これは、CyberAgent Pitching Arena 2024年版の取材の一部だ。

サイバーエージェント・キャピタル（CAC）は20〜21日、東南アジアのスタートアップと投資家が参加するピッチイベント「CyberAgent Pitching Arena」の2024年版をタイ・バンコク市内で開催した。日本や東南アジアから10社が登壇し、数十名の投資家が参加した。

サイバーエージェント・キャピタルではかねてから国内スタートアップや投資家を対象に「Monthly Pitch」を開催しているが、その国際展開として、2019年にジャカルタで海外版 Monthly Pitch を開催。以降、2021年1月に第2回目となる東南アジア版では「Monthly Pitch Asia」として、2021年9月に開催された第3回から「CyberAgent Pitching Arena」として運営している（2022年のピッチの様子はこちら）。

イベントでは、サイバーエージェント・キャピタルの取締役・パートナーの北尾崇氏による開会の辞に続き、インドネシア、ベトナム、タイ、日本からのスタートアップ10社がピッチを披露。続いて、投資家から寄せられた質問に対して回答する Q&A セッションが展開された。投資に関心を持った投資家は今後、各スタートアップの代表らにコンタクトすることになる。

今回は、ピッチ登壇したスタートアップ10社のうち、ソラジマを取り上げる。

ソラジマ（日本）

ソラジマのビジョンは明確だ。漫画市場からスタートし、メディアミックス戦略によって IP を成長させ、次のメジャーIP企業になることを目指している。短期的には業界No.1を目指し、中期的には日本一の漫画会社となり、最終的にはディズニーに匹敵する巨大 IP 企業になることが目標だ。この野心的なビジョンが、社員やクリエイターのモチベーションを高めている。

ビジネスモデルは、社内のプロデューサーがマンガ家と共同でマンガを制作し、プラットフォームに配信して視聴料を得るというものだ。現在、国内トップクラスのプロデューサーと12,000名を超える登録クリエイターを抱え、世界11カ国で30以上のマンガアプリを展開している。この広範なネットワークが、多様なコンテンツの創出を可能にしている。

ソラジマの強みは、グローバルなクリエイティブエコノミー、テクノロジーの活用、そして実績の3つだ。特に AI の導入により、プロデューサーの生産性が大幅に向上している。AI を使用する前は1人のプロデューサーが2～3タイトルを管理していたが、現在は4～5タイトルを管理できるようになり、ビジネスの拡大に大きく貢献しているという

クリエイターの獲得と育成も重要な戦略だ。従来の出版社とは異なり、新しい視点や発想を持つプロデューサーを積極的に募集している。また、パブリッシングのスピードの速さが、クリエイターを惹きつける要因となっている。この柔軟な姿勢が、新たな才能の発掘につながっている。

ソラジマは、海外展開については慎重かつ戦略的な姿勢を見せている。まずは日本、アメリカ、ヨーロッパ市場の開拓に注力し、市場が成熟した後に東南アジア市場に本格進出する計画だ。この段階的なアプローチにより、リスクを最小限に抑えつつ、着実な成長を目指している。また、コンテンツの選定には独自のシステムを活用し、自社アプリを通じて人気や収益性を分析しているという。

IP については現在はソラジマが保有しているが、将来的な方針は未定だという。これは、クリエイターとの関係性や市場の変化に応じて、柔軟に対応していく姿勢の表れだろう。ソラジマの成長戦略は、プロデューサーとタイトル数の増加による段階的成長と、大型 IP 創出による急激な成長の2つを同時に推進していて、この両輪の戦略により、持続的かつ大きな成長を目指すとしている。

日本のマンガ・アニメ市場は世界的に注目を集めており、ソラジマはこの市場で革新的なビジネスモデルと戦略的な IP 展開によって、新たな時代を切り開こうとしている。従来の企業とは異なるスピード感と柔軟性を武器に急成長を遂げているが、長期的な成功には質の高いコンテンツの継続的な創出とグローバル展開が鍵となるだろう。