持続可能な社会を作るスタートアップたち(5)リモートワークどう続ける?ファインディの可視化

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Photo by Ivan Samkov

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

これまで4回に渡ってスタートアップがESGにどう関わるべきか、いくつかのテーマでお伝えしてきました。最終回となる本稿では前回に引き続き、強い組織づくりのためのESG活用、特にコロナ禍において一気に広がりを見せた多様な働き方の必要性と実現の方法について考察していきます。

働く環境への意識の変化

働き方のリサーチ結果を公表しているパーソル総合研究所では、2020年4月から7回に渡ってリモートワークのアンケート調査結果を報告しています。全7回の結果は概ね安定しており、リモートワーク率は新型コロナウイルス感染の第一波後に14%前後から25%ほどまで引き上がり、その後も同様の水準で推移している、という具合です。

興味深いのは、このリモートワーク実施者に対する継続意向の結果です。第1回のアンケートから毎回、継続意向率が高まり、7回目の結果は8割近い人が継続したいと回答しています。前回の記事ではメルカリが公表した、多様な働き方を選択できる制度「YOUR CHOICE」の活用状況をお伝えしました。ここでも9割がリモート勤務を選択し、半数近くが住環境を変えるなど、「働く」と「生活する」のバランスを個々で調整している様子が伺えました。

もちろん、情報産業のようにリモートワークでも問題なく業務が遂行できるという特殊な環境に基づく結果ではありますが、それでもこの2つのアンケート調査結果が示す「働く人たちの意識変化」は、企業にとって大切なことを示唆しています。つまり、ESG視点で大切な「働く人たちからの要請」にどう応えるか、という点です。

スタートアップにおける「人的資本情報開示」の時代

コロナ禍をきっかけに起こった働く人たちの環境と意識変化に加え、スタートアップにとっても見逃せないのが「人的資本情報開示」の話題です。連載でも初回に2021年に改訂されたコーポレートガバナンスコードの件について触れました。この中には人的資本(企業における人材を資本とみなす考え方)の情報を開示すべきという一文が盛り込まれています。上場を前提としたスタートアップには避けて通れない関門でもあるのです。

2022年6月に内閣官房が公表した「人的資本可視化指針案」に対して、現在パブリックコメントが求めらている状況ですが、基本的な考え方は「経営者、投資家、そして従業員をはじめとするステークホルダー間の相互理解を深めるため」に、持続的な企業価値向上に貢献する無形資産である人的資本に透明性を持たせましょう、というものになります。

経営陣が透明性高く情報を開示してくれるかどうかは、働く場所を決める上で重要な要素になってきます。一方、情報をどのように設計し、開示するかという点については、前回のダイバーシティへの取り組みでご紹介した10Xの事例のように、数値目標を立てるかどうかで議論が分かれるほど難しい内容になっています。

働く環境をどのように透明性高く表現するか。この1つの答えとしてファインディの事例をご紹介します。

リモートワークどう続ける?ファインディの可視化

都内で開催されたファインディの戦略発表会(写真素材提供:ファインディ)

10月末日、エンジニアのスキルやチームの状態を可視化するファインディによる発表会が都内で開催されました。新たなサービスの戦略の発表とともに、エンジニアチームの働く環境を可視化し、「チームの健康状態」を対外的にうまく伝えた企業を表彰するアワードも行われました。

ファインディは可視化したスキルをもとに、転職などのキャリアマッチングに役立てる「Findy」と、開発組織の状態を可視化してチームの生産性を向上させることができる「Findy Team+」などを主力事業としています。戦略発表会では代表取締役を務める山田裕一朗さんが「2025年までに売上100億円・Findy Team+の2000社導入」を宣言するなど、最も勢いのあるスタートアップの1つです。

そしてこのファインディの成長を支えるのが、多様な働き方で集まるチームの存在になります。

エンジニアやデザイナーは基本リモートで、都内に住んでいる人は週1ぐらいで出社はしていますが、地方在住の人も多く、そちらについては3カ月から半年に1回ぐらいの出社ですね。ただ、正社員の6割ほどを占めるビジネス側のメンバーは、個別の要件がない限り出社の方向です。ここにアルバイトやフリーランスの方が加わる感じで、こちらの方々はリモートが中心となっています。(山田さん)

山田さんたちはこういった働き方のルールを大まかに方向性だけ決めて、あとは例えば介護の必要がある家族がいる場合など、個別に相談しながら状況に合わせて決めていっているそうです。こういった多種多様な働き方で大切になるのが測定の方法です。環境がバラバラの場合、それぞれが信じられる絶対的な指標がなければやはりなにかと不信感につながります。

彼らの提供するFindy Team+はエンジニアに特化した可視化ツールで、エンジニアの開発状況をGitHubなどのツール・アクティビティから解析し可視化してくれます。最終的に開発チームの生産性が上がっているのかどうか、それをグラフで見える化してくれる、というわけです。ただ、この指標もやはりあくまで「参考」情報です。山田さんはこういった可視化の上で、細やかなコミュニケーションが大切と教えてくれました。

どういう働き方をしてるのかという点に関しては、データも通してマネジメント層とエンジニア層がある程度の共通認識を持てるのですが、それは付属的な要素であって、仕事の種類やスタッフの等級、フェーズにもよってくると思います。

それ以上にFindy Team+があることの最大のメリットは、例えば1on1の際にマネージャーもエンジニアもデータを見た上で参加するので、すり合わせの時間がすごく少なくて済むんですよ。だから1on1の時間を雑談や将来のキャリアどうしていきたいの?といった相談の時間に使えるんですよね。(山田さん)

前述したファインディ主催のアワードで受賞した1社も、同様の課題を話していました。例えばデザイナーとエンジニアでは評価軸が異なるため、全体を開発チームとしてマネジメントする時間的コストは膨大で、ある程度共通した計測の仕組みを必要としていたそうです。働く人たちにとって子育てや介護など個別の事情だけでなく、共通した指標があれば、相対的な評価に透明性が生まれ、納得感も上がります。

スタートアップにおける可視化の重要性

5回に渡ってスタートアップにとってのESG、持続可能な社会づくりをテーマに取材と考察をしてきました。全体として感じたのは「重要性(マテリアリティ)」と「測定(メジャメント)」がしっかりとできるかどうか、そしてそれを通じて自分たちの活動をいかに「透明性高く」ステークホルダーに伝えることができるかが、スタートアップにとって重要なポイントだということです。

物があふれ、格差が広がり、世界では行きすぎた資本主義に対する批判も集まっています。こういった社会情勢において、社会貢献活動を検証可能な状態、つまり「嘘をつかないで」活躍してくれるスタートアップに期待が集まっているのだと思います。

ESGへの取り組みは社会的な要請になりつつあります。本稿が少しでも何かの気付きになれば幸いです。

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