今さら聞けないデジタル仮想空間 #メタバース のこれまで

本稿は独立系ベンチャーキャピタルSTRIVEによるものを一部要約して転載させていただいた。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。なお、転載元のSTRIVE Blogでは起業家やスタートアップに興味のある方々に向けて事業成長のヒントとなるコンテンツを配信中。投資相談はSTRIVE(公式サイトTwitter)をチェックされたい

2021年秋現在のテック業界、「メタバース」という言葉を毎日のように目にします。すでに各所からメタバースの興味深い記事が数多出ているところではありますが、今回の記事では全体像をつかむために過去のブームやユースケースを振り返り、今後の進展について探っていきます。Let’s strive to know “Metaverse”!!

メタバースの定義

メタバースの明確な定義はありませんが、概ね「インターネット上で構築される仮想的なデジタル空間で、自らを表現するアバターを介して他のユーザーとのコミュニケーションや様々な活動を行うことができる世界」と理解されています。2021年7月「Facebookはメタバース企業になる」と公言したCEOのマーク・ザッカーバーグ氏によると、「メタバースとは、デジタル空間で人々と一緒にいることができる仮想環境です。見ているだけではなく、その中にいるような感覚になれるインターネットのようなもの」と説明しています。

メタバースに共通して指摘される要素としては、没入感、ソーシャル性、アクティビティ志向(⇔トランザクション志向)、ユーザー参加とエコシステムなどがあり、広義には、アバターでのコミュニケーションサービスや、マルチプレイのオンラインゲームなどもメタバースに含むことができます。

様々なメタバースの定義
多くの業界関係者、識者がメタバースを様々な角度から定義付けようとしています。下記に一例を掲載します。

インターネットの普及と多様なコミュニケーションサービスの登場

メタバース自体は新しい概念ではなく、オンライン上でのコミュニケーションの一形態として、インターネットがスタートした初期段階から登場しています。もともと軍事目的だったインターネットの商用利用が本格的に開始されたのは1990年代。バーチャル・チャットやMMORPG、そしてメタバースの元祖とも呼ばれる「Habitat(ハビタット)」は1986年に誕生し、1990年に日本でサービスを開始しています。

その後、インターネット回線の高速化・大容量化や情報機器スペックの向上を受けて、テキストだけでなく音声、画像、動画、3DCGなどを用いた様々なコミュニケーションやエンターテインメントのネットサービスが生まれました。コミュニケーションとエンターテインメントが融合しながら、多彩なメタバースサービスが登場しています。

参考: 総務省, インターネットの登場・普及とコミュニケーションの変化

メタバースの語源
メタバース(metaverse)とは、英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語で、SF作家ニール・スティーヴンスンが1992年に発表した作品「スノウ・クラッシュ」に初めて登場しました。

「スノウ・クラッシュ」のあらすじ: 30分以内に配達できなければ、死が待っている…マフィアが経営する高速ピザ配達フランチャイズの“配達人”ヒロ・プロタゴニストは、世界最高の剣士にして、腕ききのハッカー。仮想空間のメタヴァースでスノウ・クラッシュと呼ばれる新種のドラッグを試してみないかと誘われたことから、とんでもない事件にまきこまれていくが!?近未来のアメリカをスピーディに駆けるハッカーたちの活躍を描くネット世代のためのSF。

「スノウ・クラッシュ」はハヤカワ文庫より出版されていましたが、現在は絶版になっています。)

Habitat(ハビタット)
ハビタット」は、Lucasfilm Games(ルーカスフィルム映画作品のゲーム部門)とQuantum Computer Servicesとの共同制作により、1986年にリリースされました。2年後の1988年に富士通が買収し、「富士通Habitat」として1990年に日本で正式リリースしています。テキストでのチャットも珍しい時代に、2Dのアバターを通じて仮想の街中で他のプレイヤーと交流をしたり、トークンで購入したアイテムでアバターを着飾ったり、マルチプレイのゲームをしたりなど、オンライン上で自由に活動をするメタバースの世界を実現していました。

「ハビタット」に携わった開発者の一人であるChip Morningstar氏は、多くのプレイヤーが自由度の高い仮想空間で活動をするサービスをつくることの特異さや複雑さを指摘し、「Cyberspace architects will benefit from study of the principles of sociology and economics as much as from the principles of computer science.(仮想空間の設計者は、コンピューターサイエンスの原理と同様に、経済学や社会学の原理を学ぶことでベネフィットを得ることができるだろう)」と述べています。

参考:Lessons of Lucasfilm’s Habitat Chip Morningstar氏が書いたHabitatサービス運用に関する示唆をまとめたレポートは、仮想世界の構築における示唆に富む極めて興味深い内容になっています。おすすめです!

▼ 1986年作成のHabitatのプロモーション動画(YouTube)

「メタバース」のブームは2度目

日本でメタバースが大きく注目を集めるのは、今回で2度目です。初めのブームは2007年、リンデンラボが提供するメタバースセカンドライフが話題になったタイミング。何の制約もない自由な世界観、「セカンドライフ」で実際に大金を稼ぐユーザーの出現、大手企業や有名大学の「セカンドライフ」への参入により、「セカンドライフ」はメディアや著名人から称賛され注目を集めました。

しかしながら、当時のインターネット通信環境やパソコンの性能の低さ、操作の難しさ、YouTubeやFacebookなど他のインターネットサービスの成長などによりユーザー数が伸び悩み、ブームは失速します。

参考: Google Trends “メタバース”

セカンドライフの今

「セカンドライフ」の世界は現在も着々と続いています。企業や投機目的のユーザーが離れた後も、アバターの技術進化を取り入れながら、主にコミュニケーションを楽しむ世界として拡大しています。2018年に発表された15周年のインフォグラフィックによると、マーケットプレイスには5百万ものバーチャルグッズが並び、一日のチャットメッセージ数は5,000万回以上と報告されています。最も人気のショッピングカテゴリーはアバターの服、アクセサリーや家具などで、最も人気の滞在先はゲームやフォトジェニックなスポット、エディターが推薦する場所とのことです。2017年度、「Second Life」のクリエイターに支払われた金額は68百万ドルにものぼりました。

2020年のコロナ禍では復帰するユーザーも多く、月間のアクティブユーザーは90万人に達し、「セカンドライフ」内の年間経済規模は600百万ドルを記録したことが報告されています。「セカンドライフ」においても、コロナウイルスに関連したサポートコミュニティが立ち上がったり、アバターにマスクを着けるべきかの議論が起こったりなど、現実社会と関連した動きが見られたようです。

リリース時と現在の映像を見比べると、世界の表現力が格段に進化していることがわかります。(下部参照)

参考:The Bridge, Second Lifeに再来したメタバースの波: 年間6億ドルを生み出す元祖・仮想世界
Celebrating 15 Years – Second Life Infographic & Town Hall Video

▼ 「セカンドライフ」リリース時のトレイラー(2003)(YouTube)

2021年現在、メタバースが再び注目を浴びる背景には、通信環境やパソコン性能の飛躍的な向上に加え、メタバースを表現する3DCG技術の進化、デジタルアセットなどデータの信用性・透明性などを高めるブロックチェーン技術の登場と普及、そして、世の中のデジタル・トランスフォーメーションを一気に加速させたコロナ禍があります。

また、生まれたときからインターネットが当たり前に存在するZ世代(10歳前後〜25歳)の多くは、様々なオンラインコミュニケーションサービスを通じて、マルチプレイでのユーザー交流、3DCGの世界観、ゲームやデジタルアセットの作成・公開(配信)などの活動を行っており、既にメタバースの世界に慣れ親しんでいるのです。

メタバースの世界は3Dでなきゃいけない?
ゲームデザイナー兼起業家でメタバース識者として知られるJon Radoff氏によると、メタバースの”Immersion (没入感)”は、2Dや3Dに関わらないとしています。ARやVRなどの技術に加え、自分自身が存在する空間や場所として認識できるものも含まれるとし、例えば「Clubhouse」は、あたかも部屋の中で大勢の人が会話で交流しているような錯覚に陥るため、メタバースの一部であると考えています。

また、メタバースの始祖的2Dアバターサービス「Habitat」の開発者の一人であるChip Morningstar氏は、メタバースの決定的な特徴は多人数が参加する相互的なコミュニケーションとしており、その実装技術は基本的な通信機能の他は(セクシーで興味深いものの)副次的なものであるとしています。

「メタバース」のユースケース

これらの社会状況の変化や技術の進化を受け、今後、一層メタバースの世界は加速していくことが見込まれており、多くのインターネット、通信、ゲームなどの大企業やスタートアップが、メタバースのプラットフォームやその中でのアバター、バーチャルアパレルなどに取り組んでいます。下記に、メタバースのユースケースの事例や、代表的なサービスを掲載します。

最高にかっこいい!Travis ScottによるFortniteでのコンサート映像フルバージョンはこちら。

▼ Travis Scott and Fortnite Present: Astronomical (Full Event Video)

 

メタバースの市場のカオスマップは、前述のJon Radoff氏により整理されたものと、ゲーム系市場調査会社Newzooによるものが発表されています。

参考:Jon Radoff l Market Map of the Metaverse

「メタバース」の進展に向けて

2020年のコロナ禍では現実世界における制約が極端に強まったため、メタバースでの活動量が大きく増加しました。人間の活動をリアルかメタバースかどちらに配分していくのか(はたまたその境目が溶け合っていくのか)については、社会状況の変化や技術の向上によって常に変化していくことでしょう。

「セカンドライフ」のブームが始まった頃、2007年に野村総合研究所が作成した図によると、メタバースは、2009年頃には黎明期から普及期に入りビジネスが本格化し、さらに2011年以降の分化・展開期には消費者のニーズに応じた複数のメタバースが同時に存在し、それらのメタバース間でコンテンツの再利用や通貨の交換など相互で運用が行われるようになるだろうと予測しています(マルチバース化)。当時はここまでの進展が見られなかったものの、現在は世の中のメタバース化が格段に進んでおり、この図の流れは改めて参考になるかと思います。

メタバースの構築は、いわば新たな人間社会を生み出すことであり、そこでは様々な衝突やトラブルの発生も想定されています。メタバースの経済圏の拡大に向けて、法律や規制など政治的な要因に起因している課題などは、すでに経済産業省などの政府機関で議論の俎上にのり、論点整理や解決に向けたアプローチが検討されています。

8. おわりに

インターネットでのコミュニケーションの進化に伴い大きく拡大していくメタバースの世界。既に多くの人々が色々なメタバースに飛び込んでいます。STRIVEでも、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社に投資しています。

BRIDGE編集部注:こちらの転載では一部のスライドをカットして掲載しています。全てのスライドは原文でチェックしてください

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