ディープテック起業支援「1stRound」、独研究機関Cyber Valleyと提携——日欧間でスタートアップを互恵的支援

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2023年に開かれた Cyber Valley の「AI Incubator」デモデイの様子
Image credit: Cyber Valley

東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)は30日、同社が事務局を務めるディープテック発掘型起業支援プログラム「1stRound」がドイツ・シュトゥットガルトを拠点とする AI やロボティクス分野の研究コンソーシアム「Cyber Valley」と、日欧間でスタートアップを相互支援する旨の意向表明書を締結したと発表した。両組織相互に、日本からヨーロッパ市場を目指すスタートアップ、ヨーロッパから日本市場を目指すスタートアップを招き、非資本型(ノンエクイティ)で支援する活動を行う。

1stRound(当初は、「起業支援プログラム」とされていた)は、過去8年間で計85のスタートアップチームを採択し、企業との協業関係構築や資金調達支援などを行ってきた実績がある。支援後1年以内の資金調達成功率は約90%以上、大型助成金採択率も50%超と高い数字を残している。近年では海外展開にも力を入れ、アメリカの有力大学発のスタートアップアクセラレータプログラムへの採択件数が増加するなど、大学や国をまたいだベンチャー創出と育成を目指している。

長坂英樹氏
Image credit: UTokyo IPC

一方の Cyber Valley は、ドイツの MPI(Max Planck Institute、マックス・プランク研究所)と Fraunhofer-Gesellschaft(フラウンホーファー研究機構)が中心となって設立された、AI とロボティクス分野の起業支援機関だ。世界トップレベルの研究機関が集積するバーデンヴュルテンベルク州を拠点に、ヨーロッパ各国の大学・研究機関、Amazon や BMW などのグローバル企業、VC などと連携しながら、研究者の起業促進とスタートアップの成長サポートに取り組んできた。

今回の連携により、双方それぞれのプログラムでの審査を通過したスタートアップは、相互に参加資格を得ることができる。東大 IPC の 1stRound ディレクター長坂英樹氏によれば、地元市場の大企業などと PoC を実施する上では、その市場の起業支援組織が長けているが、これをノンエクイティという直接的な経済的利益関係が無い状態で、実用的な支援体制を確立するため、1stRound と Cyber Valley 間で、相手のスタートアップを無償で支援しあうという互恵的関係を構築したという。

1stRound のスタートアップをヨーロッパで支援するリソースやコストは Cyber Valley が受け持ち、Cyber Valley のスタートアップを日本で支援するリソースやコストは 1stRound が受け持つ。互いに、相手組織が派遣したスタートアップの支援にコミットする形だ。

ディープテック周辺では、スタートアップよりもアクセラレータのグロースが激しくなっているが、トップ10に日本発のアクセラレータはまだいない。GDP、研究開発費、研究者人口でトップ3の日米独市場で、越境での PoC 実績を作っていくことで、1stRound はこの地位を確立していきたい。(長坂氏)

ディープテック分野のスタートアップは、宇宙スタートアップのように Day1 からではないものの、早い段階で世界市場を視野に入れる必要があり、それによってこそ、ユニコーンやデカコーンが生まれる可能性が高まる。世界的なユニコーンメーカーと称される Y Combinator でさえ、日本ではスタートアップの PoC を支援することはできない。日米独市場でノンエクイティのディープテック支援体制を確立できれば、トップパフォーマンスを弾き出せるのではないか、という算段のようだ。

1stRound は先週、新たに4つの大学と2つの国立研究機関が参画し、現在、国内17大学と2つの国立研究機関の共催体制をとっている。また、東大 IPC は先週、大学発 VC にファンド・オブ・ファンズ(FoF)形式で出資する100億円規模の「大学発スタートアップ等促進ファンド投資事業有限責任組合(通称 ASA ファンド)」を、東京都、東急不動産、東京大学(予定)らを LP に迎え組成したことを明らかにしている

<参考文献>

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