地上波を使って3次元測位、位置情報インフラに新潮流をもたらすMetCom/KDDI ∞ Labo4月全体会レポ

荒木勤さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

MetComは屋内外でのシームレスな3次元の測位(位置情報)システムを展開しています。位置情報といえば「GPS」をイメージする方も多いでしょう。このGPSに代表される衛星測位は、屋内や高さが不得意という課題があります。人の過ごす時間が圧倒的に多い屋内の位置情報をカバーできていない衛星測位は、位置情報インフラとしては不十分と考えられます。

MetComは地上波の仕組みで衛星測位を補完・代替する技術を開発しています。一般的に衛星測位の仕組みは、時刻情報を上空2万キロから受信することで位置情報を計算しています。しかし、それでは距離が遠いのです。MetComの技術は、ビルの屋上から地上波で、衛星測位と同じ情報を伝播することにより、圧倒的に近い距離で送受信ができる。これにより、屋内や地下での位置情報がわかるようになります。

また位置情報といえば一般的に2Dの世界ですが、MetComの仕組みであれば3D、すなわち高さの情報も認識可能です。MetComの技術は、GPSと同等の地上波による測位と気圧データ分析のハイブリッドにより、高精度の垂直測位も実現している点で、特許を取得しています。この特許技術により、対象者がビルの何階にいるのか判別できるわけです。

社会的な位置づけとして、MetComは測位という無線利用インフラを地上波というレイヤーで日本初のポジショニングを実現します。テレビを見るときや電話をするときに地上波の仕組みを活用するように、測位も地上波の仕組みで行うのです。(荒木さん)

テレビ放送や通信においては、地上波システムが実用領域を提供し、衛星が補完的な役割を果たしていますが、測位の領域では衛星システムのみに実用性への期待がかかり続けています。MetComは測位に地上波という実用性のある仕組みを持ち込むことにより、広域性と精度をバランスさせた3D位置情報を提供していきます。

ただし、これを実現するためには電波免許という大きなハードルがあります。MetComは5年の歳月をかけて準備を重ね、ついに2024年4月、総務省においてプラチナバンドと呼ばれる周波数の割り当てに向けた審議がスタートしました。プラチナバンドが割り当てられることで、MetComの技術は日本全国に浸透していきます。

MetComの測位技術は、GPSを利用している全てのサービスに活用可能です。人や物の位置から自動車やドローンのような移動体の位置までトラッキングできます。SIerや通信キャリア、アプリ開発者、データ分析事業者、広告関連事業者、モビリティ事業社などに地上波を活用した位置情報を提供することで、警察や消防からアプリやゲーム、人流分析、自動車やドローンまでさまざまな領域の事業やサービスを促進します。

位置情報は、これからすごく基本的な情報インフラになります。パートナー企業と協力して、建設、公共安全、防災、モビリティなど幅広い分野でのユースケース創出を目指しています。企業の皆様といろいろユースケースを作って、安全・安心・便利な社会を実現したいと思います。(荒木さん)

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