都市の真ん中でも地産地消、無人屋内農業を実現「Iron Ox」/完全無人化ビジネス(5)

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Image credit:Iron Ox

(前回からのつづき)シリコンバレーに拠点を置くIron Oxは、スマート屋内農業にフォーカスした数少ないスタートアップの一つだ。元GoogleのBrandon Alexander氏によって2015年に設立され、現在カリフォルニア州とテキサス州に完全自立型屋内農場を所有し、オースティン地域のWhole Foods Marketなどの店舗にここで栽培された農産物が並んでいる

テキサス州のメディアTexas Monthlyによると、カリフォルニア州にある施設は試験的な意味合いが強かったが、2022年5月から稼働を始めたテキサス州ロックハートにある東京ドーム約1個分の大きさの施設は商業的な目的があるという。

ヒューストン、オースティンは1,200 万人の人口がいる人口密集地で、多くの高級食料品店やレストランが近くに存在する。過去のTechCrunchによるCEOのAlexander氏への取材記事でも書かれている通り、バジル、レタスなどのIron Oxが注力する野菜のほとんどはアリゾナ州かカリフォルニア州で作られているため、新鮮さと移動コストが削減できる点で強みを持つのだ。

実際に現地に取材に行ったライターによると、室内はAmazonのフルフィルメントセンターに少し似ているそう。同社ブログにもある通り、植物を栽培する正方形のトレイが所狭しと並び、ルンバのような大型のロボットが移動し、データ収集および各モジュールの水、栄養混合物を正確に供給を行うスタンドロボットが置いてある。

移動ロボットとスタンドロボットが連携することで自動で、何千ものモジュールからのデータを分析し、植物の収量の最適化、成長サイクルの拡大を可能にしている。

世界各国でBowery FarmingIntelligent Growth Solutionsなどスタートアップが多く登場している垂直農業を利用した栽培とは違い、Iron Oxは屋内農業であるため大量生産をしようとすると都市部では農場を建設することはできない

しかし、アメリカ、アフリカ、中国などのように都市部間が離れており、食糧入手に輸送コストが大きく発生する野菜、果物に関しては屋内農業が好ましい。日頃口にする数の多い野菜ほど向いているのだ。まずはアメリカのテキサス州から始め、現在Whole Foodsなど大手食品店と交渉してチャネル拡大を目指しているIron Oxの今後展開に注目したい。

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