ベンチャーキャピタルが提供する多様なサービスはやり過ぎか? あるシリコンバレーVCの試み

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Rebecca Buckman氏はシリコンバレー、ボストン、イスラエルにオフィスを持つ国際投資ファームBattery Venturesのコンテンツ部門の副社長である。以前は Wall Street Journalでレポーター 、Forbesで編集者として働いていた。

via Flickr by A Health Blog Licensed under CC BY-SA 2.0.
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今月初めVentureBeat上で、あるヨーロッパのベンチャー投資家が、アメリカのベンチャーキャピタル(VC)何社かが「ポートフォリオサービスプラットフォーム」を過剰に宣伝していると非難した

そのプラットフォームは、恐らく旧来の会社の確立方法を失くすことを目的としている。そのベンチャー投資家は「一般的なサポートサービスの提供」を後押しする投資家を嘲笑し、こうしたサービスに対して起業家は懐疑的になるべきだと警告した。つまり、設立まもない会社が成長するためにこうしたサービスは必要ないと言わんとしている。

これは、現在「ベンチャーキャピタルサービス」について議論が交わされている最新の話題である。今月のNew Yorkerに掲載されていたMarc Andreessen氏の長々としたプロフィールを見ると、高い信頼を得ている彼のVCが提供するサービスについて書かれており、その内容は人材支援からマーケティングまで多岐にわたる。

一方で、フォーブス誌の今年のミダスリストには、ベンチマークキャピタルの調査リストが掲載されている。Andreessen氏の会社は、特別に事業開発の専門家がいるわけでもないし、サイト上のコンテンツはほとんどない。(Andreessen Horowitzのホームページはブログだ。)

しかし、2年ほど大手の国際的ベンチャーキャピタルでマーケティング部門を担当した経験に基づいて思うに、私の勤め先を含めて多くのVCがその中間点に位置していることは明らかだ。長らく業界にいるVCの多くは実際、人材や顧客の紹介代理店となるほどまで自らの存在を拡大させていない。

とはいえ、VCの多くは個別にアレンジをしたスマートなサービスを提供し、提携先を通じて出資先の企業の経営に深く関わり支援することは起業家が会社を立ち上げる上で役に立ち、起業家に事業の軸となる機能をアウトソースするように指示するよりも良いと実感している。

私が2013年に会社に加わった後、私たちはCEO達に関する調査を依頼した(元ジャーナリストとして、どんなネタか理解する前にレポートをした方が良いと思った)。調査目的は、投資先の幹部が私たちの会社のことを、特にブランド面でどう考えているか知ることだった。同時に、私たちに期待するサービスがあるとすれば、それがどんなサービスかを確認することも目的だった。

二つ目の目的に関する回答は衝撃的なものだった。CEO達へのインタビューを通じ、彼らがより多くのサービスを期待しているということが明確になった。最も期待されているのは、人材雇用と顧客紹介だった。また、かなりの割合で回答者は戦略実行、組織戦略、CEOのコーチング、そして私たちの投資先間でのネットワーキングといった面で私たちに期待していることが分かった。

何十年も事業を営んでいるVCの多くと同様、当社はこうした役割の大部分を投資チームに任せてきた。だが、投資先の個別のニーズに応え、改善していく余地は常にある。たとえば、当社では投資先企業のための社内リクルーターを長年にわたり置いている。また、あまり提供してこなかったサービスに関しても強化した。多くの投資先企業のコンサルティングにあたっているマーケティング担当役員のように。さらに、時機に応じてハイテクメーカーや生産技術企業での経験のある「客員経営者(EIR)」も置き、時にはこうしたEIRに新会社の経営を頼むこともある。

また、私が着任して約6か月経って、私たちはNetflixよりグローバルクラウドコンピューティングの専門家を雇い、「テクノロジーフェロー」として、投資先企業がITインフラを設計するための相談役になってもらった。この雇用に踏み切ったのはチームメンバーの1人のコネがあったこと、そして当時投資先企業で確かなニーズがあることを確認したためだ。

私が言いたいのは、私たちは特定の企業と投資スタイルに合ったサービスを既に提供し、現在も続けているということだ。私たちは八方美人になろうとしているのではない。投資先企業に真の価値をもたらすことのできる賭けをしようというのだ。

そうした考えに基づいて、我々は2年前にCEO調査を行ったのち、慌てて新しい技術求人担当者を10人雇ったとか、事業開発のやり手軍団を雇うようなことはしなかった。代わりに、既にチームに属していたスタッフの多くを活用して、多数のイベントやプログラムを新しく立ち上げた。たとえば、CEOや営業責任者向けの数日にわたるハイレベルの営業サミットなどだ。

4月には、我が社の新しいジェネラルパートナーがデータサイエンティストのパネルディスカッションを企画し、投資先企業のデータの専門家と意見交換の場を設けた。社内で「カスタマーサクセス」エグゼクティブ向けのディナーパーティのスポンサーをしたり、株式未公開の投資先企業CEO向けにオンラインのネットワークサイトの立ち上げも行った。投資業務の全スタッフは、新たなマーケティングスタッフの協力の元に、ミーティングやイベントの企画を増やし、CIO、CTOそしてCMO候補を投資先企業に紹介してきた。

また、PR企業を雇って、新しくブログも立ち上げた。その主な目的は起業まもない投資先企業の支援であり、私たちへの支援ではないが。

これらの活動はみなコアの投資チームと密接に連携し一本筋が通っているのである。当社のジェネラルパートナーはこれらイベントのほぼ全てに出席し、イベントを有意義なものにするだけでなくフォローアップにも参画している。最近はこうした様々な活動が増えているものの、VCのサービスに対して向けられる批判のように、主要のミッションを超えてまでサービスを提供しているとは感じていない。

私たちは「マーケティング」とカテゴライズされるであろうこうした労力に対するROIをまだ測っている最中だ。しかし、これまで得て来たフィードバックには満足している。投資先企業のCEO達は、グループイベントでの優秀な営業コンサルタントと接触できることを純粋に喜んでいる。

彼らの多くはそうしたコンサルタントを金銭的に雇えないだろう。私たちが開催したマッチメーキングイベントや投資先企業のCEOが参加できるように取り計らった投資銀行のカンファレンスをきっかけに新規受注につながった事例もある。時には他社のCEOとの食事を楽しんでいるだけだったりもするが。私たちはただ、やるべきことをやっているだけなのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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