「良質な」スタートアップにはチャンス到来ーーグローバル・ブレインが年次「 #GBAF2023 」開催、百合本氏が見通し語る

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グローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏

米国市場では2024年前半にかけて資金枯渇、膨らんだ株価によってM&Aすらできない「ユニコーン」の倒産が現実味を帯びるーー。

独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは12月1日、年次で恒例となっているカンファレンス「Global Brain Alliance Forum 2023」を都内で開催し、同社代表取締役の百合本安彦氏が詳細なレポートを背景に、日本を含めたグローバル・スタートアップ環境を振り返り、来年に向けての見通しを語った。膨らんだ未公開株の調整局面を多様な側面からレポートした前回からの続き。後半では日本市場に関する百合本氏の予測を共有する。

米国と異なる日本のスタートアップ市場

GBAF2023スライドから:日本も同様にレイターステージの評価額は激減した

「一方、日本も落ち込んでおりまして、昨年(の投資額)は9,000億円ぐらいだったんですけども、今年は着地で6,000億円とかそういう数字になるんです。ただ、USほどは落ちていないということですね。また、落ち込み具合を見てみますと、シリーズAは大体同じぐらいを維持してるんですけども、CとかDとかは少ない状況です」。

国内スタートアップの投資金額については百合本氏が解説するように、最も投資金額が伸びた昨年に比較して約4割弱の落ち込み、年度の着地として6,000億円程度に留まる見通しだ。落ちるには落ちたが、バブルを引きずっていたことを考えるとこの調整幅は理解できる。また、米国ほどの急落とまではいかない。

しかし評価額は米国同様に厳しい。シリーズA、Bラウンドこそ下落幅はそこまでではないが、レイターステージのシリーズDでは米国とほぼ同じく、約1年で6割以上の時価総額が失われている。それに引っ張られる形でIPOも減少しており、2021年の125件をピークに昨年は91件、今年は3Qまでの実績として66件となっている。ただ、ディールサイズについては21年同様に戻しているので、ここはスタートアップの内容次第、といったところだろうか。

バブルを産んだ要因:Unicorn Factory

GBAF2023スライドから:実態と乖離したユニコーンを製造する仕組みが大量の幻を生み出した

気になるのが回復の時期だ。百合本氏は地政学的な要素や米国景気動向などを影響要素として挙げつつ、新たな調整の概念としてUnicorn Factoryという考え方を解説してくれた。

「市場調整機能としてUnicorn Factoryを説明させていただきたい。本来ですと、各ラウンド毎にちゃんとフェアバリューを測って、それでランクアップしていくわけなんですけど、何が起きたかというと、例えばシリーズAで100億円つけましたと、だったらシリーズBで200億円、シリーズCで500億円、シリーズDに700億円、右肩上がりという形で言い方は悪いんですが、これからまださらに市場が上がってくるからという非常に安易な考え方ですね。使用資金以上の資金を投下してしまっているという事実が発生した。こういう形でどんどんランクアップしていってユニコーンが発生するわけなんですけども、はっきり言って完全にオーバーバリュー状況になっている」。

スタートアップの資本政策は基本的に足元の数値からではなく、未来に獲得する将来価値を起点に考えることが多い。IPO時点でベンチマーク企業の時価総額がどの水準で、そこから割り戻して現在ラウンドのポジションを決める、というやり方だ。このUnicorn Factoryも同様で、起点となる最初の値付けが当時の市況によって膨れ上がった結果、その後の「お祭り雰囲気」で調整が効かなくなっていることを示している。

全ての皺寄せがレイターに集まるため、ここまで前述されていた通り、後ろのラウンドで大きく時価総額を実態に合わせるという調整が発生した。当然だが、後ろを担う投資家にとっては迷惑極まりないため、引き受け手はいなくなる。米国では現在も調整が働いており、シリーズAラウンドのハイバリュー状況が少し落ち着きを取り戻しているようだ。

日本の回復時期はいつか

GBAF2023スライドから:実力あるスタートアップにはチャンス

シリコンバレーバンクの破綻などで幕を開けた2023年は一年を通じて昨年に引き続き、厳しい局面を強いられたと言っていいだろう。スタートアップの資金調達は21年にピークを迎え、最終クオーターから一気に崩れ始める。Unicorn Factoryのような「危うさ」は国内のスタートアップ投資に携わるキャピタリストからもしばしば耳にすることがあった。百合本氏によれば、まだまだ市場調整には時間がかかるという見立てで、過去のインターネットバブルなどとの比較で次のように語る。

「過去の市場調整の回復期間ってどれぐらいかかっているんだということですけども、インターネットバブルでは大体10Qですね。大体2年半ぐらいで上がっていますので、今回2022年の4Qを基準にしますと、それから2年半ということで、2024年の後半ぐらいに市場が回復するんじゃないかと、一応そこを目処にしています」。

これらをまとめ、USのスタートアップ市場が完全に回復するのは2025年前半、日本については26年にずれ込むのではという話だった。では、その時期を見込んだ上で何ができるのだろうか?百合本氏はこの状況をチャンスと見て次のように動くべきと締め括った。

「私はリーマン・ショックの後の状況と似ていると考えています。非常に困難な時期を乗り越えた後には、大きなチャンスがあると考えています。一つは、競争関係が緩んでしまうため、倒産がどんどん起きます。それによって優秀な人材が豊富に輩出される状況が生まれます。それからVCにとってもこの状況は大きなチャンスで、良い会社がたくさん出てくる可能性があります。

日本のスタートアップが何をすべきかということですが、先ほど申し上げましたが、欧米ほどではない状況です。IPOもまだ生きています。ドライパウダーもあります。私たちの投資先でもキャディとかUPSIDER、テレイグジスタンスなどが50億円調達ができているわけです。

2021年の時の(調達)条件と2023年、今の段階の条件では、(調達した資金の価値が)全然違うと考えています。おそらく3倍ぐらいの価値の差があると思います。また、優秀な人材がどんどん流れてきていますので、日本から海外を狙うスタートアップにとって非常に大きなチャンスがあると考えています」。

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