大企業側の担当者を理解せよーーロケーションバリュー砂川氏が語る「事業提携」の戦術

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2013.1.29

大企業との事業提携は、スタートアップが独立した「企業」として認められるひとつのステップといえるだろう。そして当然ながらそのハードルは高い。

その点で今回、MOVIDA SCHOOLで語られたロケーションバリュー代表取締役社長、砂川大氏の経験は具体的で示唆に富むものだった。

三菱商事で海外向けの鉄道案件を担当。その後、HBS留学時にマッキンゼー・アンド・カンパニーとUBS証券でのインターン経て、ベンチャーキャピタルであるGlobespan Capital Partnersに入社。2004年には同社の日本代表も務め、2005年にロケーションバリューを創業。おてつだいネットワークスをスタートさせる。

2009年に開始した位置情報サービス「イマナラ!」ではドコモへの売却を成功させるなど、大企業と少数精鋭、日本と海外、投資する側、受ける側と様々なスタンスを経験してきた人物だ。

事業提携に必要なポイントはどこにあるのか。砂川氏がMOVIDA SCHOOLで語った内容をまとめた。

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事業提携とは何か

契約書のないコラボレーションみたいなものから契約書を結んでアライアンスとするもの、自分の会社に資本注入するわけではないが、協業するジョイントベンチャーのような形態、資本提携でも部分か全部かでも違う。特に部分的な資本注入はその割合によってお互いの責任範囲が違ってくる。

「同床異夢」という言葉があるように大企業と小さな会社では成功の尺度が違うが、自分たちが儲かればあなたたちも儲かる、というのが提携の本質。

どいういう形で提携したいかを決める

(株式の)100%買収が一番ハードルが高い。この辺りを狙っていくんだというのを決めたら曲げないことが大切。可能性のある企業のリストアップと順位付けをして選択肢を持つべき。相手が大きいと勝手に可能性がないと思うかもしれないが、チャンスはあるかもしれない。

また買収されることを視野に入れて起業する人は少ないのかもしれないが、自分が作ったサービスが世の中で長く続くことを求めるのであればオペレーターは別の事業者でもいいはずだ。

どの分野で提携するか、それは現実的なのか

共同販売やマーケティング、開発などどの分野で提携するかを考える。例えば共同販売の提携をしたとする。内部の営業マンに自社商品のインセンティブ設計がされている場合、新しい商品を提供してもそれを売るメリットがあまりない。

こちらは上層部と話し合いをしているのに結果として現場が動かないことになる。その提携が現実的なのかどうか実態をよくチェックすべき。販売の提携だったら営業トップと話をすれば雰囲気がわかる。

提携先に求めるタイプは二つ

スタートアップに求められる要素は、技術か自分たちがアクセスできない顧客を持っているかのどちらかだ。自分たちのレイヤーはどこにあるのか、提携先にどういうメリットがあるのか、それを整理しておく。

最悪、両方なくてもスピードはあるかもしれないが「スピードのみ」は下請けみたいな状況になるのでお勧めはしない。

提携における垂直関係と水平関係を理解する

垂直とは顧客との、水平とは競合との関係のこと。垂直ではお客とどう組むかを考えて、水平では競合とどう補完するかを考える。事業にどのようなドライブをかけて、どういう立ち位置で仕事をしたいかによる。自分たちは競合と組むということをやってきた。

また業績のいい会社と悪い会社という視点もある。相手の業績がよければ「やっちゃおうよ」となるし、業績の悪い会社でもアセットがある場合は危機感がある分ドライブがかかることもある。

提携相手のメリットを考える

大企業は提携について消極的理由である場合が多い。例えば素材の共同購入はコストの削減だったりする。ベンチャーが関わる場合は事業展開のスピードによるところが大きい。相手のメリットが大切。

対等じゃないところから話が始まるのでボタンの掛け違いが起こりやすい。だからこそ違いを理解する。成功の定義や時間的余裕が全く違う。1000万円売り上げれば自分たちにとっては大きくても、大企業側にしてみれば僅か。コスト削減メリットだったらどれぐらいできるのか説明できなければならない。

行き当たりばったりの提携はダメ

起業時のロードマップに大手企業との提携を入れている人はいいけど、行き当たりばったりの企業提携はやめたほうがいい。自身の経験から振り返って、7割近い提携案件は実際に動いていない。そうなると費やした時間が全て無駄になる。こういう提携は社長が出ていくことが多く、本業そっちのけで無駄にした時間は致命傷になるから、時間があるなら足下を固めるべきだ。

無理のある提携は避ける

目的が実現できる相手なのか、フィットする相手なのか。もちろん実現できてフィットする相手というのがベスト。問題なのは実現ができるけどフィットしない、フィットするけど実現できない、というパターンで無理に「合わせよう」とした場合だ。提携の評価に「△」をつけて何とかしようと思いがちだが、これはやめておくべき。労力の無駄。

事業提携はいつするべきか

やりたいときかと言われればそうではない。技術を売りにしている会社であれば試験的に使っている企業が数社で実績が出始めの頃、サービス提供している会社であれば単月での黒字化を果たした頃がいいだろう。

自分たちならではのポイントを作る

資本提携は主に事業関係を司る部署からメリットを確認された上でなければGOは出ない。資本だけ出してくれる例もなくはないが、資本政策上よろしくない。期待値が高いと自社でやろうということになるし、低ければそもそもやらないだろう。このバランスが難しい。「あなたがやらないとできない」というポイントを作っておくべき。

大企業側の担当者を理解する

担当してもらう人を選ぶことも大切。自分と「ウマが合う」とかやる気があるかとか。権力や人望なども大切。「僕の頼みだからやってください」で会社の人を動かしてしまう担当者もいる。また担当者のインセンティブは明確にすべき。その人が共同事業をやることで会社内での昇進や結果に結びつくようなモチベーションの設計が重要。余分な物は売らないのだ。

また先方の意志決定プロセスを理解することも重要だ。大企業であれば最終決裁まで9プロセスなんていうのもあった。そのための根回しを毎週やって正規ルートで攻めても時間がかかりすぎる。どうやってそのプロセスを飛ばせるかも考える。これは相手の担当者に聞くのが一番。最短でどれぐらいの時間がかかるのか、そういう情報を獲得しておく。

あと、人事異動は注意が必要。肩書きではなく、キーパーソンが誰なのかを把握する。上司よりも現場の方が判断をしている場合があるからだ。

NOと判断されないように

出会い方って大切。誰のツテで来たのかでハードルが下がることもある。こういう場合にはメンターに活躍してもらうのもよい方法だ。提案時に相手が素人であることを理解したほうがいい。ポイントは評価する軸も一緒に提案してこっちの土俵に乗せてしまうことだ。成功確率は高くなるし、さらに担当者がその上の人間を説得する時の材料にもなる。

どれだけ信頼していてもNDAは結ぶ

全くそのまま持っていかれる、ということもある。友人だからと信頼していてもこういうことは起こってしまう。持っているデータはそれ以外の用途には使わない、という約束は必ず結ばなければならない。

対等の立場であることを強調する

どうしても大企業からみるとベンチャーは下請けにみえる。だから契約書にそういうことを書いてしまう。下請けなのか、対等なのかを契約書に盛り込んでおかないと、トラブルが起こったときに一方的な話になることもある。

先方の都合に左右されないように

なるべく早く提携してしまおう。人事異動が4月と10月に多いのだが、このタイミングで人が変わり全てがなくなることもある。契約を細かく三段階ほどに分けるのもいい。大事なことは契約書に書くこと。担当者が変われば口約束は破棄されてしまう。

それとプレスリリースを使って既成事実化することもいい方法だ。社内でも知らない人がいる場合、外部メディアを使ってその事実を知らしめることでうやむやにされないようにできる。

決裂もできるようにしておく

提携後の一件目、二件目の実績は自分たちで作る。この提携のお陰ですというアピールでドライブがかかることがある。前例主義が強い日本では実績がなによりも大切になる。なのでコミットメントを表明し合うことが大切。いつまでに何をするのか、ということを決めて契約書に盛り込んでおく。

ただし、当初の目的が達成されない場合、勇気を持って決裂することも大切。途中でもこれは違うなと思ったらやめる。契約書にもそういう条項を入れておく。

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