AI診察「CarePods」が描く予防医療の世界/GB Tech Trend

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「Carepod」
Image credit: Forward

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Amazonから始まった無人店舗が一時有名になりましたが、今度は「無人医務室」が登場しました。

無人医務室「CarePod」を展開するのは、AI医療スタートアップの「Forward」。2016年に創業し、今回発表された1億ドルの資金調達を含めると、累計6.5億ドル超の調達に成功しています。

Forwardは予防医療に特化したサービスを展開しています。2017年には「医療版Apple Store」をコンセプトにした、月額149ドルで通える、スタッフ常駐型のAIクリニックを全米主要都市へ展開していました。患者は来院すると備え付けの医療用IoTで健康データを取得。身体に不調があれば、取得データをもとに、医師と一緒に改善方法を探ります。診療を受ける際、医務室の液晶画面にAIアシスタントが提案する処方アイデアが表示され、医者とAIが一緒に診察するプロセスが採用されていました。

当時は、ChatGPTのような優れた対話型AIがなかったこともあり、この診察は必ずしも万人向けのものではありませんでした。また、クリニックの建設費用に多額の先行投資を必要としたこともあり、サービス拡大を諦めざるを得ない状況にありました。そこで登場したのが今回の「CarePod」です。

CarePodは、無人式のポッドとなっています。設置箇所は、ショッピングモールや空港などを想定しており、従来よりは敷地および建設コストが抑えられています。患者はポッドに入ると音声アナウンスに従って、各種身体情報を取得するためのIoTを使い、データ計測していきます。計測データは専用モバイルアプリを通していつでも確認できます。CarePod、アプリ、そして24時間対応のケアチームサポート等へのアクセスを含め、月額99ドルで利用できます。

創業当初からのコンセプトであった、予防医療に特化した無人サービスがCarePodです。予防医療に特化することで、対面診察の必要性を最低限に抑え、セルフケアや、健康データを取得するというサービス価値に軸足を置いています。この点は、疾患後のユースケースに対応した一般的な医療事業者との差別化を貫くために賢い選択をしていると感じます。

ChatGPTに代表される対話型AIが急速に一般化したことから、過去に諦めざるを得なかった医療版Apple Storeのユーザー体験が再評価されるタイミングに来たことが、今回の大型調達でも評価された模様です。患者の身体データを取得する、医療市場の「ラストワンマイル」を、非接触の無人医務室のソリューションで解決しようとする点も、コロナを経て評価されていると予想がつきます。

そんなCarePodは、「TechCrunch」の記事によると来年までに3,200台の設置を予定とのこと。予防医療の習慣が、どの程度米国ユーザーの生活に根付いているのかが、今後の事業成長を左右します。過去の事業経験、そして医療AI・IoT企業としての強みを活かし、どの程度グロースできるのか注目が集まります。

11月14日〜11月23日の主要ニュース

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