小型貨物の“ヤバい”伸びーーメルカリのオフライン戦略「メルロジ」を考える(1)

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写真右手:メルロジ代表取締役COOに就任した進藤智之さん

10月の終わり、メルカリは新たな戦略として新設の子会社「メルロジ」を発表しました。翌日の最新決算(2022年6月期・第1四半期)においても2ページほどを割いて紹介されており、主力3事業(メルカリJP、メルペイ、メルカリUS)および新規事業のソウゾウ(メルカリShops)、メルコイン(暗号資産)鹿島アントラーズの3社に加え、ここに新たなプロジェクトが立ち上がることになりました。

テーマは物流です。既報の通り、大きく躍進するEC市場を背景としたものですが、では、彼らは既存のヤマト運輸や佐川急便、日本郵便を脅かすようなポジションを考えているのでしょうか?

今回、新たにメルロジ代表取締役COOに就任した進藤智之さんにお話を伺う機会を得ましたので、実施背景や将来的なビジネスの可能性などの疑問を整理してみたいと思います。進藤さんはヤマト運輸でキャリアをスタートさせ、その後、日本IBMやアマゾンジャパン、イオン系列などで長年サプライチェーンに関わる経験を積んできたロジスティクスのプロです。

小型貨物に関するヤバい伸び

このお話を進める前にまず、数字の整理をしておきましょう。メルロジ設立会見でもいくつか上がっていましたが、現在、日本国内における宅急便の利用は「うなぎのぼり」に増加しています。今年8月に国土交通省が公表している「令和2年度宅配便取扱実績」によると、昨年の宅配便取扱個数は約48.3億個で、前年比約5億個増(12%)の状況だそうです。

国土交通省「令和2年度宅配便取扱実績」

さらにヤマト運輸の公表している小口貨物取扱実績をみると、最新の情報(11月5日発表)でEC向け「ネコポス」の累計取扱個数が約2.2億個と、昨年比にして約148%の大幅成長を遂げていることがわかります。ちなみにネコポス躍進の背景にはその前年10月に実施された料金改定(195円から175円)が影響しているのでは、という話もあるようです。

そしてメルロジの設立発表会ではこれに加えて興味深い数字が公表されていました。メルカリの独自調査としてこの日本の宅配荷物におけるメルカリの荷物の割合が5〜10%を占める、というのです。ざっくりと2.5億個から5億個で、さらに多くの利用ユーザーがこれらの荷物発送に使っているであろう、コンビニにおける荷物配送の実に8割がメルカリに関連したものである、というから驚きです。

10月末に実施された会見資料で明らかになったコンビニ発送の実態

激動の市場環境変化を背景に進藤さんはメルロジ設立の理由を次のように語っていました。

「コロナ禍もあって配達環境は大きな変化がありました。各社が注目しているのはラストワンマイルです。(異物混入などのトラブル懸念から)タブーだった置き配が当たり前になったり、数年前は考えられない世界になっています。例えばこれまでも2時間刻みで(自宅に)集荷に来てくれていたんですが、それが待てなくなって自分でコンビニや取扱店に持ち込むようになりました。かつて最高の価値だったものが変化してきているんです」。

ちなみに分社化したのは意思決定のスピードを上げるためです。例によって人の採用については重要視しているというお話でした。

さて、以前に本誌でもお伝えしたように、現在の日本におけるECの利用率はまだまだ途上です。最新の調査では一つの指標として注目されている「EC化率」の成長角度が変化するなど、踊り場を迎える様子はありません。

メルカリ自体も継続して成長しており、メルカリJPのMAUは年次成長で13%増の1984万人、流通総額についても昨年比19%増の2034億円(11月5日発表の決算)と高い成長率を保っています。あらゆる数値がこの規模で伸びている。成長痛という課題も見えてきている。つまりそこにはチャンスしかないわけです。

コンビニだった「場所」のアップデート

ではこのチャンスにメルロジはどのようなアプローチを考えているのでしょうか。

彼らがチャレンジするシンプルな課題のひとつに「潜在的な」3600万人の利用意向ユーザーの存在があります。実際に利用しているユーザー2000万人ほどに留まっており、使ってない人たちの課題は出品や個人間売買への不安、梱包の体験など「出品まで」の改善点に集中しているそうなので、ここをブレイクスルーできれば大きな利用者増が見込めることになります。

大筋のシナリオは昨年2月に開催された事業戦略発表会で明らかになった「コネクト戦略2020年」がベースになっていると考えられます。大きくはこれまで二次流通だったメルカリが一次流通と交わり、データを追うことでよりモノを捨てることなく必要な人の手元に流通させる、という構想です。

そしてこれを実現するためのアプローチとして重要になるのがオフラインの設置でした。昨年の戦略発表会で明らかになった新拠点「メルカリステーション」はこれまでにマルイなど11箇所で開催、「メルカリポスト」については現在1,000カ所への設置が終わっているそうです。

これまでメルカリとユーザーをつなぐリアルなタッチポイントはコンビニや宅配便の集荷センターでした。しかし創業以来、スタートアップであった彼らは急激な成長を実現するため、ここをある意味「ハック」して活用していたにすぎません。巨大な社会インフラに成長してしまった結果、コンビニには大きな集荷の負荷がかかり、メルカリ側は貴重なユーザーのタッチポイントをコントロールできないという状況が発生したわけです。ちなみに会見ではメルカリポストひとつ設置すると、コンビニ窓口の発送業務は1件あたり60秒の短縮につながるとお話されていました。

つまりメルロジはこの「場所」をアップデートすることで、新しい展開を生み出そうとしていることになります。ここで得られる成果は大まかに「体験啓蒙」「データ収集」「サービス」の三つになると考えられます。(次につづく)

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