インドのEコマース支援サービス「Dukaan」、AIチャットボット導入でサポート人員の9割を解雇し話題に

Dukaanの創業者兼CEOのSummit Shah氏
Image credit: Dukaan

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

インドのバンガロールを拠点に、企業が独自モバイルオンラインストアを立ち上げることを支援する SaaS「Dukaan」の運営会社が、カスタマーサポート人員の9割に相当する23人を解雇したことで話題になっています。Dukaanのサイエンティストが2日間で開発したAIチャットボットを導入したところ、人間のスタッフは質問を受けてから最初の回答までに平均で1分44秒を要したのに対し、AI チャットボットはそれを数秒で回答し、問題解決も2時間13分から3分12秒にまで短縮されたことが背景にあるようです。

Dukaanの創業者兼CEOのSummit Shah氏は、地元スタートアップメディアVCCircleとのインタビューで、サポート人員の解雇の理由は複合的なものであったと釈明しています。Shah氏は、同社がサービスのターゲットを当初の中小企業のeコマース需要からD2Cブランド向けにシフトさせたこと、グラフィックデザインやデータサイエンスに関わる仕事にはAIを活用していること、またエンジニアリング、マーケティング、セールスなどの職種では、今でも積極的に人材を募集していると説明しました。

ukaanのAIチャットボットは当初、多くの質問には回答できたものの、アカウントに固有の質問、例えば「なぜ、支払いが2日間保留されているのか?」といった質問には答えられませんでした。DukaanのサイエンティストOjasvi Yadav氏は、チャットボットに改善を施し、200件のライブチャットと1,400件のサポートチャットを解決済にすることに成功、このチャットボットを単独事業として「bot9」の名でローンチしました。Webサイトには、「30秒で自分のカスタマサポートボットを立ち上げられる」とあります。

AIが人の仕事を奪うのではないかという懸念は、OpenAIが今年初め、ChatGPTを公開してから明らかに加速しています。経済協力開発機構(OECD)は、建設、農業、漁業、林業など、仕事に求められる熟練度が比較的高くない分野で、この傾向は顕著であるとしていました。しかし、汎用AIの登場により、ITサービス、金融、医療、法律、教育など、作業が非定型で、専門知識や熟練度が求められる分野においても、AIによる人の置き換えが可能になりつつあることをDukaanのニュースが物語っています。

世界的に資金調達が困難な時期にあるため、ユニコーンを目指すよりも生き残りを賭けた目先のコスト削減に注力するスタートアップの動きが目立ちます。動きが早いスタートアップのことなので、ある仕事のポジションがAIに置き換えられて、次の月には消滅しているというようなことも起こりうるわけですが、今のところ世界各地のスタートアップシーンでは、ハリウッドの俳優組合のようなストライキは起こっていません。起業家やスタートアップで働く人々が、この急激な変化をどのように受け止めるのか注目です。

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