シード・アクセラレーターのMOVIDA JAPANが体制を一新、嶋根氏が育成事業のトップに

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国内シード・アクセラレーターのMOVIDA JAPAN(以下、MOVIDA)が体制を一新した。代表取締役はこれまで通り孫泰蔵氏が務めるが、実質的な運営上のトップだった伊藤健吾氏はチーフアクセラレーターという役職を離れ、同アクセラレータープログラムに参加するスタートアップを中心に投資をしてきたシードファンド「Genuine Startups」の運営に集中する。

伊藤氏に代わり、MOVIDAのシードアクセラレーションプログラムを牽引するのが嶋根秀幸氏だ。まだ役職名は決まっていないが、実務上のトップに就くことになると本誌の取材に伊藤、嶋根の両氏が答えてくれた。

また、これに伴い、MOVIDAではこれまでのシード投資の条件を変更し、必須となっていた出資の受け入れは任意に変更となった。また、これまで6カ月間だった育成期間は4カ月に短縮され、募集時期については随時発表するとしている。

「育成」と「投資」役割分担を明確化

ではまずトップ交代の理由から始めよう。両氏への取材で最も強調されていたのは役割の明確化だ。MOVIDA JAPANはいわゆるシードアクセラレーターという「育成プログラム」と数百万円規模の「シード投資」の二つの機能を備えていた。

開始当初、このシード投資の資金はMOVIDAグループのプリンシパル投資によってまかなわれていたが、2013年に設立されたファンド「Genuine Startups Fund(GPは伊藤健吾氏)」に既存投資先も含めて移管されていた。このタイミングで投資と育成を明示的に分けるはずだったが、両方の実務的な責任者を伊藤氏が兼任してしまったことで、その分離が上手くいかない状況だったという。

プログラムを進める中、より質の高いスタートアップを多く育成するため、2013年にStartup DOJO(渋谷のシェアオフィススペース)を作って一緒に育成を進めた。結果として4期生から数も質もよくなった。一方で投資先が50社を超えた頃から、事業開発支援や次の資金調達などのフォローアップに十分に時間をかけられなくなりつつあるのも事実だった(伊藤氏)。

この状態を改善するため、プログラムの中身を実質的に作っていた嶋根氏をMOVIDA JAPANの実務トップにし、伊藤氏は50社の投資先を抱えるGenuine Startupsに集中することになった、という具合だ。

さて、次の大きな変更点である出資受け入れ条件について詳しく説明しよう。これまでMOVIDAでは育成プログラムを受けられる代わりに、シード投資を受け入れる必要があった。条件には一定の幅があったようだが、通常は500万円のコンパーチブルノート(5000万円のバリューキャップ付き)が存在していた。

しかし今回、育成と投資を明確に分けたことで、MOVIDAとGenuine Startupsの一体投資はなくなり、採択されたスタートアップは純粋に育成プログラムだけを受けることができる。

Genuine Startupsが「囲ってきた」という誤解を解くためです。例えばトランスリミットはSkyland Venturesとの同時出資でした。これと同じように他のシード投資機関と連携をとっていくつもりです(嶋根氏)。

<参考記事> トランスリミットがGenuine StartupsとSkyland Venturesから1,000万円を調達、対戦型クイズアプリ「BrainWars」をローンチへ

変わるアクセラレーターのビジネスモデル

ここでまたひとつ疑問が出てくる。運営だ。

通常、シードアクセラレーターは少額投資を実施することで、そのキャピタルゲインやファンドの管理報酬で運営を賄うとされてきた。私も過去、伊藤氏にインタビューで極めて難しいシード投資という事業でしっかりとした運営基盤を作れるのか、という疑問を投げかけたことがある。しかし今回、MOVIDAではそのファンド自体も切り離されて、唯一とされてきた収益源がなくなることになる。採択企業にとっては自由が増えるが、MOVIDA側は別のものを探さなければならない。

その答えはちょっと変わったところにあった。企業に対するシードアクセラレーションプログラムの提供、というビジネスモデルだ。嶋根氏はヤフーとの連動事業についてこう語る。

(事業を運営する収益として)最も大きいのは事業会社の社内インキュベーション支援ですね。米TechStarsが他の企業にプログラムを提供していますが、そのモデルに似ています。昨年7月に、ヤフーと共同で実施した企業内起業家育成制度「スター育成プログラム」は結果も出ていて、もうすぐ具体的な結果が発表されるはずです(嶋根氏)。

嶋根氏によると、このプログラム提供はヤフー以外にも引き合いがあるということだった。また、現在実施している起業家向けの招待制スクールは、完全にオープン化し、幅広く参加者を募ることになるそうだ。

コンテンツも幅広くします。これまでのような講義形式からワークショップ、ハッカソンなど、毎週水曜日の「ノー残業デー」に合わせて19時から開始する予定です。企業に勤めながら、スタートアップを志す人たちの場所になればと考えています(嶋根)。

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