金融にM&A仲介からミドルバックまでーーSMB向けHorizontal SaaSが持つ事業の可能性【 #事業のネタ帳 】

Photo by Vinícius Vieira ft

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、ジェネシア・ベンチャーズのスタートアップ向けTipsシリーズ『事業のネタ帳』からの転載。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。ジェネシア・ベンチャーズの最新イベントなどの情報を必要とする方は「TEAM by Genesia.」から

■SMB向けビジネスの概観

全国に企業は367万4,000社(2021年6月末時点、経済センサス活動調査)存在し、このうちの99.7%を占めると言われているSMB(Small and Medium Business)。SMBは社数が多いだけではなく、デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)の余地が大きく、SMB向けビジネス、特にHorizontal SaaSの可能性は極めて大きいと考えています。また、コロナ禍が大きく推し進めたビジネスのデジタル化や、電子帳簿保存法やインボイス制度、育児・介護休業法や改正個人情報保護法などの相次ぐ法律の制定や改正などによって、企業はビジネスの変革を迫られていますが、リソースが豊富な大企業とは異なり、SMBは個社毎に対応するのが難しいことも、SMB向けHorizontal SaaSがこれから大きく伸びると考えている理由です。

SaaSではないですが、SMBや一般個人に対して、通信回線サービス・宅配水・電力・保険・業種別ITソリューション・決済ソリューション・携帯電話・OA機器などを販売し、商品・サービスの販売後に使用量などに応じた継続的な売上が入ってくるストックビジネスを構築している 光通信 や、SMB向けを中心に、IT機器やシステムの提案から導入までを行う「システムインテグレーション事業」と導入後に運用面での支援を行う「サービス&サポート事業」の両事業を持つことでストックビジネスを構築している 大塚商会 は、この金融市況下においても、比較的安定的な株価を維持しています。

また、 freeeマネーフォワードラクス といった時価総額が高い上場メガベンチャーにSMB向けHorizontal SaaSが数多く見られることからも、この事業領域のポテンシャルの大きさを垣間見ることができます。このnoteでは、いくつかの事業領域に絞って、SMB向けHorizontal SaaSの可能性について纏めてみたいと思います。

(1)SMB向けの金融ビジネス

一つ目は、SMB向けの金融ビジネスです。日本における金融機関の戦略を概観してみると、基本的にメガバンクは、高成長が期待できるスタートアップ、中堅・大企業との取引や海外ビジネスに注力する傾向があります。地方銀行や信用金庫は、多くのSMBを顧客として抱えていますが、一部の大手地銀を除いてDXが遅れており、UI/UXが優れているパソコンバンクやスマホアプリ、またOMO(Offline Merges with Online)時代を見越したカスタマージャーニー設計が実現できておらず、SMB向けに良質な金融ソリューションを提供できていないという現状があります。

もう一つは、与信アルゴリズムの静的与信から動的与信へのシフトのトレンドです。

資金運用利回り・総資金利ざや 中央値推移(東京商工リサーチ調べ)

資金運用利回り・総資金利ざや 中央値推移(東京商工リサーチ調べ)

上図のように、金融機関における低金利での貸出競争の激化などを背景とし、資金運用利回り(上記グラフの緑の折れ線)の低下が顕著に見られる状況下において、貸し倒れ率の抑制はこれまで以上に重要になること、及び今のような変化の大きな時代において、決算書などの静的データをベースとした与信審査では限界があり、日々の銀行預金残高の推移やカード決済の状況など、より多くの動的データを取り込むことで与信精度を高めていく必要があると考えていますが、既存の金融機関にこのような動きはあまり見られず、freeeやマネーフォワードなどが金融領域へと事業領域を拡大させつつあるものの、まだ残された事業機会は大きいと考えています。

BRIDGE編集部註:この後の「(2)SMB向けのM&A仲介ビジネス」はこちらから

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