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メルカリShopsは何を変えるーー新たな局面に入る国内B2C EC、注目される個人の動き

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メルカリがメルペイ以来、約2年ぶりとなる新たな事業を公表しました。メルカリShopsはこれまで個人間売買(C2C)を中心としてきた同社にとって初めての事業者向け(B2C)サービスになります。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up メルカリは創業した2013年以降、フリマアプリ「メルカリ」を中…

メルカリがメルペイ以来、約2年ぶりとなる新たな事業を公表しました。メルカリShopsはこれまで個人間売買(C2C)を中心としてきた同社にとって初めての事業者向け(B2C)サービスになります。

メルカリは創業した2013年以降、フリマアプリ「メルカリ」を中心にシンプルな事業構成で成長を続けましたが、2018年8月の上場までに新たな事業創造の仕組みとして2015年にソウゾウを設立しています。ここではクラシファイドの「アッテ」書籍特化の「カウル」ブランド特化の「メゾンズ」買取アプリの「メルカリNOW」シェアサイクルの「メルチャリ」などの新規事業を公表しましたが、いずれも単独でセグメント化できるほどの事業規模にならなかったことから、それぞれ機能としてメルカリに吸収されるなどし、ソウゾウ自体も2019年6月に会社精算という形で一度幕を下ろしています。

このソウゾウが同じ社名で復活したのが昨年12月でした。代表には2017年からソウゾウに参加していた石川佑樹氏が就任し、メルカリ創業者の山田進太郎氏と名村卓氏(CTO)が取締役として脇を固めるという体制になっています。現在、40名弱の体制で発表したメルカリShopsを軌道に乗せるべく開発を続けているそうです。

メルカリにはソウゾウ以外にも新たな取り組みを加速させる組織としてメルカリR4D(R&D部門)や、現在、小泉文明さんが代表を務める子会社の鹿島アントラーズといった取り組みがあります。

今日、開示された2021年6月通期決算で、メルカリはユーザー数1954万人、GMVにして7845億円、売上751億円という結果を公表しました。売上成長率は年次で28%と高い水準を維持しており、この勢いの元、次の成長を目指した中期計画も開示しています。この中でソウゾウはメルコインと並んで、メルカリが推進する6つの事業のひとつに数えられました。

メルカリ決算発表資料より

さて、今回公表されたメルカリShopsですが、こちらの記事にも書いた通り、過去に取り組んだC2Cの実験的なサービスとは異なり、本格的なB2C・コマース領域を攻めています。現在、経済産業省が毎年発表している電子商取引に関する調査では、B2Cに関するコマース市場規模は全体で19兆円ほどあり、ここ1年はコロナ禍もあって大きく成長・変動している状況が浮かび上がっています。C2C市場も成長していますが、規模にして10倍の開きがあるビッグ・マーケットです。

これまでソウゾウではメルカリで展開されるサービスの特化型や、シェア文脈で繋がりのあるモビリティなどやや周辺の新規事業領域を試すような取り組みを続けていました。これはメルペイやメルカリUS、鹿島アントラーズの立ち上げとはやや異なるスキームです。

ではなぜ本体ではなく、ソウゾウで本命とも目されるB2Cコマースを手がけることになったのでしょうか。

本稿ではソウゾウ代表の石川氏へのインタビューを元に、数回に渡り成長するスタートアップがどのように新規事業に取り組んでいるのか、そしてメルカリShopsが新たな局面を迎えるEC市場をどのように捉えようとしているのか、考察交えてお伝えしてみたいと思います。

角度が変わったEC化率

令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

今年7月末、経済産業省のECに関する新たなレポートが発表されました。電子商取引に関する市場調査で、毎年、電子商取引に関わる人たちが標準的な情報として参考にしているレポートです。毎回、一定のペースで市場成長していましたが、今回はやや様子が異なっていました。市場規模こそ19兆円ほどでややマイナスの結果だったのですが、その内訳が大きく変動していたのです。

概要は以前の記事に書いた通りなのですが、注目すべきはEC化率の変化です。物販における対面販売と電子商取引の比率において、これまでも家電や文具など、ネット販売しやすいものについてはEC化が3割〜4割と進んでいたのですが、食品や化粧品、ファッションといった対面でなければ購入体験が悪くなる品目についてはずっと低調なままでした。それが今回、大きく動いたのです。レポートにも言及されている通り、コロナ禍における生活様式の変化が大きな要因になったと考えられます。

メルカリShopsはまさにこの角度が変化するタイミングで投入されたわけです。石川さんにEC市場のトレンド変化で感じた違和感について尋ねたところ、このように状況を説明してくれました。

「特に(物販系ECの)カテゴリによらず、まだまだ幅広くギャップは存在していると思っています。去年1年間で出店者の方や事業者の方々は必要に迫られてコマースを利用せざるを得なくなったという状況が強くあったと認識しています。その中において、トライしてみたけど実際にはなかなか上手くいかなかったり、そもそもトライ自体、どうしたらいいか分からないという状況もあったようです」。

特に石川さんたちがヒアリングした対象の中で、個人に近い小規模な事業者が受けた影響は大きかったようで、これらの事業者が一気に動いた、というのが今回のレポートに出てきた角度や数字のように思います。国内には中小規模の事業者はざっくりと360万者存在しており、その内、300万者が従業員20名以下の小規模事業者と位置付けられています。しかし、実態としてその数はもっと多いのかもしれません。石川さんは筆者の質問にこう答えています。

筆者:実態として個人、フリーランスや自由な働き方をしている人たちがC2CからB2Cコマースに進出している印象があります。この数は360万事業者とは別の、もう少し大きなパイに広がっていると感じているのですがどのように考えてますか?

石川:そうですね、まさにそこは今、お話された数字よりも大きい見立てをしています。ここ自体はこれからも境目が見えにくくなる、伸びしろがある変化の大きい領域だと思っています。逆に言うとソリューションが不足とは言わなくとも、なんでないんだろうなと思っている人が多いのではないでしょうか。

国内におけるフリーランスの人口は広義で462万人(※1)とされています。一方、国内の労働人口(就業者数)は6692万人です。また、コロナ禍において3割近くの人々が副業への関心が高まったという調査結果(※2)もあります。元々、終身雇用などの古い制度が終焉を迎え、新しい働き方などを模索する人たちが動き出している中、コロナ禍という大きな節目を迎えたわけです。

仮説としてこれらの労働人口が、次の収入の口をコマースに向けたとしてもおかしくはありません。

ちなみに今日の決算発表ではメルカリのユーザー数1954万人と共に、潜在出品者数として3600万人の数値が公表されていました。また同様のコマースプラットフォームとして先行するBASEの6月時点のショップ数が150万店です。メルカリShopsに出店する人たちの数を推計することは難しいですが、この数字の間に可能性が秘められているのは間違いなさそうです。

今後、メルカリShopsで店舗開設数などが開示されていくことになると思いますが、この数字がどのような立ち上がりになるのか、またどういった推移曲線を描くのかという点には注目をしています。

次回は個人や小さな事業者がECを始めるにあたっての課題やNFTへの対応などについて、引き続き石川さんの言葉を参考に考察してみたいと思います。

ーーー

※1:2020年・フリーランス協会調べ

※2:コロナ禍により「副業・兼業を行いたい」思いが強まった人は28.3%。テレワーク頻度が高くなるほど、副業・兼業の意向も高くなる傾向がみられる(図表3)。「テレワークできる会社・職種に転職したい」思いが強まった人は17.6%。(出典:第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査

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10%が見えてきたEC化率、物販系の市場成長率は脅威の22%に

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ピックアップ:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(7月30日) 先日、こちらの記事を出したところ「最新版の情報が出ているよ」というご指摘をいただきました。ありがとうございます。7月30日のリリースということで私も気がついておりませんでした。ということで、記事の中でも言及していたEC化率の成長角度ですが、見事上向きに上がっていたようです。サマリーと気になった数値を抜き出してみます。 …

令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

ピックアップ:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(7月30日)

先日、こちらの記事を出したところ「最新版の情報が出ているよ」というご指摘をいただきました。ありがとうございます。7月30日のリリースということで私も気がついておりませんでした。ということで、記事の中でも言及していたEC化率の成長角度ですが、見事上向きに上がっていたようです。サマリーと気になった数値を抜き出してみます。

2020年の国内の消費者向けEC市場規模は19.3兆円で金額こそ2019年の19.4兆円とほぼ変わらず、マイナス830億円・前年比0.43%減という結果なのですが、内訳が大きく変わっていました。ちなみにB2B市場規模は約335兆円でこちらも前年の353兆円から5.1%減となっています。この内訳の考え方や、今後の見通し、なぜEC化率にいま注目しようとしたのかについては、こちらの記事をご覧ください。

さて、B2C市場の大カテゴリ「物販系・サービス系・デジタル系」の三大項目で大きく変動したのが物販系ECの中身とEC化率、そして大きな打撃を受けたサービスEC系の状況です。詳細の資料は私もまだ斜め読みなのですが、関連している方はどこに変動があるかチェックされると発見があるかもしれません。

令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

物販系のECについては2019年の10兆円に対して12.2兆円の大幅な増加となりました。2018年が9.3兆円だったので、成長率にして約8%だったのが、2020年には一気に21.7%の増加となっています。

物販系の内訳を詳しくみてみます。ちなみに物販系ECはリアルに販売している商品があるということで、他の大項目であるサービス系EC、デジタル系ECとは異なり、ここだけ「EC化率」が設定されています。リアル物販市場における電子商取引化率です。

2020年のEC化率は8.08%で、前年比で1.32%の増加となりました。これは前年の6.76%の成長率、0.54%に比較して角度がついた数字です。記事冒頭のグラフを見てもその様子がわかります。

令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

物販系の市場規模で生活家電等が約2.4兆円、衣類等が2.2兆円 、食品等が2.2兆円、生活雑貨等が2.1兆円となっています。これら上位4つが7割以上を占めています。特に気になっていたのが食品のEC化率で昨年まで2.89%と他の項目に比べて極端に低い数値でした。

しかしこれが2.89%から3.3%に、市場規模として1.8兆円(2019年)から2.2兆円と大幅な増加を見せています。成長率では2018年から2019年が7.7%だったのに対して、2020年は21%です。他の項目も同様の水準で軒並みアップしていますが、食品だけはこれまで市場規模全体の割合に対して動きが少なかったこともあり、やはり注目指標になると思われます。

メルカリShopsの強みは集客

食品関連はネットスーパー系やオイシックスなどのミールキット系、食べチョクに代表される産直ECなどがあります。BASEやSTORESといったSMB向けコマースもここから数値が大きく期待できるかもしれませんし、先日参入してきたメルカリShopsはやはりうまくタイミングを合わせてきたと考えるべきでしょう。

一方、これらの大幅な増加を全て飲み込んだのが、打撃を受けたサービス系ECです。ここは旅行サービスやチケット販売が大きな割合を占めており、2019年に7.1兆円あったものが約4.6兆円にまで大きく減少しました。旅行や興行は先日、令和トラベルの篠塚孝哉さんにお伺いした通り、ワクチンのゆくえがそのまま影響するので、足元が戻るにしても数カ月という単位ではなさそうです。

令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

ということで、これだけ大規模かつ長年に渡る調査報告がここまで大きく数値を変化させることはそうそうありません。かつてはリーマンショック、その前はITバブルの崩壊が記憶にありますが、それぞれの時期を前後してパラダイムシフトが発生しています。

前の記事にも指摘した海外資金の流入もスタートアップには大きく影響してくる話題です。合わせてこれらの数値の解像度を上げて、どこにチャンスがあるのか、ペインの所在を発見したいところです。

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メルカリがECプラットフォーム参入ーーソウゾウが1900万人リーチの「Shops」開始へ

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ニュースサマリ:メルカリの子会社ソウゾウは7月28日に都内で会見を実施し、新たな事業「メルカリShops(メルカリショップス)」のプレオープンを伝えた。メルカリグループとして一次流通を扱うEC化支援事業へ本格参入することになる。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up メルカリShopsはフリ…

ニュースサマリ:メルカリの子会社ソウゾウは7月28日に都内で会見を実施し、新たな事業「メルカリShops(メルカリショップス)」のプレオープンを伝えた。メルカリグループとして一次流通を扱うEC化支援事業へ本格参入することになる。

メルカリShopsはフリマアプリ「メルカリ」内にスマホひとつで簡単に出品・販売できるコマースプラットフォーム。ショップを運営したい事業者はメルカリとは別のEC専用アカウントを開設し、商品を出品・販売することができる。月額利用料や初期費用などは無料で、売り上げに応じて10%の手数料を支払う。

出品した商品はフリマサービスとして運用されているメルカリ内に「ショップ」タブとして追加されたコーナーから購入できるほか、独自のAIマッチングにより、適切な消費者に商品を届けることができる。

iOS・Androidの両方に対応しており、個人・個人事業主・法人問わず利用できる。現在は9月の本格オープンを前にしたプレオープン状態で、クリエイターや生産者、小規模事業者などを対象とした先行出店の受付を開始している。なお出店開設には事前審査があり、また販売禁止商品などのルールも決まっている。要冷蔵の食料品については年内にクール便の提供が開始された後に取扱が可能となる。

運営するソウゾウはメルカリが昨年12月に設立した子会社で、メルカリの新たな柱となる事業の検討を進めていた。同社は2015年にも一度設立されており、クラシファイドの「アッテ」書籍特化の「カウル」ブランド特化の「メゾンズ」買取アプリの「メルカリNOW」シェアサイクルの「メルチャリ」などの新記事業を生み出していた。しかし全ての事業について成長性などの課題があり、2019年6月に一度清算をしている。

今回立ち上げた新規事業のメルカリShopsはこれらに次ぐものとなる。

新しい顔ぶれとなったソウゾウ経営陣(写真左から取締役の名村卓氏(CTO)と山田進太郎氏、代表の石川佑樹氏)

話題のポイント:昨年12月に設立されたソウゾウの第一弾(清算前を入れると6〜7つ目)のチャレンジはECでした。ただ、楽天やPayPayモールなどのECというよりはShopifyタイプ、つまりBASEとSTORESが鍔迫り合いを繰り広げているSMB向けのコマースプラットフォームです。

BASEのIRで6月時点のショップ数が150万店、ここ直近では50万店舗が増加するなど、コロナ禍における小規模事業者のオンライン化が如実に現れた結果になっています。四半期のGMV(流通総額)は2020年通期で951億円、2021年1Qが257億円という結果です。2020年1Qが125億円でその次の2Qが310億円と跳ね上がり、その後は250億円前後で推移するという状況になっています。一方のメルカリは2021年3QだけのGMVで2086億円、ユーザー数は1904万人に到達しています。

立ち上げの背景は明らかにコロナ禍による消費者動向の変化によるものです。BASEの決算にも表れているように小規模事業者はリアルでのビジネスチャンスを突然奪われ、オンラインに活路を見出そうとしました。BASE決算における2020年の1Qから2QへのGMV跳ね上がりはそれを反映させたものです。メルカリについても、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、在宅時間の増加から月間利用者数が約250万人増加しているそうです。

今回、新規事業を主導したソウゾウ代表取締役の石川佑樹さんも、こういった社会情勢の変化に加え、EC化率が7%前後でまだまだ伸びしろがあること、そして現在、市場に出ている小規模事業者向けのコマースプラットフォームに明確な課題があることを参入の理由に挙げていました。

特に課題で納得感のあったのは集客の部分で、BASEやShopify、STORESもすべて集客は事業者が担う必要があります。そもそも自分の周囲のファンの人たちに販売するツールとしての提供がはじまりですから、この辺りはモール型と言われる楽天やPayPayモールなどとは根本的に思想が違っていました。

こういった課題の声を石川さんはメルカリ利用ユーザーから丁寧に拾い集め、1900万人のユーザーベースをこれらの事業者に提供することにした、というわけです。さらにメルカリにはC2Cで培ったAIによるマッチングのアルゴリズムがあります。ただ出店するだけでなくAIにより幅広い年代の消費者にあった商品を提示することで、この集客導線という課題を解決できれば、確かに魅力です。しかもこれらは無料で提供されます。

メルカリが2013年に登場した当時、フリマアプリとしては最後発でありながら爆発させた体験のひとつが「マジですぐ売れる」という感動だったのは間違いありません。売れたお金を引き出す機能よりも売れる体験を優先させたのは今でも鮮明に記憶にありますが、この出品してすぐ売れる、これが彼らをしてユニコーンへと一気に押し上げた原動力のひとつとなったのです。

そういう意味でもメルカリShopsをホームラン級に押し上げるかどうかはこの「売れる感動」にあると思います。コロナ禍において困っている事業者の活路となれば、これはかなり大きなインパクトになるのではないでしょうか。逆に言えば、出店しても体験がよくなければソウゾウが数々繰り出した新規事業のひとつとして記録されることになるかもしれません。

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メルカリと鹿島アントラーズが「ピッチコンテスト」をやるワケーー地域づくりを担う「スタジアムラボ」の役割

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ニュースサマリ:鹿島アントラーズ・エフ・シー(以下、鹿島アントラーズ)は1月27日、ピッチコンテスト「Pitch & Match」の開催を伝えている。プロサッカークラブの経営資源を活用してスタートアップや企業の新たな技術・サービスと協業し、エンターテインメントとテクノロジーの融合した地域づくりを目指すとしている。 このイベントは鹿島アントラーズが実証実験など事業促進の機会を提供し、同クラブ…

鹿島アントラーズウェブサイト

ニュースサマリ:鹿島アントラーズ・エフ・シー(以下、鹿島アントラーズ)は1月27日、ピッチコンテスト「Pitch & Match」の開催を伝えている。プロサッカークラブの経営資源を活用してスタートアップや企業の新たな技術・サービスと協業し、エンターテインメントとテクノロジーの融合した地域づくりを目指すとしている。

このイベントは鹿島アントラーズが実証実験など事業促進の機会を提供し、同クラブや鹿嶋市と共同で事業化、社会実装を目指すプログラム。登壇を希望する企業や団体は2月12日までにこちらのフォームから応募が必要その後、19日まで選考をした上で、最大10社程度が最終のピッチステージに駒を進めることになる。ピッチイベントの開催日は3月5日を予定している。募集するテーマは次の通り。

  • 先端的な技術が実装されたスマートシティ、スマートスタジアムの実現
  • 技術を用いたエンターテインメントの実現
  • ヒト・モノ・コトをつなぐカシマスタジアムという場を活かした取組み
  • プロスポーツクラブを中心としたサステイナブルな地域づくり
  • 地域コミュニティにおけるウェルビーイングの向上
  • その他鹿島アントラーズをハブとした課題解決に向けた取組み

同クラブでは昨年2月に鹿嶋市および親会社であるメルカリと「鹿嶋市における地方創生事業に関する包括連携協定」を締結している。また、昨年10月には他の企業、地方自治体とともにオープンイノベーション・プログラム「SmartCityX」に参画し、「スポー ツ×テクノロジー」をテーマとした地域課題解決の取り組みを実施している。

ホームとなるカシマスタジアムでは、第5世代(5G)移動通信システムが実装されており、昨年9月にはNTTドコモの協力のもと「5G×マルチアングル映像体験」の実証実験を実施した。今回募集するアイデアや技術、サービスはこういった社会実装活動をさらに多数の企業・スタートアップ、団体にまで広げるものとなる。

話題のポイント:鹿島アントラーズがピッチコンテスト!と聞いて「スポーツテック盛り上がってるな〜」と思ったのですが、話はそう単純ではなく、というかもっと広くて楽しいお話でした。メルカリの取締役会長であり、鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役の小泉文明さんにお話伺いましたが、キーワードになるのは「地域創生の実験場(ラボ)」かなと思います。

隔週2万人がやってくる「実験場」

さて、こちらの図ですがメルカリの研究開発プロジェクト「R4D」で扱っている「poimo」の動く様子です。poimoは東京大学・川原研究室・新山研究室と共同で研究している「空気でふくらませることができるパーソナルモビリティ」だそうです。

で、この方がpoimoに乗って走ってるこの場所、これがカシマスタジアムなんですね。通常、こういったモビリティについては(特に動力を使うものであれば)規制などで厳しく制限されているので、勝手に公道を走ったり、ましてや「おいらスタートアップだゼ!」とナイショで営業したりするとすぐに叱られることになります。

一方、鹿島アントラーズのホームスタジアムは彼らの運営ですので、こういう実験も自由にできることになるわけです。スタジアムは広く、コロナ禍の今であれば当然ながら「非接触デリバリ」というのは非常に重要なラストワンマイルソリューションです。もし、何かのフードデリバリをやりたいとなった場合、地域でやることもひとつですが、隔週で2万人がやってくるスタジアムでやることができれば十分な実証結果が得られるはずです。これをさらに鹿嶋エリア、地域で展開すれば段階的にサービスの芽が成長することになります。

 鹿島アントラーズを小泉さんたちは「スタジアムを持ったラボ(実験場)」と表現していましたが、非常に理にかなったインキュベーション、アクセラレーションの仕組みだなと感じるわけです。

スポーツをハブとした地域づくりモデル

資料提供:鹿島アントラーズ

ということで、今回のピッチコンテストはニュースの通り、鹿島アントラーズのアセットをうまく活用して地域を盛り上げる、新しい事業の芽を探し出す・一緒に作ろうという試みです。出資だ!株だ!とかのマネーゲームっぽい話というよりは(資本提携必要だったらケースで応じるというお話ですが)、実直にこの「鹿嶋」という地域を使った壮大な社会実験をとにかく一緒にやろうぜという意気込みが根底にありました。

彼らのホームタウンとなるのはメインの鹿嶋市、潮来市、神栖市、行方市、鉾田市、鹿行(ろっこう)5市で、人口は合計27万6,000人。J1としては最もコンパクトな地域になるそうです。ホームの「カシマスタジアム」にはゲームのある隔週で県外など含め2万人がやってくるそうです。またファンクラブ会員としても2.4万人が参加しており、非常に魅力的なユーザーベースを保有している状況があります。

メルカリが鹿島アントラーズのスポンサーを経て、筆頭株主になったのは2019年です。そこから数年はこういったアセットを整理し、クラブのパートナーやスポンサーなどの企業、鹿嶋市などの行政、そしてメルカリが強みとするテックを巻き込んだ様々な取り組みを地味に仕組んでいったそうです。

例えばカシマスタジアム敷地内にはアントラーズスポーツクリニックが併設されているのですが、ここにパートナー企業となったシーメンスのMRIを導入することで選手ケアだけでなく、地域医療の課題(整形外科)にも貢献できるようになっています。

また、スポーツとはちょっと遠いところで、地域のIT人材を育成するために、鹿嶋市の小学校においてプログラミング教育の提供も実施しています。これは鹿嶋市と締結した「地方創生に関する包括連携協定」のスキームを活用したもので、導入にはパートナー企業ユナイテッドのグループ企業、キラメックスが活躍しています。

クラブではライフスタイルのオリジナルブランドを立ち上げている(画像:鹿島アントラーズ

今、同クラブは「スポーツクラブからライフスタイルを提供するクラブへ」というビジョンを掲げています。スポーツテックと考えるとスタジアムで来場するファンの人たちに楽しい体験を提供することにフォーカスしてしまいますが(もちろんそれも重要でありつつ)、もう少し大きな視点で「鹿嶋」という地域を、どうテクノロジーで変貌させるのか、というアイデアが求められるように感じました。

そしてもしこのスキームで大きく社会実装に成功したスタートアップは他の地域でも大きくスケールする可能性が出てくるはずです。株だ!出資だ!なんて話もこのタイミングで出てくるのではないでしょうか。

スポーツクラブをハブとしたオープンイノベーションの取り組みは非常に理にかなっており、スポーツを中心にファンや地域、そしてテクノロジーが融合した先には、大きな果実が生まれそうな予感がすごくしています。

訂正:記事初出時に誤ってpoimoの別の搭乗写真を掲載しましたが、現在は正しい写真に差し替えてあります。訂正してお詫びいたします。

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メルカリが新規事業特化の子会社立ち上げ、その名は「ソウゾウ」

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ニュースサマリ:メルカリは12月17日、新規事業を推進するための子会社「ソウゾウ」(社名は現時点で予定)を1月28日付けで設立することを公表した。(リンク先はPDF)代表には石川佑樹氏、取締役に名村卓氏(CTO)と山田進太郎氏が選任される予定。同社はメルカリにおける新たな事業の柱を集中的に検討するための子会社で、中長期の視点で新規事業の企画、開発、運営を担うための人材、環境を整備する。なお、メルカ…

2013年7月に開始した当初のメルカリ。当時はAndroidアプリのみのスタートだった

ニュースサマリ:メルカリは12月17日、新規事業を推進するための子会社「ソウゾウ」(社名は現時点で予定)を1月28日付けで設立することを公表した。(リンク先はPDF)代表には石川佑樹氏、取締役に名村卓氏(CTO)と山田進太郎氏が選任される予定。同社はメルカリにおける新たな事業の柱を集中的に検討するための子会社で、中長期の視点で新規事業の企画、開発、運営を担うための人材、環境を整備する。なお、メルカリは2019年に同じ社名で新規事業開発を担った子会社「ソウゾウ」を6月13日付で解散・清算している。(リンク先はPDF)

話題のポイント:ソウゾウが2020年の年末に復活してきました。メルカリの新規事業を担当するという名目で2015年に設立されたソウゾウは初代代表に松本龍祐氏を迎え、クラシファイドの「アッテ」書籍特化の「カウル」ブランド特化の「メゾンズ」買取アプリの「メルカリNOW」シェアサイクルの「メルチャリ」を繰り出した企業です。松本氏から代表のバトンを受け取った原田大作氏が検討した旅関連のサービスは日の目をみることはなく、2019年に解散という結果を迎えることになりました。ちなみにメルカリの創業期の社名は「コウゾウ」で、多分、メルカリの経営陣はこの社名シリーズが気に入っているのだと思います。まさかのシーズン2開始です。

新・ソウゾウの創業メンバーとなった名村氏、山田氏、石川氏

代表に就任する石川さんはメルカリNOWを立ち上げた人物で、ソウゾウからメルペイに異動し、金融新規事業のプロダクト責任者を務めている人物だそうです。現在のメルカリ経済圏は月間利用者数約1,750万人、年間流通額は6,000億円、コンビニには専用のポストまで設置される国民的サービスに成長しました。

ちなみにオープン当初のインタビューで山田さんは当時のヤフオクの月間流通総額が500億円ほどあるのでそこを目指したいとお話されてたんですが、7年で実現してました。スタートアップすごい。

ちなみにメルカリに確認しましたが、新設される予定のソウゾウでどのような事業領域を検討するかなど、詳細は未定というお話でした。FacebookやGoogleなどグローバルテック巨人たちはスタートアップを買収してエコシステムを大きくしていますが、メルカリについてはまだまだ創業・経営チームもフレッシュな顔ぶれなのでしばらくは自前路線なのかなと想像しております。

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貸付投資のファンズ、メルペイ残高でメルカリに貸付投資ができる「メルカリ サステナビリティファンド」をローンチ

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企業と個人をつなぐ貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds」を運営するファンズ(旧クラウドポート)は30日、メルカリ(東証:4385)に個人が間接的に貸付し、資産運用ができるファンド「メルカリ サステナビリティファンド#1」をローンチした。このファンドは、メルカリの決済機能である「メルペイ」残高でのみ投資が可能だ。なお、当ファンドでは、一定金額の投資が完了したユーザを対象として、最大9,00…

企業と個人をつなぐ貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds」を運営するファンズ(旧クラウドポート)は30日、メルカリ(東証:4385)に個人が間接的に貸付し、資産運用ができるファンド「メルカリ サステナビリティファンド#1」をローンチした。このファンドは、メルカリの決済機能である「メルペイ」残高でのみ投資が可能だ。なお、当ファンドでは、一定金額の投資が完了したユーザを対象として、最大9,000円分のメルカリポイントを還元するキャンペーンも実施する。

このファンドでは、ユーザは外部から入金した資金に加え、メルカリの売上金を使ってそのまま資産運用が可能となる。Funds を通じてメルカリから得られる利回りは年率換算で2.0%を予定しており、運用期間は約10ヶ月。1円から投資が可能となっている。メルカリ残高を使った運用となるため、メルカリにとっては、仮想通貨やトークンでの投資に見られるような、閉じられた経済圏でのユーザや資金の囲い込みが可能となり、一方ユーザにとっては、必要な際には現金化して銀行振込して引き出す柔軟性を確保できる。

Image credit: Funds

このファンドの出資金はメルペイ事業の事業資金として利用されるため、メルカリユーザがファンドに出資した場合、利回りが得られる上に自らの利用体験がメルペイの事業拡大にも寄与するため、二重構造で利益を享受できることになる。ファンズが以前から提唱してきた Finance とファンマーケティングを掛け合わせた「FinCommunity」では、企業のファン=株主となる構図が説明されていたが、当ファンドでは、メルカリのユーザ=メルペイの事業出資者という構図が出来上がることになる。

ファンズとメルカリの両社は、メルカリのユーザに対して、身の回りのいらないものを売る「副業(複業)」という行為を通じて、結果的に資産形成ができるという新しいユーザ体験を提供できることになる。

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PR視点のメルカリ・コーポレート戦略ーーブランドや採用への効果、ネガティブをどう伝えるか(後編)

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前半ではパブリックリレーションズ視点でのメルカリ「バリュー」について整理しました。後半も引き続き、小泉さんのお話をヒントに、PR視点がどこにあったのか紐解いてみたいと思います。 ブランドを作るオープンな情報共有 2015年3月、メルカリは物流大手ヤマト運輸と業務提携を結びます。創業2年のスタートアップとしては異例なのですが、この時の交渉の裏側を小泉さんはこう明かしています。 ニュースレターの購読 …

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写真左から日本経済新聞社の奥平和行編集委員とメルカリ取締役社長の小泉文明さん

前半ではパブリックリレーションズ視点でのメルカリ「バリュー」について整理しました。後半も引き続き、小泉さんのお話をヒントに、PR視点がどこにあったのか紐解いてみたいと思います。

ブランドを作るオープンな情報共有

2015年3月、メルカリは物流大手ヤマト運輸と業務提携を結びます。創業2年のスタートアップとしては異例なのですが、この時の交渉の裏側を小泉さんはこう明かしています。

「日本で勝ち切るために優先順位を考えた。フリマアプリはバリューチェーンの中にロジスティクスが含まれるので、ここを損なうと体験がよくなくなる。だから1年以上かけてヤマト運輸に提案をしていた。

(売上ゼロにも関わらず提案を受け入れてくれた理由について)元々大企業にいたので、当時の上司に紹介してもらいました。ベンチャーは交渉して下から持って行ってもダメなんです。上から行けるルートをしっかり探すべき。また、会うだけじゃダメで、私は当時のヤマト運輸の決算説明会資料を読み込んで、彼らのストラテジーをまず理解した。その上で『B2Cを増やす』という文脈があったので、それに対してメルカリがどう役に立つのかを説明したんです」(小泉さん)。

なるほど、という納得感のあるエピソードです。実はこのカンファレンス全体もそうだったのですが、こういうディティールまで迫るような内容を各所で共有していたんですね。別にコーポレートのノウハウなんて普通に考えれば共有するものではありませんし、穿った見方をすれば競合に塩を送ることになりかねません。

でもそれぐらい専門的かつ内容のある情報を公開することで、正しいターゲットに正しい情報が伝わり、かつ、それを口にして他に伝えたくなるという効果が期待できるのです。カンファレンスの手法は一般的で、例えば金融分野ではマネーフォワード、IoT関連ではソラコムがそれぞれ大規模な定期イベントを持っていたりします。

またもう少し小さい取り組みとして、最近ではSmartHRのコーポレート資料がソーシャル上で話題になっていました。給与テーブルまで開示したもので、同社のオープンな社風、ロジカルな考え方、そしてサービスの急成長ぶりを表現することに成功しています。こういう情報は「マス層」に届くことはありませんが、彼らが期待する新しい社員だったり、ステークホルダーに届けるには十分な方法だと思います。

採用をエンジンにしたPR

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2016年末に実施した海外インターンシッププログラム

メルカリのパブリックリレーションズ活動で忘れてはいけないものに採用があります。特に社員の紹介によるリファラル採用はよく耳にする話題で、数百人規模がこの経路で入社しています。ただこれも結構な積み上げがあったそうです。

「(リファラル採用の取り組みを聞かれて)最初のフェーズは元部下や近場ですね。次のフェーズの前半はエージェントコミュニケーション。勉強会やって母集団を作ったりしました。名前が知れてくるとブランドを意識し始めるので、Wantedlyを使ってブログっぽいことをやったりとか。

リファラルの『フェーズ1』は経営者がやります。1年ぐらいやって社員経由はゼロです。そうこうしてるとリファラル経由の社員が入ってくるので『フェーズ2』に進みます。オウンドメディア作っても、バリューがあるから働き方もそれで説明ができます。これをやらないのに社員に『リファラルだ!』って言っても無理」(小泉さん)。

メルカリのリファラル採用にPR視点が強く影響している件については、以前のこちらの取材で書きました。情報により人が動き、また入ってきた人が人を繋ぐ。こういうエコシステムを経営陣が設計していた様子がよくわかります。

またこれも話題になりましたが、メルカリは2016年末に学生をインターンシップとして米国派遣するプログラムを発表しています。これについて小泉さんは優秀な学生獲得以外にもうひとつ目的があったと明かしています。

<参考記事>

「インターンシッププログラムは通常の会社ではコスト的に非効率です。でも、海外に本気というメッセージを含めたかったんです。実利で目に見える効果と波及の無形価値を考えて設計していました」。

なるほど。言われてみれば確かにあの頃から海外進出の話題が増えました。

ネガティブをどう伝えるか

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メルカリはサービスクローズの後、ソウゾウの新サービス開発を伝える

さて、メルカリのPR視点考察もそろそろ終盤です。最後は「ネガティブ」の扱いについて少し掘ってみます。ちょうど、カンファレンス前後にメルカリでは新サービスのシャットダウンを伝えていました。

「会社のリソースは大切なので、このアプローチ違うなと感じたら撤退は早く判断する。ただ、止めるっていうのはハレーションが起きるので怖いです。時に厳しいコミュニケーションをしないといけない。止める時にはメンバーのメンタルケアもするし、メルカンなどで透明性高く伝えることもやります。この社員が会社に紐付いているのか、それともプロダクトに紐付いているか。会社に貢献したいという思いがあれば次のチャレンジに向かってくれる」。

サービス停止というのは創業者やプロダクトオーナーであれば、なかなか決断できないものです。また、「失敗」という後ろ向きな話題になりがちですので、情報として表に出さず、ひっそりとクローズするという例も多いです。あれ、いつのまにかなくなってた、という。

もちろん影響範囲の大小ありますが、このタイミングでの正しい情報開示が社会や社員との関係をスムーズにしてくれる役割を果たすことがあります。

また別事例ですが、ライブコマースを仕掛けていた「PinQul」が開始9カ月でクローズするという話題がありました。ピボットなどの事案の場合、クローズはひっそりとやって、再オープンの時に取材依頼をするというパターンが多いです。

<参考記事>

しかし、いい時ばかりではなく、悪い時にしっかりとお話をするという姿勢はスタートアップにとって何より大切な「社会からの信頼」を得る上で非常に重要です。実際、私が目にしたソーシャル上での意見はポジティブが多い印象でした。

また、一緒に働いているメンバーとの関係も大切です。プロジェクトを離れて別の道を歩むことになっても、その時にナイスチャレンジをしたチームのメンバーなのか、うやむやに失敗したプロジェクトのワンオブゼムだったのかでは全く見え方が異なります。

ネガティブというのは社会が話を聞きたいタイミングでもあります。当事者にとっては辛い場面かもしれませんが、ここで逃げずにしっかりと社会との関係を作る機会と捉えられるかどうかで次の展開は変わるのではないでしょうか。

最後に

さて長い取材でしたが、メルカリをパブリックリレーションズの視点で紐解くという考察は一旦これで終了です。改めて整理してみると次のポイントが見えてきました。

  • PR視点におけるミッション、バリューの重要性
  • 多彩なツールによる情報網とタイミング構築
  • 発信者(自社、社員、第三者)が話したくなる話題づくり

前半にも書きましたが、パブリックリレーションズの視点はパブリシティやメディアリレーションのような一部機能というより、もうひとつ上の上位概念です。何かひとつの決め手があって実行できるものではなく、経営陣が考え抜いたコーポレート戦略と紐付き、それを社内外に浸透させる「潤滑油」みたいな存在になります。

一本の取材記事でその会社の認知が変化することはありません。もし、そう見える事案があったとしても、それは脈々と積み上げられたその企業の「澱」みたいなものが決壊して噴出した結果です。それがどの方向に向かうかは、経営陣や社員が「社会とどのような関係を構築したいか」という視点を持っているか否かにかかっています。

メルカリの事例が全てのスタートアップに適応できるわけではありませんし、そもそもコーポレートはそれぞれの企業オリジナルのものです。しかし、参考になる点は多々あったと思うので、この数本の記事が次に続く起業家の何かの役に立てば幸いです。

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PR視点のメルカリ・コーポレート戦略、社会との関係をなめらかにするその手法(前編)

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スタートアップ取材を続ける中で情報発信、本質的にパブリックリレーションズが上手だなと感じる企業にたまに出会います。こういう方々は社会(社内・外)との関係性がなめらかで、人々が自然とブランドを作ってくれます。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 特にメルカリについてはストーリーのあるリリース…

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スタートアップ取材を続ける中で情報発信、本質的にパブリックリレーションズが上手だなと感じる企業にたまに出会います。こういう方々は社会(社内・外)との関係性がなめらかで、人々が自然とブランドを作ってくれます。

特にメルカリについてはストーリーのあるリリース社内に組み込まれた編集部チームの存在上場時に見せたパーセプションチェンジの手法など、折に触れて事例を整理してきました。こうやって眺めると、同社の経営陣やPRを担当するチームがどのように人々の情報の流れを作り出しているのか、その様子が浮かび上がってきます。

中でも私が注目しているのが小泉文明さんの存在です。過去記事でも言及しましたが、2013年12月に彼が参加してから情報発信の内容は大きく変わります。以降のメルカリは1人の取材者として伝えたくなるエピソードが多く、また、メッセージがコーポレートとしっかり紐付いていたのが特徴でした。

本稿では、先月開催されたメルカリ主催のコーポレート系カンファレンスで小泉さんが語った内容を手掛かりに、その手法を考察してみたいと思います。

そもそもパブリックリレーションズとは

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本題の前にパブリックリレーションズについて軽く整理をしておきます。

ちょうど、前述のカンファレンスでも「成長期の企業PR」をテーマにしたセッションがあり、井之上パブリックリレーションズ執行役員の尾上玲円奈さん、NEWPEACE代表の高木新平さん、メルカリPRグループマネージャーの矢嶋聡さんがお話をされていました。

彼らの言葉を借りると、パブリックリレーションズは「ステークホルダーとの関係構築、リレーションシップマネジメント」(矢嶋さん)というのが簡潔な説明で、メディア対応などの一部機能というよりは、もうちょっと上位の概念に当たるものです。

例えば企業が社会との対話をする場合、別にニュースメディアにインタビューが載ることだけが手法ではありません。プロダクトは日々ユーザーと触れ合ってるわけですし、営業でプレゼンテーションする内容もパブリックリレーションズの一環と言えます。

こういった細かい部分に企業としての考え方、コミュニケーションを織り込んでおく。一方的に伝えるのではなく、相手が自然と口にしたくなる対話の環境を作る。

「新しいものが出るときは軋轢が生まれます。この『目指す世界』を社会との対話や合意形成を通じてファンになってもらう。知ってもらうのではなく中長期の関係性を作るのが本質」(矢嶋さん)。

気がつくのは、企業のパブリックリレーションズが本質的にコーポレート(特にミッションやビジョン、バリュー)と紐付いていることの重要性です。

私も取材先でこの考え方が抜けてる事案に出会うことがあります。そういう場合は表面的な話題(数字だけや機能紹介のみ)に終始することが多く、その企業が社会とどういう関係を構築したいかが理解できません。

逆にこれがしっかり連動していると、ひとつのメッセージが説明コストを押し下げる効果を発揮してくれるので、リソースの少ないスタートアップにとって大きな武器になります。

では小泉さんはどのようにしてコーポレートとパブリックリレーションズを紐付けていたのでしょうか?彼の言葉で印象に残ったものをいくつか挙げて考察を進めてみましょう。

PR視点のメルカリ・コーポレート戦略

セッションは公開インタビューの形式で、日本経済新聞社の奥平和行編集委員とメルカリ取締役社長の小泉文明さんが対談しました。まずは全ての基本となるバリューから考察してみます。

PR視点でみるメルカリの「バリュー」

「(メルカリに入った当時を振り返って)コーポレートは課題山積でした。感じたのはものづくりのプロジェクトチームに近い印象で、ミッションとバリューも定義されてなかった。ミクシィ時代の反省でプロダクトが強い会社は(サービスの)成長がそのまま組織の吸引力になります。しかし、ライフサイクルがあるので、いい時もあれば悪い時もある。みんなの理想像がブレ始める。何が答えか分からなくなって好き勝手言い始める」(小泉さん)。

小泉さんはミクシィ時代に経験した苦い経験から、ミッション・バリューの定義された「コーポレート」とプロダクトを分ける作業をまず最初に手がけます。プロダクトに波があってもコーポレートが明確であれば、そこで働く人たちは信じるものを失いません。

ここで重要なのがミッション・ビジョンなどのステートメントです。特にメルカリのバリュー(Go Bold、All for One、Be Professional)は有名ですが、これが同社のパブリックリレーションズに果たした役割は相当に大きいものがあると考えられます。

例えばメルカリのとあるプロダクトの取材をするとします。その担当者が回答するとして、その言葉がメルカリの全体戦略にあったものなのかどうなのかは、このバリューを基準に判断すればよい、ということになるのです。

社内コミュニケーションも同様です。小泉さんも「モノゴトはOKRとバリューの2軸で決めていて、これによって会社の生産性が得られた」と話していましたが、属人的な判断の排除は企業での人間関係をなめらかにする効果も期待できます。

バリューを浸透させるためにツールやオウンドメディアを駆使する

小泉さんは普段から目にする何気ないツール類にバリューを入れたり、オウンドメディア「mercan」などで度々このワードを使うなど社内外にリーチさせ、バリュー本来の機能である意思決定で正しくこのツールが活かされる環境を構築したそうです。

また、これの浸透のために、経営陣1人1つずつ担当を決めていた、というのも注目したい点です。企業と経営陣や社員を結ぶ大切なツールだからこそ、そのインストール手法は関係性を大切にしたものでなくてはなりません。結果的にバリューは社内だけでなく、社外の私たちにまで広く伝わるものとなりました。

「創業メンバーと私の4人で経営合宿したのですが、その時、ミッションを1つ、バリューを3つ決めて、それぞれ4人で担当を決めて社員に伝えたりする責任を負ったんです。そこまでやらないと言葉ってインストールできない」(小泉さん)。

後半では引き続き、小泉さんの言葉を参考に、パブリックリレーションズ視点でメルカリのコーポレート戦略を考察してみたいと思います。

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メルカリが狙う次のユニコーン、テーマは「旅」ーー原田氏に聞くソウゾウ流「スタートアップ創造の仕組み」

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開始数カ月で新事業の終了、整理を発表したメルカリが次に手がける事業は「旅行」をテーマにしたものになるそうだ。本誌取材にソウゾウ代表取締役の原田大作氏が答えてくれた。 グループで主に新規事業のスタートアップを担当する子会社、ソウゾウの代表に今年4月に就任した原田氏にその狙いと勝算について聞いた。(本文中の太字は全て筆者の質問。回答は原田氏) ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップ…

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ソウゾウ代表取締役の原田大作氏

開始数カ月で新事業の終了、整理を発表したメルカリが次に手がける事業は「旅行」をテーマにしたものになるそうだ。本誌取材にソウゾウ代表取締役の原田大作氏が答えてくれた。

グループで主に新規事業のスタートアップを担当する子会社、ソウゾウの代表に今年4月に就任した原田氏にその狙いと勝算について聞いた。(本文中の太字は全て筆者の質問。回答は原田氏)

メルカリ級を狙うーーソウゾウが考える新規事業

さて、何をさておき新しい領域の話題だ。旅行と言えば、MERY創業の有川鴻哉氏が手がけるズボラ旅、光本勇介氏のTravel NowにLINEの参戦など、2018年のテク・スタートアップ界隈で最も注目すべき市場になる。具体的に何をやるのだろうか?

新事業の領域について詳しく教えて欲しい

4月に旅行の領域に絞って事業をやるということが決まって現在開発中です。旅行ってプロセスが複雑じゃないですか。行きたいところを見つけて行程をアレンジして現地に行って、体験して、思い出残して。詳細はまだ言えないのですが、こういうプロセス全てを取るようなプラットフォーム的な考え方を持っています。

いつ頃公開になるのか

秋頃を予定しています。

原田氏は前述の通り4月に代表に就任し、ソウゾウとして新規事業のあり方を考えたという。そこで出た結論のひとつに「メルカリを超えるものを作る」という基準を決めたそうだ。

確かにこれまでソウゾウが手がけたサービスはクラシファイドのアッテ(2018年5月末終了)は別として、終了が発表されたNOWやteacha、メゾンズはどれもメルカリ本体の派生だ。ソウゾウが手がけなくても本体でやればいいし、実際、これらはソウゾウの手は離れるものの今後、メルカリの一部サービスとしてマージされる可能性があるという話だった。

旅行サービスの詳細はこれ以上説明できないという話だったのでここからは想像になるが、楽天が買収によってECセグメントのひとつの柱に育てた楽天トラベルのような存在感を目指しているのだろう。後発の話題についてはメルカリそのものが最後発であったことを考えれば取るに足らない指摘になる。

メルカリの前身「コウゾウ」では3つほど新規事業を仕込んでいたという話を聞いたことがある。たまたま最初の打席で放ったメルカリが大きくヒットしたのでそこに集中した。ソウゾウも旅以外には考えなかったのか。

ソウゾウで手がけたサービスにはメルカリIDを拡大させる、という思想がありました。またメルペイもメルカリに近く『モノとカネ』以外の領域であれば『コト』になると。それで取り組んだアイデアが、旅やコミュニケーション、VR・ARなどの体験の領域になったのです。当初は3ラインで考えていたのですが、試作品を使ったインタビューなどを重ねた結果、旅行に統一することになりました。ここでメルカリとは違う新しい柱を立てる

新規事業の領域については理解した。もうひとつ気になるのが撤退の基準だ。ユーザーや株主には期待している人もいるがどのように説明するのか

いくつかポイントがあって、KPIをもっと磨こうよというのがイエローカードで、数字が全くついてこないのがレッドカード。スタートアップと同じで最終的に予算が切れたらその段階で(判断がやってくる)

始まる前から終わる話をしても仕方ないのだが、責任の取り方みたいな話題については結構シビアだった。原田氏はソウゾウの代表であると同時に、経営責任を負った一人の「プロ契約社員」的な存在になる。事業がダメになったからすぐに契約終了、ということがあるかどうかはわからないが、プロスポーツ選手並みの意識を持っているのは他の役員からも聞いたことがある。この辺りはスタートアップと同じだ。

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少し話を変えよう。では、メルカリーソウゾウはどのようにして新規事業を成功に導こうとしているのか。原田氏は社内スタートアップの仕組みについて興味深い取り組みを教えてくれた。

メルカリには創業期(コウゾウ時代)の実績が全部残ってるんですが、それをベンチにしてます。メルカリが開始してからどれぐらいの予算で、広告費をどれぐらい使って、何人の人員を投入したのか。(山田)進太郎さんたちは開始して3カ月で『これキタ』と確信したポイントがあったそうなので、そこまでの予算を参考に事業計画を組んでます

スタートアップ初期に困るのは人員と資金だが、これについてはスター人材が集まりまくってるメルカリにおいて心配事にはあたらない。メルカリ創業期のコーポレートを小泉文明氏と手がけた掛川紗矢香さんや、同じくメルカリのサーバーを支えた鶴岡達也氏らがソウゾウの役員として参加している。資金についても同様だ。

さらに羨ましいのが豪華なメンタリングの制度にある。「Souzoh Brain Trust」という仕組みがあるそうで、月に一回、グループの経営陣を前に1時間ほど起業家としてピッチする機会を設けているという。

例えば松本(龍祐)さんはユーザー視点、濱田(優貴)さんは技術視点、小泉さんは『それビジネスになるの?』といったフィードバックをくれるんですが、良い意味でマウンティングしてくるんですよね。ただ、意思決定は必ず本人にさせる。当事者に判断させるんです

具体的にはプレゼンターは5分で概要をピッチして5分でデモを披露する。オーナーはミーティングの最後に1カ月後に何をするのか全員を前にチェックアウト宣言して終了する、という具合だそうだ。プログラムのモットーも教えてもらったので共有しておこう。

  • 顧客目線でより面白くなるためには?を考える
  • All for one:全ては成功のために。リスペクトの元に発言する
  • 誰もがアイデアを自由に発言し上下関係なし
  • 会社都合、前提条件は無視、破壊的なアイデアを歓迎
  • Give & Give & Give!

メルカリにはR4Dという研究開発機関やフィンテック領域のメルペイ、スタートアップ投資のメルカリファンドもあって、それぞれでスタートアップを生み出す仕組みを用意している。

しかしソウゾウはこのどれでもなく、純粋にコウゾウの再現をしようという印象を持った。一方で退路を絶ったようなバンジージャンプのスタートアップ手法ではなく、メルカリなりのエコシステムの中で、より多く打席に立てる仕組みを作ろうとする意図を感じる。

旅領域のサービスが当たるかどうかは全くわからないが、このエコシステムが本当に成立するのなら、「メルカリの次」という言葉が真実味を帯びてくるのではないだろうか。

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メルカリ上場前夜、イケイケベンチャーから「信頼される企業」へーーPRチームが施した「Go Boldなコミュニケーション戦略」舞台裏

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スタートアップはいかにして社会に信頼される企業に変容するのかーーこの興味深いテーマをメルカリが語るというのであれば聞かない理由はないだろう。 7月10日にPR TIMESが主催したイベント「PR TIMESカレッジ」のステージに登壇した矢嶋聡氏は、LINEでマーケティングコミュニケーション室の室長を務めたのち、昨年10月からメルカリに参加した人物。上場前夜に同社のPR・コミュニケーション戦略を一任…

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会場となったTRUNKには300名のブランド関係者が集まった

スタートアップはいかにして社会に信頼される企業に変容するのかーーこの興味深いテーマをメルカリが語るというのであれば聞かない理由はないだろう。

7月10日にPR TIMESが主催したイベント「PR TIMESカレッジ」のステージに登壇した矢嶋聡氏は、LINEでマーケティングコミュニケーション室の室長を務めたのち、昨年10月からメルカリに参加した人物。上場前夜に同社のPR・コミュニケーション戦略を一任され、上場承認日に「創業者からの手紙」と題したメッセージを公開するなど”イケイケベンチャー”から脱皮した「新たなメルカリ」を社会に披露した立役者の一人だ。

本稿では矢嶋が壇上で語ったメルカリの「Go Boldなコミュニケーション」戦略についてまとめた。バギーな側面も多いスタートアップ創業諸氏にとって、メルカリの足跡は多いに参考になるだろう。整理して共有したい。

実は2名しかいなかった「イケイケベンチャー」のPR体制

2018年3月時点でのメルカリは月間ユニークユーザー数(MAU)1054万人、流通総額は月次で324億円を超え、創業からわずか5年足らずで株式公開を果たした。順風満帆の成長で一気に上場へ、という印象の強いメルカリだが、そのコミュニケーションの体制についてはまだ改善すべき箇所があったようだ。矢嶋氏は参加した際の状況をこう振り返る。

「外部環境としてはサービスが成長していて上場観測なども出ていた。メディアもスタンバイに入って大型特集を組むような機会も増える一方、現金出品などの不正出品問題も顕在化し、社会にとっていいものなのかという問題提起が増えてくる。特に大手マスコミによるネガティブ報道も急増していて対応が必要だった」。

当時のPR体制はメンバーも2名でチームとも言えず、また核となる方針が決まりきっていなかった。そもそもメルカリが社会に対して与えたビジョンや世界観などのポジティブな側面は伝わっておらず、リソース不足も手伝って後手に回る様子が伺えたという。

「世論を作るようなオピニオンリーダーたちはメルカリを使っていない場合がまだ多く、ネガティブ報道でその存在を知ったということもあった。ここを変えなければ次に進めない」。

こういったメルカリの「現在地」を確認した矢嶋氏たちは、次に大きな方針として、メルカリが目指すべき「パーセプションチェンジ(認識変化)」の方向性を打ち出すことになる。

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写真:メルカリPRグループマネージャーの矢嶋聡氏

体制を強化するーーIPO前夜、前半戦での下地作り

「法令遵守意識の低いイケイケベンチャー」というパーセプションから「応援したい、世界に挑戦するテクノロジーカンパニー」への変容。大きな方針が決まったメルカリPRチームはロードマップを手がける。フェーズを2つに分類し、2017年一杯で体制の強化や信頼の獲得、そこからIPOまでを主にストーリーテリングに費やすことにした。

「定例ミーティングを見直して、単なるTODOの確認ではなく、自分たちのやったことの施策に対しての振り返りやPDCAを徹底しました。また、やること・やらないことの決定やクリッピングツールなどを導入して効率化を進めた」。

人材の採用にはオウンドメディアを活用したのは以前にお伝えした通りだ。結果、か細かったPRチームは10名ほどの体制に強化され、重点メディアとのリレーションも厚みが増した。矢嶋氏が参加したタイミングはちょうど不正出品などの話題が社会に出回っていた頃だ。なかなか収束しない世論についてはバイネームの記者による深い取材記事で論調を変える施策も投じた。

こうやって下地づくりを終えたメルカリは社会に対してポジティブな情報発信を開始することになる。

IPOに向けた後半戦ーーユーザーに愛されるメルカリを伝える

矢嶋氏が参加して数カ月、即興ながら体制や下地は整った。ここから6月の株式公開までが大きな勝負どころだ。まず手がけたのは新サービスや新たな取り組みに関するポジティブなストーリーの発信だ。

2017年の末から「メルカリNOW」や研究機関の「R4D」といった新サービスなどの露出を最大化。特に「メルカリで技術者を1000人を雇う」という山田進太郎氏の発言は大きく取り上げられ、エコシステムやテックカンパニーといった「フリマアプリ」一辺倒からの脱却が見られるようになったのもこの頃だ。

また矢嶋氏の話では経済産業省が発表した「中古品市場調査レポート」に合わせて、フリマアプリの登場による消費環境の変化に関するレポートをメディアに配信し、記事化を促進するなど、積極的な「世の中ゴト化」も進めたという。

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「信頼される、世界に挑戦する企業」への変容

ロードマップなどの指針を策定し、徐々にフリマアプリ「以外」のポジティブ情報も拡大してパーセプションが変化していく。こうやって温めたコミュニケーションの先に待っていたのがコーポレートとしてのストーリー、つまり「フリマアプリの会社」から「テクノロジーカンパニー」への変容を図る局面になる。

ここで重要な役割を担ったのが山田進太郎氏による「創業者からの手紙」だ。

「海外の企業では上場承認時に企業のファクトとは別に創業者からのエモーショナルなメッセージが出るんですね。これを国内企業としてやろうと」。

チームではこれに並行して情報発信の制限がある期間に水面下で取材を仕込むなど、上場のタイミングで露出を最大化させる準備を進める。ーーそして上場の日に出たのが「野茂英雄」メッセージだ。新聞に全面掲載された広告ビジュアルは、野茂のような存在になりたいというメッセージをわかりやすく伝えていた。

「世界に挑戦するためによりGo Boldな挑戦をしていきますよ、大胆にロングタームの投資をしていきますよ、というスタンスを伝えました。これによって海外を目指すという論調が作られた」。

ーーいかがだっただろうか。IPO前夜に矢嶋氏やPRチームが準備したコミュニケーション戦略は、聞いていて非常に理路整然としていて実にスマートだ。もちろんこの結果にはそれ以前、創業期から彼らが魅力的なプロダクトを作り、ユーザーに向き合い、タイミングよく社会に対して情報発信してきた積み上げがあったからとも言える。

「まずは自分たちが正しくどう見られているか。それから自分たちがどうなりたいか、その差分をステップバイステップで埋めていく。打ち上げ花火的な施策一発でパーセプションが変わることはない」。

フリマアプリから「世界を目指すテックカンパニー」への姿を手に入れたメルカリ。彼らをトレースすることは後進スタートアップにとって大きな参考になるのではないだろうか。

情報開示:THE BRIDGEは2018年4月からPR TIMESのグループメディアとして運営されています。

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