売上連動型ファイナンス(RBF)の「Yoii Fuel」運営、8億円をシリーズA調達——事業開発、製品開発を強化

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Image credit: Yoii

出資や融資によらない、RBF(売上連動型ファイナンス)による資金調達サービス「Yoii Fuel(ヨイフューエル)」を提供する Yoii(ヨイ)は8日、シリーズ A ラウンドで約8億円を調達したと発表した。このラウンドは、Emellience Partners(BIPROGY の CVC)がリードし、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)、FFG ベンチャービジネスパートナーズ(FVP)、三菱 UFJ 信託銀行、インクルージョン・ジャパン(ICJ)、One Capital、東京大学協創プラットフォーム(東大 IPC)、農林中金イノベーションファンド(農林中央金庫とグローバル・ブレインが運営)が参加した。

これは、Yoii にとって2022年9月に実施したプレシリーズ A ラウンドに続くもので、三菱 UFJ 信託銀行、ICJ、One Capital、東大 IPC、農林中金イノベーションファンドは前回ラウンドに続くフォローオンでの参加。累積調達額は約14億円に達した。Yoii では調達した資金を使って、多くの企業導入を安定的に実現する組織体制を強化するため、事業開発部門の採用を積極的に行うほか、多様なスタートアップの企業フェーズやニーズに合わせた RBF のメニューを充実させるため、プロダクトのさらなる開発にも投資するとしている。

Yoii は2021年4月、博報堂プロダクツを経て決済スタートアップ Omise に参画した宇野雅晴氏らにより創業。株式の希薄化が無く、連帯保証・担保無しで利用できる Yoii Fuel を2021年5月にクローズドベータ版としてローンチした。アーリーステージの D2C ブランドや、e コマーススタートアップなどで人気を集めるこのモデルだが、サブスクや SaaS など定期的に売上が計上される事業モデルでは特に利用しやすい。宇野氏によれば、VC から資金調達しているスタートアップに限らず、リスクモデルが適用可能な事業に対しては資金を提供する事例が多く出てきているという。

ただ、ある業種で適用できるリスクモデルも、違った業種だと役に立ちません。ありとあらゆるリスクモデルの開発が必要で、そのためにはデータが必要です。現在は AI でリスク評価し、さらにそれを人の目(金融機関で融資審査などに従事していた社員が担当しているそう)で見て最終判断をしています。

個人金融にはいろんなフィンテックの企業が出てきていますが、個人金融と法人金融だと扱うデータの数が違う。法人金融では、このデータを集める作業が非常に大変です。しかも、スタートアップのデータを持っているところは、あまり存在しない。我々はそこで強みを出せると思っています。(宇野氏)

左から:Yoii CEO 宇野雅晴氏、CTO 大森亮氏
Image credit: Yoii

日本のみならず、中東地域でも RBF が人気を集めていて、先週末には、UAE(アラブ首長国連邦)拠点の Flow48 が2,500万米ドルを調達したというニュースを TechCrunch が報じた。ゼロ金利時代の終焉と共に、スタートアップが VC から調達するのが難しくなっているのは世界共通で、また、新たな金融商品を模索している伝統的な金融業界も RBF に活路を見出している。Dealroom のデータによると、ヨーロッパでは少なくとも18社の RBF スタートアップが登場し、VC から総額で6億7,100万米ドルもの資金を集めた。Pipe、Capchase、Clearco といったアメリカの RBF スタートアップは、ヨーロッパでも事業を展開している。

日本は海外ほどではないけれど、程度が違うだけの問題で、スタートアップにとって資金調達が以前よりも難しくなっているのは事実です。シードラウンドのスタートアップはまだいい。バリュエーションも高くないし、出資してくれる VC もたくさんいます。でも、PMF して、次のラウンドに進んだあたりのスタートアップは難しい。

ベンチャーデットはレイター以降のスタートアップを対象としているところが多いし、アーリーからシリーズ A ラウンドあたりが(需要に対して供給が)ぽっかり空いているんです。RBF は銀行よりは金利が高いけど、長い目で見れば、エクイティで調達するよりは低い、という計算が成り立つわけです。(宇野氏)

Yoii を利用するスタートアップの中には、エクイティで調達するのを避け、次のラウンドに向けバリュエーションを上げるべく、5回にわたって、ブリッジファイナンス的に Yoii を利用しているところも存在するとか。スタートアップにとっての資金調達手段として、Yoii を第一想起してもらえるよう、認知度向上のための活動やウェビナーの開催を積極的に展開していきたい、と宇野氏は語った。今回の資金調達はほとんどが純投資だが、調達先である各社からは事業開拓などで協力を得る考えだ。同社ではまた、スタートアップ VC 30社(2023年6月現在)と提携し、資金需要のあるスタートアップを紹介してもらうプログラムを展開している。

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