリだが、そのコミュニケーションの体制についてはまだ改善すべき箇所があったようだ。矢嶋氏は参加した際の状況をこう振り返る。

「外部環境としてはサービスが成長していて上場観測なども出ていた。メディアもスタンバイに入って大型特集を組むような機会も増える一方、現金出品などの不正出品問題も顕在化し、社会にとっていいものなのかという問題提起が増えてくる。特に大手マスコミによるネガティブ報道も急増していて対応が必要だった」。

当時のPR体制はメンバーも2名でチームとも言えず、また核となる方針が決まりきっていなかった。そもそもメルカリが社会に対して与えたビジョンや世界観などのポジティブな側面は伝わっておらず、リソース不足も手伝って後手に回る様子が伺えたという。

「世論を作るようなオピニオンリーダーたちはメルカリを使っていない場合がまだ多く、ネガティブ報道でその存在を知ったということもあった。ここを変えなければ次に進めない」。

こういったメルカリの「現在地」を確認した矢嶋氏たちは、次に大きな方針として、メルカリが目指すべき「パーセプションチェンジ(認識変化)」の方向性を打ち出すことになる。

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写真:メルカリPRグループマネージャーの矢嶋聡氏

体制を強化するーーIPO前夜、前半戦での下地作り

「法令遵守意識の低いイケイケベンチャー」というパーセプションから「応援したい、世界に挑戦するテクノロジーカンパニー」への変容。大きな方針が決まったメルカリPRチームはロードマップを手がける。フェーズを2つに分類し、2017年一杯で体制の強化や信頼の獲得、そこからIPOまでを主にストーリーテリングに費やすことにした。

「定例ミーティングを見直して、単なるTODOの確認ではなく、自分たちのやったことの施策に対しての振り返りやPDCAを徹底しました。また、やること・やらないことの決定やクリッピングツールなどを導入して効率化を進めた」。

人材の採用にはオウンドメディアを活用したのは以前にお伝えした通りだ。結果、か細かったPRチームは10名ほどの体制に強化され、重点メディアとのリレーションも厚みが増した。矢嶋氏が参加したタイミングはちょうど不正出品などの話題が社会に出回っていた頃だ。なかなか収束しない世論についてはバイネームの記者による深い取材記事で論調を変える施策も投じた。

こうやって下地づくりを終えたメルカリは社会に対してポジティブな情報発信を開始することになる。

IPOに向けた後半戦ーーユーザーに愛されるメルカリを伝える

矢嶋氏が参加して数カ月、即興ながら体制や下地は整った。ここから6月の株式公開までが大きな勝負どころだ。まず手がけたのは新サービスや新たな取り組みに関するポジティブなストーリーの発信だ。

2017年の末から「メルカリNOW」や研究機関の「R4D」といった新サービスなどの露出を最大化。特に「メルカリで技術者を1000人を雇う」という山田進太郎氏の発言は大きく取り上げられ、エコシステムやテックカンパニーといった「フリマアプリ」一辺倒からの脱却が見られるようになったのもこの頃だ。

また矢嶋氏の話では経済産業省が発表した「中古品市場調査レポート」に合わせて、フリマアプリの登場による消費環境の変化に関するレポートをメディアに配信し、記事化を促進するなど、積極的な「世の中ゴト化」も進めたという。

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「信頼される、世界に挑戦する企業」への変容

ロードマップなどの指針を策定し、徐々にフリマアプリ「以外」のポジティブ情報も拡大してパーセプションが変化していく。こうやって温めたコミュニケーションの先に待っていたのがコーポレートとしてのストーリー、つまり「フリマアプリの会社」から「テクノロジーカンパニー」への変容を図る局面になる。

ここで重要な役割を担ったのが山田進太郎氏による「創業者からの手紙」だ。

「海外の企業では上場承認時に企業のファクトとは別に創業者からのエモーショナルなメッセージが出るんですね。これを国内企業としてやろうと」。

チームではこれに並行して情報発信の制限がある期間に水面下で取材を仕込むなど、上場のタイミングで露出を最大化させる準備を進める。ーーそして上場の日に出たのが「野茂英雄」メッセージだ。新聞に全面掲載された広告ビジュアルは、野茂のような存在になりたいというメッセージをわかりやすく伝えていた。

「世界に挑戦するためによりGo Boldな挑戦をしていきますよ、大胆にロングタームの投資をしていきますよ、というスタンスを伝えました。これによって海外を目指すという論調が作られた」。

ーーいかがだっただろうか。IPO前夜に矢嶋氏やPRチームが準備したコミュニケーション戦略は、聞いていて非常に理路整然としていて実にスマートだ。もちろんこの結果にはそれ以前、創業期から彼らが魅力的なプロダクトを作り、ユーザーに向き合い、タイミングよく社会に対して情報発信してきた積み上げがあったからとも言える。

「まずは自分たちが正しくどう見られているか。それから自分たちがどうなりたいか、その差分をステップバイステップで埋めていく。打ち上げ花火的な施策一発でパーセプションが変わることはない」。

フリマアプリから「世界を目指すテックカンパニー」への姿を手に入れたメルカリ。彼らをトレースすることは後進スタートアップにとって大きな参考になるのではないだろうか。

情報開示:THE BRIDGEは2018年4月からPR TIMESのグループメディアとして運営されています。

 

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PV?そんなの追いかけませんーーメルカリに人を集めるオウンドメディア「メルカン」、運営の仕組みとその成果(後編)

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前編ではメルカリの情報発信の強さとその成果について過去記事を中心に考察してみました。創業期は社会とコミュニケーション取ることで信頼と期待感を生み出し、チーム拡大期には多様性のある情報発信で、幅広い人たちの共感を得ることに成功しています。 結果としてメルカリには5年ほどで800名近くのチームが生まれました。 後半となる本稿ではもうひとつ、彼らの展開するオウンドメディア「mercan(メルカン)」を中…

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2周年で六本木ヒルズに移転した頃のメルカリ社内/山田進太郎氏

前編ではメルカリの情報発信の強さとその成果について過去記事を中心に考察してみました。創業期は社会とコミュニケーション取ることで信頼と期待感を生み出し、チーム拡大期には多様性のある情報発信で、幅広い人たちの共感を得ることに成功しています。

結果としてメルカリには5年ほどで800名近くのチームが生まれました。

後半となる本稿ではもうひとつ、彼らの展開するオウンドメディア「mercan(メルカン)」を中心にその目的や効果について考察したいと思います。取材にあたっては同メディアを立ち上げた松尾彰大さん(現在の所属はメルペイのHR)とメルカリHRグループの福岡夏樹さんにお話をお伺いしました。共に広報ではなく、人材採用のチームに所属しているのがポイントですので頭の片隅に置いておいてください。

分散する企業の「ナレッジ」を人事の視点で資産化する

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オウンドメディア事例:エン・ジャパン運営のCAREER HACK

考察に入る前にオウンドメディアについて少し整理します。定義自体は非常に幅広く「企業が自社で運営する外部公開メディア」というのが最大公約数ですから、古くは社長ブログやテックブログ、最近ではWantedlyを使った採用広報的なコンテンツもオウンドメディアのひとつの形と言えます。

かなり凝った作りのものとしてはリクルートの「HRナビ」やエン・ジャパンの「CAREER HACK」のように、ニュースメディアのような第三者視点で編集しているような例もあります。ちなみにメルカンを立ち上げた松尾さんは新卒でエン・ジャパンに入社してCAREER HACKの運営を担当された方で、メルカリには2016年3月に参加されています。

さて、ではメルカンはどういう方向性のオウンドメディアなのでしょうか?私はメルカンがリリースされた当時、小泉文明さんに取材してこんな内容を残していました。

「メルカリでは勉強会やイベントを開催したり、個人で書籍を書いたりそれぞれアウトプットしてるんですよね。でもそれがバラバラになっていて勿体なかったので、一つにまとめてメディアにしようと」(小泉氏)。

当時のメルカリは250名ほどで絶賛拡大中の時期でした。2016年ですから前編で書いた通り、拡大はもう織り込み済みで、それよりもバラエティに富んだ人材や企業などにアプローチする必要が出てきている時期です。企業のアクティビティが広がる中、こういった社内ナレッジの整理はごく自然なのですが、重要だったのはそれを採用チームが担当した、という点です。

当時の記事にもこのような感想をメモしています。

会話する中で面白かったのは「人事がブランディングできるメディアを持つべきだ」という考えからこのオウンドメディアが立ち上がったという経緯だ。通常、こういうメディアは広報だったりマーケティング関連が主導(SEO的な側面も)するのが多い印象なのだが、これは少し新鮮だった。

立ち上げに際し、松尾さんと小泉さんはメディアの方向性としてこのような点を挙げていたそうです。

  • 採用にコミットしている企業だからこそメディアを持つべき
  • 毎日更新。最悪(松尾さん)一人でも回せる
  • 点在する情報を集約、採用候補の方に「ここを見ればメルカリがわかる」
  • PVは共有するが追わない、コンテンツのNGや社員へのシェア強要をしない

気になるKPIや成果の設定ですが、これについては非常にユニークで「入社した方のメルカン既読率100%」が設定されているという説明でした。入社側も採用側もここをハブにして最低限の情報共有をしておきましょう、という考え方は大変効率的です。

それ以外にも入社後にメルカンで読んだ印象とのギャップをヒアリングし、自己満足的なコンテンツや期待値を上げすぎるような話題については調整をしているという話でした。

採用をインセンティブにーー「社内コミュニケーションツール」としてのメルカン

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スタートした当時のメルカン。1本目の記事タイトルから採用へのコミットが理解できる

社内外に分散する情報をまとめて、これから参加しようという人材とのコミュニケーションにメディアを用意する。成果は採用コミュニケーションの効率化であり、盲目的な目的外の従来指標は追わない。

ここまではわかりやすいオウンドメディアの成果だと思います。ではもうひとつ気になるポイント、どうやってこれを運営しているのか?という疑問に移りたいと思います。

ちょっと話はズレるんですが、私たちのような取材者は比較的、見知らぬ方とコミュニケーションしやすい立場にあります。メディアに信頼さえあれば、取材の申し出に対して門前払いというのはあまりありません。

メルカンはまさに社内に対してそのポジションを得ている様子でした。

ただ、私たちの取材では第三者視点での情報発信が目的になるように、情報を出す側は社内活動とはいえインセンティブがなければ動きません。そこで重要になってくるのが「採用」です。

メルカリは前述の通り、800名近くの約半数が社員による紹介という実績が語る通り、「全社員採用コミット」という共通認識が強く浸透しています。その手法のひとつとして情報発信が手軽にできるメルカンはひとつの「採用装置」として機能するわけです。

現在、編集を担当している福岡さんの元には採用に困っているのでメルカンにこういう露出がしたい、企画を考えて欲しいなどの相談が舞い込んでいるそうです。こういうわかりやすい共通目的があるメディアは強く、社内に対して「情報発信することは、結果的に自分たちのチームを強くする」というビジョンを示すことができます

リーチについても経営陣をはじめ、この企業には国内を代表するシリアルアントレプレナーや実力ある人材がマネジメント層に揃っています。彼らがソーシャルメディアでシェアするだけで「火種」は十分です。

結果的に松尾さんと小泉さんが約束した「毎日更新するメディアをつくる」という目的は達成されたわけです。メディアを運営する身として、この毎日更新というのはひとつの基準で、ややもすると外注に頼りがちになる部分を自社内にスキームを作って実現した手法は参考になると思います。

どういう人材がオウンドメディアに必要なのか

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メルカンを立ち上げた松尾彰大さん(写真右/現在の所属はメルペイのHR)とメルカリHRグループの福岡夏樹さん(写真左)

考察の最後は担う人材についてです。松尾さん、福岡さんはお二人ともメディアのバックグラウンドを持っている方々です。特に福岡さんは以前、nanapiでコンテンツ制作に携わり、ログミーを経てメルカリに参加した「編集者」です。彼女はメルカンの参加についてこんなことを話していました。

「メディアの仕事をやってきて編集というスキルを活用したいと考えたのがきっかけでした。ただ数を生産するだけの作業に疑問があり、明確にゴールがある、積み上げて形になるものを手掛けたかった」。

福岡さんのような編集者、書き手というのは読む相手のことを考え、切り口を作り、情報を収集して組み立てる情報整理のプロです。メルカリのように技術的にも複雑で、展開も多岐に渡る場合、そこにある人や資産の情報をいかに整理して必要な人に届けるかという課題には高度な技術を必要とします。

更に言えば、読み物としてつまらなければ広がりません。ここも編集者としての腕の見せ所になります。福岡さんはいいところばかり見せるのではなく「今ダメと認識している箇所を聞き出してどうやって次に繋げるか」「できるだけ公開できる数字を聞き出す」などのポイントを持っているそうで、これらは私たち第三者視点にも通じる部分です。

社内でありながら、客観的に情報を整理する。こういった技術や素養を持つ人がオウンドメディア運営には必要と感じます。

ということで前編、後編に分けてメルカリの情報発信の姿勢や手法について考察してみました。特に創業期のスタートアップにとって人の採用や社会からの信用、期待値の獲得というのは重要な仕事のひとつです。

メルカリが辿った道のりは全て真似することはできないかもしれませんが、本稿から何かヒントになる箇所がお伝えできれば幸いです。

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情報発信にみるメルカリの強さ、最強チームを生み出したメディアコミュニケーション術と「メルカン」の存在(前編)

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メルカリの上場が承認されました。 これまでも時折書いていますが、2010年に国内でOpenNetworkLabが立ち上がったのがいわゆる「スタートアップ」元年で、これ以降、投融資のエコシステムが成長したのはご存知の通りです。スタートアップ投資は博打ではなくなり、おもちゃ扱いだったスマホアプリは社会を変えるインパクトを生みました。 中でもメルカリはそのお手本のような存在です。 メルカリが大きく成功し…

メルカリの上場が承認されました。

これまでも時折書いていますが、2010年に国内でOpenNetworkLabが立ち上がったのがいわゆる「スタートアップ」元年で、これ以降、投融資のエコシステムが成長したのはご存知の通りです。スタートアップ投資は博打ではなくなり、おもちゃ扱いだったスマホアプリは社会を変えるインパクトを生みました。

中でもメルカリはそのお手本のような存在です。

メルカリが大きく成功した理由のひとつに素晴らしいチームの存在があります。経営陣の多くは起業経験ある人ばかりで、現在、800名以上在籍しているメルカリの社員は半数近くがリファラル、つまり社員による紹介での入社だそうです。

しかしそんなメルカリも創業期は他のスタートアップと同じです。なぜ彼らの元に優秀な人が集まったのでしょうか?

私はこれを紐解く一つのカギに情報発信があったのではないかなと考えます。ごくごく創業期から、彼らの記事には反響も大きく、事業としてのメルカリの魅力、社内の雰囲気、経営陣の考え方を多くの人たちに伝えることにつながりました。トラブル時も含め、彼らは本当にメディアを上手く使って社会とコミュニケーションしていた印象があります。

そこで本稿では私自身がこれまで書いてきた記事と、彼らの持つオウンドメディア「メルカン」の編集チームへの取材を通じてその手法や傾向を考察してみようと思います。他のスタートアップの情報発信の一助になれば幸いです。

スタートアップのメディア活用方法

メルカリが立ち上げたオウンドメディア「mercan」

トリプルメディアやPOEMといった分類で整理すれば、オウンド(自社媒体)やアーンド(口コミ、ソーシャル)はペイドに比べてコストメリットもあることからPR戦略に積極採用する企業も多く、特に創業して1〜2年のスタートアップで活用している創業者の方も多いと思います。

  • アーンドのメリット:第三者視点・専門媒体の信頼性
  • デメリット:コントロール不可
  • 向いてる用途:共感・リード

対して

  • オウンドのメリット:自由なコミュニケーション
  • デメリット:高度な運営能力が必要
  • 向いてる用途:理解・採用

ではメルカリはこれらを具体的にどう活用していたのでしょうか。私の取材記事からまず振り返ってみます。

最初のコミュニケーションで「信頼」と「期待」を獲得

創業から1、2年の間はダウンロード数とCMなどの話題が多かった

まずは取材記事によるシェアやそこから生まれる口コミの活用方法なんですが、例えばメルカリはこんな記事が初年度に並びます。

2013年(創業年)

山田進太郎さんが再始動するということもあって注目度は高いものの、実は初年度の話題は多くありません。ユナイテッドの調達についてはこのタイミングにしてはかなり大きなニュースだったのですが、相手が公開企業であることも手伝って、さらりと流れてきて慌てて記事にしたのを覚えています。

メルカリ(当時の社名はコウゾウ)は最初からプロダクト中心で、しかもユーザーは順調に伸びています。社内体制も開発メインですから社会とのコミュニケーションについてはどうしても後手に回ってしまいます。

そんな状況を次に進めたのがこのニュース、現在のメルカリ社長である小泉文明さんの参加でした。

記事にもある通り、進太郎さんは小泉さんに「ビジネスと広報」を期待するとしています。

「小泉さんについては、やりたいことって無限大にあるので周囲を見渡して声かけをしてたんです。CFO的なイメージが強いですが、どちらかというとビジネス全般と広報ですね。攻めの広報。というのもこれまでは開発に集中していて、なかなかその方面は手が付けられていなかったというのが課題だったんです」(山田氏)。

実際、ここからメルカリの情報発信はガラリと変化します。

2014年

2015年

資金調達の話題ももちろんありますが、目立つのがダウンロード数の公開です。

ひとつの戦略として、明らかに社会に対してメルカリが急成長しているというメッセージを届けようという狙いが感じられます。実際、ダウンロード数については当時、マーケティング施策として資金投入すれば買えるのではという一部指摘もありましたが、本当の伸びがなければその施策はいつか尽きるわけです。

結果、2014年からほぼ1年間に渡って彼らは成長を社会に対して伝え続け、2015年2月の2周年には1000万ダウンロードを達成、体制拡大から六本木ヒルズへの移転(3月)も実施することになりました。

ダウンロード数や流通総額の拡大、CM投下とタレントの起用。ほぼ毎月こういった成長に関する話題をオープンにすることで、メルカリがマスメディア等で取り上げられる機会も徐々に増えてくるようになります。

こうやってメルカリは最初の2年で社会の信頼と期待値を獲得することに成功したわけです。

多様性を伝える方法ーー数字よりも「何をやったか」

創業1年目のメルカリ

その一方、2015年に入ると単調になってきたダウンロード数などの公表はシュリンクしていきます。その代わりに出てきたのが多様性に関する話題です。代表的なニュースが「merci box」でした。

メルカリは3年目で200名ほどの体制になり、カスタマーサポートをはじめ、採用すべき職務も同時に拡大していました。幅広い人材にリーチするためにもダウンロード数や流通総額以外のコミュニケーションが必要になったのではないかなと想像します。

会社として社員の生活を大事にしている、また、優秀な人材を獲得して新しいことにチャレンジし、具体的にサービスを出している。こういった多様性を伝えるため、2016年から17年は「数字よりも実行」に話題がシフトしているのがよく理解できると思います。

2016年

2017年

2018年

創業期は経営陣がコミュニケーションの先頭に立つ

メルカリに参加した当時の小泉文明氏(写真左)と創業者の山田進太郎氏(写真右)/2013年12月、都内のコーヒーショップにて撮影

改めて記事の履歴を見返してみると、全体を通じて筋の通ったメッセージがあったことがご理解いただけたのではないかなと思います。

会社として人を採用したい、ユーザーに使ってもらいたい、一緒に協力してくれる企業を探したい。法人も人間と同じで、他者とコミュニケーションを取らなければこういった目的は達成できません。特に創業期の企業としてのメッセージは、創業メンバーや初期のファンを集めるためにも大変重要です。

さすがにここ1、2年は広報チームとのコミュニケーションで取材することがほとんどになりましたが、創業期は進太郎さん、翌年からは小泉さんから取材依頼を貰っていました。言霊ってあるもので、やはり彼らが先頭に立って社会とのコミュニケーションを実行したからこそ、メルカリという存在は立体的に伝わったのではないかなと感じています。

後半では彼らのオウンドメディア「mercan(メルカン)」について、その設計や役割をお伝えしたいと思います。

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メルカリが東証マザーズに上場へ

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※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。 東京証券取引所は14日、フリマアプリを運営するメルカリのマザーズ上場を承認したと発表した。上場予定日は6月19日、主幹事は大和証券が務める。 メルカリは2013年、ソーシャルゲームデベロッパとして知られるウノウ(その後、Zynga に事業譲渡)を設立した山田進太郎氏により設立。モバイルに特化した C2C マーケットプ…

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。

東京証券取引所は14日、フリマアプリを運営するメルカリのマザーズ上場を承認したと発表した。上場予定日は6月19日、主幹事は大和証券が務める。

メルカリは2013年、ソーシャルゲームデベロッパとして知られるウノウ(その後、Zynga に事業譲渡)を設立した山田進太郎氏により設立。モバイルに特化した C2C マーケットプレイスの提供で知られ、最近では、バイクシェアリングの「メルチャリ」をスタートさせ、金融サービスの「メルペイ」の開発に着手しているほか、他のスタートアップへの出資を前提としたメルカリファンドをローンチしている。

同社の17年6月期の連結売上高は前期比約1.8倍の約220億円、純損失は前期比約12倍の42億円。株式保有割合は創業者の山田進太郎氏が28.83%、ユナイテッドが10.59%、共同創業者の富島寛氏が7.20%、グローバル・ブレインが5.60%となっている。

<メルカリのこれまでの軌跡(関連記事、一部抜粋)>

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メルカリが「メルチャリ」でシェアサイクル事業に参入、2月中に福岡の企業および個人との共同運用型でスタート

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メルカリ子会社で地域コミュニティアプリ「メルカリアッテ」などを運営するソウゾウは2月13日、都内の同社オフィスにてメルカリ新サービス「メルチャリ」事業説明会を開き、シェアサイクル事業への参入を発表した。同サービスは2月27日より福岡市内で開始される。 同サービスは共同運用型のシェアサイクルサービス。メルチャリのアプリ上に記載されている専用ポート(駐輪場)で自転車を借り、目的地近くのポートへ自転車を…

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写真左よりメルカリ執行役員兼ソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏、
ソウゾウのメルチャリプロダクト責任者の井上雅意氏

メルカリ子会社で地域コミュニティアプリ「メルカリアッテ」などを運営するソウゾウは2月13日、都内の同社オフィスにてメルカリ新サービス「メルチャリ」事業説明会を開き、シェアサイクル事業への参入を発表した。同サービスは2月27日より福岡市内で開始される。

同サービスは共同運用型のシェアサイクルサービス。メルチャリのアプリ上に記載されている専用ポート(駐輪場)で自転車を借り、目的地近くのポートへ自転車を返す。料金は4円/分で乗った分だけを支払う料金システム。使用時間はQRコードでスマートロックの鍵を開けた時点でタイマーが始動し、鍵を閉じるとライドが終了する。iOS版のみ先行提供で開始予定、プロダクト責任者はソウゾウの井上雅意氏が担当する。

「短い時間で使われることを想定しています。時間は15分程度で考えており、これを元に15分でも短い時間でたくさん使ってもらえる料金設定を導入しました」(伊藤氏)。

福岡市では博多・天神・ウォーターフロントエリアを中心に展開。サービス開始時点でのポート数は50箇所、自転車は400台以上の設置を予定している。「夏頃までには200箇所、2000台程度の自転車投入を予定している」ということだ。福岡でのサービス開始の理由について、ソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏は下記のように語る。

「すでにカスタマーサポートの拠点として福岡がある点。そして福岡市自体が平らな土地柄で自転車の移動に適している地域だというところ。さらに中心街の間での回遊性の向上を望め、公共交通の間を埋められる可能性を持つ地域であると考えました」(松本)。

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QRコードで鍵の開け閉めが可能

「メルチャリ」で借りることができる自転車は20インチ、3段階ギア、日本製の非電動アシスト自転車。鍵はコネクティッド・ロックの開発などを事業とするtsumugのスマートロックを搭載、QRコードで解錠することができる。自転車にはGPSが内臓されており、アプリ上で自転車の駐輪場所をリアルタイムに把握することも可能だ。

共同運営型でポートのシェアや放置自転車への対策を実施

同サービスの特徴は地域の企業や個人との共同運営型という点。サービス開始時の自転車のポート提供に参画するパートナー企業はアパホテルやインベルターズクラウド、ファミリーマート、新生堂薬局など13社。さらに地域の民間企業に加えて、個人宅や店舗の軒先などの空いているスペースを公募する。

「家の空きスペースがポートになることによって、そのまま乗って自転車を乗り捨てするなど新しい利便性が生まれるのではないかと思っています。また、店舗ではお客様の来店機会促進のメリットになればと考えています」(伊藤)。

サービスのサポート体制はカスタマーサポートによる監視と故障やトラブルへの対応を365日実施する。西鉄運輸との連携により、サポートトラックを街中に走らせ、放置や違法駐輪のメルチャリ自転車や故障者を移動・回収する流れも用意している。

個人単位でも故障やトラブル防止に協力したユーザーに対しては、メルチャリのマイルを付与することで共同運用体制の仕組み作りを実施。ポート以外に放置された自転車を発見した場合はポートに戻す、故障を発見した場合は故障発見フォームから報告を出す、といった行動をすることでマイルが溜まる。

「自転車が足りない、過剰にあるというポート間の自転車再配置や放置自転車に対して対策をしていく必要があります。ただし、これらには1企業では限界もあるため、個人や企業の方々にサポーターとして協力してもらうことを考えています。そのためにインセンティブでのきっかけ作りやマイルの付与、放置自転車を見つける際のゲーム性、成果の可視化などにより充足感を感じてもらうように体制化していきます」(伊藤)。

メルカリなどのサービス連携も視野に

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現状、メルチャリで溜まったマイルでメルカリのポイントを使うことはできない。しかし今後はサービス連携も視野に入れていくということだった。現状マイルはポイントをそのまま使えるというよりは、一定マイルが溜まるとサービスやノベルティを付与してもらえるといった仕組みを予定されている。

「街中でぱっと見るとメルチャリがあって、すぐに乗れるという世界観を考えてます」(伊藤氏)。

時期や場所など確定していることはないが、新たな地域への拡大も検討している。

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メルカリが研究開発組織「mercari R4D」を設立、シャープなど6機関とIoT技術等をテーマに事業化を目指す技術研究を進める

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フリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリは12月22日、都内の同社オフィスにて記者会見を開き、社会実装を目的とした研究開発組織「mercari R4D(アールフォーディー、以下R4D)」の設立を発表した。R4Dの代表には同社の木村俊也氏が就任する。 R4Dは調査・開発・設計・実装4つの英語表記の頭文字「D」から構成されている。メルカリはこれまでもAIや機械機械学習などの技術を活用してきたが、同研…

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メルカリ代表取締役の山田進太郎氏

フリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリは12月22日、都内の同社オフィスにて記者会見を開き、社会実装を目的とした研究開発組織「mercari R4D(アールフォーディー、以下R4D)」の設立を発表した。R4Dの代表には同社の木村俊也氏が就任する。

R4Dは調査・開発・設計・実装4つの英語表記の頭文字「D」から構成されている。メルカリはこれまでもAIや機械機械学習などの技術を活用してきたが、同研究機関の発足により外部の企業・教育機関と共同で技術の社会実装・事業化を目指す。現在はシャープや大学研究室など6機関の連携による8つの研究テーマが決定している。

  • 「8Kを活用した多拠点コミュニケーション」シャープ 研究開発事業本部
  • 「無線給電によるコンセントレス・オフィス」東京大学 河原研究室
  • 「類似画像検索のためのDeep Hashing Network」筑波大学 落合研究室
  • 「出品された商品画像から物体の3D形状を推定」筑波大学 落合研究室
  • 「商品画像から背景を自動特定」筑波大学 落合研究室
  • 「ブロックチェーンを用いたトラストフレームワーク」慶應義塾大学
  • 「Internet of Things エコシステム」京都造形芸術大学 クロステック研究室
  • 「量子アニーリング技術のアート分野への応用」東北大学 大関研究室

同社代表の山田氏によれば「本研究への投資額はまだ明確には決まっていないが、来年は数億円規模になるのでは」ということだった。研究に関しては3〜5年の中長期のテーマかつIoTやブロックチェーン技術などを活用した世の中のインフラ化を見据えたものを選定。

現段階で決定しているテーマに関してはすでに着手が開始されており、今後も増えていく可能性もある。研究結果の実装による事業化がメルカリ発のプロダクトになることも今後考えられるということだ。

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「先日1億ダウンロード数を超えたメルカリですが、AI技術を活用した不正な出品の検知やUS版では商品の重量を自動推定などを実装してきました。研究開発による技術での差別化は目指しているところです」(山田氏)。

現在100人強の同社のエンジニア組織も数年後には1000人体制を目指す。また各機能のマイクロサービス化によりスケーリングする体制づくりも実施しはじめている。

「たとえば富士フィルムが化粧品を開発したりと将来的には別事業に携わる可能性も考えられる中で、技術を持ってどう人の役に立っていくかということを考えています」(木村氏)

またシニアプロデューサーにはアーティストのスプツニ子氏も参画しており、すぐに実装できない技術もデザインやアートでの再現をするといった多様な再現の方向性も見せていた。同社は外部研究機関との共同研究により、研究に止まらない技術の事業化や見える化を目指す。

 

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「メルカリの安全性」は北米攻略の鍵になるーー北米フリマアプリ出品体験全録(後編)

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前編では大手中古取引サイトeBayと、同社に対抗する形で急成長を遂げているLetgoについて書きました。本稿でも引き続き筆者が体験したフリマアプリについての考察を続けたいと思います。 メルカリ : 手軽な出品プロセスから決済までもカバーする高い信頼性 日本のスタートアップの中で、海外で最も活躍しているのが「 メルカリ 」でしょう。 Letgoと同じく、企業価値1,000億円を超えるユニコーン入りを…

前編では大手中古取引サイトeBayと、同社に対抗する形で急成長を遂げているLetgoについて書きました。本稿でも引き続き筆者が体験したフリマアプリについての考察を続けたいと思います。

メルカリ : 手軽な出品プロセスから決済までもカバーする高い信頼性

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北米版のメルカリ

日本のスタートアップの中で、海外で最も活躍しているのが「 メルカリ 」でしょう。

Letgoと同じく、企業価値1,000億円を超えるユニコーン入りをしています。筆者は北米版メルカリも利用しました。出品数はLetgoと同じく約20を出品しました。

現在では出品プロセスがかなり簡略化され、さらに洗練・北米向けにローカライズされているようですが筆者が利用した際は日本版メルカリと同じプロセスでした。チャットの問い合わせ数はLetgoの30-40件と比べて多少劣りますが、合計20件ほど。

最も印象的だったのはティーン層からの問い合わせもあった点です。筆者の体験では、eBayは40-50代のジェネレーションX世代、Letgoは20-30代を中心としたミレニアルズ世代のユーザーを囲っている印象。メルカリもLetgoと同じくミレニアルズ世代を中心にリアクションがあると想定していましたが、10代を中心としたジェネレーションZ世代も多少なりとも囲い込めている点にユーザー層の厚みを感じました。

残念ながら50ドルを超える家電製品や生活品に対してのリアクションやリスト視聴数は低かったのですが、安価な品はよく売れる印象でした。実際30ドル程度で売ったマイケルジョーダンの靴は出品から30分も経たずに10代の男の子から問い合わせがあって購入してくれました。

北米版メルカリの最大の特徴は配送から受送金までを綺麗なシームレス体験として実現している点です。Letgoとは違い、マッチングだけでなく決済システムも備えているため安心感を持ちながら取引成立まで利用できます。

配送の際はプリンターで発送ラベルを印刷して適当な箱に商品を詰めて配達キャリアに持っていくだけ。その後は日本版と同じく購入者からの満足度レートの入力を待って、自動送金されるのを待つシンプルな仕組みです。これは直接ユーザーと会うLetgoにはないフローです。

メルカリのサービス安全性やユーザー層の厚み、決済インフラを持っている点は競合と比べても大きな優位性なると感じ、今後日本のUXから北米版にローカライズしたUXへとブラッシュアップさせれば十分に戦っていけると感じました。欲を言えば高級品も買ってくれるユーザーが集まれば市場では強固なポジションを築けるのではないでしょうか。

Facebookマーケットプレイス : 中級品市場が魅力的

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日本では後発ローンチでしたが、 北米ではFacebookが2016年からフリマサービス を立ち上げています。サービスの謳い文句はLetgoと同じく直接会って売買するものなので、決済まではカバーされていません。

同プラットフォームで出品をしたのは10件程度。100ドルを超えるスマホや家電が1週間以内に2件ほど売れたので、中級品がよく売れるイメージです。また、人種のるつぼであるサンフランシスコでサービスを利用していたこともあり、メキシコ系やアジア系の人からの問い合わせが多く、印象としては地元のレストランや工場で働いている低所得者層の移民ユーザーが多い印象でした。

バックグラウンドチェックに関して、Facebookプロフィールがあるのでユーザーの顔や投稿状況を自分で確認できるのが良い点です。また、問い合わせから実際に会うまでのコンバージョン率はFacebookが他社サービスと比べて最も高く、韓国人留学生からメキシコ人、中国系の人までは幅広い層の3人のユーザーと近所で会いました。

正直、直接会う際に恐い人が待っているのではないのかと緊張したので、この点はLetgoを利用する際と同じように不安を持ちます。ですが、3人中2人が購入をしてくれて、サービス別の合計売買額で比較するとFacebookが一番高く収益を稼げたので、筆者にとって利用価値が一番高かったサービスとなりました。

Facebookのやり口として、市場が十分に成長してから後追いする形でサービスを立ち上げる点にスタートアップ精神を感じませんが、コンバージョン率の高さで言えば最も評価できるサービスでしょう。今後配送から決済プロセスまでをカバーすればメルカリの大きな脅威となりそうです。

OfferUp/5miles : 「ユニコーン」とは呼べないほど閑古鳥が鳴いている

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「OfferUp(オファーアップ)」はLetgoやメルカリ同様にユニコーンの仲間入りを果たしています。しかし実際に使ってみるとユーザーからの問い合わせ・リアクションがほとんどありません。ユニコーン企業としてのユーザー数の多さやリアクションの即効性はあまり感じませんでした。

また、ローカル特化のアプリ「5miles(ファイブマイルズ)」はユーザーの囲い込みに失敗しているのか、一切の問い合わせがありませんでした。

「詐欺」と「時間ロス」対策に新たな商機あり

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Image by  Matthias Ripp

どのサービスも安心して売買できるコミュニティーを作ろうとしていると思います。

しかし今回紹介したサービスの中で、eBayとメルカリを除いた全てのサービスが直接会って売買する形式です。「マッチングをするだけでその後はユーザー自身の責任になります」と標語し、詐欺のリスクや強盗に会う責任を一切背負わないビジネスモデルには、ユーザー視点で見ると特に北米では危険性があると感じます。一方、直接ユーザー同士で会って売買するモデルは企業側からすると運用コストが低いため、これから市場縮小することは考え難いでしょう。

この点、メルカリのサービス形態は北米主要フリマアプリの中でも抜きん出ていると考えます。メルカリの安全に売買できる姿勢はとても評価できるでしょうし、7500万もダウンロード数を持つLetgoですらユーザーのロイヤリティー・信頼度は薄いと感じるわけですから、メルカリが強いコミュニティーを囲っていければ大きな競合優位性になるでしょう。

このようなサービスインフラをしっかりと備えたサービスが生き残っていくとフリマアプリを体験しながら強く感じました。

加えて、LetgoやFacebookのように直接会う作業は非常に無駄で、心理的な障壁も高いことにも気付かされます。筆者の場合、Facebookマーケットプレイスで約束を取り交わして1時間待って連絡が来て、最終的にはアポイントをすっぽかされたりしました。

誰かが代理者として購入者候補に会って、交渉から決済までをこなしてくれる代行サービスが登場してきてもおかしくないと思います。

筆者の感覚であれば、もし代行交渉サービスがあれば8ドル程度は支払えたかなと思います。購入者に気に入ってもらうために商品を綺麗に見せるための手入れをして、約束をすっぽかされるかもしれないリスクを抱えながら片道30分ほどかけて交渉場所に行くような、多大な時間と労力を失うリスクを回避できるのならば十分10ドル前後は支払えます。

例えばLetgoでは2億品がリスティングされており、仮に実際にアポを取って会う確率が0.5%だとしても1,000万件の取引が発生します。1取引あたり3ドルの代行手数料をもらうモデルで展開すれば3000万ドルの収益を得られる計算になります。

類似サービスである配送代行スタートアップ「 Shyp(シップ) 」はeBayと連携して、販売者が箱詰めする必要なく、そのまま配達員に商品を渡すだけで発送できるサービスを提供しています。小さな商品発送でも約10ドルは費用がかかるので、よほど忙しくない限り費用対効果が薄く、筆者は使いませんでした。しかし、配送代行市場が大きく成長した事実もあることから代行交渉サービスにも成長の余地があると感じますし、スタートアップが登場してきても理にかなっていると考えます。

日本で言えば「 アッテ 」のようなサービスの登場を皮切りに、直接会うタイプのサービスモデルが浸透してきているので、日本での代行交渉サービスの市場ポテンシャルもあるのではないでしょうか。

直接会うことに対しての不安を払拭するための解決策としては実店舗も考えられるでしょう。

例えば女性服を扱う 「threadUP(スレッドアップ)」実店舗展開を行っており 、もしリアル店舗を利用して商品の受け渡しができれば非常にユーザーとしては嬉しいです。もしLetgoのような直接会うモデルが実店舗を持ち始めたら強いユニークポイントとなるかもしれません。

このように、オンライン上で売買を完結させるeBayやメルカリのモデルと、Letgoに代表される直接会うマッチングモデルの2種類にビジネスモデルは分かれますが、筆者の体験上メルカリのモデルの方が秀でていると感じました。逆に、直接会うフリマモデル拡大に伴い、代行交渉サービスの登場が期待されるでしょう。

フリマアプリ体験中、詐欺に遭って約20万円相当の愛機を2台盗られ帰国した筆者ですが、この記事を通して北米のフリマ市場を知っていただき、今後の新たなビジネス機会模索の参考になれば幸いです。

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