CO₂から有機化合物を作り出す夢のような技術「Twelve」

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Image credit:Twelve

Climate Tech(気候変動関連テクノロジー)スタートアップをご紹介するシリーズ、前回につづいて今週ご紹介する2社目は「炭素変換」技術を開発し、CO₂から新たなプロダクトを作り出しているTwelveをご紹介する。

同社はカリフォルニア州バークレーに本社を置き、現在までにシリーズBラウンドの資金調達を実施。調達総額は1億9940万ドルとなっており、投資家にはチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブも含まれている。

同社の特徴は脱炭素化の話題でよく扱われる炭素回収ではなく、CO₂から新たな価値を生み出す炭素変換に取り組んでいる点だ。

炭素回収では大気中や産業廃棄物から排出される希薄なCO₂を圧縮して回収し、そのCO₂を上の層がCO₂を通さない、貯留できる地層に貯留する。苫小牧で2016年から3年に渡って苫小牧で行われたCarbon dioxide Capture and Storage(CSS)の実証実験では、海底下深度1,000~1,200m、2,400~3,000mに約30万トンのCO₂が貯留されたが、その危険性は報告されていない。ただ、これは工場などから大気中への排出をなくすものではあるが、CO₂から価値を生み出すものではない。

同社が取り組む炭素変換ではCO₂を圧縮ではない形で回収し、現在化石燃料から作られる材料や燃料に変換させることができるとするものだ。

具体的には特殊な電解槽を用いてCO₂、水、電気からCOと水素の混合ガスに変換し、得られたCOを原料としてウォッカやダイヤモンド、コンクリート、プラスチック、炭素繊維、燃料などに転換しようとしているのだ。

この産業光合成と呼べるようなCO₂変換技術は、2022年11月に早稲田大学でも発表があったように、まだまだ学術レベルで追及されるような技術である。COはこれまでも工業材料として還元剤や、ポリウレタンなど化学原料の製造などに用いられてきたが、同社が扱える製品は幅が広いのだそうだ。

というのも、同社はすでに製品としてPangaia Labと提携し、同社の「CO2Made」レンズを使用して作られたサングラスを販売している。このCO₂から作られた素材は、高性能ポリカーボネートと分子レベルでは同一であるため、品質のトレードオフはないという。

さらに、アラスカ航空やMicrosoftと連携して、同社が開発した低炭素ジェット燃料である「E-Jet」を燃料とした航空機のデモ飛行に向けた取り組みが進んでいる。持続可能な航空燃料(SAF)が商業的に実行可能なコストと規模で利用できるようにするために、次世代燃料のひとつとして注目されている。

もちろんそれだけでなく、The Guardianによると、Mercedes-Benzで車の内装の部品、Tide で洗濯用洗剤の成分などの研究も進んでいるという。もちろん価格などの点でまだまだ課題はあるだろうが、空気から有機化合物を作り出すという夢のような技術がどのような製品を作り出すのか楽しみにしたい。

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