シードラウンドの「追加拡張投資」が、資金調達の新常識になりつつある理由

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Micah Rosenbloom 氏は Founder Collective のマネジングパートナーである。Founder Collective はケンブリッジとニューヨークに拠点を置くアーリーテージのVCで、これまでに150の企業に投資を行ってきた。その中にはUberやBuzzfeed、HotelTonightが含まれる。@MicahJay1で彼をフォローしよう。

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長い間、スタートアップの世界は「シリーズAクランチ」によって運が尽きるだろうと信じられてきた。「シリーズAクランチ」とは、シード資金調達の増加に伴い、シリーズA獲得に必要な条件がますます高くなるという当然の結果のことである。

業界観察者は、企業がどんどん失敗に終わり並外れて悲惨な状況になるだろうと信じていた。しかし、市場はこの問題を解決すべく新しいものを作り出した。シードエクステンション(追加拡張投資)だ。

シードエクステンションは典型的なシードとは違う。これらは、単にインサイダーが企業に追加の資本を投入するという典型的なエクステンションとは違い、新しい参加者を有する傾向がある。中にはかなり大きなものもある。

例えば200万から300万米ドルなど、当初のラウンドよりも多い額になることもよくある。評価額は横ばい、もしくはやや横ばいになる傾向がある。「エクステンション」には近年多くの定義があり、多くの名前が付けられている(「シード2」、「シードプライム」、「シードツーA」)。

後の段階でどんどん高くなる評価額や一見したところ無数にありそうなベンチャー資金にも関わらず、ますます多くの企業がエクステンションを行っている。

なぜ設立者は頼みの綱が必要なのか?

この新しい資金調達ラウンドの出現は、二つの現象の結果である。第一は、資金調達のアーリーステージ・シードセクター数の純然たる増加がある。

Founder Collectiveが2009年に始まった頃、機関投資家のシードファンドはわずかしかなかった。今日では何百とある。その結果、評価額が500万から1200万米ドルの範囲にあるスタートアップを追いまわすアーリーステージ資金がたくさんある。

第二に、典型的なシリーズAおよびBを提供する機関は大きくなりつつあり、その多くは10億米ドル規模の資金を保有している。ユニコーン・ハンティング(もしくは場合によっては、『プリユニコーン』ハンティング)は、LPコミュニティにおいて彼らの評判を保つ上で極めて重要になった。

それゆえに、こうした資金の多くは、爆発的な成長を証明する企業に対しては巨額のプレミアムを支払うのに前向きであるが、前途有望で資金を調達したもののプロダクトマーケットフィットを成功させていない企業と関係するリスクを負うことには乗り気でないようだ。ある意味で、今日の市場にはちょっとしたバーベルがある

投資家たちにとって非常に難しいのは、超アーリー企業に投資することである。それは、実際の、しかも加速する指標がある企業と比べた場合、超アーリー企業には重大な欠点があるためだ。

「アーリーA」の取引を持ち込むパートナーは、500万米ドルの売上げレベルを持つ成熟した企業を持ち込むパートナーのように、論理的に自分の言い分を主張する必要がある。こうしたVCにとって、時間は資本より大きな障害である。

シードエクステンションは新種のシリーズAなのか?

他の問題は、Bill Gurley氏のバーンレートについての警告にも関わらず、ほとんどのシード企業は実際、そんなに多くの資金を消費してはいない。今日、多くのことが少数のチームでしかも1ヶ月当たり5万米ドルで行える。

だから、「シード」ラウンドで100万米ドル以下を資金調達した企業の多くが、200万から300万米ドル規模の「典型的な」シードラウンド(これが今や典型的なシードだと考えられているとは驚きだ、いずれにせよ…)に戻ってくるのを多々目にする。

こうしたケースの多くでは、設立者は、自分たちが約束した指標に到達するために十分な資金をそもそも調達していない。製品開発は、予想された期間の2倍かかることは珍しくなく、しかも多くのアーリーステージ企業は、Aラウンドに先立ち、期待することを達成できるほどの元手を単に持っていなかった。

しかし、結局、起業家は利益を得る。なぜなら、初回のシードから次のシードにかけて、評価額が大きく進歩するからだ。

これはまた多少の意味の変化でもある。シードファンディングの定義は比較的一定してきた。Aラウンドは、製品の基本を考え出したもののマネタイゼーションに多少の課題があった企業、あるいはその逆のパターンの企業にあてがわれるものだった。今日、Aラウンドは、初期のグロース期のための資金になりつつある。

この現象は、マーケットが成長し、ますます競争が激しくなっていることの表れにすぎないと私は思っている。スタートアップが調達する資金は、シード投資以前に受けるプレシード資金、その後に追加で受けるフォローオン資金、そしてシードA資金といくつかに細分化された。

しかし、結局最後には資金調達のさらなるオプションが用意されているので、起業家にとっては非常に有難いことだ。シード期間が延びることであまり良いイメージはないが、瞬く間に新たなスタンダードとして定着し始めているので、時間と共に偏見も消えていくだろうと考えている。

このメカニズムが初期段階の資金提供に組み込まれたことで、実際200社以上の企業に対して資金提供を行った弊社は、「シード期間を延ばすかシリーズAを目指すべきか」迷い始めた企業に対して次のように指導している。

いくつかのシリーズAファンドを見てみること。

多く過ぎる必要はないが、数個のデータポイントを得ること。マーケットの動向を調査する上で有効である。また、既に会社のことを知っていて以前興味を示した友好的な投資家の見極めに努めること。その内の5~6人に会ったり連絡をとれば、シリーズAの段階を目指すにはまだ早すぎるのか、それとも今目指すべきかがはっきりする。

もし、反応が一致していれば、果たしてシードラウンドを終わせるすためにいくつものピッチを行べきか、それともシード投資家のコミュニティに戻ってすぐにクローズするべきか、その企業と一緒に判断するようにしている。たまに、シリーズA/Bの投資家たちが延長になったシードラウンドの参加に関心を示していることさえある(しかしシグナリング効果をもたらすリスクがあるが)。

現存の投資家を巻き込み、楽しませること。

常に私が耳にする他のアドバイスで弊社が思い止めておくことは、現存の投資家を常に巻き込み、楽しみを与えるということである。月々のメール、電話、コーヒー片手に話す時間は当然のことだと思われ過ぎている。確かに起業家とは忙しいものだ。しかし、もし何も報告を受けないと、投資家は会社がどうなっているのか不安に思い始める。

シードエクステンションの場合, 断固として勢いを持続しなければならず、特にシリーズA 市場がマイナスの兆候を見せる時がそうである。取引において共同出資者同士がわかち合える顧客のエピソード、説得力のある統計など、小さなことでも勢いを持続するのに役立つ。

インサイダーの本心を確認すること。

会社がシードエクステンションに向かっている様子で、キャッシュアウトするまで最低6ヶ月はある状態ならば、現在いる投資家の本心を探り始めることは賢明だ。誰がいくらそのエクステンションの小切手を書くのか? 自動的にエクステンションを得られる資金もあれば、調達された総額の比例配分を行うものもあるし、値を付けるインサイダーもいれば、そうでないインサイダーもいる。

どんな状況下でもエクステンションは行わないと言う投資家を何人か見たことがあるが、それは率直に言ってサポート精神に欠けていると思う。しかし、起業家にとって重要なのは、彼らがインサイダーからいくらもらえるのかを早期に知ることだ。

インサイダーは互いのことをすでに知っているので、慎重にインサイダーを扱うことは重要であり、さらにインサイダーからの警告は、広範な資金調達のコミュニティにとって大いに意味のあるものになる。

既存の投資家を正しく管理する企業であれば、事実上すべての投資家が二度目の小切手も提供してくれるだろう。多くの資金はすでに資本を割り当ててあるが、そうでない場合は、シリーズAフォローオンからあてがわれることになる。ほとんどの投資家は、企業を支援したいと思っている。

私も、少し消極的気味だったインサイダーたち(ほとんどは非主導的な投資家)が進んで、自らがエクステンションを主導すると言うのを見かけることが増えてきている。これこそが大きな影響力を持ち、そして大きな投資家も小さな投資家も同様に、すべての関係を暖め続ける理由でもある。

常に資金調達していること。

目と耳を開き続けていること。私が投資したある会社は、シード資金エクステンションを考えていた。彼らが条件について話し合っていると、投資家の1人がAについて電話で尋ねてきた。その会社のチームはより早く仕事に戻るために、結局この投資家からより少ない額の資金を受け取ることに決めた。

シリーズAに必要なメトリクスに関しては現実的であること。

B2Bの企業は、実際の収益および試験的段階以上に進展した複数の名の通ったパートナーを示す必要がある。投資家は一つ一つ問題を検討していく。投資家があなたの顧客と共に真のデューデリジェンスを行うと覚悟しておくこと。製品を使用している熱心な支持者がいないのなら、失望に備えて心構えをしておくことだ。

消費者重視の会社は、十分な進捗を実現している必要がある。ある程度時代の流れに乗っている必要がある。Instagramでなくてもいいが、何かを持っている必要がある。もしもVC(もしくは彼らの配偶者、子供、仲間)があなたの会社を聞いたことがなければ厳しい道のりになるだろう。

どちらの場合でもシリーズAの投資家はあなたが既にチームを雇ったか知りたがるだろう。もし大企業で大きな利益を出している仕事をしている優秀な人材を引き抜くことができなければ、チャンスは減少するだろう。

最後に

投資家とシードエクステンションについて意見を交わすべき時だと思うなら、必ず下調べを怠らないようにすること。シードエクステンションを請うことは、これまで市場での挑戦を低く見積もってきたということ、より厳しいシリーズAの情勢の中ではさらに時間が必要だということ、またはそのどちらをも意味する。

いずれにせよ、必ず新しい計画において、通常のシリーズAに必要となる指標到達が実現することを確認すること。シードエクステンションは、学期末レポートの提出の延長を教授にお願いするようなものだと考えること。

説得力のある理由でうまく計らえる学生であれば、一度チャンスを与えられるかもしれない。だが二度のチャンスを得ることはまれだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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