CO₂排出量可視化クラウド「zeroboard」運営、DNX VらからプレシリーズA資金を調達——累積調達額は3億円に

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「zeroboard(ゼロボード)」
Image credit: Zeroboard

CO₂ 排出量算出・可視化クラウドサービス「zeroboard(ゼロボード)」を開発・提供するゼロボードは1日、プレシリーズ A ラウンドで DNX Ventures から資金調達したことを明らかにした。同社は10月初めにも、プレシリーズ A ラウンドでインクルージョン・ジャパンからの資金調達を発表しており、これらを合わせた累積調達額は約3億円に達した。

zeroboard はエアモビリティスタートアップとして知られる A.L.I. Technologies が今年3月に発表。そこからスピンオフ(MBO)する形で、渡慶次道隆氏(現、ゼロボード代表取締役)が今年9月に設立した。これまでに企業や地方自治体を中心に約80社・団体がトライアルベースで利用しているという。

東証1部に上場する企業の多くが来年4月に移行する東証プライム市場では、上場企業に「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」に気候変動の戦略や目標の開示が求められるようになるなど、温室効果ガス(GHG)対策のモメンタムが到来しつつある。Apple のようなグローバル企業は、世界中に広がるのサプライチェーンに対し、GHG の可視化を義務づけつつある。

渡慶次道隆氏

GHG の算出・報告は GHG プロトコルに基づいているが、自社が直接または間接的に排出を計上する範囲(自らの燃焼・工業プロセスから発生する Scope 1、電気や熱・蒸気の使用から発生する Scope 2)に加え、取引相手などサプライチェーンの上流・下流で発生する排出を計上する範囲(Scope 3)の開示も求められるようになりつつある。

特に Scope 3 の排出量算出は、自社のみでは完結しないので厄介だ。定められた標準値で算出する方法があるが、より精緻な値を出すには、サプライチェーンに属するサプライヤーにも協力してもらい、実績値を求める必要がある。サプライヤー構造は当然のように多層化しているため、さらに精緻な値を求めるには芋づる式にサプライチェーンを遡る必要が生じる。

ゼロボードでは、専門商社などと協力して、特定のサプライチェーンから zeroboard を使った排出量算出・可視化への啓蒙を図っていく。世界市場から環境に対するプレッシャーが強い上場企業にとっては、サプライヤーからの製品調達にあたり、QCD(品質、費用、納期)だけでなく、CO₂ 排出も調達基準になっていくため、zeroboard 導入に向けたサプライヤー同士のネットワーク効果も期待できる。

同社では今後、脱炭素のソリューションを提供できるプロバイダとの協業(今年9月に関西電力と協業)、ゼロカーボンシティを目指す自治体との連携(今年9月に小田原市らと協定を締結)、脱炭素に取り組む企業への金利優遇サービスなど検討する金融機関などと連携、利用企業の拡大を目指す。

カーボンオフセットの広義では、温室効果ガスの排出量表示 API を開発する Sustineri が先月シード資金を調達したのは記憶に新しい。また、クリーン電力に加え、サプライチェーンを意識した GHG 排出量管理 SaaS を運営するアスエネや、サプライチェーンリスク管理プラットフォームを運営する Resilire なども注目に値する。

世界に目を転じると、先週1.1億米ドルをシリーズ B 調達したばかりのアメリカの Persefoni、先月500万米ドルをシリーズ A調達したオーストラリアの Pathzero、今年4月に500万米ドルをシード調達したフランスの Sweep などもベンチマークしておくべきだろう。

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