コンセントの無い浴室に最適化、水力発電機内蔵のスマートシャワーヘッド「Reva」は節水6割を実現

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「Reva」
Image credit: Oasense

 <30日午前11時更新> 本稿初出時の「Reva」の写真は旧モデルだったため、一部写真を差し替えました。

地球が乾燥する中、流水でシャワーを浴びることはまもなく贅沢になる。スマートシャワーヘッドを製造する Oasense は、サステナビリティ、エコデザイン、スマートエネルギーが評価され、2022年の「CES Innovation Awards」を受賞した。簡単に言うと、シャワーを浴びながら節水できるようにしてくれるのだ。このスタートアップは、製品であるシャワーヘッド「Reva」が2022年の「TIME Best Inventions」の1つにも認定されている。

誕生と同時にネットで拡散したシャワーヘッド

度重なる渇水により、人々は一滴残らず水を節約するようになった。干ばつ監視サイト「The U.S. Drought Monitor」によると、11月末現在、全米の48%が干ばつに見舞われているという。Oasense の物語は、21世紀初頭の2014年、アメリカの干ばつが過去120年間で最も深刻なものの一つとされていた時期にまでさかのぼる。スタンフォード大学機械工学科の学生だった Evan Schneider 氏は、家族が水を節約して干ばつに対抗できるような取り組みをしていた。水源からの節水を目指し、Schneider 氏のもとにシャワーヘッドのアイデアがもたらされた。

当初、Oasense はTang 氏の自宅ガレージで手作業で製品を作っていた。
Image credit: Oasense

スマートシャワーヘッドのプロトタイプを発明した Schneider 氏は、次のように話した。

シャワーの時間の多くは、シャンプーや石鹸を泡立てるなど、流水を必要としないことに費やされていることに気づいた。

アメリカ環境保護庁によると、屋内の水使用量ではバスルームが最も多く、その中でもシャワーは約20%を占めている。

そこで、シャワーでの節水をより簡単に、より楽しくできるようにしようというのが、このアイデアだ。ユーザが一歩下がると、シャワーヘッドが自動的にシャワーの流量を少なくチューニングしてくれるのだ。そして、その思いはシンプルなコンセプトから、インテリジェントなデザインのイノベーションへと発展していく。

Schneider 氏がシャワーヘッドを動画でデビューさせ、シャワー中に水を節約するシャワーヘッドの仕組みを紹介したのは、2018年になってからだった。この動画は一夜にして拡散し、2週間で1,600万回の再生回数を記録した。

人々は注文の電話をかけ続けた。 Schneider 氏は、才能ある人たちとチームを組んで、この装置を製造することを決めた。そこで、Chih-Wei Tang(湯智為)氏と Ted Li 氏が参加することになった。

エースチームが実現した、タービンとセンサーで構成された高機能シャワーヘッド

Chih-Wei Tang(湯智為)氏 と Ted Li 氏は、数え切れないほどの日数、シャワールームで製品をテストした。
Image credit: Oasense

電気の通じた浴室設備は、確かに簡単には作れない。(Oasense 共同創業者兼 CEO Tang 氏)

水と霧の多い環境では、安全性と効率性の両方を特徴とする機器には、最先端の技術が必要だ。シャワーヘッドに内蔵されるセンサーは、さまざまな人や長距離、水蒸気の多い環境に適応できる感度が必要だ。一方、シャワールームにはコンセントがないため、シャワーヘッドが自ら発電する必要がある。普通のシャワーヘッドでは対応できないので、一から作り上げた。

スタンフォード大学で Schneider 氏と同級生だった Tang 氏は、Ford のシリコンバレー研究所に勤務していた。ハードウェアエンジニア、テクニカルリード、プロダクトマネージャーと、さまざまな役割を担い、製品設計や製品戦略などの経験を積んできた。当初、Tang 氏は Schneider 氏のために中国のメーカーとコンタクトを取った。その結果、製品アーキテクチャの根本的な転換や高品質な部品が必要であることがわかった。巨大企業で働いた後、Tang 氏は自分で挑戦することを望んだ。そして2018年、彼は Schneider 氏からの招待を受け、Oasense の製品設計に着手した。

さらに Tang 氏は、元 Apple のエンジニアリング・プログラム・マネージャーでセンサーの専門家である Li 氏をチームに迎え入れた。Li 氏は南カリフォルニア大学を卒業後、イメージセンサーのスタートアップ InVisage Technologies に勤務しており、同社は後に Apple に買収された。5年以上にわたってセンサー開発に携わり、小さな研究室が100人規模のスタートアップに成長するのを目の当たりにした。

その後、Apple に入社し、ベンダー管理やセンサー技術開発を担当した。2年も経たないうちに、スタートアップの雰囲気やワークフローが恋しくなり、世の中にもっとインパクトを与えられるようなものを作りたいと思うようになった Li 氏。現在、Li 氏は Oasense の共同創業者兼 COO として働いている。

3人のエリートが手を組み、マイクロタービン発電機、高出力バッテリーパック、先進的なセンサー群、マイクロプロセッサー、自動停止弁を備えたスマートなシャワーヘッドを誕生させたのだ。

誰もが使いやすく、必要とするシャワーヘッドを作りたかった。(Tang 氏)

シャワーヘッドは、使う人のシチュエーションを想定して、洗練されたデザインになっている。

シャワールームにはコンセントが無い

内蔵の水力タービンで発電し、センサーに電力を供給することで、節水と省エネを一挙に実現する。装置内部では、流水で発電してセンサーに電力を供給する。十分な電力を確保するために、Oasense のチームは同サイズのエンジンの発電効率を10倍に向上させた。

身長に関係なく使えるか?

Oasense は、カスタム赤外線センサー群を詰め込み、あらゆる条件下で検知できるよう補助センサーを搭載している。また、シャワーヘッドは、皆のシャワーの浴び方にインテリジェントに適応し、シャワーを浴びるたびに改善される。

Oasense の繊細なシャワーヘッド製品「Reva」は、2022年の「TIME Best Inventions」の一つに選ばれた。

Oasense 共同創業者の3人。シャワーヘッドのアイデアは Schneider 氏(中央)が考えた。
Image credit: Oasense

シャワーヘッドを手作業で組み立て、街頭で販売

ローマは一日にして成らず。Oasense がスマートシャワーヘッドを完成させるのに3年かかった。開発期間について、Tang 氏は「顧客だけでなく、ベンダーとの関係も重要だ」と話した。

Reva を出す前に、彼らはMVP(実現最小化製品)のプロトタイプをつくり、製品と市場の適合性を検証した。Tang 氏の自宅のガレージで組み立て、3階の浴室でテストした。「シャワーヘッドが破裂して、水が飛び散るのは50%の確率でしたね」と Tang 氏は笑った。しかし、だからこそ、その後、品質保証や細部の管理のために、サプライヤーと密接な関係を築いたのである。

いろいろと探した結果、主に台湾の業者と組むことになった。DIY International や Taiwan Excellence のレポートによると、台湾は「ハンドツール王国」と呼ばれ、ハードウェア産業は金額で2位、数量で3位、企業の70%近くが台湾の台中と彰化地域に集中しているそうだ。2人は台湾人であり、Li 氏はメーカー経営のノウハウを蓄積していることから、シリコンバレーと彰化から通い、協力の機会を探った。

極めて成熟した業界でプロダクト革新させるため、我々のマインドセットは他の人たちと違う。既製品のセンサーを探すのではなく、ゼロからシャワーヘッドを設計するんだ。(Li 氏)

シャワーヘッドにセンサーを埋め込んでカスタマイズしたのは Oasense が初めてで、そのアーキテクチャは根本的にユニークだ。センサーは乾燥した環境で製造する必要があるため、実際に水中でテストできる電子部品工場がほとんどないことが最初の難関だった。Oasense は、画期的なイノベーションを通じて、水回り設備業界をディスラプトする野望を持っている。

Chih-Wei Tang(湯智為)氏 と Ted Li 氏
Image credit: Oasense

顧客こそが、ディスラプションのカギだ。(Tang 氏)

厳選された業者との取引に加え、Oasense が最も大切にしているのは顧客である。街へ出て人々に意見を求め、配管工などあらゆる職種の人に製品を販売した。自分たちで電話をかけて意見を聞き、シャワーを浴びているときの音声を録音して、客の行動をより深く理解することもあった。

製品を100%最適化するためだけに、何千何百というテストが採用された。Oasense の調査によると、このスマートシャワーヘッドは、シャワーを浴びるたびに水とエネルギーを60%節約でき、干ばつ地帯ではシャワーヘッド1個あたり100米ドル以上の水道代が節約できたという。

さらにネットワークを構築するために、チームはスタンドフォード大学と提携しているシリアルアントレプレナーのコミュニティ「StartX」に参加した。StartX には、1,800人以上の起業家、業界の専門家、スタンフォード大学の教授、そして700社以上の資金を持つグロースステージのスタートアップが参加している。Oasense は、製品に関する議論に積極的に参加し、ネットワークを構築してきた。

StartX は、特にチームの極端な困難に対する耐性を評価する。最も落ち込んだ日々に生き残るチームを選ぼうとしている。(Li 氏)

Oasense は、ガレージで手作業で人気製品を育てた経験を持っている。

Oasense Reva は、Consumer Electronic Show(CES)の2022年 Innovation Awards、Red Dot design Award 2022、Red Dot Innovative Product 2022、Fast Company World Changing Ideas Award を受賞している。より環境に優しくスマートなライフスタイルに貢献するインテリジェントなシャワーヘッドが、各家庭に到着する準備が整った。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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