これは、CyberAgent Pitching Arena 2024年版の取材の一部だ。

サイバーエージェント・キャピタル（CAC）は20〜21日、東南アジアのスタートアップと投資家が参加するピッチイベント「CyberAgent Pitching Arena」の2024年版をタイ・バンコク市内で開催した。日本や東南アジアから10社が登壇し、数十名の投資家が参加した。

サイバーエージェント・キャピタルではかねてから国内スタートアップや投資家を対象に「Monthly Pitch」を開催しているが、その国際展開として、2019年にジャカルタで海外版 Monthly Pitch を開催。以降、2021年1月に第2回目となる東南アジア版では「Monthly Pitch Asia」として、2021年9月に開催された第3回から「CyberAgent Pitching Arena」として運営している（2022年のピッチの様子はこちら）。

イベントでは、サイバーエージェント・キャピタルの取締役・パートナーの北尾崇氏による開会の辞に続き、インドネシア、ベトナム、タイ、日本からのスタートアップ10社がピッチを披露。続いて、投資家から寄せられた質問に対して回答する Q&A セッションが展開された。投資に関心を持った投資家は今後、各スタートアップの代表らにコンタクトすることになる。

今回は、ピッチ登壇したスタートアップ10社のうち、Block Aero を取り上げる。

Block Aero（タイ）

Block Aero は、航空業界が長年抱えてきた深刻な問題に焦点を当てている。航空機は何千もの高価値で長寿命の部品から構成されているが、これらの部品は世界中に分散し、複数の組織が同時に取り扱っている。航空会社、リース会社、整備会社、規制当局などが関わる複雑な環境下で、「誰がこの部品を所有しているのか」「誰がこの部品を使用したのか」「製造時からのトレーサビリティを確立できるか」といった重要な質問に適切に答えられないことが、年間440億米ドルもの損失につながっているという。

Block Aero のプラットフォームは、航空機部品のデジタルツインで作成し、プライベートな許可型ブロックチェーンシステム上に記録することで、この問題に対処する。これにより、商業的、運用的、そして安全性に関するデータを安全に管理し、資産の真の価値を引き出すことが可能になる。共同創業者でチーフコマーシャルオフィサーの Lucas Pinoli 氏は、最近発覚した偽造部品や改ざんされたデータの問題にも言及し、Block Aero のシステムがこうした安全性の課題にも対応できると強調した。

Block Aero にとって特に注目すべき成長機会が、中国市場への参入だ。中国政府が最近、中古航空機部品の輸入を解禁したことを受け、Block Aero は業界団体 AFRA（航空機リサイクル協会）と提携し、この越境取引を促進する公式ソフトウェアプロバイダとして独占的な地位を獲得した。Pinoli 氏によると、先々週、先週北京で行われた中国の規制当局との会議で大きな進展があり、Block Aero は近く発表される規制政策文書に盛り込まれる予定だという。

これは極めて重要なことです。私たちのような企業にとって夢のようなことが実現しつつあります。（Pinoli 氏）

Block Aero は現在、年間経常収益（ARR）約45万ドルを計上している。中国プログラムの本格展開を控え、すでに2社との事前販売契約を締結。さらに、日本航空や三菱重工業が主導する日本のコンソーシアムとの大型契約拡大も進行中で、最長20年間のサービス提供と5〜7社の日本の航空会社の追加参加を見込んでいる。2022年4月には、日本航空グループの JALUX が、Block Aero に出資している。

中国の航空業界全体とグローバルな部品取引コミュニティが Block Aero を待っています。（Pinoli 氏）

Block Aero の強みは、航空業界に精通したチームにある。創業者兼 CEO の Todd Siena 氏は、Block Aero 設立前に航空業界でのマネジメントコンサルティングや部品取引で成功を収めた経験を持つ。Pinoli 氏を含む他のメンバーも航空業界出身であり、多くの投資家や取締役会メンバーも同様だ。航空業界全体のデジタル化とブロックチェーン技術の採用を加速させる可能性があり、注目が集まっている。