TikTok、生成AI使ったデジタルアバター&翻訳機能をローンチ——言語の壁を超えた世界マーケティング可能に

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TikTok の「Symphony Creative Studio」でデジタルアバターを作成
Image credit: TikTok/Screenshot

TikTok は、AI を活用したソリューションスイート「Symphony」の一部として、企業や代理店向けに新しい生成 AI ツールを導入する。第一弾はデジタルアバターで、ブランドはこれを使用してフォロワーと会話し、コンテンツマーケティング活動に「生命を吹き込む」ことができる。さらに、TikTok は翻訳ツール「Symphony AI Dubbing」を展開し、クリエイティブマーケティングにおける AI の活用を理解するためのアドバイザリーボードを立ち上げている。

TikTokker は人間か、それともボットか?

TikTok のクリエイティブプロダクト責任者 Andy Yang 氏は声明の中で次のように述べている。

TikTok では、生成 AI の力でクリエイターに力を与え、彼らのクリエイティビティを世界中のオーディエンスに届けることを目指しています。Symphony Digital Avatars は、クリエイターがグローバルにブランドとのビジネスチャンスを拡大するための新たな手段を提供します。私たちは、喜び、想像力、行動を喚起するクリエイティブなソリューションに投資することで、クリエイターエコノミーを活性化することを目指しています。

企業は、Stock と Custom の2種類のデジタルアバターを選択できる。

Stock は、商用利用が許可された有料アクターを使用して作成されたアバターだ。TikTok は、Stock によって企業は「多様な背景、国籍、言語を持つグローバルなクリエイターが、迅速かつアクセスしやすく、コンテンツに人間味を加えることができる」と主張している。一方、Custom では、企業はスペイン語、フランス語、ドイツ語、日本語など30カ国語の多言語能力を持つクリエイターやブランドのスポークスパーソンを表す独自のアバターを作ることができる。

Stock は、TikTok のクリエイティブセンターにある Symphony Creative Studio で作成することができる。クリエイターは、以下のような様々なカテゴリから選択することで、生成させたい「人物」のタイプを指定することができる。

  • 業界 …… Eコマース、ゲーム、ソーシャル、金融、教育
  • ボディジェスチャー …… 正面または横向きに立つ、正座または横座りする、座りながらまたは歩きながら自撮りする
  • 服装スタイル …… カジュアル、スポーティー、フォーマル
  • シーン …… 背景なし/グリーンスクリーンのビデオ、庭、通り、オフィス、寝室、eスポーツルーム、無地の背景、車の中、屋内キッチン、屋内リビングルーム、バスルーム、クローク、化粧台の上

TikTok は、このプロンプトをもとにアバターを生成し、ブランデッドコンテンツに直接挿入することができる。

TikTok の「Symphony Stock Avatar」
mage credit: TikTok

企業がブランドをより代表する人物を求める場合、カスタムアバターが活躍する。これは、組織の CEO や最も目立つパーソナリティの一人がソーシャルメディアチームのために TikTok 動画を撮影できない場合に役立つ。代わりに、コンテンツマーケティング担当者は、ブランドの IP を使ってデジタル複製を挿入し、より広いリーチのためにローカライズすることができる。

個人のクリエイターを例にとってみよう。以前は、彼らがグローバルブランドと仕事をしている場合、動画は英語のみで制作されていたかもしれない。しかし今では、TikTok のデジタルアバターを利用して、1つの動画に複数のローカライズバージョンを作成することができ、リーチを大幅に拡大することができる。ブランドはまた、このテクノロジーを活用することで、必要な言語を話せるスポークスパーソンを探したり、パーソナリティ自身に言語を習得させたりする手間を省くことができる。

ただし、TikTok は今日デジタルアバターを導入しているが、同社の Beta Club を通じて利用できるのは Stock アバターのみで、一部のブランドのみである。同社は VentureBeat に対し、Custom アバターのテストと改良を続けているが、リリース日は未定だと述べている。

これらのアバターには AI が生成したコンテンツラベルが貼られ、ユーザに合成メディアを見ていることを知らせる。これは、TikTokが5月に誤った情報と闘うために制定した方針に従っている。同社が2022年に開始した別のアバターサービスとは異なる。当時、TikTok は Bitmoji のようなアニメーションアバターをデビューさせ、コンテンツクリエイターに自分自身や作品を表現する新しい方法を提供した。これらのアバターは今でも役に立つかもしれないが、この新しいデジタルアバターは、コンテンツにもっとプロフェッショナルな演出を加えたい人たちを対象としている。

TikTok が提供する機能は、SprinklrHubSpotZendesk のような他の AI アバター/エージェントプログラムと比べると見劣りする。ソーシャルメディアアプリでは、一方通行のコミュニケーションだからだ。ソーシャルメディアチームやクリエイターは、メッセージを発信するだけでいい。フォロワーがより深く知りたい場合は、バイオ欄にあるリンクをクリックするか、ダイレクトメッセージを送る。

しかし、TikTok の Symphony Program が進化し続けるにつれ、同社がこれらのアバターの機能をさらに強化するかどうかは注目に値する。

AI で言語の壁を破る

TikTok の「Symphony Creative Studio」で使える AI ダビング機能
Image credit: TikTok

Symphony に搭載されるもう一つの機能は、クリエイターやブランドが複数の言語でシームレスにコンテンツを生成できるようにするグローバル翻訳ツール「Symphony AI Dubbing」だ。現在、英語、日本語、韓国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、トルコ語、イタリア語、インドネシア語の10言語に対応している。

TikTok は次のように述べている。

AI Dubbing は動画のオリジナル言語を自動的に検出し、書き起こし、翻訳し、選択した言語での吹き替え動画を作成します。クリエイターやブランドは、世界中の視聴者とコミュニケーションする能力を得ることができます。

「Syphony Collective」のローンチ

Symphony の最後のニュースは、Symphony Collective と呼ばれる業界アドバイザリーボードのローンチだ。Mondelez、 American Eagle、Wendy’s、NBA、のほか、OMD, Tinulti, Day One、TBWA Chiat のようなエージェンシー、Drea Okeke 氏、David Ma 氏、Michelle Gonzales 氏、O’Neil Thomas 氏などのクリエイターの参加により、TikTok はクリエイティブマーケティングにおける AI の開発と利用について理解を深めたいと考えている。このグループを、AI マーケティングソリューションを改善し、業界の課題について議論するためのサウンディングボード(反響板)として利用する予定だ。

TBWA/Chiat/Day USのデジタル、ソーシャル、イノベーション担当エグゼクティブディレクタ Anthony Hamelle 氏は声明で次のように述べている。

TikTokは、よりオープンで、多様で、大胆なクリエイティビティを実現する顕著な力となってきました。AI というクリエイティブな触媒によって、何千人ものクリエイターやコミュニティを迎えるこのステージは、さらにダイナミックなものになるでしょう。TikTok の Symphony Collective の創設メンバーとして、TikTok と共に働き、Hilton の10分 TikTok や FEED AI などの TBWA 独自の AI イニシアティブや製品など、このプラットフォームにおける TBWA の画期的なプロジェクトから得られた洞察を共有できることを光栄に思います。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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