
バイクシェアリングは多くの企業と投資家の参入とともに野火のように拡大している。TechNode(動点科技) はすでに、シェアされる自転車サービスをユーザ目線から取り上げてきたが、これは一方向だけからの見方ともいえる。企業はユーザ体験だけでなく、ビジネスモデルによっても自社の差別化を図っているからだ。
TechNode は Mobike(摩拜単車)設立者で CTO の Joe Xia(夏一平)氏にインタビューし、バイクシェアビジネスに対する考えを聞いた。
Mobike は Airbnb や Uber と並んで、シェアリングエコノミーの一員であるとしています。しかし、貴社はユーザの自転車をシェアしているわけではなく、代わりに自社で自転車を製造しています。むしろ B2C レンタルサービスに近いという声に対して、どうお答えになりますか?
Mobike は確かにシェアリングエコノミーの一員です。第一に、シェアリングエコノミーのコンセプトについて考え直す必要があると思います。誰かが自分の所有物を他人に貸すことだけをシェアリングエコノミーのコンセプトだと考えるなら、それは狭すぎです。
私の考えでは、1つの資産を2人以上でシェアするのであればどんな形であれ、シェアリングエコノミーです。このモデルは、資産に対する個人の所有権より「ユーザーシップ(使用権)」に重きを置きます。大局的には、資源の無駄を減らし、利用効率を上げるものです。
Mobike の自転車は当社の工場で製造していますが、すべての自転車が多くの人にシェアされており、いつでもどこでも使いたいときに利用できます。Mobike のプラットフォームがあれば、人々は自分の自転車を買うためにお金を無駄遣いせずに済むのです。

でも、ホテル業界は同じ構造ではありませんか?
ホテルとは全く異なります。シェアリングエコノミーのカギとなるのは、ある資産の所有権をなくし、複数の人に使用権を広げることです。これに対して、ホテルは高価な利用料にもかかわらず資産の所有権を保持しており、部屋が複数人にシェアされることはありません。使われていない時間が無駄となることは防げません。

Mobike を適切に定義するとしたらどうしましょう?自転車を製造するハードウェア企業なのか、ソフトウェア企業なのか、それともモバイルアプリに注力するプラットフォーム企業なのでしょうか?
一言でいえば、Mobike はテクノロジー企業です。テクノロジーが当社の中心であり、ハードウェア、ソフトウェア、プラットフォームをすべて包含します。

この9月に、中国のライドシェア大手 Didi Chuxing(滴滴出行)が Mobike の有力な競合 Ofo(共享単車)に「数千万米ドル」の投資をしたと発表がありました。一部には、今回の出資は、都市部の移動手段に関する「多面的なパートナーシップ」の現れだという声もあります。どう思われますか?
Mobike はこの出資がただの資金援助にとどまらないと思っています。これは投資家との戦略的な提携です。そういう意味からすると、Didi は Mobike にとっての最良の出資者ではありません。なぜなら、Mobike のビジネスモデルは Didi とは全く異なっているからです。
Didi はドライバーから利用者、つまり、人と人のモデルです。利用者は Didi アプリを使ってタクシードライバーまたは個人のドライバーを呼びます。別の言い方をすれば、Didi は車の所有者という一人の個人と、利用者というもう一人の個人とをつなぎます。
自転車と車の違いは別として、Mobike はどう違うのでしょうか?
Mobike は個人と個人のリンクではなく、自転車と多くの個人を結び付けますので、人とモノです。別の言い方をすれば、これは人々とひとつのモノをつなぐ、モノのインターネット(IoT)ビジネスです。

IoT プラットフォームとして、Mobike の強みは何だとお考えでしょうか。
第一に、Mobike のエコシステムにおいては「モノ」がモバイル(移動可能)です。家庭での IoT では、すべてにつながる「モノ」は移動できません。これは実際、接続することで得られるデータの量に膨大な違いをもたらします。一日中あちこち動き回って多数の異なる利用者に使われる自転車と比べると、ホーム IoT デバイスは比較的少量のデータを間欠的に収集することしかできません。
第二に、複数の個人とつながることができます。自動車の IoT と比べてみましょう。Mobike のプラットフォームでは自転車が多数の人にシェアされるのに対して、自動車の IoT では一つのクルマに一人の個人しかつなぐことができません。つまり、得られるデータは Mobike と比較して大きく制限されます。
Mobike はただの移動手段としての自転車ではないようですね。
そうです。それが、Mobike が自転車技術そのものに大きく投資している理由です。これは Mobike の追求する「人からモノ」へのモデルの中心軸なのです。
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