製造業の調達プロセスをDXするSaaS「nitoel(ニトエル)」が正式ローンチ、デット含め1億円をシード調達

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ニトエルの開発チームの皆さん。左から:Ota Yoshihiro 氏(エンジニア)、Mizuno Takayasu 氏(PM)、Hashimoto Eiichi 氏(エンジニア)、Otsuka Kohei 氏(エンジニア)、Sakamoto Keiichi 氏(エンジニア)
Image credit: Nitoel

大手製造メーカー向けに、直接材の調達プロセスをデジタル化するソリューション SaaS「nitoel」を開発・提供するニトエルは18日、シードラウンドで1億円を調達したと発表した。なお、この金額には金融機関からのデットファイナンスが含まれる(なお、念のため、チーム型実践学習サイト「nitoeru」の運営元と混同しないように)。

創業者兼 CEO 辻絢太氏
Image credit: Nitoel

ニトエルは2021年6月、エンタープライズセールスやカスタマサクセスとそれらのマネジメント経験や、生産管理システムや間接材購買領域の経験を持つ辻絢太氏により創業。nitoel は、直接材を購入するバイヤーと、直接材を供給・販売するサプライヤー)をつなぎ、見積のやり取りのデジタル化・迅速化を支援する。バイヤーにとっては既存のサプライチェーンにとどまらない新規サプライヤーの開拓のほか、バイヤーからサプライヤーへの減価提案などにも対応しやすくなる。

IT などの新興産業が隆盛を極めているが、今でも製造業は GDP ベースで19.8%、就業者ベースでは16.7%と日本経済を支える中心的な柱だ。特に、精密な加工技術や日本以外で容易に作れない特殊素材などが武器となり、製品輸出することで外貨獲得の有力な手段となるため製造業への期待は大きい。一方で新興市場との価格競争の波にさらされているのも現実だ。直接材とは生産に直接かかわる資材のことだが、製造メーカーでは売上の6割を直接材コストが占めており、ここを圧縮できれば大幅な利益改善が期待できる。

大手製造メーカーの調達部門では、購買依頼、発注、納品や検収、支払といった、調達が決まった後や製造後のルーティンのプロセスについては ERP や生産管理システムを使って管理しているが、それより前のデータ分析、サプライヤー管理・評価、見積・交渉、進捗管理といったデシジョンメイキングのプロセスについては以前として多くがシステム化されておらず、企業の約8割程度は Excel をメール添付してのやりとりなどに依存している。nitodel このシステム化されていない部分にフォーカスした SaaS だ。

新しい製品を作るために新たに直接材を調達するため、メーカーは複数のサプライヤーに見積を依頼することになる。メーカーからは要件を図面や要求仕様書の形でサプライヤーに伝えるが、それに基づいて、細かい根拠を記した見積書をサプライヤーが作成し、メーカーに提出しなければならない。サプライヤー各社によって見積書はフォーマットが異なり、それらを比較したり管理したりする観点でも難点があった。nitoel を使えば、サプライヤーからの見積はデータ投入されるため、バイヤーはそれを管理しやすい。

nitoel が効果を発揮するプロセスの一つが、メーカーからサプライヤーに納入価格の抑制を依頼する減価提案だろう。メーカーからサプライヤーに減価提案する場合、単純に依頼するのでは、下請法(下請代金支払遅延等防止法)に抵触する可能性があるため、具体的のどの部分をどのようにコストを下げてもらうのか、根拠を示して説明する必要がある。nitoel 上では、直接材の価格の構成根拠などがデータで詳記されているため、それを元にメーカーはサプライヤーに相談することができる。

nitoel はこれまでにクローズドベータ運用されてきたが、自動車、電気機械、医療機械、電子楽器、家電などの分野で、年間売上高で数千億円レベルの大手製造メーカー数社に利用してもらえるようになったのを受け、今回正式ローンチに踏み切ったという。同社では2023年末には合計30社の導入を目指す。今回調達した資金を元に、今後、人材採用も強化する方針だ

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