メルカリがECプラットフォーム参入ーーソウゾウが1900万人リーチの「Shops」開始へ

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ニュースサマリ:メルカリの子会社ソウゾウは7月28日に都内で会見を実施し、新たな事業「メルカリShops(メルカリショップス)」のプレオープンを伝えた。メルカリグループとして一次流通を扱うEC化支援事業へ本格参入することになる。

メルカリShopsはフリマアプリ「メルカリ」内にスマホひとつで簡単に出品・販売できるコマースプラットフォーム。ショップを運営したい事業者はメルカリとは別のEC専用アカウントを開設し、商品を出品・販売することができる。月額利用料や初期費用などは無料で、売り上げに応じて10%の手数料を支払う。

出品した商品はフリマサービスとして運用されているメルカリ内に「ショップ」タブとして追加されたコーナーから購入できるほか、独自のAIマッチングにより、適切な消費者に商品を届けることができる。

iOS・Androidの両方に対応しており、個人・個人事業主・法人問わず利用できる。現在は9月の本格オープンを前にしたプレオープン状態で、クリエイターや生産者、小規模事業者などを対象とした先行出店の受付を開始している。なお出店開設には事前審査があり、また販売禁止商品などのルールも決まっている。要冷蔵の食料品については年内にクール便の提供が開始された後に取扱が可能となる。

運営するソウゾウはメルカリが昨年12月に設立した子会社で、メルカリの新たな柱となる事業の検討を進めていた。同社は2015年にも一度設立されており、クラシファイドの「アッテ」書籍特化の「カウル」ブランド特化の「メゾンズ」買取アプリの「メルカリNOW」シェアサイクルの「メルチャリ」などの新記事業を生み出していた。しかし全ての事業について成長性などの課題があり、2019年6月に一度清算をしている。

今回立ち上げた新規事業のメルカリShopsはこれらに次ぐものとなる。

新しい顔ぶれとなったソウゾウ経営陣(写真左から取締役の名村卓氏(CTO)と山田進太郎氏、代表の石川佑樹氏)

話題のポイント:昨年12月に設立されたソウゾウの第一弾(清算前を入れると6〜7つ目)のチャレンジはECでした。ただ、楽天やPayPayモールなどのECというよりはShopifyタイプ、つまりBASEとSTORESが鍔迫り合いを繰り広げているSMB向けのコマースプラットフォームです。

BASEのIRで6月時点のショップ数が150万店、ここ直近では50万店舗が増加するなど、コロナ禍における小規模事業者のオンライン化が如実に現れた結果になっています。四半期のGMV(流通総額)は2020年通期で951億円、2021年1Qが257億円という結果です。2020年1Qが125億円でその次の2Qが310億円と跳ね上がり、その後は250億円前後で推移するという状況になっています。一方のメルカリは2021年3QだけのGMVで2086億円、ユーザー数は1904万人に到達しています。

立ち上げの背景は明らかにコロナ禍による消費者動向の変化によるものです。BASEの決算にも表れているように小規模事業者はリアルでのビジネスチャンスを突然奪われ、オンラインに活路を見出そうとしました。BASE決算における2020年の1Qから2QへのGMV跳ね上がりはそれを反映させたものです。メルカリについても、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、在宅時間の増加から月間利用者数が約250万人増加しているそうです。

今回、新規事業を主導したソウゾウ代表取締役の石川佑樹さんも、こういった社会情勢の変化に加え、EC化率が7%前後でまだまだ伸びしろがあること、そして現在、市場に出ている小規模事業者向けのコマースプラットフォームに明確な課題があることを参入の理由に挙げていました。

特に課題で納得感のあったのは集客の部分で、BASEやShopify、STORESもすべて集客は事業者が担う必要があります。そもそも自分の周囲のファンの人たちに販売するツールとしての提供がはじまりですから、この辺りはモール型と言われる楽天やPayPayモールなどとは根本的に思想が違っていました。

こういった課題の声を石川さんはメルカリ利用ユーザーから丁寧に拾い集め、1900万人のユーザーベースをこれらの事業者に提供することにした、というわけです。さらにメルカリにはC2Cで培ったAIによるマッチングのアルゴリズムがあります。ただ出店するだけでなくAIにより幅広い年代の消費者にあった商品を提示することで、この集客導線という課題を解決できれば、確かに魅力です。しかもこれらは無料で提供されます。

メルカリが2013年に登場した当時、フリマアプリとしては最後発でありながら爆発させた体験のひとつが「マジですぐ売れる」という感動だったのは間違いありません。売れたお金を引き出す機能よりも売れる体験を優先させたのは今でも鮮明に記憶にありますが、この出品してすぐ売れる、これが彼らをしてユニコーンへと一気に押し上げた原動力のひとつとなったのです。

そういう意味でもメルカリShopsをホームラン級に押し上げるかどうかはこの「売れる感動」にあると思います。コロナ禍において困っている事業者の活路となれば、これはかなり大きなインパクトになるのではないでしょうか。逆に言えば、出店しても体験がよくなければソウゾウが数々繰り出した新規事業のひとつとして記録されることになるかもしれません。

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