中小企業の生成AI導入、プロンプトのテンプレート化で後押し——豪Relevance AI、14.5億円を調達

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Image credit: Relevance AI

AI ツールがあっても、明確なプロンプトが出せなければ意味がない。2020年、オーストラリアのスタートアップ Relevance AI は、プロンプトなしで使える AI ツールの解決策を見つけた。

Relevance AI は、文章の要約や動画の文字起こしといった一般的なプロンプトをモジュール化し、中小企業向けにパッケージ化することで、指示を与えたりチームを作ったりといった他のことに気を取られることなく、その場で使用できるようにし、必要なシナリオに AI を適用することに集中できるようにしている。

プロンプトをツールキット化

2023年に開始されたハーバード・ビジネス・スクールの研究によると、ワークフローにジェネレーティブ AI ツールを導入した従業員は、平均的な従業員よりも生産性が40%向上したという。

AI ツールの導入が作業効率を向上させることができたとしても、現在の市場を見てみると、投資コストや学習コストの理由から多くの企業が躊躇しており、さらに ChatGPT、Midjourney などの有名ツールであっても、十分に機能させるには正確な指示が必要だ。従業員が質問や指示を得意としなければ、AI を役に立てるのは難しいだろう。

Relevance AI と、ChatGPT などジェネレーティブ AI との違いについて、Relevance AI 共同創業者の Daniel Palmer(ダニエル・パーマー)氏は、コパイロットと運転支援の概念を使って説明する。彼は、ChatGPT やその他の大規模言語モデルを(LLM)使用してワークフローを短縮しても、ユーザが正しいプロンプトを入力することに依存するため、入力指示が十分に明確でなければ、2倍の労力がかかる可能性があると述べた。

Relevance AI の製品「AI Tools」は、運転支援システムのような位置づけで、ユーザがよく使うコマンドや、すでに他の人が使っている的確なプロンプトをテンプレート化することで、ゼロからプロンプトを設定したり、試行錯誤する時間やコストを省くことができる。動画の文字起こしを例にとると、パートナー企業がこのサービスを利用したい場合、Relevance AIのソフトウェアで確立された AI Tools のテンプレートを直接利用することができる。

Palmer 氏はメディア「SmartCompany」とのインタビューで、Relevance AI は、新しい技術をチームに導入する際の学習コストを簡素化し、パートナー企業がより重要な市場調査や開発に時間を費やせるようにしたいと考えていると述べた。

ビジネス開発に RPA を組み合わせられる新製品「AI Agents」

AI ツールに加え、Relevance AI は最近、新製品「AI Agents」を開発した。

ビジネスデベロッパー担当者は、市場開拓や潜在顧客とのコンタクトなど、企業の新たなビジネスチャンスを広げるための業務を担っているが、潜在顧客のリストは無限にあるため、バックグラウンドチェックやパーソナライズされたマーケティングレターの送付などに多くの時間を費やす必要があり、必ずしも良い結果につながるとは限らない。

このようなプロセスでは、反復作業が多く、カスタマイズされたレターを送るという非標準的なタスクが発生する。市場には、反復作業の問題を解決できる RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールが数多くある。AI Agents は、ビジネスデベロッパーと RPA の力を組み合わせることができるソリューションだ。

Image credit: Relevance AI

シリーズ A ラウンドで約14.5億円を調達

Relevance AI はシリーズ A で1,500万豪ドル(約14.5億円)の投資を受けており、将来的にはマルチモーダル AI ツールのローンチを見込んでいる。

AI Tools と AI Agents は無料で利用できるが、企業がこれらの AI ツールを既存の社内運用システム(ERP、CMSなど)に組み込みたい場合は、規定に従って料金を支払う必要がある。Pro 版が月額19米ドル、Team 版が月額199米ドルから、Business 版が月額599米ドルだ。

Relevance AI はこれまで、マイクロソフト、Unilever、Mirvac など、テクノロジー、小売、不動産セクターの約6,000社の顧客と契約し、これらの組織に対して25万件以上の仕事をこなしてきた。

Relevance AI 共同創業者の3人。左から:Daniel Vassilev 氏, Daniel Palmer氏, Jacky Koh 氏
Image credit: Relevance AI

Relevance AI は2023年12月のシリーズ A ラウンドで、AI 事業向け特化 VC 大手 King River Capital、Calileo Ventures、Insight Partners から支援を受け、1,500万豪ドル(約14.5億円)の調達に成功した。

Relevance AI チームは、シリーズ A ラウンドで得た資金はチームの規模拡大に充てられ、将来的には画像や音声の整理・編集を支援するマルチモーダル AI モデルを発表する予定だと述べている。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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