旧キリロム工科大がアジアイノベーション大として再始動、KDDI共同創業者の千本倖生氏が理事長に就任

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左から、学長に就任した釜我昌我氏、理事長に就任した千本倖生氏、理事の一人で大学のロゴをデザインした太刀川英輔氏
Image credit: Masaru Ikeda

カンボジアの旧キリロム工科大学が、アジアイノベーション大学(AII:Asia Institute of Innovation)として生まれ変わることが28日、東京で開催された記者会見で発表された。新大学名は現時点で仮称(カンボジア教育省の認可待ち)。新大学の理事長には KDDI 共同創業者の千本倖生(せんもと・さちお)氏が就任し、新学長には旧キリロム工科大学で副学長を務めた釜我昌我(かまが・まさむ)氏が就任する。

千本氏は記者会見で、デジタル技術と英語力を兼ね備えたグローバル人材の育成に注力する方針を明らかにした。さらに、「日本とカンボジアの架け橋となる人材を育成したい」と述べ、両国の関係強化にも貢献する意向を示した。さらに、「日本とカンボジアの架け橋となる人材を育成したい」と述べ、両国の関係強化にも貢献する意向を示した。

理事長に就任した千本倖生氏
Image credit: Masaru Ikeda

旧キリロム工科大学は、シリアルアントレプレナーの猪塚武氏が設立した社会起業系のスタートアップ vKirirom によって、カンボジアのキリロムに2014年に設立・開学した。首都プノンペン郊外のキリロム国立公園の一部をカンボジア政府から借り受け、高原リゾートと全寮制大学を融合した街を開発した。

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2019年末以降の新型コロナの感染拡大で海外渡航が難しくなり日本など海外からの学生が激減したこと、カンボジアで係争事件を抱えたことなどから経営の継続が困難となり(現在は係争解決済)、新たな経営法人やスポンサーを探していたようだ。旧キリロム工科大学の事業は昨年末に譲渡されたとみられる

Image credit: Masaru Ikeda

新大学の特徴として、以下の点が詳細に説明された。

  1. デジタル技術と英語力を兼ね備えたグローバル人材の育成
    大学では全ての授業を英語で行い、IT 技術を中心としたカリキュラムを展開する。これにより、国際的に活躍できる人材の輩出を目指す。特に、プログラミングスキルと英語コミュニケーション能力の両立に重点を置き、グローバル IT 企業で即戦力となる人材の育成を目指す。
  2. AI、半導体、グリーンエネルギーなど先端分野への注力
    千本氏は、世界が直面する三大革命として「AI」「半導体」「グリーンエネルギー」を挙げ、これらの分野に特化した教育プログラムの開発を進める意向を示した。具体的には、AI 研究所の設立、半導体設計ラボの整備、そして太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー実験施設の導入を計画している。
  3. 国立公園内のキャンパスを活かした環境教育
    大学はカンボジアの国立公園内に位置しており、この立地を活かした環境教育やエコツーリズムの実践的学習を行う。学生たちは、生物多様性の保全や持続可能な観光開発について、フィールドワークを通じて学ぶ機会を得る。
  4. 企業との連携による実践的なインターンシッププログラム
    学生は在学中に4,000時間を超える長期インターンシップを経験。これにより、実務経験を積みながら学ぶことができる。インターンシップ先には、日系企業やグローバル企業が名を連ね、学生たちは実際のビジネス環境で経験を積むことができる。
学長に就任した釜我昌我氏
Image credit: Masaru Ikeda

現在、大学には131名の学生が在籍しており、そのうち大半がカンボジア人学生である。しかし、今後は日本を含む海外からの学生募集を強化する方針が示された。釜我氏は「カンボジアから30%、他の ASEAN 諸国から30%、日本から30%、その他から10%」という学生構成を目指し、多様性に富んだキャンパス作りを進める考えを明らかにした。

この大学は全寮制を採用しており、学生は24時間英語環境に身を置くことができる。寮生活では、異なる国籍の学生同士がルームメイトとなる制度も導入されており、日常生活からグローバルな交流が促進される仕組みとなっている。この「生きた英語環境」は、学生の語学力向上に大きく貢献すると期待されている。

スタッフの皆さん
Image credit: Masaru Ikeda

キャンパスは自然豊かな環境に位置しており、標高700メートルの高地にあることから、熱帯気候のカンボジアにありながら涼しい気候を楽しむことができる。千本氏は「軽井沢のような環境」と表現し、学習環境としての魅力を強調した。この恵まれた自然環境は、学生たちの集中力を高め、創造性を刺激するものとして評価されている。

記者会見では、大学の財政状況や過去の経営課題についても言及があった。千本氏は、就任以前の大学運営における問題点を指摘し、ガバナンスやコンプライアンスの強化、財務の透明化などを進めてきたと説明。わずか2ヶ月で大学の体制を立て直したことを明かし、新生アジアイノベーション大学への期待を高めた。

また、大学は産学連携にも力を入れており、日系企業をはじめとする多くの企業からスポンサーシップを受けている。これにより、学生たちは最新の技術や経営手法を学ぶことができ、卒業後のキャリアにも有利に働くと期待されている。カンボジア政府との関係も良好で、政府からの支援を受けながら、カンボジアの高等教育の発展に貢献する意向も示された。

千本氏は昨日にも、母校である京都大学の「西田哲学-千本基金」に3億円を寄付したことが明らかになっている

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