ライブ動画コマース「NTWRK」が見出した勝ち筋/GB Tech Trend

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5,000万ドルの調達を発表したNTWRK(Image Credit:NTWRK)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

9月24日、ライブ動画コマースアプリ「NTWRK」の5,000万ドルの資金調達が発表されました。本ラウンドをリードしたのはGoldman Sachs Asset ManagementとGucci、Yves Saint Laurenなどを保有するブランド運営企業「Kering」でした。

NTWRKはZ世代向けにライブ動画イベントおよびコマースプラットフォームを運営しています。同社の強みは大規模オンライン・イベントを通じたユーザー獲得です。10〜20代から圧倒的な支持を集めるBillie Eilishを筆頭に、多くの著名アーティストと組んだイベント開催実績を持ちます。2020年には30以上のブランドを招致した音楽フェス・イベント「TRANSFER」を、25万人が視聴したアートイベント「BEYOND THE STREETS」を開催しました。

イベント以外にも1日2回ほどライブ動画番組が配信されます。番組配信者は限定生産もしくは期間限定商品を通知・販売できる「Drop機能」を使えます。同機能は米国のInstagramでも5月に実装されており、FOMO(取り残されることへの恐れ)を演出できることから購買体験を加速するものとして注目を集めています。

Digidayによると、登録ユーザー数は100万を超え、月間視聴者数は1,000万に上るとのことです。今後は1日10回以上番組を配信しておりユーザー層の85%が18~34歳とも伝えられています。

NTWRKは質の高い番組配信をする「キュレートメディア」として市場に認知されています。同社のプレスリリースでは、中国のライブ動画コマース市場規模は3,000億ドル。他方、米国は110億ドルで伸びしろが大きくあると予想しています。

市場規模が未だに小さい米国ではユーザーを0からかき集めて配信ネットワークを作るより、インフルエンサーを主体としたイベント集客のほうが市場を立ち上げやすいと考えたのがNTWRKです。番組編成を編集することで、ユーザー価値の高い内容を届ける体制を採用しています。

同じくライブ動画配信アプリ「Popshop Live」は、個人ユーザーが配信できるC2Cプラットフォームとしての拡大を目指しており、「NTWRK」との差別化を明確にしています。一方、NTWRKの事業モデルを成立させるには、ブランド・インフルエンサーの獲得パイプラインを先に持つ必要があり、難易度は比較的高めです。この点、創業者はカリフォルニアで開催された音楽イベント「ComplexCon」の立ち上げ経験があり、NTWRKの事業成長の糧になっていると考えられます。

NTWRKはコンテンツ力を武器に市場拡大を目指しています。InstagramやYouTubeを代表とする大手配信プラットフォームには獲得できない配信番組を持つことでここまで勝ち抜いてきました。2Cメディア・サービスには欠かせないイベント開催ネットワークをアンフェア・アドバンテージ(不公平な競合優位性)として成立させることに成功しているので、このまま成長を続ければ、GAFAや大手TV企業により買収され、ユニーク動画コンテンツがそのまま引き抜かれるシナリオも考えられるのではないでしょうか。

今週(9月20日〜9月27日)の主要ニュース

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