統合ID管理クラウド「イエソド」、6億円をシリーズA調達——ID設定の〝棚卸し〟から〝最適化反映〟実現へ

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Image credit: Yesod

統合 ID 管理のためのクラウドプラットフォーム「YESOD(イエソド)」を開発・提供するイエソドは7日、シリーズ A ラウンドで6億円を調達したと発表した。このラウンドには、DNX Ventures、セコム(東証:9735)、ANRI が参加した。これはイエソドにとって、2020年8月に明らかにしたプレシリーズ A ラウンドに続くものだ。DNX Ventures と ANRI は前回ラウンドに続くフォローオンでの参加。累積調達額は8億円に達した。

イエソドは2018年9月、竹内秀行氏(現在 CEO)らにより創業。竹内氏は東京工業大学大学院在学中に2社を起業、その後、ユーザベース(東証:3966)で SPEEDA、NewsPicks、FORCAS の基礎開発に携わった人物だ。以前は、Excel や Google Spreadsheet などで管理されていたアカウント管理や権限管理をクラウド化することで、企業の内部統制やセキュリティ管理業務の効率化に威力を発揮する。

以前は、「各種 SaaS のアカウント発行・権限設定を自動化」といった修飾句で説明していたイエソドだが、最近になって ID 統制管理(IGA)のためのツール、というフレーズを使い始めた。IGA とは、ID ガバナンスとID 管理を合わせた概念で、人や組織に紐づいた ID ライフサイクルを起点に、各種システム連携、運用ルールの自動化、タスクマネジメントの最適化を目指す概念だ。イエソドでは、IGA を可能にする「YESOD アカウントコントロール」を2024年2月にローンチする。

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これまでのイエソドと、IGA プロダクトローンチ後のイエソドは何が違うのだろうか。竹内氏によれば、「これまでは棚卸しが主体だったが、今後は連携反映が可能になる」とのこと。すなわち、SaaS のアカウント管理をはじめ、これまでは現状と改善点の把握が中心だったわけだが、今後はそれを踏まえて、実際のあるべき姿への設定反映も可能になる。当初は、Google Workspace、Slack、Okta、Azure AD でのアカウント設定や権限設定をイエソドから反映できるようになる予定だ。

「棚卸しの後、連携反映ができる」のは想定路線だったかもしれないが、イエソドにそちらへ舵切りを決意させた背景には、想定以上に規模の大きい企業ユーザが増えたことがある。小さな会社なら SaaS のアカウント管理だけの機能が欲しい、ということもあるだろうが、企業規模が大きくなるにつれ権限管理は複雑化するため、ID マスタの統合管理は必須だ。人(従業員)という切り口から、マスターコントロールに食い込めているのは、他にはあまり無いアプローチだからだろうとのことだ。

スタートアップデータベースの Tracxn によると、10月1日現在には、この領域に72社のスタートアップがいることが報告されていて、Tracxn の競合ランクで見てみると、アメリカの Saviynt や SailPoint などが上位に食い込んでいる。特にその中でも新興とされるアメリカの BalkanID は、IDA に AI 技術を持ち込み、昨年、シードラウンドで810万米ドルを調達している

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