企業の炭素排出量管理がビジネスチャンス「Pathzero」:気候変動スタートアップ・リスト

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Image credit:Pathzero

前回に引き続き、気候変動リスクにソリューションを提供するスタートアップの紹介をする。最初のテーマは「Data and Finance」から3社。全体のリストは下記に掲載する。

オーストラリアのシドニーに拠点を置く「Pathzero」は炭素排出量の測定と管理を提供するスタートアップだ。2022年12月にCarthona CapitalがリードしたシリーズAラウンドで1,083万ドルを調達し、累計調達額は1,160万ドルとなった

同社は金融機関と投資先や融資先のポートフォリオ企業向けに炭素排出量の閲覧と分析ツールである「Pathzero Navigator」を提供している。このツールはポートフォリオ企業が外部に測定を依頼して報告を受けたデータを入力し、GHGプロトコル(国際的なGHG排出量の算定と報告の基準)やPCAF(金融機関が融資・投資を通じて資金提供した企業の温室効果ガスの排出量を算定するための枠組)などの世界基準に基づいてステークホルダーと炭素情報を共有できる。金融機関は同社を通してホットスポットの特定ができるため、炭素排出目標を設定し、活動と目標がパリ協定に準拠していることを確認することができる。

カーボンニュートラルへの関心と活動が活発化する中、企業の自発的な基準によるデータを客観的に評価する必要性が高まっている。

同社が拠点にしているオーストラリアでは、12月に企業や金融機関に対してオーストラリア証券投資委員会(ASIC)、オーストラリアプルデンシャル規制機関(APRA)などが気候変動リスク開示の枠組みを設けて、報告ルールを義務付ける予定になっている。これらの動きは先進各国で進んでいるのだが、特にこのような情報管理に弱い中小企業をポートフォリオ企業として抱える金融機関では正確な情報把握に課題を持っていた。

TechCrunchによると、同社の競合にはS&PやMSCIなどがいるが、入手が難しい民間企業の炭素排出量のデータを入手するという点で差別化を図っている。民間企業が専門のコンサルタントを雇わずとも、Pathzero Navigator一つで安価にルールに準拠していることを確認して開示できるメリットは大きいとされる。

同社は現在Pathzero Navigatorを通じて1億4,200万トンの炭素排出量を管理しているそうだ。今後、取扱量を10億トンに増やすことを目標とし、金融機関がポートフォリオ企業と協力して排出量を削減できるようにする炭素情報ネットワークを作成していくという

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