Google、クラウドRDBMS製品の機能拡張を発表——企業が恐れるベンダーロックイン不安も払拭

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Kubernetes talk (Container management and deployment: from development to production) at Google Cloud Summit in 2017.
Used under the Creative Commons CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication license.
Photo by Raysonho @ Open Grid Scheduler / Grid Engine via Wikimedia.

Google は29日、企業がより効率的にデータの力を活用し、イノベーションを推進できるよう、データおよび AI プラットフォームに対する一連のアップデートを発表した。

バーチャルイベント「Google Cloud Data and AI Summit」での発表には、GoogleのサーバレスデータウェアハウスであるBigQueryを実行するための新しいアプローチが含まれている。同社は、BigQuery Editions によって、顧客がデータワークロードをより柔軟に運用・拡張できるようになると述べている。また、Googleはデータを分離・匿名化するサービス「データクリーンルーム」を発表した。

さらに、Google はトランザクションとアナリティクスを扱うデータベースサービス「AlloyDB Omni」を発表した。2022年5月に初めて発表された AlloyDB は、オープンソースのリレーショナルデータベース「PostgreSQL」をベースにしたマネージドクラウドデータベースだ。

AlloyDB は、PostgreSQL がデフォルトでサポートしているトランザクションワークロードだけに特化しているのではなく、アナリティクスワークロードをサポートする機能も備えている。これまで AlloyDB は、Google Cloud 上で動作するサービスとしてのみ利用可能だった。しかし、AlloyDB Omni では、データベースを好きな場所で実行できるようになる。

ユーザの要望に応える新ツール

Google が発表した新製品の最後を飾ったのは、「Looker Modeler」サービスだ。Looker は、Google が2020年に26億米ドルで買収したビジネスインテリジェンス(BI)技術だ。Modelerサービスは、組織がビジネスメトリクスを定義し、アクセスするための新しい方法を提供する。

Google Cloud の GM 兼データ分析担当 VP の Gerrit Kazmaier 氏は、記者会見で新しいアップデートは顧客の要望によるものであると指摘した。

一つには、あらゆる課題を抱える今年、特に柔軟性へのニーズが高まっていることがある。予測可能なデータニーズと予測不可能なデータニーズの両方に対して、最適化するための支援を求めているのだ。(Kazmaier 氏)

BigQuery は、より賢いスケーリングを可能に

ユーザが使用した分だけ支払うという柔軟性は、クラウドの本来の約束事だ。Google はBigQuery Editions のアップデートでこの約束を実現しようとしている。

Kazmaier 氏によれば、BigQuery Editions は複数の階層を提供し、階層ごとに異なる機能セットが備えられており、顧客はその中から選択することができるそうだ。また、組織は個々のワークロードに合わせて階層を組み合わせることも可能だという。

BigQuery Editions が提供する新しい柔軟性は、ストレージとオートスケーリングに関する Google のインフラ機能の強化によって実現される。Kazmaier 氏は、BigQuery の圧縮ストレージが、独自の多段圧縮プロセスを使用して、高度に圧縮されたフォーマットでデータへのアクセスを提供すると説明した。その結果、組織はより多くのデータをより少ないコストで保存できるようになる。

新しいオートスケーリング機能

BigQuery Editions が提供する柔軟性は、ワークロードの新しい自動スケーリング機能によっても実現される。Kazmaier 氏は、Google が BigQuery Editions のインフラの一部として、クエリの計画と実行を行うための新しいリソーススケジューラーを構築したと指摘した。クエリは基本的に、処理を行う際に、その場でコンピュートリソースを取得することができると説明した。

Kazmaier 氏は、2019年に初めて利用可能となったサービス「BigQuery ML」の最新情報を提供した。BigQuery ML は、組織がAIモデル開発のデータを利用できるように、データウェアハウスと機械学習(ML)を連携するものだ

Kazmaier 氏はこの1年間で、Google は ML を大規模に利用できるようにし、組織が自身のデータと接続できるようにすることに重点を置くようになったと語る。サミットに先立つ3月28日、Google は BigQuery ML を段階的にアップデートし、BigQuery に直接連携されたモデルだけでなく、リモートでホストされたモデルを使って推論を行えるようにしたと発表した。

AlloyDB を Google Cloud から切り離し

AlloyDB のようなクラウドデータベースは、通常クラウド上にしか存在しないが、それは必ずしも組織が望むもの、必要とするものではない。

記者会見で、Google のデータベース担当副社長兼 GMの Andi Gutmans 氏は、多くの組織が異なるクラウドでデータベースを運用したいと考えており、中にはオンプレミスで運用する必要性がある場合もあるとコメントした。また、一部のユーザの間では、単一のクラウドプロバイダでしか実行できない技術を持つことは、ロックインリスクにつながるという懸念もある。データベース「AlloyDB Omni 」は、ユーザが好きな場所でデータベースを実行できるようにすることで、この課題に答えようとする試みである。

Google が自社のデータテクノロジーの1つを自社のクラウドプラットフォームから解き放つのは、今回が初めてではない。2021年、Google は複数のクラウドプロバイダでデータクエリを実行できる「BigQuery Omni」を発表した。 BigQuery Omni がマルチクラウド対応を可能にしたのに対し、AlloyDB Omni はもう少し踏み込んで、データベースのフルコンテナイメージをダウンロードできるようにした。コンテナをサポートする環境であれば、オンプレミスでも他のクラウドプロバイダでも実行することができる。

ロックインの恐怖を取り除くという考え方は、AlloyDB Omni のオープンソース基盤データベース「PostgreSQL」に対する Google の見解にも及んでいる。

AlloyDB であろうと、我々抜きであろうと、どの PostgreSQL でも実行できるようにしたい。差別化された仕事を含め、私たちが行うあらゆる仕事において、私たちの目標は、そこに互換性があることを本当に確認することである。(Gutmans 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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