そしてMetaへ、大いなる戦争のはじまり(3)

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Above: You can log in on a work account in Facebook’s idea of VR work.
Image Credit: Facebook

(前回からのつづき)しかしFacebookはプライバシー侵害の疑い、アルゴリズムの偏り、ユーザーの精神的健康よりも利益を優先すること、独占禁止法の問題などに関連する多くの論争に直面しているため、ザッカーバーグ氏は楽な道を歩むことができない。有害なビジネス慣行を暴露した内部告発者、Frances Haugen氏によるリーク情報のおかげで、彼の信用は批判の的になっている。

また、Facebook自身の信用も厳しい状態にある。VRポッドキャスターのKent Bye氏は、Clubhouseのルームで、OculusがライバルのSteamVRに対してオープンではないと指摘した。クロスプラットフォーム対応に関しては、OculusよりもSteamVRの方がずっと簡単なのだ。

そのため、多くの人はFacebookの社名変更の意図を見抜いていた。名前を変えることは便利なことのように思えたのだ。メタバースの野望に注目を集めつつ、同時にFacebookブランドへの批判をそらすこともできるからだ。Facebookは今、PRの問題を抱えており、懐疑的なオブザーバー問題に直面している。この状況下で新たな同盟軍をを得て、失ったユーザーを取り戻し、規制当局に信頼できると思わせるのは難しいだろう。

長い道のり

Above: Working in a Facebook Horizon Workroom. These were actually real people talking to me.
Image Credit: Facebook

だからこそ、ザッカーバーグ氏は楽な道を歩むのではなく、長い道のりを歩むべきなのだ。つまり、彼は自分の野心に応えて、メタバースを成功させるべきなのだ。もし彼らがメタバースを提供し、Appleが提供しなければ、それは無料になる。最高のテクノロジーにアクセスできない世界中の多くの人々が利用できるようになるだろう。

つまり、ザッカーバーグ氏は自身のビジネスモデルでAppleとの全面戦争に突き進むべきなのだ。彼がユーザーをメタバースに引き込めば、ブランドがやってきて、彼にかつてないほどの広告収入を与えてくれるだろう。そうすればデバイスは格安になり、地球上の誰もが買えるような価格で提供することができるようになるだろう。

さらにもう一歩踏み込んでみよう。

ストリーマー(訳註:ゲームなどの実況配信者)のように、ブランドから声をかけられるインフルエンサーとして生計を立てている人たちがつくる経済圏のことを、クリエイター・エコノミーと呼んでいる。つまり彼は良いビジネスを作るだけでなく、クリエイターや開発者のための完全な経済を作り、彼らがメタバースの恩恵を共有できるようにすることもできるのだ。

Play-to-earn

Above: Facebook’s metaverse vision.
Image Credit: Facebook

そしてザッカーバーグ氏はこれまでのように自社の製品やサービスを無料で提供するだけでなく、こういった人々に対価を支払うべきだ。彼は、ソーシャルメディアやデバイスに注目を与えた人々に対価を支払うべきなのだ。

ユニバーサル・ベーシック・インカムという言葉を聞いたことがあるだろうか。ザッカーバーグ氏の会社は、それを実現できる会社のひとつだ。デバイスを使えるように資金を使えば、私たちがこのエコシステムの中で生活ができるようになるのだ。

ザッカーバーグ氏がこれを実現し、すべての流れを良くするのであれば、私たちは喜んで彼が望むものを引き換えに提供する。これまで私たちは、自分の個人情報をあまりにも安く提供してきた。私たちはもっとそれをコントロールして、彼に売り渡すべきなのだ。

そしてそれはAppleが絶対にやらないことだ。それはAppleのビジネスモデルや信条に反するからだ。Appleは、私たちのプライバシーを尊重したいと考えてはいるものの、同時に最高のブランドステータスと最高の利益を得たいとも考えている。

しかし、次世代のコンピューターを多くの人に届けるという点では、AppleはFacebookの後塵を拝することになりかねない。ザッカーバーグが長い道のりを歩み、お金を賢く使い、優れたデバイスを生み出すことができれば、彼は信用を取り戻し、世界の多くの人々を貧困から救うことができるだろう。FacebookやMetaは、善人になるチャンスがある。このボールを落としてはいけないのだ。

GoogleやMicrosoft、Amazon、さらにはNetflixなど、他の勢力も確かに存在している。これは複雑な戦争であり、AppleとFacebookだけが関わっているわけではない。また、Epic Gamesのようなゲーム会社やその他の企業も、分散化、つまり大規模なテクノロジーから権力を奪うことに賛成している。最近では「Play-to-earn」の旗の下、ゲームをプレイするためにお金を払うことを支援する小さな会社もある。また、権力を維持するという名目で、足を踏み入れる国家もあるかもしれない。

ザッカーバーグ氏の倫理観やビジネス戦術に異議を唱えることはできる。しかし、彼やMetaを過小評価してはいけない。大きな戦争の最初の一発が発射されたのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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