
我々は今後12カ月で、数十億人のモバイルメッセンジャー利用者が HTML5 とメッセンジャーボットを使ったゲームやアプリの重要なユーザーになると考えている。このプラットフォームは開発者やマーケティング担当者にとって、これまでで最も重要かつ収益性の高いものとなる可能性を秘めている。最初のFacebookキャンバスプラットフォームや、Apple や Google のモバイルアプリストアでさえも比較にならないくらい大きな可能性が、最初から手の届く範囲にあるのだ。
HTML5によってモバイルメッセンジャー最高のアプリが可能に
現在、メッセンジャーアプリは、次の3つの理由によって、アプリの拡散、配信、およびアプリとのマッチングが可能となっている。
- より高速で低コストのモバイルネットワークとハードウェア
- 高度なJavascript/ブラウザテクノロジ(webGLなど)を備えた、より高速なブラウザ
- すべてのモバイルブラウザで使えるワンクリック決済プラットフォーム(Google、Microsoft、MozillaブラウザでサポートされているApple Pay in SafariやW3C Standardなど)
HTML5 とオープンスタンダードの Web ベースのテクノロジにより、あらゆるメッセンジャーアプリやネイティブアプリ内で、豊富なモバイル体験をどのような携帯機器にも、アプリセンターでの管理を一切受けずに配信できる可能性がある。
開発者がリアルタイムのマルチプレイヤー体験を、あらゆるジャンル(例えば戦術ゲームやスペースシューティングゲーム )で即座に配信できるようになるというのはエキサイティングだ。これによって、(グループチャット環境で)友だち全員にアプリをインストールさせたり、ゲームロビーでお互いを見つけたりといった、五つ、六つあるいはそれ以上の数の手間を省くことができる。
HTML5:始めたときにはもう終わっていた?
2004年に、Apple、Mozilla、Opera の担当者らが次のオープンスタンダードの開発のために話し合った結果、それは HTML5 となった。 2008年、Ian Hickson氏が HTML5 の最初のバージョンを公開し、Firefoxブラウザが最初にこの技術を採用した。2010年、YouTube は HTML5 でのベータ版プレーヤーを開始し、Twitter、Pandora、Flickr、LinkedIn など、多くの企業がこれに続いた。 HTML5 の未来は明るいように見えた。
しかし、企業は、HTML5 で魅力的なアプリを開発することが難しいことにすぐに気づいた。 ネイティブツールよりも出力の応答が遅く質も低いため、開発に時間がかかり困難を極めた。 最も有名な話として、Mark Zuckerberg氏が HTML5 へ投資したことは Facebook の最大の間違いであったと認め、ネイティブアプリの開発をより簡単にすることに焦点を移した。最初の HTML5 の公開から4年が経過したにもかかわらず、簡単に作成できるクロスプラットフォームアプリの夢は実現していなかった。
インスタントアプリにはダウンロードの手間がない
HTML5 には課題があるが利点もある。 HTML5 は以下に挙げる特徴によって、全く新しい方法でモバイルプラットフォーム上のユーザに体験を提供し発見してもらうことができる。
- 企業が一度開発すればどこでも使える「アプリ」であること
- 第三者によるアプリセンター(Apple の App Store または Google Play など)に依存しないため、30%の手数料支払いもない
- 最大2週間を要することもあるアプリストアの審査に対して、リアルタイム配信では審査による遅れが一切ない
- その場で即座にプレイできるゲームであるため共有されやすく、口コミで広がりやすい
- 多くの人に使われているネイティブアプリ(メッセンジャー、ソーシャルアプリ、ニュースアプリなど)にゲーム/アプリを埋め込むことができる。
Big Viking Games では HTML5 に注力し始めて5年が経ち、我々は独自ツールを使ってネイティブアプリとほぼ同じ速さでゲームを製作していて、完成品の見栄えと感触はネイティブアプリとほとんど区別がつかない。当社の開発エンジンは、モバイルインスタントゲームの成功に不可欠なファイルサイズの圧縮とロード時間の短縮に重点を置いている。
確かに、我々にとっても他の開発者たちにとっても、モバイル HTML5 テクノロジへ注力し続けると決断するには困難な状況が何度もあった。なぜなら、Unity や Unreal などのネイティブコードやツール上で何かを作成するのと比べて、同様のものを作るのに遥かに時間がかかったからである。しかし、HTML5 に対する我々の信念は報われようとしている。

HTML5 向けモバイルメッセンジャー
どのようにして多くの人にアプリを拡散するかは、すべてのオープンなモバイルインスタントゲームにとって最大の課題の1つだ。 オープンモバイルウェブと言えば聞こえはいいが、統括的に管理するアプリストアがなければ、ユーザがこれらのゲームを見つけることが難しく、見つけたとしてもまた戻って来てもらうことも難しい。この問題は、メッセンジャーアプリによって解決した。
メッセンジャーアプリは現在、ソーシャルネットワークを含む他のどのアプリよりも携帯電話で多く使われており、驚くべきことに、世界中で毎月40億人近くの人々に使われている。
メッセンジャーアプリは本格的なモバイルプラットフォームにもなりつつある。アジアでは、WeChat、Kakao、Line で、銀行取引、テイクアウトの注文、タクシーを呼ぶなど、色々なことができる。北米では、今年、Facebook Messenger と Kik がそれぞれのプラットフォームでボットを開始したことで同様の動きが始まった。このボットによって、ブランドが消費者と直接やりとりできるようになり、北米のメッセンジャーアプリが、ただメッセージをやりとりするだけのツールから発展するための第一歩である。
ボットを備えたメッセンジャーアプリは、本質的に多くの人に広がりやすい新しい拡散ネットワークを作り出すだけでなく、オープンウェブ上でプレイするゲームにはまだない通知システムとしても機能する。たとえば、Galatron には、Kik と Facebook Messenger の両方のボットがあり、プレイヤーに裏話を教えたり、友だちが自分のスコアを上回ったときや、新しい報酬が出現したときなどに通知するようになっている。このようなリアルタイム情報があると、ゲーマーはもっとプレイしたくなる。
HTML5: 「ポストアプリの世界」がここにある
Salesforce.com は、「ソフトウェアなし」の信念で有名になった。同じことがモバイルゲームやアプリの世界にも当てはまる。 私たちは現在、ネイティブアプリのような豊富な体験をユーザに届けるためにアプリに完全に依存する必要のない「ポストアプリの世界」に移行している。
HTML5 は、特定のプラットフォーム、アプリ、OS の変更によらず、モバイル体験を即座に提供し、今後開発されるアプリに組み込むことができることを意味する。これは、このオープンスタンダードの革新的で強力な利点である。HTML5 はまさに「一度書けば、どこにでも使える」どころかさらに優れた至高のツールを即座に提供してくれる。
「ポストアプリの世界」の革命が始まるかもしれない。
寄稿した Albert Lai氏は、Big Viking Games の CEO である。Big Viking Games はカナダのオンタリオ州のロンドンとトロントを拠点とし、HTML5 メッセンジャー・インスタント・ゲームを先駆けている次世代型ゲーム開発会社である。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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