都市は企業とともに変化・成長できるのか——高成長のハイテク企業を惹きつける都市の条件とは?

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San Francisco
Photo by Jared Erondu on Unsplash

地方自治体にとって、急成長中の強い企業を惹きつけられることほど嬉しいことはないだろう。税収入、雇用力の向上など、企業が拠点とする都市にもたらしてくれるメリットは数々ある。

もちろん、家賃や不動産価格の上昇、貧富の差など、メリットばかりではない。だが、たとえば米アマゾンの第2本社誘致のために多くの自治体が優遇パッケージを準備して誘致競争に入れ込んでいるように、強い企業を惹きつけることに尽力している自治体は数多い。

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では、いったいどのような都市が成長する企業を惹きつけられるのだろうか? そうした都市に共通する条件はあるのだろうか? アメリカ起業家精神センターのリサーチディレクターであるイアン・ハサウェイ氏がまとめたレポート「米国内の高成長企業と都市:Inc, 5000の分析」は一つの示唆を与えてくれる。

このレポートは、Inc マガジンが毎年発表する急速な成長を遂げている企業のリスト Inc. 5000 の、2011年から2017年のデータをもとに分析したものだ。7年間にリストアップされた高成長企業のうち、実に29パーセントがハイテク業界であるという。

収益と雇用力のどちらにおいても高成長を遂げている、企業サイズは小さい傾向にある、創業後の年数が比較的短い傾向にある、知識集約産業の企業が多いなど、高成長企業に共通する特徴をまとめた上で、このレポートでは地域的な要因との相関関係についても触れている。

高成長企業の80パーセントは、100万人以上の大都市に拠点をもつ

地域的な要因との相関関係を分析した結果、高成長企業の98パーセントが都市(人口25万人以上の都市)を拠点にしていること、また80パーセントが大都市(人口100万人以上)に拠点を置いていることが分かった。

また、人口25万人以上の中規模都市に拠点を置く企業も13.6%存在する。コロラド州ボルダーやユタ州プロボなども、小さな都市ながら高成長企業が集積している街だ。

こうした高成長企業が拠点としている都市に共通する特徴を、このレポートでは次のようにまとめている。

  • 大学卒の労働者が占める割合が高い
  • ハイテク業界で働く人の割合が高い
  • 起業年齢の中心年齢層(35-44歳)が占める割合が高い
  • 創業の比率が高い

今回のレポートをまとめたハサウェイ氏は、VentureBeatの取材に対して次のようにコメントする。
「こうした場所で暮らす人々にとって魅力的な場所にすることがいかに重要か、その重要性を軽視するべきではありません。多くの人が、現実的で、生活コストも手頃で、人で混雑し過ぎていない場所を求めています。同時に、その都市に住みやすさや、彼らがそれまでの経験で慣れているカルチャーも備わっていなければなりません」

ちなみに、アマゾンが第二本社に求める条件にも、「100万人以上の都市圏であること」という点の他に「テック人材を惹きつけ、かつ保持できるポテンシャルをもつ都市」という点が含まれている

将来的にテック人材や企業を惹きつけられる、保持できるかどうかのポテンシャルを見られてるということは、これからの都市計画の構想と実行力にかかっているともいえる。

サンフランシスコのようにテック一辺倒になりすぎたり、ジェントリフィケーションが進みすぎると、その息苦しさに疲れた人材が離れる結果にもなるわけで、そのあたりどのようにバランスをとるのか、長年地元に根付いてきたコミュニティとどのように調和をはかるのか、多くの自治体がその力量を試されている時代だといえるだろう。

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