ヒットの秘訣は“20周年”?ーー渋谷PARCO「マツケンサンバ」コラボカフェその話題のひみつを聞いてきた

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

犬夜叉にキングダム、ちいかわからラブ and ベリーまで、人気のアニメやキャラクターとのコラボでヒットを連発しているのが渋谷PARCOプロデュースのコラボカフェ「TOKYO PARADE goods&cafe」です。今年の5月にはあの「上様」こと松平健さんのヒット曲「マツケンサンバⅡ」の世界観にインスパイアされた企画を展開。ソーシャルメディア中心に大きな反響を呼び、会期を延長するなど話題をさらいました。このコラボレーションカフェは、愛知・名古屋PARCOと大阪・心斎橋PARCOで展開中のカフェブランド「THE GUEST cafe&diner」にも巡回し、その勢いはじわじわと全国に広がりを見せています。

ヒット企画はいかにして生まれたのか?その秘密を探るべく、MUGENLABO Magazine編集部はこのプロジェクトを担当している株式会社パルコ エンタテインメント事業部 コンテンツ事業担当の谷川 祐太朗さんにお話を伺ってきました。

カフェの様子

コラボカフェでヒットした取り組みで代表的なものをいくつかご紹介いただけますか?

谷川:私たちが運営しているのは渋谷PARCO内で展開している「TOKYO PARADE」というカフェなんですが、ほかにも池袋や名古屋、大阪の心斎橋でも同じコラボカフェブランドとして「THE GUEST cafe&diner」を展開しています。

直近の話題としてはマツケンサンバカフェや、ちいかわのコラボカフェでかなり注目を集めました。「ちいかわカフェ」は、弊社のコンテンツとして継続的に取り組ませていただいておりまして、初めての企画から2回目の「ちいかわ飯店」まで、同じチームがプロデュースしていて、かなりヒットしています。渋谷で直近に手掛けた漫画やアニメコンテンツとのコラボカフェとして、あらゐけいいち先生の「日常」という作品をテーマにしたものもあります。

コラボカフェ事業を開始してから約7〜8年が経つのですが、その間にはアーティスト系のコンテンツも多数展開してきました。例えば、ポルノグラフィティさんの25周年を記念した企画であったり、ゲーム実況者に「ナポリの男たち」という有名な方々がいらっしゃるんですが、そちらのコラボも反響をいただきましたね。

このような形で、タレントやアーティスト、漫画やアニメのコンテンツなど、さまざまな分野でのコラボレーションを通じてコラボカフェ事業を展開しています。

このカフェ事業の狙いはどこにあるのですか?

谷川:私が所属しているエンターテインメント事業部という部門では、様々なカルチャーやアートなどを通じて多くのお客様に楽しんでいただく役割を担っているのですが、カフェの事業では特に新しいファンコミュニティづくりを狙っている部分があります。

新しい場を作ることで、お客様も新たな刺激を得ることができ、そうしたコンテンツをさらに楽しんでもらえるような場が形成されることで、新たなビジネスの波が生まれるのではないかと感じています。特にマツケンサンバカフェは、その最たる例だと思っています。

マツケンさんの一番コアなファン層は『暴れん坊将軍』などを見ていた年代の方々かもしれません。しかし、カフェを展開することで、例えば「小学校の運動会で踊ったことがある!」といった若い世代の方々にもお越しいただくことができました。弊社もコラボカフェのプロジェクトを通じて新しいコミュニティを形成することで、新たな市場や様々なチャンスが生まれるのではないかと考えています。

企画については御社の方からの提案か、持ち込みのどちらが多いですか?

谷川:どちらのケースも半々くらいの割合でありますね。弊社から提案して一緒に取り組みたいというアプローチもあれば、逆に版元の方から一緒に試してみたいというお声がけをいただくこともあります。

カフェにて提供されるメニュー

ヒットが記憶に新しいマツケンサンバカフェはどちらだったのですか?

谷川:弊社から直接お声がけさせていただきました。ただその前に、別の事業会社さんがパルコのスペース内で『マツケンサンバ POP UP SHOP』というイベントを展開されていて、売れ行きや盛り上がりがすごかったのを拝見していたんです。カフェにしたら絶対ヒットするだろうなということで、直接事務所の方にお声がけしました。

マツケンサンバカフェやラブandベリーの企画を拝見すると、過去のリバイバルものという印象を受けますが、これは意識されたのでしょうか?

谷川:半分意識していた部分と、偶然そのようになった部分もあります。というのも、カフェの開発にはいくつかのポイントを設定していて、ファンの数やコンテンツの持続年数などが判断基準となることがあるのですが、実は「20年周期」ぐらいのものは、かなり大きくヒットする傾向にあるんです。

マツケンサンバ自体もちょうど来年で20周年というタイミングだったり、ラブandベリーもちょうど来年20周年なんですよね。前述したポルノグラフィティさんも、25周年の企画のタイミングでお声がけをいただきましたし、高橋 留美子先生の『犬夜叉』や『うる星やつら』といった作品も、『犬夜叉』はアニメ放映開始20周年の際に、『うる星やつら』は連載開始40周年ぐらいのタイミングで展開したところ、大いに盛り上がりを見せているんです。

すごく面白いです。言われてみれば確かに20周年ですね?

谷川:自分たちが子供の時、例えば小中学生とかそういった時代に、何となく刷り込みというか面白かったな、良かったなっていうものあるじゃないですか。それを持ったまま、自分たちが大人になってちゃんとお金を使えて自由に遊べるっていうタイミングになった時、そこにポンと仕掛けてあげると、爆発しやすい。

特に最近のZ世代や若い世代の人々って共感して消費につなげる傾向にもあるので、一緒に体験を共有したりシェアをする仕掛けを提供するとバイラル的に広がりやすいというのもありますね。

ラブandベリーグッズ

バイラル的な仕掛けをする時、どのあたりに工夫をされていますか?

谷川:コラボカフェってコンテンツを保有されているご本人やIPホルダーの方からすると、少し「距離が離れた」ような感覚があるんです。ですので、いかにその「公式感」を持たせられるかが非常に重要だと思っています。ご本人やIPホルダーの方が「ちゃんとオフィシャルでやってるよ」という部分を表に出してあげる。これを初めての取り組みとして見せられると一気にバズりやすくなると思っています。

マツケンサンバやラブandベリーがヒットしたのを見て、とても意外でした?

谷川:マツケンサンバやラブandベリーは、少し特殊なコンテンツだったと思っています。もちろん、公式からの発信もありますが、拡散力を持った若いZ世代の女性や、日常的にSNSを活用する人々が来るようなイベントにすることによって、公式の情報がより広まっていった、というイメージなんですよね。

公式が拡散力を持ったコンテンツとの取り組みももちろんあるのですが、今回のケースはやはり、お客さんがしっかりと一緒に拡散してくれる役割を担ってくれたことがヒットの要因だと思いますね。

マツケンサンバカフェグッズ

まさにターゲットがZ世代だからこそ成し得る拡散ですね。やはりメインターゲットは若者が多いのでしょうか?

谷川:パルコ自体が主に20代と30代の女性になるので、特にカフェという飲食エリアとの相性も考慮して、女性が主要なターゲットとなります。

カフェで作られたコミュニティから、派生して何か実際にお取り組みに至った事例などはありますか?

谷川:弊社のチームはギャラリーを運営するチームも在籍していて、このコラボカフェの事業もその考え方が根っこにはあるんです。カフェのメニューなども展示物と捉え、それをお客様に楽しんでいただきながら、循環させていくというアイデアですね。

特に大規模なコンテンツの場合、展示会とカフェを同時に展開して、多くのお客様に楽しんでもらうアプローチを取ることもあります。また、このカフェ単発の成功例から、新しいグッズの開発を行い、ECサイトで販売するという取り組みもあったりするので、カフェをきっかけに新しい展開が生まれることもある状況です。

今後の展開について教えていただけますか?

谷川:最近ゲーム事業に力を注いでいて、グループでeスポーツを展開している「SCARZ」というチームと共同事業を展開しています。コラボカフェ自体もゲーム産業と一緒に何か面白い取り組みができたりしないか模索している状況です。アニメや漫画など、日本が得意とする分野に取り組みながらも、新たなアーティストやタレントなど、才能豊かな方々とも協力しながら、さまざまなジャンルを超えて活動していければと考えています。

ありがとうございました

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